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2017/03/12
ル・モンド紙のサイトに、歴史に痕跡を遺した10人の女性を選んだ記事がありました。日付が今年の3月8日になっているので、国際女性デー関連として作った記事のようです。

動画が入って、日本人らしき女性の姿が見える。誰を取り上げたのかなと興味を持ちました。


10 femmes qui ont marqué l’histoire


中野 竹子

10人の中に選ばれていたのは、幕末におこった会津戦争のときに婦女隊(じょうしたい)として武器を持って戦い、二十歳そこそこで命を落とした中野竹子(1847~68年)という人でした。

死後に描かれたという肖像画(法界寺蔵)がWikipediaに入っていました。



聡明で、かなりの美人でもあったようです。日本では、2013年に放映された大河ドラマの『八重の桜』にも登場していたそうですが、私は見ていません。

ル・モンドの動画では、主観的に10人の女性を選んだそうです。フランスだったら、まずジャンヌ・ダルクを入れるべきだと思ったのに入っていません。


中野竹子は、フランスでも知られた人物だったのでしょうか?

Wikipediaでもフランス語ページが出来ていたし、他にもフランス語の記事が幾つか出てきました。
☆ Wikipedia: 中野竹子 » Nakano Takeko


彼女にスポットを当てたドラマ仕立てのドキュメンタリー『Samurai Warrior Queens』が2015年に作られていました。


Samurai Warrior Queens TRAILER



Women Were Some of the Fiercest Samurai Warriors Ever


西洋人は「女サムライ」とか言って、気にいるお話しだろうな、と思いました。フランスでも、このドラマドキュメンタリーは『Takeko et les guerrières samuraï』という題名で放映されたようです。

50分の動画があったのですが、最近の私は「お国のために死ね」という言葉を聞くのにうんざりしているので見る気にはならなりませんでした。

12. 一旦緩󠄁急󠄁アレハ義勇󠄁公󠄁ニ奉シ以テ天壤無窮󠄁ノ皇運󠄁ヲ扶翼󠄂スヘシ

でも、全編が入っている動画なので埋め込んでおきます。


Takeko Et Les Guerrières Samurai

追記:
見たくないと言いながら、やはり気になったので視聴しました。日本ではこうなのだと紹介しているだけで、中野竹子の心理などについての掘り下げはなく、私には全くつまらない作品でした...。



女武芸者

Wikipediaでは、「Onna-bugeisha(女武芸者)」という項目が、英語でもフランス語でも出来ていました。もちろん、江戸時代の例として中野竹子に触れています。

こんな絵が添えられています。

Onna bugeisha
Une onna-bugeisha armée d'une naginata, l'arme de prédilection de ces femmes combattantes
Peinture de Kuniyoshi Utagawa
『誠忠義士傳』より「大星良雄内室 石女」(歌川国芳作)


女性が戦うとなったら、やはり薙刀(なぎなた)ですか...。

日本語の記事はWikipediaに作られていないようなので、日本では「女武芸者」をどう定義しているのか調べてみました。

江戸時代には「別式女(べっしきめ)」と呼ばれる女性のプロ剣術家がいた。大小(二刀)まで差し、眉を剃り、眉墨もせず、青く眉の跡が残っており、着物も対ツ丈に着て、引き摺っていない勇ましい格好をしていたらしい。

そして、武芸をたしなむ女性は「女武芸者」と呼ばれた。

Googleフランスで「onna-bugeisha」をキーワードにして画像検索すると、漫画風の絵もたくさん入っていました。フランスでは日本の漫画やアニメに人気があるそうなので、女武芸者はその当たりからも入って知られているのかな?...


中野竹子の写真として使われているのは、武芸者ではなくて、芸者?

他のサイトでも、歴史の流れを変えた女性の写真を並べていたので眺めてみました:
21 portraits de ces femmes, parfois méconnues, qui ont changé le monde

21人を選んだリストですが、11番目に大正・昭和期のフェミニスト木村駒子が入っていました。

もう一人、4番目に女武芸者として鎧兜姿の美しい日本女性の写真が入っていますが、名前は書かれてありません。

フランスの記事では、これを中野竹子の写真として入れているものもありました。でも、戊辰戦争のときにこんな記念写真を撮っていたとは奇妙ではないですか?

例えば、こちらは合気道クラブのブログらしきサイトに入っている女武芸者に関するPDFなのですが、スクロールして4ページ目に行くと、中野竹子として、同じ写真を入れています:
Onna Bugeisha ou femme Samuraï

この記事では、彼女は1868年に死亡とあるのですが、タイトルでは明治時代の女性サムライとされています。この写真が撮影されたのは明治時代のようなのですけれど、彼女はそこまでは生きていない!

つまり、フランス人が日本のことを書くといい加減になる? とすると、始めに入れたル・モンドの記事で使っていた写真も別人のもの?



Wikipediaに入っていた中野竹子の肖像画は、きつい性格の女性に見えるのですが、なまめかしい女性の写真もあったので奇妙だったのです。

Googleフランスで「takeko nakano」をキーワードにして画像検索すると、美しい女性の凛々しい姿が色々でてくきます。よく眺めて比較すると、眉毛や口元がかなり違うので、同じ人物には見えません。

どうやら、フランスのサイトで使っている中野竹子の写真は、芸者さんなどがポーズをとった写真のようなのでした:
☆ 写真で見る昔の日本: 鎧と女性

絵葉書らしき書き込みがある写真も多いので、日本にやって来た外国人たちのために作成していたのではないでしょうか?

絵葉書という習慣ができてからの写真だったら、江戸時代ということはありえないでしょうね。

絵葉書が好まれていたことを書いた過去の記事:☆ 洞窟で隠者のような生活した、ヨーヌ県の伝説的な男性の話し 2013/06/30


さすがに、日本で中野竹子について書いている記事では、フランスのサイトで使っているような女武芸者の写真は使っていませんでした。フランスの記事でも、下に情報リンクとして入れる真面目そうな記事ではイラストには使っていませんね。

なぜフランス人が中野竹子のことを知っているのかと思って、フランスのサイトを眺めてしまった私が悪かった! 日本のことなのだから、日本の情報だけを読めば良かったのだ...。

外部リンク:
☆ 会津物語: 戦場に咲き誇った一輪の花 中野竹子
中野竹子(なかのたけこ)と娘子隊(じょうしたい)
☆ 剣客商売の時代の剣術: 女武芸者
☆ 教えて!goo: 女性の“サムライ”は実在した?
Samurai Warrior Queens (TV Movie 2015)
☆ Le Monde: Dix femmes qui ont marqué l’histoire
Nakano Takeko, cheffe de l’ « armée des femmes «L'Histoire par les femmes
Nakano Takeko, femme samouraï
Nakano Takeko et le Jōshitai le mystère des ‘femmes samurai’

内部リンク:
★ 目次: 文学者・哲学者、映画・テレビ番組


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2017/03/03

フランスでは4人に1人は、祖父母の代にまで遡れば外国人の血が入っていると聞きましたが、そうだろうなと感じます。

私がいるような田舎にも移民の子孫はたくさんいますが、ヨーロッパ諸国から来た白人系ばかり。それ以外の出身者と出会うのは、県庁所在地のような大きな町。でも、フランスには色々な肌の人たちがいるのだと実感するのはパリですね。


絆創膏の色

だいぶ前のことですが、フランス人と話していて、想像してみたこともないことを言われました。どこかの会社が肌の色によって選べるバンソウコウを発売したのだそうで、すごいアイディアだ! と褒めていたのでした。

当時はインターネットは普及していなかったので、どんな絆創膏なのか想像してみただけだったのですが、今なら画像を探せました。なるほど...、こんなバラエティがありますか...。



色付きだと、こんなにも違うというのが、こちらの画像で効果を見ることができます。

日本では、いわゆる「肌色」以外のバンソウコウは売っていないのではないでしょうか? 探してみたら... そうそう、子ども用のキャラクター付きのがあった。面白いので、日本で買ってフランスの子どもにプレゼントしたことがあります。
  
それはお遊びで良いのだけれど、子ども用でもなさそうなのに、青やピンクの絆創膏もある!



何かと思ったら、工場内での作業に使うための目立つ絆創膏なのですって。剥がれて何かに紛れ込んでも見つけ出しやすいし、金属探知機で検知もできるようになっているのだそう。

便利になりすぎると、不便になることもあるのですよね。自動車が音もなく走ると、近寄ってきても分からないから轢かれてしまう。だから、ある程度は音を出して走るようにする。


肌の色は何色に分ける?

少し前に聞いたトランプ大統領の就任演説で、1つ気になる部分がありました。

Whether we are black or brown or white, we all bleed the same red blood of patriots.

肌の色に係わらず、人間なら誰でも赤い血が流れている。うまいことを言いますね。でも、彼は国籍で差別したのだから、良い演説だったとは思わないけれど。

こういう場合、血の色を持ち出さないとしたら、他に何が人間に共通と言えるだろうか思いました。

そうしたら、先日書いたフランスのチーズに関するドキュメンタリーの中で、人間が初めて体験する味覚はミルクの味だから、我々はみなミルクの兄弟なのだ、という発言がありました。なるほど...。でも、考えてみれば、それが「哺乳類」と言われる所以なのですから、うまい表現を見つけたと感心することはない...。

ところで、トランプさんが出していた肌の色は、黒、褐色、白でした。アメリカにはたくさんいるはずのアジア系の人たちは無視しているのか、この3つの中の何処かに入るからそれで良いのだろうか?...

フランス語のページでは、肌色の3色をこう表現している人がいました:
peaux mates, noires ou métissées

黒は出しているけれど、白を避けているのは良いかもしれない。

絆創膏の色は5色だったのに、単純に分けると肌の色は3色かな?...

そうすると、日本人としては、黒でも白でもないけれど、褐色と表現するには抵抗があるではないですか? ヨーロッパで子どもを育てている日本人が書いていることを読んだら、私たち黄色人種は褐色に入れられるということのようでした。

20世紀半ばに調査された肌の色の分布図がありました。



8種類に分けていますね。私に意外だったのはオーストリア。アメリカと同様に白人に占領されているようなイメージだったのですけれど...。

もっと細かく分けたのは、こちら ↓


Échelle chromatique de Von Luschan

これだけ並べるなら、濃いピンク色も入れたら良かったのに...。

アメリカに留学した韓国人の友達は、自分よりずっと色黒のインド人たちはホワイトとされていたのだ、と不満をもらしていました。インド人はコーカソイドだから白人なのでした。


フランスで家に来た人が小さな子どもを連れて来たとき、その子は私を見るなり驚いたようで、ママを突っついてこう言いました。

「彼女、黄色くない...」

アジア系の人間を見たのが初めてだったのでしょうね。それはそうですよ。レモンのように黄色い顔をしていたら病気です! ママの方は子どもが失礼なことを言ってしまったと慌てていましたが、私も含めて、全員が大笑いしました。

肌の色は何色に分類するかを調べていたら、あの時の子が思い浮かべたのは、こういうのだったのではないか、と思える漫画風の顔の絵が出てきました。


アップル iOSの絵文字で使っている肌の色

アップルの絵文字は、一部のユーザーが「絵文字は白人偏重、人種的多様性を反映していない」などと抗議していたので、肌の色を選べるようにした、という2年前のニュースでした。



左端は、極端な黄色。黄色人種をこんな色にするなんて、酷いではないですか?!

この黄色は人種差別だと言って、アップルにとっては大事な顧客の中国から反発が出たのだそう。アップル側では、濃い黄色の顔はいわゆる「黄色人種」ではなく、デフォルトの肌色だと説明していたとのこと。

確かに、左端のは位置が少し離れているし、黄色を入れるなら白と褐色の間にすべきなので、アップルの説明はこじつけではなかったような気はしました。

それで、自分のiPhoneで確認してみることにしました。

私は殆ど絵文字を使っていません。iPhoneでは、予定表に書き込むときに分かりやすくするために、クローバーやワイングラスや国旗のマークを入れている程度。それで、顔のマークは気にしたことがなかったし、肌の色でバリエーションまで出来ているとは知らなかったのです。

本当に色分けがあるのでした。黄色は確かにデフォルト用ですね。初めには黄色が出ていて、その色を変えたければ選択肢がある、という風になっていました。



デフォルトは、目立つように金色にしたつもりなのではないかな。色のチョイスが出来なかったら、これが黄色だということは全く意識しなかったと思う。

iOSが肌の色を選べるようにしたのは2015年だったようです。それ以前はどうしていたのだろう? 一番薄い色にしていたのかな。

ともかく、現在のところ、黄色はデフォルト・カラーとして、残りの5つの色が肌の色ということになります。やはり、絆創膏と同じように、肌の種類は5色ですか。

欧米系の人なら、1ダースの半分で6が基本数かと思っていました。
でも、指も5本だった...。


肌色って、どんな色?

私たちには「肌色」という便利な呼び名があります。そうフランス人に言ったら、どんな色と聞かれて、はたと困った。日本人だって、肌の色には違いがありますから。

肌色のカラーコードを確認して、それに近い色をフランス語では何と呼べば良いのか調べてみました。

和色名フランスの色名
肌色
#FCE2C4

Bisque
#FFE4C4


ビスク

Jaune nankin
#F7E269


南京イエロー


の南京色は、さっきのアップルのデフォルト色のような派手さがあるのでびっくりしました。でも、これは南京で作られていたNankinと呼ばれる木綿の布地の色か、中国の皇帝の色ということから来た命名のようです。

のビスクという色が、最も肌色に近いように見えました。でも、フランスではファッションや塗料の色として存在しているものの、普通の色彩図鑑などには入っていない名前のようです。私の仏和辞典でも、bisqueに色関係の訳語はありませんでした。

ビスクはファンデーションの色にもなっていたので、肌色と呼べますね。

☆ ファンデーションとしての
  Bisque色のバリエーション
ところで、ビスク(bisque)という言葉は、ビスケット(フランス語でbiscuit)から来ている? でも、甲殻類で作るスープのビスクと同じ綴りなので、それから来ているという記述もありました。

Lobster Bisque
Bisque de homard

スープの方は色が濃すぎますよ。肌色は、ビスケット色と呼びたいな。

ところで、大発見!


◆ 文房具では「肌色」という言葉を使わなくなっていた

2000年前後から、大手文具メーカーが協議の結果として「肌色」という呼称の使用を取りやめるようになり、2005年から2006年頃には、全てのクレヨンからこの呼称が撤廃されていたのでした。

ぺんてるでは「ペールオレンジ」、サクラクレパスは「うすだいだい」と呼んでいるそうです。

サクラクレパス NO.7 うすだいだい

何色をしていても「自分の顔の色が肌色」だと言えば良いわけですが、「肌色はこれ」と決めておいたら明らかに差別ですね...。


ブログ内リンク:
★ 目次: 色について書いた記事

外部リンク:
☆ Wikipedia: 肌色 » Couleur de la peau humaine
☆ 日本人の肌色カラーイメージ
クレヨンから「はだ色」が消滅 理由は「人種差別に繋がるから」
あなたの肌の色は何色ですか? ~ 日本人が人種差別意識を持っていない証拠
人種差別・英国式「肌の色」分類
アップル、絵文字に人種と肌の色の違いを導入。iOS 8.3 - OS Xベータから
アップル「黄色い顔文字」に中国で批判噴出 「あんな黄色い奴みたことない」「アジア人への偏見だ!」
黄色は皇帝の色?黄色と中国伝統文化はどういう関係?
トランプ新大統領誕生! 就任演説全文(英語)|ロイター発


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2017/01/11


地域圏(région)をどう再編成するかが議論さていたのですが、ようやく2016年の始めに、これになったという新しい行政区分が出てきました。その時点では新しくできた地域圏の名称が何になるか分からなかったのですが、秋になって全てがはっきりしたようです。

2015年末には地域圏は22あったのですが、合併して数が減りました。でも、「フランス本土には幾つの地域圏になったのでしょう?」と質問されたら、幾つと答えるのが正解になるのでしょうか?

