| Login |
最新記事のRSS
目次: よく扱うテーマおよび連続記事目次のピックアップ

2017/01/17
昨年の秋のことを思い出しました。
9月末というのに、レストランのテラス席で食事ができてしまうほど気温の高い日のこと...。

それほど頻繁に行くわけではないけれど、もう長いこと通っていたレストランなので、経営者も従業員もこちらを覚えていてくれています。入っていくと、顔見知りになっているオーナーシェフ夫妻、ソムリエ兼給仕長、従業員の人たちと握手で挨拶をするというアットホームな雰囲気が気に入っています。

テーブルについてお品書きを眺め始めると、キール酒が運ばれてきてくれます。新入りのウエーターさんが応対したときもそうなので、マダムや給仕長がしっかりと目を光らせていて、あちらにはキールの無料サービスをするが習慣になっているのだと指示を出しているのだと思います。

レストランに入る前には食前酒を飲んでいることが多いので、いらないのだけどな... と思うこともあるのですが、この日は暑かったので、キール酒が格別に嬉しかった。


前菜が終わってメイン料理を待っていたとき、私のワイングラスに向こうの景色が映っているのに気がつきました。



ほとんど透明の白ワインなのに、黄色味が濃くなっているので景色がはっきり見えるようです。グラスの中では景色が逆になって、さらにその下では景色がもとに戻っている...。

何か特別なものを見た子どもの気分。料理を町ながら何枚も写真にとってしまいました。


このとき眺めたグラスは、もしかしたら一生記憶に残るのかもしれない...。

つい最近、このレストランによく一緒に行く友人から言われたのです。

シェフは引退して、このレストランは3つ星レストランのシェフの手に移ることになった。もちろん、その人が来るわけではなくて、誰かシェフを雇うらしい。

でも、料理の修行を済ませた跡取り息子がレストランを継ぐはずだったのに...。

レストランが閉鎖されるというのは本当なのかインターネットに入っている記事で確認すると、もう時間の問題というところまで来ているようでした。シェフは60年間この仕事に携わっていたのだそう。今年71歳で引退を決心した。昔は早くから働き始めたのですね。

不動産を手に入れたのは投資会社で、レストランを切り盛りするのはは、ここから150キロくらいのところにある3つ星レストランのシェフ。すでにあちこちに彼のレストランがあるので、その1つになるようです。計画されているのはブラスリーらしい。

そういえば、跡取り息子さんは余りレストラン経営に関心を持っていないのだという噂が流れていた。修行から帰って来たころは今流行の創作料理で、伝統的な料理を主に作っていたお父さんとは違うので、すぐに息子さんの方の料理だなと分かりました。そういえば、最近はお父さんシェフの料理に戻っていたかもしれない。


グラスに景色が逆さまに映ったのに見とれた日には、なんとなく不自然なことをレストランで感じていました。

日本の友達がフランス製のエプロンが欲しいというので探していたのですが、気に入ってもらえるようなのが見つからない。パリあたりだったら何かしゃれたのがあるかもしれないけれど、地方都市では見つからないのです...。日本の方が良いのがあるのにな... と思いました。

私が行ける町にある店を何軒か回ってエプロン探しをした後だったので、レストランでもお給仕の人たちのエプロンに目が行ってしまいました。

なかなかしゃれているのです。紐を前で結ぶのも、日本では珍しいかもしれない。いかにもフランスらしい♪ という感じに見えました。

3つ星レストランなどだったら、お土産やレストラングッズを売っている立派なブティックが併設されているのが普通なのですが、ここでも何か売っていたような気がする。

ダメで、もともと。トイレに行こうとして通った帳場にマダムがいたので、レストランのエプロンを売っていないかと聞いてみました。

その返事が、なんだか気になったのでした。エプロンは新しいデザインのに切り替えるところなので、今は在庫がなくなるまで使っている。それで、分けてあげられるものがない、と言うのです。

なくなるまで使うって、不自然ではないですか? 注文する前に、人前に出れないような状態のエプロンしかない状態になったら、どうするの? フランスは日本と違って、「この日までに届けてください」と言ったって、そうはいかない国なので、余裕をみて行動しないといけない国なのです。

マダムと立ち話していたとき、料理を運んでいくウエーターさんが通りました。こちらの話しを耳に挟んでいるのは明らかなのに、なんとなく「聞いていません」というような感じで通っていったのでした。

あの時、すでにレストランは手放すことにしていたのではないかな?... つまり、ストックが切れかかっているけれど、レストランの名前が入ったエプロンは、もうう注文する必要なないのだ... と。


私なんかより、悲しんでいるのは従業員の人たちだと思う。フランスでも日本でも絶滅の危機にある、昔風のメンタリティーで従業員を家族のように面倒を見ている経営者だったのです。だから、気持ちよくみんなが働いている雰囲気の良さがあったのでした。

また1つ、なくなりますか...。


色々な人たちが目の前からいなくなっていく。他界されなっくても、引退されると同じこと...。

フランス関係の知人では、なんだか美味しいものを食べさせてくれた人たちばかりの気がします。食べられなくなるから残念さが大きく感じるのかもしれないけれど...。

とびきり美味しいワインを格安に売っていたワイン農家のご主人が数人。エシェゾーという銘柄の赤ワインの美味しさを私に教えてくれたご主人は、奥さんの後追い自殺...。

高級食材の代理店だったので、ブルゴーニュの別荘に来るときは段ボールいっぱいのお土産を持って来てくれていたパリの社長さん。彼がガンの末期症状のとき、暖炉の前でしみじみと私に「あなたの顔を見ていると心が休まる」と言っていたのです。めったに行かないパリにいたとき、道でばったり会った人から彼の葬儀ミサがあると聞かされ、お葬式に行ってしまったという不思議なご縁...。

エスカルゴを捕まえて、素晴らしく美味しく調理した料理を毎年食べさせてくれていたお爺さんは、もう一人暮らしができなくなってケア付き老人住宅に入ってしまった。もう二度と、本物のエスカルゴは味わえないかもしれない。

チーズの巡回販売をしていたけれど、もう退職した近所のお爺さん。村のイベントで出会ったら意気投合して食事に招待してくれた関係で、いつも私の家の前で車をを止めてくれるので何か少し買うと、創味期限が切れそうなチーズや乳製品をおまけでどっさりくれていたっけ。義理で買っていたというのもあるけれど、彼が仕入れるチーズは素晴らしく美味しかった。

レストランに通って親しくなったシェフが、私が手作り日本料理をふるまったお礼にと3つ星レストランに招待してくれたりもしていたのだけれど、引退してから間もなく他界してしまった。

数え切れないほどいるな...、美味しいものを食べさせてくれていた人たち...。

馴染んでいたものが姿を消していくのは寂しい。長生きしていると、取り残されるだけなのだろうな...。



ブログ内リンク:
★ 目次: 空や天気に関する記事(虹、太陽、月、空、雪など)
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村

関連記事

カテゴリー: レストラン | Comment (0) | Top
この記事のURL | Rédiger