コルシカ島は、特別地方公共団体(collectivités territoriales)となり、地域圏(région)という呼称は与えられていないのです。だから、フランス本土にある地域圏の数は12あるというべき? でも、コルシカ島も地域圏と同じ機能を果たす行政区分になっています。

地域圏がどうなっているかという以外に、フランスの行政区分は、ひと言では語れないほど複雑な構造になっています。在日フランス大使館のサイトでは、本土の地域圏の数は13だと書いてあるので、それで良いのだろうと思います。


新しい地域圏の地図(2016年以降)

こうなりました。



以前と同じ地域がそのまま残った地域圏もありますが、以前は2つだたり、3つだった地域圏が1つの地域圏を作ったところもあります。その場合、以前の名称を並べて新しい地域圏の名称にしてくれれば分かりやすかったのですが、全く新たな名称を作ったところもあります。

Grand Est(大東部)、Nouvelle-Aquitaine( 新アキテーヌ)なんていう名前は、西部劇を連想してしまう! 広い地域になった「新アキテーヌ」は「大西部」にすれば完璧だったのに...。

Hauts-de-France(フランス上部)は、もっとマシな命名ができなかったのかなと思うけれど、地図で見れば確かに一番上にありますね。私は方向音痴なので「上の方」と言ってしまうのですが、「北」と言えと言われるのですけど。

Occitanieというのはオック地方。オック語が話されるオクシタニアのことなのでしょうが、ちょっと問題がありますよ。この地域圏には、スペインと跨ってカタルーニャ語の言語圏も入っているのですから。地元では問題になったみたい。

大東部(Grand Est)は、アルザス地方とシャンパーニュ地方という、結びつかない地域が一緒になっているので違和感を感じます。その行政中心地はストラスブールになりましたが、この町は最も外れにあります。

シャンパーニュ地方に住む友人は、新しい首府のストラスブールまで来いと呼び出しがかかったら、片道300キロもあるのだと言っていました。フランスのことですから、電車に乗れば行けるというものではないので不便すぎる。この人などは良い方で、シャンパンのメッカのようなのランス市からストラスブール市に行くには400キロ近いのでした。

地域圏が合併して新しい地域圏が誕生しても、私にはどうでも良いのではありますが、困ったことがおこりました。


アルバムソフトで写真を整理するのが不便になった


デジカメで写真を撮るようになってからは、パソコンにアルバムソフトを入れて整理しているのですが、もう長いこと気に入っているのは「Adobe Photoshop Lightroom」です。

キーワードも入れられし、撮影した場所も登録できるので、後で写真を探すときに非常に重宝します。

GPS機能付きのカメラは持っていないので、よく知らない土地を旅行したときには移動先でまずiPhoneで1枚写真を撮って、それをアルバムに入れることにしています。

Adobe Photoshop Lightroomというソフトには、iPhoneのGPS情報が入って、そこをクリックするとGoogleマップが開くのでいたって便利なのです。

それで市町村と県がアルバムに登録し、それに対応する地域圏を探して分類します。私と地域圏名の関係はそこにあります。

フランス本土には96の県があるので、自分がよく知っている県以外は覚えていません。でも、地域圏で言われれば、だいたいどの辺にあるかは分かっていました。

ノルマンディー地方が2つに分かれていたのが1つになったのは大歓迎。もともと、私の写真アルバムでは2つに分けていませんでした。アルザス地方とロレーヌ地方も一緒になったのは、歴史的に運命を同じにした地域なので抵抗がありません。

ところが、合併してして面積が広くなって地域では、地域圏の名前を見ても、どの辺で、どの文化がある地域なのかが私には結びつかないものもあるのです。

例えば、シャンパンの産地のシャンパーニュ地方と、ドイツと国境を接するアルザス地方が合併しました。

アルザス地方に行くと、ドイツに来たかと思うような街並みなのです。そこにいるのはフランス人なのに、「フランス語で話しても良いですか?」と聞きたくなってしまいたくなるほど。

家々の窓辺にはゼラニウムがあり、玄関先にはドイツ人がいる、と冗談を言われる地方なので、他とは全く違う雰囲気があります。

アルザスの街

こういうアルザスらしい風景写真を探し出そうとしたら、やはりシャンパーニュ地方とアルザス・ロレーヌ地方は一緒に整理しない方が好ましい。

迷ったあげく、アルバムに入れる地域圏は、以前のままの名前で登録し続けることにしました。

ところが、地名の辞書代わりに使っているWikipediaでは、もう新しい地域圏名しか教えてくれないのです。日本語ページでは更新が遅れるので助かっていたのですが、だんだん訂正されてきてしまいました。

地域圏名の新旧対照表を誰かが作るはずだと思って、1年前から探していたのですが見つけることができませんでした。写真をアルバムで整理するときに、いちいち複雑に調べるのは面倒なので、あきらめて自分で対象表を作りました。インターネットに載せておけば、いつでも自分でアクセスして参照できるので。


古い地域圏の地図(2015年まで)

県名が入った 旧地域圏区分地図
Départements+régions (France)
Départements+régions (France).svg
県コードが入った 旧地域圏区分地図
Départements et régions de France
Départements et régions de France,svge


県が属する地域圏の新旧対照表

地域圏名
県(県コード)
Auvergne-Rhône-Alpes
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ

圏都:
Lyon
リヨン
Rhône-Alpes
ローヌ=アルプ

圏都: Lyon
Ain (01)
Ardèche (07)
Drôme (26)
Isère (38)
Loire (42)
Rhône (69)
Mètropole de Lyon (69)
Savoie (73)
Haute-Savoie (74)
Auvergne
オーヴェルニュ

圏都:Clermont-Ferrand
Allier (03)
Cantal (15)
Haute-Loire (43)
Puy-de-Dôme (63)
Bourgogne-Franche-Comté
ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ

圏都:
Dijon
ディジョン
Bourgogne
ブルゴーニュ

圏都: Dijon
Côte-d'Or (21)
Nièvre (58)
Saône-et-Loire (71)
Yonne (89)
Franche-Comté
フランシュ・コンテ

圏都: Besançon
Doubs (25)
Haute-Saône (70)
Jura (39)
Territoire de Belfort (90)
Bretagne
ブルターニュ

圏都:
Rennes
レンヌ
Côtes-d'Armor (22)
Finistère (29)
Ille-et-Vilaine (35)
Morbihan (56)
Centre-Val de Loire
サントル=ヴァル・ド・ロワール

圏都:
Orléans
オルレアン

※2015年以前はCentre(サントル)という地域圏名だった
Cher (18)
Eure-et-Loir (28)
Indre (36)
Indre-et-Loire (37)
Loir-et-Cher (41)
Loiret (45)
Grand Est
グラン・テスト

圏都:
Strasbourg
ストラスブール
Alsace
アルザス

圏都:Strasbourg
Bas-Rhin (67)
Haut-Rhin (68)
Lorraine
ロレーヌ

圏都: Metz
Meurthe-et-Moselle (54)
Meuse (55)
Moselle (57)
Vosges (88)
Champagne-Ardenne
シャンパーニュ=アルデンヌ

圏都:Châlons-en-Champagne
Ardennes (08)
Aube (10)
Marne (51)
Haute-Marne (52)
Hauts-de-France
オー=ド=フランス

圏都:
Lille
リール
Nord-Pas-de-Calais
ノール=パ=ド=カレ

圏都:Lille
Nord (59)
Pas-de-Calais (62)
Picardie
ピカルディー

圏都: Amiens
Aisne (02)
Oise (60)
Somme (80)
Île-de-France
イール=ド=フランス

圏都:
Paris
パリ
Paris (75)
Seine-et-Marne (77)
Yvelines (78)
Essonne (91)
Hauts-de-Seine (92)
Seine-Saint-Denis (93)
Val-de-Marne (94)
Val-d'Oise (95)
Normandie
ノルマンディー

圏都:
Rouen
ルーアン
Haute-Normandie
オート=ノルマンディー

圏都:Rouen
Eure (27)
Seine-Maritime (76)
Basse-Normandie
バス=ノルマンディー

圏都: Caen
Calvados (14)
Manche (50)
Orne (61)
Nouvelle-Aquitaine
ヌーヴェル=アキテーヌ

圏都:
Bordeaux
ボルドー
Aquitaine
アキテーヌ

圏都:Bordeaux
Dordogne (24)
Gironde (33)
Landes (40)
Lot-et-Garonne (47)
Pyrenees-Atlantiques (64)
Poitou-Charentes
ポワトゥー=シャラント

圏都: Poitiers
Charente (16)
Charente-Maritime (17)
Deux-Sèvres (79)
Vienne (86)
Limousin
リムーザン

圏都:Limoges
Corrèze (19)
Creuse (23)
Haute-Vienne (87)
Occitanie
オクシタニー

圏都:
Toulouse
トゥールーズ
Midi-Pyrénées
ミディ=ピレネー

圏都:Toulouse
Ariège (09)
Aveyron (12)
Haute-Garonne (31)
Gers (32)
Lot (46)
Hautes-Pyrénées (65)
Tarn (81)
Tarn-et-Garonne (82)
Languedoc-Roussillon
ラングドック=ルシヨン

圏都:Montpellier
Aude (11)
Gard (30)
Hérault (34)
Lozère (48)
Pyrénées-Orientales (66)
Pays de la Loire
ペイ・ド・ラ・ロワール

圏都:
Nantes
ナント
Loire-Atlantique (44)
Maine-et-Loire (49)
Mayenne (53)
Sarthe (72)
Vendée (85)
Provence-Alpes-Côte d'Azur
プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール

圏都:
Marseille
マルセイユ
Alpes-de-Haute-Provence (04)
Hautes-Alpes (05)
Alpes-Maritimes (06)
Bouches-du-Rhône (13)
Var (83)
Vaucluse (84)

Corse
コルス(コルシカ島)
Collectivité de Corse

圏都:
Ajaccio
アジャクシオ
Corse-du-Sud (2A)
Haute-Corse (2B)
※ 日本語は在日フランス大使館のサイトにある表記に合わせています。



A quoi servent les régions ?





ブログ内リンク:
★ シリーズ記事目次: フランスの市町村について
総目次: テーマおよび連続記事ピックアップ

外部リンク:
☆ L'Obs: AVANT-APRES. Découvrez les 13 noms des nouvelles régions de France 02/07/2016
☆ Wikipédia: Région française » フランスの地域圏
☆ 在日フランス大使館: フランスの地方制度改革
フランス地域圏の行方 2015年3月
☆ OVNI: 22の地域圏が13に。 2014/12/15


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2017/01/03
シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!
その14


長らく栗について書いてきたのですが、最後に「栗色」に触れてみます。


◆ 「栗色と訳されるフランスの色

栗が育たない国では「栗色」というのはなくて、「茶色」とか何とかいうのではないでしょうか? フランスでは中世には栗の栽培が始まったそうなので、当然ながら栗を想起させる名前の色があります。

拾ってみたところ、3つ見つかりました。

栗の木「シャテニエ(châtaignier)」の実を意味する「シャテーニュ(châtaigne)」からできた、シャテーニュ(châtaigne)という色、châtain(シャタン)という色。

それから、栗の木でもマロニエでも果実をマロンと呼ぶのでややっこしい「マロン(marron)」という色。

色の違いをフランスのカラーコードで出したものを並べてみます。


châtaigne
シャテーニュ
(明るい栗色)
châtain
シャタン
(栗色)
marron
マロン
(栗色)
#806D5A
灰色がかった明るいブラウン
#8B6C42
ブラウンと金色の中間
#582900
赤味がかったブラウン
栗 栗 マロニエ

それぞれの色の名前に仏和辞典に入っている訳語をカッコの中に加えたのですが、みんな「栗色」とされているのですね。私は栗色といったらマロン色を思い浮かべますけれど。

「シャテーニュ」という色の名前は、それほど使わない感じがします。コードで出した色は栗の皮の色でもないし、渋皮の色とも違うし、何なのだろう?.

英語情報では、シャテーニュはDonkey Brownに近いとありました。
Donkey Brown(#816E5C)
なるほど、ロバはこういう色が多いですね。

「シャタン」には馴染みがあります。フランス人の多くは「シャタン」と呼ぶ髪の毛の色だからです。金髪を濃くしたような色で、brun(ブラウン)とblond(ブロンド)の中間にある色、と定義されていました。

シャタンは髪の色と密接な関係があります。ヘアーカラーでも、濃いシャタン色、明るいシャタン色、灰色がかったシャタンなど、色々なニュアンスを出して売られています。「マロン」と呼ぶ色合いよりも使われていることが多いように感じます。

右に入れたのは濃いシャタン色(châtain foncé)と表現されていた髪の毛。こうなると、マロンの色と違いが余り見えなくなります。

目が茶色の場合には、シャテーニュ色とマロン色は使いますが、シャタン色とは言わないですね。


発音も綴りも全く違う3つの色を全て「栗色」と訳すのは面白くないので、栗に関係した和色の名前を探してみました。


日本の色には、栗がたくさん登場する

フランスより日本の方が多いだろうなとは予測したのですが、こんなに出てくるとは思わなかった! そんなに栗は日本人には思い入れがある果実だったのでしょうか。

拾った色コードで色を出したのですが、なんだか全く違って見える色も並んでしまいました。間違っているのかもしれませんが、拾い出したものを並べてみます。色の名前に対応する色コードはもっと存在していたのですが、収拾がつかないので全部を並べるのは止めています。

和色: 一般的な栗色
栗色
(くりいろ)
#762F07
(日本の伝統色)
栗の皮のような赤みのある焦茶色。

別名: 落栗色、栗皮色、栗皮茶


《実りの色2》落栗色(おちぐりいろ)
#800000
#704B38
#5D2917
#522C1E
#591C12

栗皮色
(くりかわいろ)
#6A4028栗の皮の色で、黒みがかった赤褐色。

現代では、一般的に「栗色」と呼ばれる。

江戸時代には女帯によく使われていた色らしい。

栗皮茶
(くりかわちゃ)
#6D3C32
栗の実の皮のような黒みがかった赤褐色。

別名: 栗色、栗皮色

栗の樹皮と灰汁で茶に染める「栗皮染」がある。
#824522


和色: 特殊な栗色
栗梅
(くりうめ)
#852E19栗色を帯びた濃い赤茶色。あるいは、少し赤みの明るい茶色。

「栗色の梅染」が略されたもので、江戸時代の流行色。
梅がつく色は「紅梅色(こうばいいろ)」に代表される赤み(#E86B79)を表現している。
#6C1912
#58271E
#88503E

栗梅茶
くりうめちゃ
#CC5959赤みから黒みを帯びた茶色。
「くりむめ」ともいう。

栗金茶
(くりかねちゃ)
#B14329

蒸栗色
(むしくりいろ)
#EBE1A9蒸した栗の皮を向いた実のような、緑みがかった淡い黄色。

中国の古代書の『爾雅』にこの染色が登場している「蒸栗」の色は、日本で一般的に思われている色とは違うという説もある。

#EFEACC
#EEE2C2

小栗色
(こぐりいろ)
#72A46A未熟の小栗の色を表したものと思われる。

柴染
(ふしぞめ)
#B28C6Eタンニン物質を含んだ樹皮や柴木(山野に生する栗、楢、樫、櫟など小さい雑木)の煎汁で染めた色で、暗い灰みの黄赤。

どこででも採れる染料であるため、下位の人間の服の色とされた。
朽葉色(くちばいろ)
#796040


外国から入った色
マルーン
maroon
#501818明るい赤みの茶色
大粒の栗の名前が英語化したもので、暗い赤茶色に用いられる。
#800000
#6A1917

チェスナットブラウン#5C3E2Dマルーンより小型の栗で、色も赤みが少ない。
#68412F

フランス語: marron
#582900
英語: chestnut
#954535
イタリア語: castano
#6D351A



フランスのブラウン系の色

フランスでもブラウン系は色々あります。ただ、栗を持ち出さないだけなのでしょうね。

ブラウン系の一覧:
Code couleurs html - Les brun.

Wikipediaのフランス語に入っているブラウン系は少ないですがカテゴリーが出来ていました:
Catégorie:Brun


フランスで使われている色の名前は、和色の名前に比べると、全くつまらないですね。



栗の木とマロニエについて長々書いてきてしまったので、今回でシリーズは終わりにするつもりだったのですが、「栗色」と訳される「シャタン」という色が気になるので、まだ続けます。

続き:
 亜麻色の髪とは、淡い栗色ではなかった 2017/01/08


 シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!

ブログ内リンク:
★ 目次: 色について書いた記事

外部リンク:
【茶色】
☆ Wikipedia: Palette Teintes de brun
☆ Wikipedia: Châtain
☆ Wikipédia: Marron (couleur)
☆ Au domicile des mots dits et écrits: Le marronnier | La châtaigne
Marron symbolisme, histoire et expressions… notre série des couleurs

【髪の毛の色】
☆ Wikipedia: Palette Teintes de cheveux
☆ Wiipedia: Couleur des cheveux
☆ 髪の毛の色表現:  | (ヘアーカラー) | (ヘアーカラー)
Le vocabulaire du coiffeur, se faire mieux comprendre!

【目の色】
☆ Wiipedia: Couleur des yeux
☆ Wikimedia Commons: categoryEyes by color

【色】
[CODE COULEUR] Dictionnaire des couleurs
☆ Wiktionnaire: Thésaurus couleur-français


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カテゴリー: 日仏の比較 | Comment (2) | Top
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2016/12/19
日本から友達が来たときには、フランスの友人に観光案内を手伝ってもらうことにしています。

私とだけ付き合っていないで、フランス人とおしゃべりする方がフランスという国がよく見えるだろうし、友達から何か聞かれたらフランス人に答えてもらえるので、私にとっても利点があるからです。

ところが、困ったときがありました。


日本人は冗談を真に受ける?

フランス人はジョークを連発するのですが、私の友達は冗談を言って笑わせようとしているとは思わない。自分が知らなかったことを教えてくれていると思って感心してしまうのです。

そのうち、フランス人の方は彼女が何でも信じてしまうことを面白がって、あること、ないこと、全部ジョークにして遊んでしまうようになったのでした。

英語は流暢ではない人だったので、洗練したジョークは言えない。それで、黒い馬がいるのを指さして、「あれはアフリカの馬です♪」なんてバカなことまで言い出すのでした...。

彼女が「ほうとうに?」と言いながら感心しているので、フランス人は「ほんとうに」という日本語まで覚えてしまった! イントネーションで少し疑っているというのが分かると、頷きながら語尾を下げて「おんとに~」と言葉を返して(Hを発音できないため)、「本当にそうなんですよ」という感じまで出してしまうのでした。知り合いにアントニーという名の男の子がいるので、ホントニーは覚えやすかったらしい。

フランスの友人には、私の友達は素直な人なのだから、そういう悪ふざけはしないで欲しい、ときつく叱りました。

日本の友達には、相手は冗談で言っているのだから真に受けないで、と言いました。

でも彼女は、何か言われると、まず信じてしまうのです。とても良い性格の人なので、相手が言ったことに感心してみせるのが礼儀だと思っていたのかもしれない...。

参りました! 彼女が日本に帰ってから、教えてもらったことを他の人達に話したらマズイではないですか?!

ジョークの分かる日本人もいらっしゃいます。フランス人から何か言われると、真っ先にアッハハと笑う。そういうタイプの人は、フランス人から一目置かれます。そもそも、フランスの政治家の場合でも、何か貶されたら、怒ったりりはせずに、機知のきいたジョークを言って相手をやり込める能力が評価されています。

でも、日本人でジョークが分かる人はかなり少ないと感じています。真面目な席で通訳するときには、フランス人が何か冗談を言った後には、「これは冗談でけど♪」と私は勝手に付け加えてしまうことがあります。

誰も笑わないと、フランス人は私が下手に訳したからだろうと思ってしまうわけなので、そういう濡れ衣をかぶされないためです。訳す前に「それは冗談で言っているのでしょう?」と、ちらっと相手に確認したりもできますので。


日本人の鵜呑み度は70%

マスコミ報道の「鵜呑度」を国際比較した数値がありました。

アンケート調査はやり方によってどうにでもなってしまうけれど、これはかなり当たっているのではないか、と私の個人的な経験から思いました。

イギリスが最も疑い深くて、14%の人しか信じていない。

その後にはアメリカ、ロシア、イタリアと続き、フランスは第5位で35%。

日本人は、先進国の中では飛びぬけて信じやすい国民で、70%となっているのです!


パーセンテージはともかく、言われたことを疑わずに信じる日本人が多いのは確かだと感じています。

それで、その特性に気がついたフランス人は面白がって遊んでしまう?



シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その7

栗の木シャテニエの果実
 ・シャテーニュ(châtaigne)
 ・マロン(marron)
マロニエの果実
 ・マロン(marron)


フランス的な冗談を真に受けてしまったのでは?

そう思ったのは、日本ではこう言われていると聞いたときでした。

かつてマロニエの実を使ってマロングラッセを作っていたが、
後にクリの実で代用するようになった。


こんな場面を思い描きました。

パリたくさんあるマロニエ並木を、フランス人男性と、日本人の女の子が歩いている。落ちているマロンを拾って、フランス人はこう言う。

- マロングラッセ、知っているでしょう? 昔は、このマロニエの実で作っていたんだよ。

- マロニエの実は食べられないって聞いたけど...。

- そうなんだ。マロニエの実はあく抜きが大変だから、栗で代用してマロングラッセが作られるようになったんだ。

- 本当に...。知らなかった~! わぁ~、みんなに教えてあげよう~♪

- 教えてあげなよ。フランスでも知っている人は少ないんだよ♪


パリっ子たちは偉そうな口をきくので、男性の口調と表情まで浮かんでしまいました。

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まず、毒があるマロニエの実を食べていたはずはないではないですか? 飢饉のときに食べていたというのならまだしも、手間がかかるマロングラッセを作っていたというのは信じられません。

マロングラッセは、フランスではクリスマスのときにしか食べないような高価なスイーツです。

大変な手間をかけて作らないから高い値段で売るのでしょうが、それを作るのにわざわざマロニエの実(マロン)を材料にするはずはないと思うのです。

本来は食べられないものを苦労して食品に仕上げるのは、日本の食文化ではないですか? 

致死性が高いフグの卵巣をぬか漬けにしたという珍味をお土産でいただいたことがありますが、美味しいわけでもないので持て余したことがあります。


日本では定着していた!

誰か、私の友達のようにナイーブな人が、パリで聞いたといってブログにでも書いていたのだろう、と思いました。

ところが、「マロニエの実を使ってマロングラッセを作っていた」をキーワードにして検索すると、たくさんヒットするのでした。今では消えているのですが、かってはWikipediaにそう書いてあったようです。

同じ文章を使っていると感じるものには、次のようなものがありました。これをコピーしてキーワード検索をすると、たくさんヒットします。
  • かつてマロニエの実を使ってマロングラッセを作っていたが、後にクリの実で代用するようになった。

  • マロングラッセに使うマロニエの実をクリで代用したことから、 クリのこともマロンと呼ぶようになった。

  • フランス語のマロン=marronは元来このマロニエの実に由来するが、食用においてはヨーロッパグリの方が適していたことから後者を指すのが一般的になった。


そういうのは奇妙だと思うのは私だけではなくて、間違っていると指摘なさっていらっしゃる方がありました:
マロングラッセはかつて本当にセイヨウトチノキ(マロニエ)の実が使用されていたのか

この記事を読んで分かったのですが、「平凡社 世界大百科事典」の「セイヨウトチノキ」のところに、こう記載されているのだそうです:
  • マロニエという名称はマロン(クリ)に由来し、マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。
百科事典に書いてあれば、信じますよね。

まして、先日に書いたように(辞書が頼りにできないと困る...)、仏和辞典のシャテーニュ(栗の実)のところには、「ふつうは食用にしない」と書いてあるのですから、裏付けられてしまうではないですか?

Yahoo!知恵袋には、「本物のマロングラッセを食べてみたい」というのまで入っていました。本物のマロングラッセはマロニエの実で作ったものだと信じていらして、それを売っている店を教えて欲しいというのです。

マロングラッセは栗の実のマロンで作るのだと回答していらっしゃる方があったのですが、ベストアンサーには選ばれてはいませんでした。ちょっと怖いではないですか? 質問された方が諦めきれなくて、ご自分でレシピを探して、セイヨウトチノキの実でマロングラッセを作って食べてしまったら危ないですよ。

毒性を利用するのか、マロニエの実から薬は作られるそうですが、人によっては食べたらかなり危険なことにもなるそうです。

フランスの情報も探してみましたが、マロニエの実でマロングラッセを作っていたというのは1つも見つかりませんでした。冗談で言いたくなる人はいそうですが、それさえもない。そんなことを書いて真に受けた人がいたら、被害者から告訴されることだってあり得るので避けるのではないでしょうか?

ここのところ、栗とマロニエの実のマロンについて書きながらフランス情報をたくさん読んでいますが、マロニエの実は有毒だから、栗のマロンと間違えないようにと、必ずと言って良いほど強調していました。


マロニエはヨーロッパに昔からあったわけではなく、それが入る前から、どこの国でもしていたように、フランスでも栗を食べていました。マロニエの実を食べる必要はなかったと思うのです。

マロニエと呼ぶことにした樹木がフランスにが入ったとき、すでにマロングラッセなるお菓子が存在していたのだとしたら、昔はマロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは成り立たないことになります。

また、栗をマロンと呼ぶことが、マロニエが入る前からあったら、マロングラッセを栗で作るようになったから栗をマロンと呼ぶようになったわけではないのは立証できます。

それを調べたので書こうとしたのですが、前置きが長くなってしまったので別の記事にします。


少し寄り道をした続き:
マロングラッセを作るのには20日間もかかる


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!
今回は、その7でした。




ブログ内リンク:
★ 目次: フランス人のジョークについて書いた記事
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
検証:世界で最も「情報民度」が低いのが日本人である!
☆ 国立健康・栄養研究所: セイヨウトチノキ(マロニエ) - 「健康食品」の安全性・有効性情報
Centre Antipoison Animal et Environnemental de l'Ouest: Le marronnier


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カテゴリー: 日仏の比較 | Comment (4) | Top
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2016/11/15
アンティークを集めるのを夫婦で趣味にしている友人がいるのですが、家に遊びに行くと博物館のよう。ありったけは飾らないで、戸棚の中に入れているものもたくさんある。

それで眺めていると、色々なものをくれてしまうのです。


昔の洗面台

つい最近も、色々いただいています。

例えば、水道がなかった時代のフランスで使っていた陶器の洗面セット。


⇒ 画像をクリックすると、一部の拡大写真が出ます。

こういうのを何と呼ぶのかと調べたら、nécessaire de toilette、service de toiletteというようです。水差しはbroc。その下に置いた洗面器はcuvette。

左に置いたものは髭剃り用の道具だ、と言われました。

家の中に水道があるようになってからは必要がなくなったわけですが、飾りにしているのはよく見かけます。



ネットオークションでも色々なのを売っていました:
ebayで検索

いただいたセットは寝室の暖炉の上に置きましたが、これを置く洗面台のようなものもあったのですよね:
家具の画像を検索


この友人夫妻が好きなのは、ジアンの陶器。ジアン焼きの食器をたくさんいただいたときのことはブログで書いていました:


ジアン焼きのテーブルウェアをプレゼントされて... 2012/10/27

いただいてから何年もたっていますが、これを使って食事したことは一度もなかった...。食器洗い機には入れない方が良いとのことなので、割ってしまいそうで怖いのですもの。


コレクターは、手に入れる段階が楽しいのかな?...

コレクションが趣味の友人夫妻は、何でもくれてしまう。何か見せてもらったときには褒めたりしないように気をつけています。でも、おしゃべりの中で私が好きなもの、必要なものを察して、お土産に持ってきてくれてしまう。

彼らが食事に来たときに、フォークとナイフを取り換えようとしたら数が足りなかったことがあったら、その次に食事に来たときには銀メッキのカトラリーのセットを持って来てくれてしまった。その他、花瓶、籐で編んだカゴを数個、等々。

余りにももらってしまうと置き場所にも困る。断ると遠慮しているのかと思われて押し付けられちゃう。彼らの家に行ったときには持ち帰らなければ良いのだけれど、持ってきてくれてしまったときには困るのですよね...。

私が好きだと言うと、なんでもくれちゃうわけですが、他の友人にもプレゼントしています。博物館にコレクションを寄付したこともあるのだそう。

コレクションが趣味だったら、持っていることが楽しいのだろうと思うのだけれど、惜しげなくあげてしまうという感覚が不思議でなりません。


私の方も何かプレゼントしたいと思うわけなのですが、日本から持ってきた年代ものといったら、幾つもないのです。少し前、彼らに喜ばれそうなものがあったのを思い出してプレゼントしたものについて続きで書きます。

この話しはだいぶ前に書き始めていたのですが、「下書き」に入れて放置していたままで日がたってしまいました。ブログの更新をしばらくしていなかったのでご心配してくださった方、どうもありがとうございます。ブログを書いていると癖になって頻繁に書いてしまうのですが、少し休んでいると書かないのが癖になってしまう...。

続き:
簪(かんざし)の思い出

ブログ内リンク:
★ 目次: アンティーク、蚤の市などについて書いた記事
★ 目次: プレゼントや土産物に関して書いた記事

外部リンク:
☆ Wikipédia: Service de toilette
☆ Wikipédia: Meuble de toilette
☆ Wikipédia: Nécessaire de voyage
Gien France  ジアン日本公式サイト
ジアンを楽天市場で検索


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カテゴリー: フランス人 | Comment (6) | Top
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2016/09/20
フランス語を勉強するために行って初めて出会ったのは、ブルゴーニュで最も大きい町ディジョン。家族同然に親しくなった家に休みの度に通っていたのですが、全く変化が見えない美しい古都でした。大騒ぎされたのは、目抜き通りにあったケーキ屋さんがマクドナルドになった程度。「十年一日のごとし」という表現はこういうケースで使うのだろうと思っていました。

ところが、21世紀に新しい市長さんになってからは、目覚ましい変化! 

Panoramique palais duc de Bourgogne

このブルゴーニュ公国時代の宮殿の前にある空間は醜い駐車場だったのに、すっきりした広場になりました。歩行者天国もたくさんでき、日が落ちたら死んだような静けさの町だったのに活気づいてきました。

同じような予算を使っていながら、こうも変われるものなのかと驚きました。首都パリも同様に、良い発展をしたと感じています。私が日本で生まれ育ったのは東京都ですが、都知事が変わったら東京が変わったというのは一度も味わったことはありません。


フランスの珍風景?

前回にディジョンに行った日も、町の一角で工事が行われていました。

珍しい光景のサンプルだと思って撮影したのが、こちら ↓



久しくクイズを出していなかったので、「私は何に驚いたのでしょうか?」というクイズにしようかと思ったのですが、止めました。真面目に考えてしまっていただいたら申し訳ないので!


何が珍しいのか、ご想像がつきますでしょうか?

[続きを読む  Lire la suite...]


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2016/09/12
前回の日記(ツバメの出発も近い?)の最後に書いた病院に行った友人は、高血圧と血管に詰まっている場所があるという程度で、薬だけで乗り越えられると判断され、翌日にはもう戻ってきました。フランス人の友情は強いものがあるので、友人仲間では大騒ぎしていたのですけど。

大したことはないと言われて退院したのですが、やはり具合は悪そう。病気だと言われると、病人の気分になるものだと思う。


病院の食事が酷かったのですって

1泊だけで退院した友人は、その夜に予定されていた夕食会に参加し、主人公になった感じで病院生活がどうだったかを話していました。

話すことの大半は、食事が酷かった、という報告! 何が出たかを詳細に語っていました。

塩味が全くなかったので、塩がないとどんなに不味いかを認識した、なんて言っていました。心臓の欠陥がある人に出したのだから仕方ないでしょうに。

退院する前の昼食のメニューを見せてもらいました。



7行になっていますけれど、食欲がそそられるメニューではないですね...。

前菜らしきものは、キュウリの生クリームあえ。キュウリは消化できないから食べないというフランス人が多いのに、病院で出しちゃうの?

フランスの大きなキュウリは生クリームであえると食べられると思ってブログに書いていましたけど、これだけで前菜だったら余りにも寂しいですよ~:
フランスのキュウリは生クリームで食べるのが一番? 2013/08/23


デザートとしてフレッシュ・フルーツなんて書いてあったけど、小さなバナナ1本だったのだ! と怒っている。確かに、バナナでデザートというのは余りにもお粗末。

最後に「パン」と書いてあるのが面白いと思いました。日本に来たフランス人とフレンチレストランに入ったとき、メニューにパンと書いてあるので彼は大笑いしていたのです。でも、フランスの病院でもパンと書いてしまっているではないですか!


私がレストランで出される料理の写真を撮っているので、真似してスマホで写真を撮ったと言って、その夕食を見せてくれました。



確かに、これは酷くお粗末な食事です! 飛行機のエコノミークラスの食事より味気ない。こんな食事がフランスで出るとは信じられないけど、証拠写真なのだから信じるしかない!

メイン料理は、「牛肉のブドウ栽培者風煮込み」というようなしゃれた名前が付いていますが、恐ろしく不味い挽肉だったのだそう。赤ワインで煮たから「ブドウ栽培者風」としたのでしょうね。肉が加熱し過ぎていたので最悪だったと言うのに対して、「最近の病院では肉をレアに出せないらしいよ」と言う人がいました。

チーズは極端にい小さかったというのは、写真を見て納得。バナナの下にある四角いパッケージです。

ニンニクとハーブ入りというチーズは、下の商品ですね ↓

日本の店で売っているフランス産チーズを見ると、フランスでは流通していないと思われる小さなサイズのがあるので面白がっていたのですが、外国向けだけに小さいサイズを作っていたわけではないと分かりました。


入院した日は、検査のために朝から何も食べていなかったのでお腹はペコペコ。食前酒やワインを要求したけれど、美人の看護婦さんたちはジョークに笑っているだけで、水さえも飲ませてもらえなかったのだそう。

やっと食べ物にありつけたのは夜。ところが、そのとき出てきた食事は量も少なくて哀れだったので、写真を撮る気などにはならなかったとのこと。夕食と昼食は同じパスタだったので、残り物を使ったのではないか、ジャガイモを何で使わないのだ! などと言って怒っている。もちろん、朝食も哀れなものだったそう。

1泊だけで帰って良いと判断された友人は、健康保険で支払われる救急車兼タクシーをチャーターして帰宅したのですが、車に乗ったら、運転手さんから真っ先に、こう挨拶されたのだそう。

Vous avez bien mangé ?

食べ物はおいしかったですか? お腹がいっぱいになったですか? という感じの質問です。

こう言われて、行ってしまった病院は、地元の医療関係者の中では不味い食事を出す病院だという定評があるのだろう、と思ったそうです。

長く入院していたらどうなったのだろう? 食事制限をする病気だから、友人仲間で食べ物の差し入れをしてあげるわけにもいかないでしょうし。


フランスでも、病院食は不味いと決まっている?

1泊の病院生活をした友人は、1日3食の食事代が18ユーロだと話していました。国民年金保険の他に相互扶助保険に入っていれば自己負担はないけれど、入っていなかったら食事代は自分で払う。

こんな料理は3ユーロの価値しかないと言ったのですが、深夜まで続いた食事会で病院で食べたものの話しに戻ったときには、「1ユーロの価値しかない!」になっていました。いくらお粗末な食事でも原価が120円なんてあり得ないけれど、食べた人にしてみたら、その価値しかないということなのでしょうね。

私はフランスの病院に6週間滞在した経験があるのですが、見せられた写真のような料理を毎日出されたら泣きだしてしまったと思う。

私がフランスで入院したときは食事に満足したので、病気になるならフランスで、と思っていると話しました。でも、夕食会に参加したフランス人たちの中で入院経験がある人たちは、口をそろえて病院の食事は不味いのだと言っていました。

心臓や内臓の病気で入った人は食事制限があるだろうけど、私の場合は骨折だったからなと思ったのですが、そうでもないらしい。つい最近、膨らんでしまった足の手術で入院した友人も、食事がまずかったと言うのでした。

少し前にいただいたコメントで、フランスの病院食は不味いと言われたので、そんなことはないですよと答えてしまった手前、気になる。

私が骨折してフランスの病院に入ったのは、もう20年くらい前のことです。日本から年に2回くらい行くという時代だったので、私はフランス料理にはうるさくなかったのかも知れない...。でも、友人が見せた写真のような食事ではなかったことは確かです。

病院側が経費節減で質を落とすようになったのではないか、と私に言う人がいました。そうかな?... 20年前と比べると、美味しい家庭料理を作る人も減ったし、自分では作らない料理を出すレストランも多くなったので、フランスの食の乱れの現れではないかとも私は思うのですけど。


私がフランスの病院に入院したときに食べたもの

寝たきりの状態でいた整形外科ではプレートに乗って出てきたので味気ない食事でしたが、チーズが美味しかったのを思い出します。友人の病院食では、小さなパッケージに入ったチーズでしたが、私が入院したときに、こんなのが出たことはなかったはず。少なくとも、私はチーズとパンとサラダを食べれば十分と思うほどチーズは大きかったような気がします。

ブルゴーニュの公立病院の整形外科から出て、小さな私立リハビリ専門病院に入ったときの食事は絶品でした。

車椅子で食堂に降りると、ニンニクの良い香りがしてきたのが記憶に残っているので、大きな病院にいたときには、レストランのような食事はできていなかったのだろうと思います。初めての食事のメイン料理は、ウサギ肉のハンター風だったのも覚えています。木々が茂る庭に面した食堂で食事するようになったので、バカンス気分さえ味わえました。

見舞客も予約しておけば食堂で患者と一緒に食事できたので、頻繁に来る友人もいました。美味しいし、普通のレストランで食べるよりずっと安いからです。かなり食べ物にうるさい人だったのに食べに来ていたということは、病院のシェフが作る料理の質は高かったのだろうと思う。

フランスの場合、市立病院が公立病院より高いということはないようなのです。この時はクレジットカードに付帯していた海外旅行者保険で入院費がカバーされたのですが、保険会社の担当者は、そんなに安い病院だと心配だから、パリの有名な病院に移るようにと勧めてくれました。でも、私の場合は高度な医療が必要なわけではなく、骨が固まるのを待てば良いだけだったので、友人たちが気軽に見舞いに来てくれるブルゴーニュにいたかったのでした。


毎週配られれていた食事のメニューの印刷物を1週間分だけ記念にとっていたので、それを眺めてみました。

前菜、メイン、チーズ、デザートがあり、パンなんて書いてありません。料理にはバラエティがあるし、チーズも毎回違うものが出ていました。

公立病院でも市立病院でも、前菜とメインは、たいてい2つの選択肢から選ぶようになっていました。それで、週の始まりだったか終わりだったかに、1週間分の料理の選択を聞きに来る係りの人が病室にやって来ていました。これが楽しい。1泊入院した友人は、何も聞いてくれなかったと言っていました。緊急で入ったのだから、仕方ないとも思う。

記念に残していたメニューの印刷物を見たら、メイン料理としては魅力的な料理の名前が並んでいたので、今の私が選ぶメイン料理をピックアップしておきます。デジカメを使う前だったので、病院の料理などの写真は撮っていなかったのが残念。

メイン料理イメージ写真
Poulet Gaston Gérard
(鶏肉のガストン・ジェラール風)

付け合わせのチョイスは、
グラタン・ドーフィノワか、カリフラワー。

このメニューの他の料理(夕食):
・前菜: セロリかニンジンのサラダ
・チーズ: ブルサン
・デザート: フラン・パティシエ


ブルゴーニュの郷土料理。ディジョン名物のマスタードを使った鶏肉料理で、ちょっとしたご馳走です。

日本語情報:
ディジョンの代表的料理のひとつ「ガストン・ジェラール」とは?
鶏のクリームソース:ブルゴーニュ風

内部リンク:
名前がない私の得意料理: ジャガイモのグラタン 2013/08/13
Poulet Gaston Gérard
Langue de boeuf sauce piquante Cordon Bleu
(ピカント・ソースの牛タン コルドン・ブルー)

付け合わせのチョイスは、
パスタか、ラタトゥイユ

このメニューの他の料理(夕食):
・前菜: シェフのポタージュ
・チーズ: コンテ
・デザート: 赤ワイン煮の洋梨

ブログ内リンク:
フランスの代表的な牛タン料理はピカント・ソース 2010/11/19
ディジョンらしいデザート 2008/03/31‎


Rosbeef
(ローストビーフ)


付け合わせは、
ポム・ノワゼット(ジャガイモ)。

このメニューの他の料理(昼食):
・前菜: ビーツのサラダ、卵黄のミモザ
・チーズ:シャヴルー(山羊チーズ)
・デザート: チョコレートムース
Roast beef
Jambon braisé
(ジャンボン・ブレゼ  - 豚肉のハム

付け合わせは、
盛り合わせサラダ。

このメニューの他の料理(夕食):
・前菜: リーキのスープ
・ヨーグルト
・デザート: シロップ漬けのミラベル

ジャンボン・ブレゼが美味しかったことを書いた記事:
まともに雨が降らない今年の異常気象 2014/07/05

Pintade rôtie
(ほろほろ鳥のロースト)

付け合わせは、
サヤインゲン。

このメニューの他の料理(昼食):
・前菜: 小エビ入りアボガド
・チーズ盛り合わせ
・デザート: ラズベリーのシャルロット


小エビ入りアボガドの画像

ラズベリーのシャルロットの画像

改めて眺めてみると、そんなに感動する料理ではない。やはり病人食であって、美味しいものを食べたいと思ってレストランの前でお品書きを眺めたら、入るのを躊躇するかな?...

この病院のサイトで確認したら、見舞客が支払う食事代は1食10ユーロとなっていました。千円ちょっと。やっぱり安い。その値段で食べさせてくれるなら文句は言わないと思う。


この回復期で入った病院の食事で唯一の不満は、ワインが付いてこなかったこと。

運が悪いことに、私が入院した直前に飲み過ぎでトラブルをおこした患者がいたので、アルコール度が低いシードル(りんご酒)しか出さないことになったのだと説明されました。

曲芸のように車椅子を操っている両足を失った元気で陽気な若者たちがいましたけれど、落ち込む人もいるでしょうからアルコール中毒になる人がいても不思議はない...。

食事で出てきたのは、とても美味しいシードルなのでたくさん飲みましたけれど、やっぱり物足りない。おかげで、それからはシードルに恨みを持ってしまった...。


ブルゴーニュの巨大な公立病院の整形外科に入っていたときは、寝たきり状態から回復しても、自分の病室から歩いて出られない状態でした。それで、他の患者さんたちとのコンタクトは全くないので、病院生活のサバイバル情報交換は全くできませんでした。

ある日、やたらにボリュームがある料理がのったプレートが届いたので不思議に思ったら、「Petit(プチ)」と書いた紙が付いている。「小さい」という意味なので、??? よく見ると、プチの前にムッシューとある。後で分かったのですが、ムッシュー・プチは隣りの部屋にいる患者で、彼は魚料理か肉料理かというようなチョイスで両方とも注文していたらしいのでした。そんなこともできるの?! と驚いたのでした。

しかも、プレートには機内食で出るようなワインの小さなボトルが付いていたので、ワインを注文すればもらえるのだと分かったのでした。私は見舞客が持ってきてくれるワインが病室のクロークにストックされていたので必要ないのだけれど、フランスの公立病院が出すワインはどんなのか知りたくて注文してみました。

飛行機のエコノミークラスで出されるようなワインとは全く違って、充分に満足して飲めるブルゴーニュワインなので、それを知ってからは毎回ワインを付けてもらうことにしました。

その後のフランスはアルコール飲料の飲み過ぎを制御するようになったので、今の病院ではワインは出さないことになっているのかもしれないですね...。でも、患者が病院を出て車を運転するわけではないから、やはり出しているのかな?... でも、上で紹介した友人の場合は、水しか出なかったと言っていました。


私が始めに入った巨大な公立病院でどのように食事を作っているか見せる動画がありました。


Les repas à l'hôpital - Les cuisines centrales du CHU de Dijon

病院ではフレッシュな食材を使うことを心がけていると話していて、見た限りでは、私が入っていた時代より質を落としているようには感じなかったのですが、どうなのでしょう?

この病院の事務部門で管理職だった友人が話していたのですが、彼の病院の大きな問題は、他の医療機関では引き受けない人たち(国民保険に加入していないから医療費を支払えない人たち)の受け皿になってしまっていることなのだそう。つまり、医療費を払えなくても見捨てられはしない体制になっているのがフランスらしい。

そういう福祉施設的な公立病院で私は始めの3週間で滞在をしたわけなのですが、スタッフの数も多くて、最高水準の医療を受けていると感じました。食事の方も、いまだに心くばりがあるように思えたのですけど...。


日本では、どうなのかな?...

丈夫なだけがとりえの私なので、日本では入院したことがありません。でも、知人のお見舞いに行ったときか何かで、日本の病院の食事は味気ないという印象を持っています。

Wikipediaの「病院食」の項目には、こんな写真が入っていました。



日本の病院で出される食事として私がイメージしているのは、こういう風に、健康には良いのでしょうけれど、なんとも食欲が減退してしまうような料理です。

日本でも、多額の費用を払ったら、懐石料理だろうが、フレンチだろうが、食欲をそそる料理を出してくれる病院はあるのでしょうけれど、貧しい私には無縁です。


フランスの病院はスタッフが親切で、居心地が良い

友人が1泊したのは、ブルゴーニュ地方の中で最大規模の町の中にある病院とはいえ、緑が多くて良い環境だったと言っていました。サニタリー付きの個室。なんだかんだ検査されたのが大変だったそうですけど。

病室からの眺めです ↓



食事会に集まった人たちは病院の食事は不味いものだと言っていたのですが、医師も看護婦さんたちも親切で感じが良かったというのでも意見が一致していました。

本当に、私もそれは痛感しました。「みんな穏やかで優しくて...」と言って、「フランス人じゃないみたいに」と付け加えたら、友人たちが苦笑していた!

骨折で猛烈な痛みを味わったので、同じ痛さは感じない死に方をしたいと思うようになりましたが、6週間の入院体験は楽しい思い出となっています。

ブログ外リンク:
おいしい入院食が食べられる病院(東京都限定)病院食
あなたも入院したくなる 世界の豪華な病院食をウォッチング!
外国人「世界14ヵ国17種類の『病院食』のメニューを比較してみた」
ドッグフードと見間違ったという声も・・・イギリスの悲惨な病院食

内部リンク:
医師の報酬では、麻酔科医がトップ 2012/11/24


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2016/08/17
たまたま見たテレビのドキュメンタリー番組のタイトルが不思議でした。

「世界で最も幸せな人」と題されていたのです。

私が人から「幸せね」と言われたら、バカにされたと思います。人から助らることが多いので運が良いとは感じますが、自分が幸福な星のもとに生まれたとは全く思っていません。この世に生まれて良かったとか、まして生んでくれた親に感謝するなんてことを思ったことはありません。

そんな捻くれた思いは抱かずに、自分が幸せだと感じている人はいるとは思います。でも、地球上に70誰人もいる中で、誰が最も幸せかなんて決められるものではないのですから、奇妙ではないですか?


世界で最も幸せな人だと言われるマチウ・リカールとは?

ドキュメンタリーで取材されていたのは、チベット仏教僧となったフランス人、Matthieu Ricard(マチウ・リカール)でした。

その番組のビデオは、インターネットでも見ることができます:
Matthieu Ricard, l’homme le plus heureux du monde 14/08/2016

Matthieu Ricard 2008彼は1946年生まれなので、今年70歳。

父親は哲学者のJean-François Revel(ジャン=フランソワ・ルヴェル)で、母親は画家のYahne Le Toumelin。

パストゥール研究所のフランソワ・ジャコブ教授(ノーベル医学賞受賞者)の指導のもとに分子生物学で博士号を取得後、チベット語を学び、仏教修行の道に入ったのだそう。

番組に映し出されていた彼は、元気で、本当に幸せそう。

笑顔が印象的でした。地震の被災地を訪れた場面でも、彼は笑顔でいるのでした。

でも、偽善的な印象は全く与えません。

日本で田舎に行けば、同じような笑顔を見せる人はたくさんいます。でも、こういう、くったくのない笑顔をするフランス人は非常に稀なのです! フランス人たちは文句を言ってばかりいるので、おしゃべりをしていてウンザリすることが多いのです。

番組を見ていて、彼は幸せなんだろうなと思いました。

僧侶となって、本もたくさん出版し、そういうところにいるのを利用して写真家でもあり、マスコミからも引っ張りだこ。つまり、選んだ道で、ちゃんと生計の道もたてているわけで、好きなことをしながらの生き方を実践できるわけです。映像を見ていて、非常に頭脳明晰な方なのだろうなと感じました。

マチウ・リカールが「世界一幸せな人」と言われるかというと、彼がフランス人だから、フランスでそう言っているだけなのだろうと思ったのですが、そうではなかった。

彼の脳波を測定したら、幸せや肯定的情緒を表すとして知られている左前頭葉が非常に活発だった。他のチベットの修道僧たちも似たような数値だったけれど、マチウ・リカールが最初の実験対象であったために世界初で最も幸せな人と公認されたようです。


幸福学?

マチウ・リカールは、日本でもかなり知られている方のようでした。著書の日本語訳が何冊も出ているのでした。

マチウ・リカールの著書を検索


マチウ・リカールは「幸福学の研究者」だという紹介もありました。

そんな学問があるとは知らなかった。不穏な空気が広がっている21世紀なので、幸福だと感じようとするのが最近は流行っているのでしょうか?


「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室


私は「幸せだ」と感じるのは錯覚を持つことだと思っているので、どうやったら幸せになるかなんて勉強したいとは思いませんけど...。

マチウ・リカール氏が英語でした講演に、日本語字幕が入っている動画も見つかりました:
マチュー リシャール 幸せの習慣


同じ講演を文字での解説を入れているページもあります ↓


幸福とは何かについてマチュー・リシャール氏が語る


こういうのを先に見ていたら、彼がどんな生活をしているかを紹介するドキュメンタリーを見る気にはならなかったと思います。

それにしても、彼は流暢に英語を話しますね。と言えるほど私には英語能力がありませんが、少なくともフランス人が英語をしゃべっていると分かるフランス訛りが全く感じられません。

例えば、世界的に活躍している経済学者のトマ・ピケティの英語はフランス人が喋っているというのが丸だしで可愛いのですけど、それとは全然違う。

ところで、上にリンクした日本語字幕入りの講演を紹介する記事では、「マチュー・リシャール」という名前の表記になっていました。インターネットで検索すると、「マチウ・リカール」と「マチュー・リシャール」の両方でヒットしました。

Matthieu Ricardの「Matthieu」というファーストネームをカタカナ表記するなら、「マチウ」よりは「「マチュー」の方が近いと私は思います。

でも、 Ricardを「リシャール」にしたのはなぜなのかな?

フランス人の名前として「リシャール」は存在していて、「Richard」と綴ります。

Ricardはフランスの有名な酒造メーカーの名前でもあり、こちらは日本でもフランス語の発音通りに「リール」となっています。

哲学者として知られているマチウ・リカールの父親の苗字はルヴェルなのですが、もともとの名前はリカールだったのだそう。

お酒のリカールと言えばパスティス。パスティスといえばマルセイユなのですが、リカール氏の父親はマルセイユ生まれでした。そんなことで面白がってはいけない!

「リカール」を「リシャール」にしたのには何か理由があったのかな?...

でも、そんなことは大きな問題ではないと思う。理由を探してみる気にはならないので放置。

気になったのは、こちらです。


フランス人にとっての仏教とはチベット仏教なのだろうか?

ダライ・ラマ14世(2012年10月)マチウ・リカールはダライ・ラマ14世の通訳者なのだそう。

ダライ・ラマはフランスではよく知られた人で、彼はパリの名誉市民にもなっています。

フランス人たちには判官びいきの傾向があるので、中国から弾圧されているチベットの肩を持つのかなとも思いました。

でも、ダライ・ラマのフランスでの人気は、マチウ・リカールによるところが大きいのかも知れない。

ダライ・ラマ14世のお顔は、私には人間くさ過ぎるように見えてしまいます。なんとなく麻原彰晃を思い出させるとまではいわないけれど。

右の写真をWikipediaからお借りしながら記事を読んだら、嘘か本当かは知らないけれど、この二人には関係があるという記述がありました。なんとなく、ありえそうな気もする...。

ー ダライ・ラマ14世は、オウム真理教から布施の名目で1億円にのぼる巨額の寄付金を受領しており、1989年にオウム真理教が東京都で宗教法人格を取得した際には、ダライ・ラマ14世は東京都に推薦状を提出してオウム真理教を支援した。


それはともかく、フランスには仏教徒がかなりいるのだそうです。

フランス仏教徒連合(Union bouddhiste de France)の発表では、フランスにいる仏教徒の数は約80万人(1986年)。フランスの人口は日本の半分くらいなので、この数からいくと、人口の1%が仏教徒というので意外でした。私の知人の中に仏教徒は一人もいないので。

人口の1%といえば、フランスのユダヤ教信者の割合になります。ユダヤ教の方は、パリではよく見かけるし、テロで狙われたりするニュースを聞くので、かなり目立つのですけれど。

仏教に好感を持っているフランス人は500万人くらいいる、と言った社会学区者もあったそうです。

これはあり得るかな。Zenはフランス語になっていて、禅に好意をもっているフランス人はとても多いと感じますので。Taisen Deshimaru

フランスに禅を広めたのは曹洞宗の僧侶Taisen Deshimaru(弟子丸泰仙 1914~1982年)で、彼は1967年に渡仏して布教していました。


フランス人にとっての「禅」は、宗教というより、精神のあり方としてとらえているのではないかという気がします。フランス語のZenは、座禅を離れて、「冷静」という感じの意味でも使われていますので。

禅は日本の文化として捉えられ、仏教といえば、フランス人にはチベット仏教のイメージが大きいのではないかな?...

ブルゴーニュ南部にも、仏教の施設があります。近くを通ったときに友達が立ち寄ろうと言いました。

私を喜ばせようと思って連れていってくれたわけですが、懐かしくなるような気にはなりませんでした。むしろ、違和感でいっぱい...。

私が日本で見慣れているお寺とは全く違う。ともかく、カラフルなのです!


Temple des mille Bouddhas / Dashang Kagyu Ling

Googleマップで見ると、こちら

ここには2回立ち寄っていますが、中に入ったことはありません。名前が「千の仏陀の寺院」となっているので、そんなにたくさん仏様の像があるということなのかな?...

このお寺の動画があったので入れておきます。


Dashang Kagyu Ling -Temple des Mille Bouddhas - Plaige La Boulaye 71 - GMP


ネパールに行ったときの仏教建築物は、この雰囲気だったかな?... でも、こんなにケバケバしい色は使っていなかったように記憶しているのですけど。


不思議な魅力があったネパール

マチウ・リカール氏は、ネパールにある修道院で生活しているとのこと。そこで生活していると言っても、マスコミに頻繁に登場するくらいですから、頻繁にフランスには帰ってきているだろうし、世界中を旅行しているのではないかと思います。

ネパールは日本からの団体旅行で1週間ほど滞在しただけですが、不思議な魅力を感じました。ヒマラヤ山脈が、ヨーロッパのアルプス山脈にはない神々しさを感じたのです。

それに、西洋とアジアの文化の接点になっているような雰囲気も感じられるので興味深い。

リカール僧侶が瞑想しながら心の平安が得られるというのも、ヒッピーが集まったのも理解できる気がします。

発展途上国に行くと、金持ちは先進国より裕福な生活をしているのが目についてしまうのですが、ネパールは誰もが貧しいという感じで、貧富の差が目立たないことにも好感を持ちました。

王様さえお金持ちではないように感じて、平和な国というイメージを持ったのでした。旅行から何年もたったとき、ネパールで王族の殺人事件があったとニュースで聞き、短い旅行しかしなかった私は甘ちょろい感想を持ったのだろうなと思いました。


ネパールで私の目に付いたのは、洗濯物を干すようにあちちこちにあった旗でした。これは祈祷旗で、タルチョーと呼ぶのですね。

 

フランスの友達の娘さん夫婦がヒマラヤに行ったとき、旗をお土産に買ってきて家に飾っていました。



娘さんは仏教が気に入ったそうで、文字が特に気に入ったと言う。日本から筆で書いた文字がある額でも買ってきてプレゼンントしてあげようかと思ったのですが、日本的で地味な白黒の書画をイメージしているのではないような気がしたので止めました。



ブログ内リンク:
★ 目次: 文学者・哲学者、映画・テレビ番組
★シリーズ日記: フランス人は簡単には微笑まない / 2005年
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
☆ Wikipédia: Matthieu Ricard
Matthieu Ricard : halte au “zoocide” !
慈悲の瞑想の神経科学15~慈悲の修行を積めば自分で悩まず相手の苦に対処できる
Matthieu Ricard: How to let altruism be your guide マチウ・リカール: 愛他性に導かれる生き方
☆ NAVER まとめ: 幸福学のまとめ
☆ Wikipédia: Bouddhisme en France
Trouver un centre bouddhiste en France.
チベット仏教の歴史と特色
行く前にこれだけは知っておきたい「チベット仏教」
色と思想について
フランス人がzenというときの意味


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2016/08/06
この冬に、たまたま通りかかった教会で珍しいものを見ていました。教会そのものは、よく田舎にある建物ですが、文句のつけようはない美しさ。




教会でミサをあげるときの料金

目に止まったのは、入り口にあった張り紙です。



めったに出会わないのですが、この教会ではミサのお値段が書いてあったのです。




ミサ:    17ユーロ   (約   2,000円)
結婚ミサ: 140ユーロ   (約 16,000円)
葬儀ミサ:  140ユーロ
※ 1ユーロ=115円で計算

140ユーロの内訳は、62ユーロが小教区へ、61ユーロが司教区へ、17ユーロがミサへの奉献。つまり、この教会で結婚式や葬儀のミサをした場合、教会そのものに入るのは78ユーロ(9,000円)しかないということですか。普通のミサと同じに、賽銭カゴのようなものにお金を入れる習慣はありますけれど。

でも、市町村にあるéglise(教会)は市町村が維持費を負担していますので(大聖堂cathédraleは国の管轄)、建物の修復費用や電気代などは教会がある市町村の住民税で賄われますので、教会自体がお金を集めなくても存続できます。

結婚は役場であげてくれるのが正式な儀式なので、教会で結婚する人はそう多くはないように思います。でも葬儀の方は信者でなくても教会でするのが普通で、ミサをあげずに埋葬だけする人は非常に少ないと思います。

住民が少ない村では教会の維持のためのお金がかかるわけで、美しくない教会などは閉鎖してしまえば良いのだと言っていた友人もありました。彼の村では、敬虔な信者の人が村長になったときに教会に暖房装置をつけたので、暖房費がかなりかかるのだそう。最近は司祭も足りないし、信者も多くないので、小さな村々では回り持ちで日曜ミサをするのですが、暖房が入ってからは冬には頻繁にミサが行われるようになりました。近郊の人たちのために住民税を使われるのはたまらない、というわけ。

普通のフランス人の場合、葬儀でお世話になるのですから、村に教会が1つあるのは悪くない、と私は思います。何しろ、公共施設なので、墓地も日本のように法外な費用がかかるわけではないのですから。

でも、イスラム教とかユダヤ教の人たちは教会がある恩恵は何もないのに住民税が使われるわけですよね。不満に思わないのだろうか? フランスは政教分離の国ですが、こういうところを見ると、カトリックの国ではないかと言いたくなる。もっとも、宗教が違っても墓地を利用したいと申し出たら、拒否されることはないはずですが。


ところで、以前にもミサの料金が書かれているのを教会で見かけたときにブログに記録していました:
教会でミサをあげてもらうお値段 2008/06/2

8年前のことでした。その間に15%くらい値上がりした、という感じ。円に換算すると、今は円高になっているのでで、かえって値下がりしていますね。


葬式にはお金がかかる?

フランス人たちは葬儀にはお金がかかると言います。そう言われると、私は日本はもっとずっと高いのだと答えたくなる。

少し前に近所に住んでいる親しい人の母親が亡くなったので、葬儀の費用について聞いていました。教会でのミサ、土葬の費用、花束、参列者にふるまうカクテルパーティーなど、全部の費用を含めて2,500ユーロという感じだったとのこと。兄弟で葬儀保険のようなものをかけていたので(毎月50ユーロくらい)、それで費用は全て賄われたので、葬儀での出費はゼロでした。墓地は、先に入っている父親の場所なので問題なし。


フランスでは平均どのくらい葬儀費用がかかっているかの統計がありました。
  • 火葬の場合: 地方で2,670~4,190ユーロ。パリ首都圏では2,340~6,270ユーロ
  • 土葬の場合: 地方で1,980~16,090ユーロ、パリ首都圏では4,950~7,530ユーロ

為替レートの変動がありますが、フランスと日本の物価を比較すると1ユーロ=130円と感じています。それで計算した場合、26万円から99万円ですね。

この費用には棺代も入っていますが、墓地や墓石の料金は含まれていません。墓地の委譲権を確保する料金は、期間と市町村によって差があります。最低限に2平方メートルのスペースを確保することが条件なのだそう。

例えば、人口5万人という中程度の規模の町ベルフォールの場合は、こうなっていました(2014年):
  • 30年の期限付き: 277.76ユーロ
  • 永久権:     3,785.28ユーロ

3万円か、44万円のチョイスというところですね。


パリには14カ所の墓地がありますが、飛びぬけて過密地域なので2㎡の墓地委譲権はもっとずっと高いのは当然かもしれない。ただし、200万円近くもするの?!  と驚く永久権を確保できる墓地は稀な存在なのだそうです。
  • 10年の期限付き:    785 ユーロ
  • 30年の期限付き: 2,663 ユーロ
  • 永久権:      14,682 ユーロ

地方なら永久権を確保して、パリなら30年の契約にしたとして、墓地の確保は50万円弱というところですね。高いといえば、高い?...

契約期限が切れると、役場から立ち退きを要求されます。それについて、以前にブログで書いていました:
クイズ解答: 画家ルノワールの墓地 2006/08/19


気取らない墓石が好き

もともと墓地は怖いので嫌いだったのですが、フランスでは教会を見学するのが趣味なの、お墓を歩き回るのには慣れました。教会の外観を見ようとしたら、墓地を歩くしかありませんから。たまには、教会の建物と墓地が分離しいるところもありますが。

大理石なのかどうか知りませんが、ピカピカの墓石が好きではありません。特に、立派なのを見せつけているような黒い石のが嫌い。

こういうのが好きだな、と思う墓石がありました。



ここはブルゴーニュ地方のコート・ドール県の北部。
森には侵食した石灰岩があるのですが、それを墓石にしていました。



社会人類学者クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss 1908~2009年)のお墓です。ここは彼が持っていた城がある、人口50人の静かなリニュロル村(Lignerolles)にある教会の墓地です。


墓地にある遺灰を撒くスペース

フランス人が葬儀にはお金がかかると話すときには、墓石が高いと言っていました。幾らくらいするのか調べてみたら、1,000~3,500ユーロという値段を目安にしている情報がありました。

今の為替レートだと、12万円から40万円。フランスと日本の物価の感覚で1ユーロ=130円として計算しても15~45万円。日本の場合は、墓石代の平均は142万円なのだそうです(東日本:152万円、西日本:132万円)。フランスの方がずっと安いですね。


フランスの場合は、火葬して墓地に遺灰を撒くだけという手もあります。墓地にJardin du souvenir (思い出の庭)というスペースがあるのです。この場合は、墓地の場所代は無料。

人口200人足らずの村にあった教会を見学したとき、墓地の一角にあった「思い出の庭」のスペースの写真を撮っていました ↓



味気ないといえば、味気ない。でも、無料で場所を提供していただければ満足ではないですか?

こういうスペースは最近になって目につくようになりました。上の写真は「思い出の庭」が珍しくて写真を撮ったもので、2010年に撮影していました。そのころから出来始めたのかなという気がします。

Wikipediaには「Jardin du souvenir」 の項目が出来ていなかったのですが、画像は幾つか入っていました。下は人口30万人の大都市ナントの墓地にある「思い出の庭」スペースなので、田舎の墓地で見るのよりずっと広いようです。

Nantes - Cimetière Parc - Jardin du souvenir

だいたいにおいてシンプルなスペースでしょうね。どんなのがあるかを知るために画像検索すると、こちら

私は墓石が嫌いなので、こういう埋葬の仕方が私には好ましいと思うのですが、日本だと無料というわけにはいかないのだろうな
と思って調べてみたら、日本では海に遺灰をまくというシステムがありました。

日にちは指定しないで、適当に海にばらまいてくださいという感じなら5万円程度なのだそう。遺族が船をチャーターしてやると25万円。そこまでやってくれなくて良いです。その予算があるなら、居酒屋さんで友人たちが集まる会を開いて、「フランスなんかに行ったりして、勝手なことをやっていたヤツだったよな...」とか話しながら楽しくやってもらいたい。


カトリック信者に火葬が認められたのは1963年

フランスでは、伝統的に土葬の国です。カトリックでは火葬が禁止されていましたが、1963年の第2バチカン公会議で、火葬は「復活」や「魂の不滅」などのカトリックの教義に違反しないと判断されて許可されたのだそう。

第2バチカン公会議という名前は、現在のフランスではラテン語でミサをあげないということを調べたときにも出てきていました。現代のカトリック教会では節目になる決まり事をつくった出来事だったのですね。

昔ながらにラテン語でミサが行われるパリの教会 2015/11/02

フランスの「生活条件調査研究センター(CREDOC)」のアンケート調査結果によると、1975年にはわずか1%だった火葬は年々増加して、1998年には15%、現在は26%となっていました。2030年には約半数の50%が火葬になると見込まれているとのこと。

フランスで現在4人に1人が火葬というのは信じられない。私がフランスで身近な人では火葬は例外的だと感じているのです。でも、パリでは3人に1人が火葬という高い比率なのだそう。地方部での火葬率は8%以下。パリ首都圏には、フランス人の2割くらいが集中して住んでいるので、全国平均にすればそうなるか...。

火葬がフランスで増加したのは、ローマ法王庁による解禁よりは、むしろ経済的な理由が大きいだろうと思います。火葬にすると3割から4割安上りだという記述もありました。そう言われると、田舎で火葬にするのは豊かでない人たちに多いとも感じます。

ブログ内リンク:
★ 目次: 宗教建築物に関する記事 » 墓地
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
Le budget à prévoir pour l’enterrement d’un proche
Mutac - Combien coûtent les obsèques
☆ Dossier Familial: Prévoir le coût des obsèques 
☆ Cimetières de France et d'ailleurs: LÉVI-STRAUSS Claude (1908-2009)
Qu’est-ce qu’un jardin du souvenir ?
Jardin du souvenir principe et coût du jardin du souvenir
Le jardin du souvenir un espace où disperser les cendres
☆ フランスニュースダイジェスト: フランスのお葬式&母国に眠るための豆知識
☆ AFP: カトリック国でも火葬が急増、フランスの法令では「骨つぼは暖炉の上へ」
☆ OVNI: フランスでも火葬が増えている。 2014/10/16
☆ All About: 死んだら遺骨は海にまいて……と言われたら
Mystère autour de Lévi-Strauss
アマゾン「お坊さん便」問題、お布施は寄付なのか対価なのか


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2016/06/18
最近、『Le Petit Poucet(おやゆびこぞう)』を思い出していました。

シャルル・ペロー(Charles Perrault)が17世紀末に出版した『Les Contes de ma mère l'Oye』に、眠れる森の美女や、赤ずきん、シンデレラの話しなどと一緒に入っている童話で、フランス人なら誰でも知っているはずの童話です。





ペローのLe Petit Poucetおやゆびこぞう)』のストーリー

『おやゆぎこぞう』の主人公は、Petit poucet(プチ・プーセ)と呼ばれている7歳男の子

poucetはpouce(親指)を縮めた単語で、プチ・プーセは年齢も体も小さな子どもにつけるあだ名のようです。それで、日本語の題名は「親指小僧」にしたのでしょうね。

プチ・プーセは7人兄弟の末っ子でした。お金がなくなった両親は、これ以上は子どもたちを養うことはできないと話し合い、彼らを森に捨てることにします。


« Tu vois bien que nous ne pouvons plus nourrir nos enfants. »
【Illustration de Gustave Doré de 1867】


子どもたちはオオカミも出る森に連れて行かれて置き去りにされます。

前の晩に親たちの話しを聞いていたプチ・プーセは、森に連れて行かれるときに白い小石をまいていたので、子どもたちは無事に家に帰ることができました。


« ...en marchant, il avait laissé tomber le long du chemin les petits cailloux blancs qu'il avait dans ses poches. »


プチ・プーセたちは、再び森に捨てられす。

このときもプチ・プーセは親から捨てられると分かっていたのですが、小石を拾えなかった。それで、パン屑を撒きながら歩いたので、小鳥に食べられてしまい、家に帰る道がわからない。

森の中に家があったので入りますが、そこはOgre(人食い鬼)の家だったのでした。しかし、プチ・プーセは人食い鬼から魔法のブーツを奪います。


Le Petit Poucet subtilisant les bottes de sept lieues à l'Ogre.

ひと足で7里を飛べるブーツを履いたプチ・プーセは、人食い鬼の家に行って嘘をつき、財宝を手に入れてしまう。それを持って家に戻り、その後の家族は幸せに過ごしたというハッピーエンド。



したたかな7歳の男の子のお話し。親に怖い森に連れていかれて置き去りにされる。1回目は親元に戻れたけれど、また捨てらる。子どもたちは見つけた家に逃げ込む...。


日本語訳を紹介しているサイトがありました:
☆ お話歳時記: おやゆびこぞう。


子ども向けのフランス語の漫画もインターネットには入っていました:


Le petit poucet - Conte de notre enfance


グリム童話のおやゆびこぞう

同じ話しは、ドイツのグリム兄弟も書いていました。

フランス版のように親に捨てられた話しではありません。最近に北海道で起きた子ども置き去り事件には全く類似点は見えませんでした。

グリム童話では、こういうストーリーなのだそうです。
  • 子供に恵まれない夫婦に男の子が生まれ、可愛がって育てる。
  • その子は親指ほどの大きさだったために、見世物小屋の主人が買いたいと言ってくる。その子は、すぐに戻ってくるのだから、お金儲けのために自分を売るように、と親に言う。
  • 子どもは売られたが、うまく逃げ出し、無事に親元に戻る。


『おやゆびこぞう』という同じ名前が付いているので、これがグリム童話のバージョンなのだろうと思ったのですが、グリム童話では『ヘンゼルとグレーテル』がプチ・プーセのお話しに酷似していました。

こちらでは兄弟は2人。お父さんは同じように木こり。貧しさのゆえに子どもを捨てることを提案したのは母親ですが、父親も協力しています。

森に置き去りにされると2人は知っていましたので、兄のヘンゼルはプチ・プーセと同じ対策をしています。1回目は小石を落として行ったので、無事に家に帰っていますが、2回目に捨てられたときはパン屑を落としていったので失敗。

二人は見つけた家に行きますが、これは魔法使いが住むお菓子の家。

結局、妹のグレーテルは魔法使いをかまどにつき飛ばして殺し、彼らは家から財宝を手に入れて両親のもとに帰る。家族4人は幸せに暮らすというハッピーエンド。

お話しは、こちらに出ていました:
☆ 青空文庫: ヘンゼルとグレーテル グリム兄弟


子どもを追い出す親の行為

シャルル・ペローがプチ・プーセの話しを書いた17世紀には、フランスでは頻繁に飢饉に見舞われていたそうです。ハッピーエンドなしの実話はたくさんあったのでしょうね。

私が気になるのは、プチ・プーセたちは2度も両親に捨てられているのに家に戻り、親孝行までしていること。どこの国でも、子どもは自分の所有物みたいに自分勝手に扱う親がいて、どんなに親に酷いことをされても、子どもは親を慕うものなのかな?...

ところで、日本の親が子どものお仕置きをするときには、「出て行きなさい」というのは普通にやるのではないかと思います。私も、叱られて家に入れてもらえなかった経験があります。闇が迫ってきている夕方。ガンガンとドアを叩いて「入れて~!」とやるのですが、近所の人というのは助けてくれないものなのですよね。「煩くてたまらないから、やめさせろ」とでも言いに来てくれても良いのに!

学校でも、先生は生徒のお仕置きとして教室から出るように言うのでした。小学校の始めの3年間は少し田舎が残っているところにいたのですが、先生が教室を出なさいと言われた生徒は謝って、出ていかなくても良い許可をもらうというパターンでした。ところが、その後に東京の小学校に移ったら、みんな、さっさと教室を出ていくので驚きました。さすが、東京の子はすれているな、と感心した思い出です。

でも、あれは、田舎の子と東京の子の違いではなくて、先生の違いだったかもしれない。

小学校低学年のときの担任は女性で、とても良い先生でした。私が白紙答案なんかを出したときには、放課後に家に飛んできて、何か問題があるのではないかと母親に聞いていたし。葉はの方は「印刷がよく見えなかったそうで」などとでっちあげの返事をしていましたけれど。

学年の途中から入った東京の小学校では、男性の先生でした。変な先生。一人の男の子を目の敵にして虐めていたのです。何かあると、彼がやったことにして、教壇に呼んで、どつきまわす。私たちは彼がやったのではないと知っていた時でも、怖くて震え上がっていたので何も言いませんでした。自分たちは卑怯だったな... と、いまだに忘れられません。何だか知らないけれど、先生が嫌っていただけで、仲間をいじめたりするような不良では全くなくて、とても良い子だったのです...。


フランスの親が子どもにお仕置きをするときには、ご飯を食べさせないか、部屋に閉じ込めるものなのだそうです。子どもを叱ったときに外に出したら、友達の家に行ったりして遊んでしまうので、全くお仕置きにならないから、と友人は説明していました。

でも、私が家から閉め出されたときには、友達の家に遊びに行くなんていう気持ちの余裕はなかったように思います。そもそも、親に折檻されているなんていう恥は他人には見せたくないですから。


むかし、アメリカでおきた事件も思い出しました。日本人の母親が親子心中をしようとしたら、子どもだけ死んで、彼女は生き残ってしまった、という事件。

アメリカの法律によって、この日本人女性は殺人罪として判決されたので、日本人たちが反対運動をおこしたのでした。子どもの私は殺人以外の何物でもないと思いました。でも、日本人にとって、親が生きていきたくなくなったら子どもを殺す権利があると考えるものらしい、と感じたのでした。

このとき、日本には普通の殺人より罪が尊属殺人罪があるというのがあると知ったように思います。弁護士の人たちは、親を殺すような子どもの状況には悲惨な例が多いのだとして反対していました。異常な状況というのは想像できます。親は子どもを簡単に殺せますが、子どもの方が親を殺すというのは、よほどのことがないと実行できないと思う。

ようやく1995年、尊属殺人罪をはじめとする尊属加重規定は、日本の刑法から削除されたそうですね。






ブログ内リンク:
謎が多い『赤ずきんちゃん』のお話し 2015/02/12
★ 目次: 文学者・哲学者、映画・テレビ番組
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方

外部リンク:
☆ 仏語テキスト: Le Petit Poucet de Charles Perrault
☆ お話歳時記: おやゆびこぞう。 (ペロー版テキスト)
☆ Wikipédia: Le Petit Poucet
 ☆ Analyse du "Petit poucet"
☆ グリム童話: おやゆびこぞう - グリム兄弟
☆ Wikipedia: おやゆびこぞう(グリム童話)
「出ていきなさい!」と叱る日本人の親と欧米人教育の違い
男児置き去り、なぜ日本人は「置いて帰るよ」と言って叱るのか?
その時歴史が動いた~昭和48年4月4日、尊属殺人罪が消えた日
☆ Wikipedia: 尊属殺法定刑違憲事件
【閲覧注意】尊属殺人罪(刑法200条・親殺し)が消えた理由
☆ L'Obs: JAPON. Comment l'enfant puni par ses parents a survécu 6 jours en forêt
☆ Le Monde: De l’abandon comme technique éducative au Japon
Japon abandonné en forêt, Yamato pardonne à son bon papa


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2016/05/20
ここで書こうとしているのは、普通の挨拶でするキスのことです。

Wikipediaから写真を借りると、こんな感じの挨拶。オランダ王ウィレム=アレクサンダーが母親にしている抱擁です。

Koning Koningin en Prinses op balkon Paleis Amsterdam


トミー・ウンゲラーの童話のお話し

前回の日記「トミー・ウンゲラーが描いた仏頂面の猫」は、ママからキスをされるのが大嫌いで、自分もキスなんかしたくないというう男の子の話しでした。

主人公の子猫のジョーが、ママに向かってこんな風に叫んでいます:

- " Des baisers ! Toujours des baisers ! " hurle Jo. " je les déteste, je n'en veux pas! Des baisers pour dire bonjour, bonsoir et merci ! Des baisers humides et poisseux, toujours des baisers ! "

キスばっかりする、と怒っています。こんにちは、こんばんは、ありがとうを言うときのキス、湿ってベトベトしたキス、なんて並べている。

ベタベタという表現を見て、フランスの幼い子がするキスはそれだな、と思いました。ベチャーと頬にキスをしてくるので、その部分がベタ~となる。その子の目がそれたところで、さっと、何気なく、ハンカチで拭いてしまうことが度々あります。よだれが出るのもしれないし、キスの仕方をまだわかっていないのかもしれない。

大人のキスの挨拶はあっさりしていて、ほとんど唇を顔につけてきたりはしないので、顔を拭いたくなったことはありません。

フランス人でも、やたらにキスをする人と、そうでない人があると感じています。スキンシップが好きな人は、やたらに抱きついてくる。でも、それがあるから普通のフランス人が痴漢に変身することはないのかもしれない。それと、一人暮らしのお年寄りでも、抱き合って挨拶することが1日に何回もあるはずなので、寂しくないという効果もあるだろうとも思っています。

トミー・ウンゲラーの自伝的な童話の話しでは、不思議に余り出てこない問題てトミーの家ではそういう強制はされなかったように見えました。キスされるのが嫌いだったら、自分からやるようにと言われるのはもっと腹がたつはずなのに。

親が友達を夕食に招待したときは、子どもたちは早々と食事を済ませられるらしく、招待客が到着するとパジャマ姿で「おやすみなさい」のキスをしに来ます。中には、そういう挨拶が苦手な、はにかみ屋さんもいるのです。フランスの子どもは辛いよ、なんて思ったりもします。


握手をするか、キスの挨拶をするかの問題

『キスなんか だいきらい』の主人公は男の子なので、学校に行ってクラスメートの悪ガキたちとの付き合いでは問題がなかったはず。フランスでは、たいていの人は、男性同士なら握手で済ませるのです。

どっちの挨拶にするかは問題なのですが、女性が選択する権利があると見ています。日本で友達になったフランス人女性で、キスの挨拶が大きらいという人がいました。どうするのかと聞いたら、相手がキスをしそうになって顔を突き出してきたときに、さっと手を出して握手してしまうと答えていました。

握手をするか、キスをするかを観察したことがあります。

女性が男性と挨拶するときには、キスをしてあげた方が喜ぶ。男性の方からはキスをする挨拶をすることに決める権利はないらしいので、気をきかせてあげないといけません。

親しい人の関係者の人の場合は、初対面でもキスの挨拶にしてしまった方が打ち解けた雰囲気になる。田舎の人は、かなり親しくなっても握手しかしない人が多い。逆に、若い世代、特に都会では、初対面でもキスの挨拶をする傾向がある。

田舎で育った中年世代の友達が、自分が若かったことには今のように誰とでもキスの挨拶をすることはなかったと言っていました。現代生活になって、人間関係が希薄になってきたからスキンシップの挨拶をすることが多くなったのではないか、と私は見ています。

フランスの場合には、英語のyouにあたる「あなた」が二通りあって、親しい間柄ならTu、距離を置く間柄ならVousを使い分けるのですが、これが握手で済ますか、抱き合って挨拶するかの違いと一致するとは言えない。ややっこしいです...。


フランス式挨拶は面倒!

人からキスをされるのが嫌でなければ、されるままにしておけば良いだけのこと。でも、自分から率先してキスをしなければならない場合があるのは、そういう文化で育たなかった私には馴染むのが難しいです。

例えば、大勢の人が集まるパーティーなどの場面。日本のように、全員に対して「こんにちわ~♪」と頭を下げたり、手を振ったりするだけでは挨拶が済ませられないのです。

こういう場合、ひとり1人に挨拶して回るわけですが、その人とは握手の挨拶をする仲だったか、抱き合ってキスをする仲だったかを考えないといけません。今まではキスをしていたのに握手にしてしまったら、何か私が怒っていると受け取られかねませんから。

しかも、キスをする仲の相手の場合には、何回キスをするのかを思い出さなければなりません。たいていは右と左の頬を寄せ合う2回の挨拶なのですけれど、4回の人もいるので注意が必要。3回というのは中途半端なので、つい4回目をやりそうになる。

3回ないし4回する習慣がある人に対して2回で止めてしまうと、続けてやろうとした人は突き出した顔をひっこめなければならないので、変な具合になります。たいていは、数が多い方が勝って、止めようとした人は続けるというパターンが多いと感じています。

ひとり1人と握手なり抱擁なりの挨拶をしなければいけないというのは、非常に面倒です。席についていてくれれば順番に回って挨拶していけば間違えないのですが、立っている場合には、人は動くのですよね。さっき別のところで挨拶していたのに、また挨拶してしまったら、その人を無視してしまったことになるので失礼になります。また、うっかりして挨拶しない人がいたら、これまた、もっと失礼になる...。

私は人の顔をちっとも覚えないので、余り親しくない人たちがたくさんいる場だと、本当に混乱します。「もう挨拶していましたっけ?」などと聞いたりするのですが、フランス人たちは慣れているのか、挨拶した人としていない人はちゃんと把握しているようなので感心します。

「パーティには早く行くことにしている」と言う友達がいました。先に到着していれば、後から来た人たちが回ってきて挨拶するのを待つだけなので楽なのだ、という理由。なるほどね...。でも私は、まだ誰も来ていないところに行くのは、なんとなく好きではない...。


『キスなんか だいきらい』について調べていたら、前々から気になっていたことを知ることができました。抱擁してキスをするというのは、まだ別の問題もあるのです!


相手のどちら側からキスをするか?

キリスト教の教えには、「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」というのがあります。人を平手打ちするときには、右から先にやるものなのでしょうか?

キスの挨拶をするときも、どちらからやるかの問題があります!

私は方向音痴で、右と左をよく間違えるせいなのか、いつも逆から頬を出すようなのです。相手にとっては、どちらから出すかは決まっているらしくて、あわてて方向転換してくれて決着することになります。互いに方向転換しようとすると、右の頬を出したり、あわててひっこめて左の頬を出したりと、不器用な展開になったりもします。

でも、ほとんど痴呆老人という感じの人が相手だと、とっさに方向転換できないのですよ~。間違えた方向に顔を向けてキスの挨拶をしようと、口と口があってしまうことになるのです。友達の家でそれをやってしまったときには、「おじいちゃんは、ずる賢いからね」などと言って笑っていましたけれど。

Wikipediaに、どちらの頬を差し出すか、という図が出ていました。地域によって傾向があるようです。

Joue tendue en premier pour faire la bise en France

青色の地域では、右の頬を出すというもの。赤は、左の頬を出す地域です。

私がいる地域は青色なので、右を出さなければいけないのですね。でも、私はなんとなく、相手の右側の頬を先にキスしたくなるのだけれどな...。南東部なら、私の癖は問題がないらしい。


何回キスをするか?

キスの挨拶は、これも問題になります。1回、2回、3回、4回とあるのです。これも、統計がWikipediaに入っていました。

Nombre de bise(s) en France

圧倒的に多いのは、右と左に1回ずつ、合計2回をするという挨拶です(黄色)。

1回しかしない(ベージュ色)が2つの県であるのが面白い。イギリスは1回が普通なように感じたのを思い出します。

私がいるブルゴーニュ地方では、4回キスする県が入っていました(赤色)。ワインで言えば、シャブリの産地のヨーヌ県です。本当かな?...

Wikipediaが何の統計を入れているのかと思ったら、Combiendebises.comというサイトでアンケートを取っているものを入れていたのでした。

こちら:
Combien de bises fait-on chez les Français 

県ごとの統計を見ることができ、キスの回数ごとに何パーセントがいたかも確かめられました。

ブルゴーニュ地方の4県を比較すると、こういう回答が出ているそうです。
  • コート・ドール県: 94%が2回のキス
  • ソーヌ・エ・ロワール県: 90%が2回のキス
  • ニエーヴル県: 54%が2回のキスで、31%が4回のキス
  • ヨーヌ県: 34%が2回のキスで、56%が4回のキス

思い出したことがあります。だいぶ前に仕事で親しくなった男性と挨拶したとき、キスを2回で止めたら、向こうは4回が習慣だからと続けたのでした。「ブルゴーニュでは2回だから」と言ったら、「ブルゴーニュの人はケチだからね」なんて言っていたのでした。その人の出身地を思い出してチェックしたら、本当に4回が多くなっている県なのでした。

でも、4回するという結果になっている県でも、4回と答えた人が最も多かったというだけで、それに続いて2回と答えた人がかなり多くいました。1回という結果が出ている北のはずれのフィニステール県でも、38%の人は2回と答えています。

でも、南仏の方で3回となっている県では(オレンジ色)、圧倒的に3回と答えた人が多いのでした。確かに、南仏を旅行したときには3回だなと観察していました。奇数にすると、なんとなく収まりが悪いと思うのですけど。


ベーズマンの挨拶

キスをする場所ですが、普通の挨拶では頬にします。

もちろん、恋人同士の場合は口にする接吻です。アフリカのどこかの国だったと思いますが、普通の挨拶で口にやってしまうところがありましたよね。男性同士でさえも。フランスの政治家はその習慣に合わせるのだとか聞きました。

子どもに対する愛情表現では、額にキスをします。

その他に、手の甲にする「baisemain(ベーズマン)」というのがあります。

男性が貴婦人に対する敬意を払った挨拶の仕方で、今では友人たちがふざけてやっているのを見る程度。なので、初めてベーズマンという言葉を聞いたときには、ベーズがキスで、マンは英語のmanだと私は思ってしまいました。つまり、キス男。でも、マンは手のmainなのでした。

ふざけてやるときは、こんな感じ ↓


à nouveau le baise main

男性にベーズマンをやられると、フランス人女性たちはくすぐられたみたいに喜びますね...。

ベーズマンの挨拶では、男性が腰を低くして、うやうやしく女性の手をとり、あたかもキスをするかのように口を近づける。でも、ポイントは、このときに女性の手にキスをしてはいけないというところ。つまり、口を近づけてストップする。

イギリスのチャールズ王子が、フランスの政治家セゴレーヌ・ロワイヤル女史に対してベーズマンをやった場面を入れます。握手をするつもりで手を差し出したらベーズマンをやられた、という感じに見えます。


Le baise main du prince Charles à Ségolène Royal

なんだか白々しくて、これで女性に敬意を払った挨拶になるのかな... と思ってしまいましたけど...。


フランス人が日本に来たときには、キスの挨拶をどうするか?

フランスの友人が日本で講演するために来日したときにお世話したことがあるのですが、挨拶で困った。1週間の滞在で関連している日本の会社に来るのですが、朝にオフィスで私に会うとフランス式に抱擁の挨拶をするわけです。

「日本でやってはいけない」と言ったら可哀想。でも、はたから見たら、私たちは変な関係だと見られてしまうではないですか?

それで、オフィスの女性たちにも同じ挨拶をしてくれるように言いました。私の方から、これがフランス式の普通の挨拶だからと説明するから、と付け加えて。

すると、彼は「えぇ、いいの~?!♪」と嬉しそうな顔をするではありませんか。

ジョークが絶えない陽気な人だったので、オフィスの若い女性たちにも人気者でした。フランスでは1日に何回も女性と抱き合って挨拶しているのに、日本で1回もできないとフラストレーションになるかもしれないので、彼がリラックスした日本滞在ができるように協力して欲しい、と彼女たちに頼みました。

彼の挨拶に戸惑うものの、女性スタッフたちは面白がっているように私には見えたので安心。後で聞いたら、「吸血鬼」とあだ名がついていたのだそうですけど!

もう一つ思い出すエピソード。

私が勤めていた会社のフランス人上司。時々彼の母親がフランスからやって来て滞在していたのですが、ある日、私に愚痴りました。

息子さんが、日本ではキスの挨拶をしないものなのだからと言って、フランスに帰るために空港に見送りに来てくれたときでも、抱き合っての挨拶を頑固としてさせてくれないのだそう。

それは可哀想だと思ったけれど、上司に向かって「お母さんの気持ちも考えてあげなさいな」とお説教するわけにはいかないではないですか? 彼はパリで日本語を学び、日本の商習慣などについてもしっかり勉強してきた人なので、私などより日本のことは分かっているみたいな顔をしていましたし。

私がフランス式の挨拶に慣れ始めた頃も、この次はいつ会えるかなどという別れのときに、日本人とは「じゃあね~」などと言うだけなのは物足りないと思ったものでした。小さい子たちの挨拶も、そっけなさすぎると感じました。最近は慣れて、どちらでも良いと思うようになりましたけれど。


ブログ内リンク:
★ 目次: フランス式挨拶、親しさの表現
★ 目次: 右と左の違いが気になる

外部リンク:
☆ Wikipedia: Baiser
フランス人は、相手をVousと呼ぶか、Tuと呼ぶかをどう決めるのか?


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カテゴリー: フランス人 | Comment (7) | Top
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2016/05/06
郷土史研究会のようなサークルがオーガナイズした見学会に参加することにしたので、少し遠出をしました。同じブルゴーニュ地方なので、朝早く出発すれば日帰りできなくもないのですが、せっかくなので週末の2泊3日の旅行を計画しました。

村はずれにある集落。しかも行き止まりのようなところに、2泊することにした農家がありました。

小高い山の上にあって、見晴らしが素晴らしい。到着した瞬間に満足してしまいました。



夕方に到着して、その日は農家で夕食を出してもらうことにしていたので、荷物を部屋に置いてから家の周りを散歩してみました。お天気も素晴らしく良かったし。

こういう風景が大好き。牧場があって、遠くに山が見えるという景色です。田舎に憧れる人にとっては理想郷ではないかと思う立地。

少し前には山岳地帯にあるホテルに泊まったのですが、近くに天文台もあるくらいなので素晴らしいところかと期待していたのに全くつまらないところだったのです。自然の中だからって美しいわけでもないのですよね。



ご主人が牧場の杭を直していたので、牛の品種をきいたらJersiaiseだとの返事。イギリスの品種で、フランスでは珍しいのだと言われて、日本ではジャージーと呼ばれる牛だと気がつきました。

九州で何回も通った地域でジャージー牛のミルクを盛んに売っていて、地元の人たちはジャージー牛のミルクがとても美味しいのだと自慢していたのですが、実際のジャージー牛は1回も見たことがありませんでした。日本では牛は余り放牧しないせいかもしれない。

見たいと思っていた牛をフランスで見ることができたので嬉しく思いました。おとなしい牛らしいのですが、あまり人懐こくはないのかな。フランスの牧場にいる牛を眺めようとすると、みんな寄ってくるのに、この子たちには全く無視されてしまいました。賢くて、餌をくれるはずがない人は見分けられるのかな?...

その翌日の朝には、牛たちは別の牧草地に移動されていました。草が多い場所に移したのでしょうが、このくらいたくさん家畜がいると、世話する手間は大変でしょうね...。

まだ牛たちはミルクを出していなかったので、この牛たちのミルクやチーズなどは味わえなかったのが残念。


とても良く道が整備されているので、家の周りの農地を見てあるくのは簡単。ぐるりと見てあるきました。



昔の農家には必ず池があったのだと聞いていましたが、ここにもありました。

農家は16ヘクタールの土地を持っているのだそう。フランスの農家では、100ヘクタール、400ヘクタールという土地を持っていたりするのですが、穀物畑にするのではなかったら、このくらいがちょうど良いくらいの広さではないかな...。



ありとあらゆる家畜がいる感じがしました。たいていは食べ物を生産する動物たちでしたが、ロバも何頭かいました。



自然には逆らわない農業をしているように見えました。ロバも蹄鉄は付けないので、3カ月に1回くらい、爪を切ってあげる必要があるのだそう。

ロバの方も気持ちが良いのか、装蹄師の方に頭をのせて甘えたりしていました。

家畜は全ての種類がいるように見えていたのですが、馬だけは飼っていないのだそう。馬は非常に手がかかるからとのことでした。そう言われて、馬が大好きで何頭も飼っているフランスの友人が、ヴァカンス旅行は全くしないと言っていたのを思い出しました。

山羊の方はミルクを出しているようで、チーズも軒先に干してありました。



家庭用のチーズを干す道具というサイズ。家畜は色々いるし、もちろん手入れの行き届いた野菜畑もある。こういう生活をしていたら、「買うのは塩だけ」という生活が可能ではないかな...。

農家のご夫妻は町に住んでいた人たちでした。20年くらい前、奥さんの方が農業者の資格をとって農業を始めたのだそう。ご主人も農業をしていますが、本職としての仕事も持っていました。そうしないと、家計費が足りないからではないかな。

フランスの場合、ご主人が農業をしていて、奥さんが町に働きに出るというパターンが多いのに、ここは逆。でも、フランスのサラリーマンの労働時間は短いし、休暇も長いので、無理なくやれるだろうと思いました。

何がきっかけで農業を始めたのか聞きそこなったのですが、こういうところで、こういう農業ができたら理想的な生活だろうな、と思いました。

友達の中に、教職を止めて実家に戻り、農業者の資格をとって跡取りになった人がいるのですが、彼の場合だと、農業は仕事でしかないはず。400ヘクタールの小麦畑で大きなトラクターを乗り回し、畑に撒く化学肥料や農薬の買い付けを計算したりするのは、ただの事業家ではないですか? しかも、彼の農場は、ただ平らで広い場所に麦畑が広がっているだけなので、風景は限りなく単調なのです。私には魅了的な転職には思えませんでしたが、親の仕事を途絶えさせたくないということだったのでしょうね。


2泊させていただきながら、この農家のような生活こそが人間らしい生き方だと思って憧れました。



朝食の食卓です。この他にも、近所の脳あが作っているリンゴジュースなどもあって、とても豪華。

近くにパン屋がないし、朝は乳しぼりの仕事などがあってパン屋まで車を走らせることはできないのでしょう。焼き立てのクロワッサンなどはなかったのですが、代わりに奥さんが焼いたケーキが3種類並んでいます。


食卓の横には古めかしい柱時計。毎週日曜日の朝、ご主人がネジを巻いていました。蓋を開けてネジを巻く棒を取り出し、2カ所のネジを巻く。



壁にかかっている猫の絵が気に入りました。食べ物がのっているテーブルを前にして腕組みをして座っていて、「お前、美味しい料理がつくれるのかよ」と言っているように見える。

本物の猫ちゃんも親子で住んでいました。


私の寝室からの眺めです。



赤い矢印を入れたのは、ヒツジたちと一緒の牧場にいるオスの山羊。

まだ若いそうで、いたずらしたくて仕方ないのかもしれない。時々ヒツジたちの方に行って頭突きをしたりしてしまうのでした。

ご主人が名前を呼んでさとすと、悪戯するのは止めて、動かずにこちらを見るのですが、少しすると、またやりだしてしまう。朝に目を覚ますと、まず窓の外を眺めて、この山羊が何をしているかを眺めていました。

猫たちの名前は忘れてしまったけれど、山羊の名前は1回聞いただけで覚えました。

Petit filou(プチ・フィルー)。フィルーというのは、ちょっとずる賢い人などに対して使ったりする愉快な名詞なのです。



宿を発つときは、もちろんプチ・フィルーちゃんにお別れの挨拶をしました。

悪戯をされて困ると話すご主人に、女の子を紹介してあげたらと言ったら、秋にならないとダメなのだと返事されました。そういうものなのですかね...。


追記:
ダイニングルームの壁にあった猫の絵が何であるかコメントで教えていただいたので、続きを書きました:
トミー・ウンゲラーが描いた仏頂面の猫

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方


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2015/12/22

シリーズ記事目次 【フランスのワイン産地】 目次へ
その4


フランスには101の県があります。
海外県が5つあるので、本土にある県の数は96。



フランスに県区分ができたのはフランス革命のときで(1790年実施)、その時の県の数は83だったそうです。


フランスの行政区分... ややっこしい...

フランス本土の県には2桁の番号で示されます。海外県は、9で始まる3桁。

県コードは郵便番号の始めにある数字にもなっています。自動車のナンバープレートにも県番号が付いています(最近になって義務ではなくなりましたが、付けていない車は見たことがないような気がします)。それで、自分が関係している県の番号くらいは覚えます。パリは町ですが、県としても扱われていて、県番号は「75」。

中には、全県のコード番号を言える人もいます。「すごい」と称賛したら、県のナンバーはアルファベット順に振られているので、覚えるのはそう大変ではないのだと言われました。

なるほど、Ain県の「01」からナンバーが始まっています。
フランス本土の県は96なのだから、県の番号は「96」まである、と思いますよね?

ところが。フランス本土にある県の番号はVal-d'Oise県の「95」までしかありません。

コルシカ島が例外になっているからです。島は2つの県に分けられていて、南にあるCorse-du-Sud県のコードは「2A」、北にあるHaute-Corse県は「2B」。それ以外の県の番号は全て数字だけなのですけど。

新年は南フランスで迎えました
コルシカ島の風景

http://www.lefigaro.fr/automobile/2014/04/09/30002-20140409ARTFIG00321-pourquoi-les-plaques-d-immatriculation-corses-font-fureur-sur-nos-routes.php
↑ これについて書いた日記: フランスで人気のナンバープレートとは? 2014/04/12

フランス革命の時に定められた県区分では、コルシカ島は1つの県でした。間もなく2県に分かれたのですが、また1つになって、さらに1811年から1976年までは1つの県になっていた。そのせいかも知れませんが、コルシカ島は1つとして、「フランス本土の県の数は95だ」と謂う人もいます。

それで「フランスの県は100ある」と言われると、コルシカ島を1つと数えたのだろうと思ってしまうのですが、そうでもなかったりもします。アフリカに浮かぶマイヨット島(Mayotte)が海外県として認められたのがつい最近なので(2011年)、少し古い情報だとこの島を県の数に入れていないのです。

ややっこしい。パリは町でありながら県でもあるのですが、地域圏(州のようなもの)ではありません。ところが、海外にある県は、同時に地域圏になっています。

フランスの海外領土は。メチャメチャと言いたくなるくらいに複雑です。県番号のようなのがつていても県ではなくて共同体だったり、そのいずれかでもなかったり、海外領土とは呼んではいけなかったり...。



フランスの子どもたちは、そんなのを覚えるように教育されるのでしょうか? 地理が苦手な私などはお手上げです!

在日フランス大使館では上手く簡潔に表現しているのではないかと思ってサイトを見てみました(こちら)。海外領土として地名をずらりと並べているのですが、それらがどういう自治制度になっているかは次のようにしか書いてありませんでした:
海外に位置するフランス領土は、多様な地位を有します。グアドループ、マルティニック、ギアナ、レユニオン、マイヨットは県・地域圏の地位を有します。一方、海外自治体の地位を有する自治体は、権限も自治の度合いもさまざまです。

個別に説明しない限りは、「多様」とか「さまざま」とかしか言えないでしょうね...。


ところで、県コード番号の一覧を順番に眺めてみたら、全部がアルファベット順に並んでいるわけではないのでした。

コルシカ島(Corse)のHaute-Corse県は「C」の順番に入れてしまっているように、複数の単語からなる県では、基準になる方で順番を決めたようです。

例えば、Hautes-Alpes(05)は、Alpes-de-Haute-Provence(04)とAlpes-Maritimes(06)に挟まれて番号がついていました。

それだけではない。県コード番号が定められた後に県名が変更した後も依然の番号を残しているのか、新しくできて場所がなかったというのが理由なのか、納得できない順番に入っているものもあるのです。

例えばEssonne県。Eだから始めの方に入っているかと思うと「91」なのです。なぜなのだろう、なんて考えているときりがないのでやめます。県ではないのに県コード番号を持っていたりとか、他にもゾロゾロと例外もあるのですから、気にしないに限る!


地名になっている「ロワール」

前回の日記「フランスで一番長いロワール川の不思議」で、la Loire(ロワール)という名の河川は色々な地域を流れているので、地名でもあちこちで使われているので紛らわしいと書きました。

まず、地域圏(州)の名前に入っているのは Pays de la Loire

県の名前では、Loireの文字は6つの県が使っています。Indre-et-Loire(37)、Loire(42)、Haute-Loire(43)、Loire-Atlantique(44)、Maine-et-Loire(49)、Saône-et-Loire(71)。太字にしたのはコード番号に使われている単語です。Loireをキーワードにして並べて県コードを作ったわけでもないのですね。河川の名前が2つ入っている県では、どちらが県内で重要かということで決めているのかな?...

観光地域なのの呼び名ではVal de Loireがあって、この地域を指定した世界遺産の日本語での呼称は「ロワール渓谷」となっています。この地方にある古城めぐりは有名で、Châteaux de la Loire(ロワールのシャトー)と呼ばれます。

ワイン産地で使われるのはVignoble de la vallée de la Loireで、世界遺産よりずっと広いロワール河の流域を指しています。

市町村の名前では、おびただしいくらいの数で「Loire」の文字が入っているのだろうと思います。フランスの市町村の名前では、そこを流れている川の名前を最後に付けているものが非常に多いのです。でも、市町村の数は36,529もあるので(2015年1月現在)、Loireに関係した市町村がどのくらいあるかなどは調べてみる気になりません。

でも、Wikipediaにはロワール河が通っている市町村の一覧を載せたページがありました(Liste des communes traversées par la Loire)。ページ内ぺ検索で「sur-Loire」をかけるとハイライトしてくれるので、数えようと思えば数えられますね。でも、数えたってなんの意味もない! 川が流れていなくても「Loire」の文字が入っている市町村もあるでしょうから。

本当はその川が流れていないのに市町村の名前に付けているケースもあります。例えば、ブルゴーニュ地方にあるIs-sur-Tilleという名の町。地名に「sur」とあったら、その後が川の名前で、その川が流れているという目印なのですが、この町を流れているのはTille川ではなくて、その支流のIgnon川です。町の名前を付けるときに間違えてしまったらしい。



この町のあちこちに川が流れているので、違う川もあるのだろうと思ってGoogle Mapを眺めてみたら、ぜんぶIgnon川なのでした。

Is-sur-Tilleという名前は、Tille川が流れているIsという意味で、つまり町の名前としては「Is」と短い。それでクロスワードパズルではよく使われるのだそう。

この町に行ったときのことを書いた日記:
トリュフ祭りの巨大なオムレツ 2012/10/23

今年は雨が降らなかったので、トリュフの収穫量はとても少ない年になりました。それでもこの町ではトリュフをたくさん食べるお祭りをしたのかな?...


フランスの県の名前は、ほとんどが河川の名前を付けている

県はフランス革命期に作られました。それまでに存在していた地域区分を取り崩そうという意図はあったでしょう。当たり障りがないようにしたのか、現在のフランスの県の名前は河川の名称がそのまま使われているものが目立ちます。

フランス本土にある96の県のうち、67の県は県内を流れている河川の名前にちなんだ命名になっていました。つまり、河川には関係ない名前の県名になったいえうのは29県だけ。県の7割は、県内に流れている河川の名前を1つか2つ入れた命名になっているということになります。

ヴァンデ県(Vendée)は、フランス革命中におきた反乱で有名なヴァンデなので、そちらの方を連想してしまうのですが、これも県内を流れているヴァンデ川から来ていたのでした。

フランスの県名の由来

県名の由来県の名前(赤字は海外県DOM)
河川67Ain、Aisne、Allier、Ardèche、Ariège、Aube、Aude、Aveyron、Bouches-du-Rhône、Charente、Charente-Maritime、Cher、Corrèze、Creuse、Dordogne、Doube、Drôme、Eure、Eure-et-Loir、Gard、Haute-Garonne、Gers、Gironde、Hérault、Ille-et-Vilaine、Indre、Indre-et-Loire、Isère、Loir-et-Che、Loire、Haute-Loire、Loire-Atlantique、Loiret、Lot、Lot-et-Garonne、Maine-et-Loire、Marne、Haute-Marne、Mayenne、Meurthe-et-Moselle、Meuse、Moselle、Nièvre、Oise、Orne、Bas-Rhin、Haut-Rhin、Rhône、Haute-Saône、Saône-et-Loire、Sarthe、Seine-Maritime、Seine-et-Marne、Deux-Sèvres、Somme、Tarn、Tarn-et-Garonne、Var、Vendée、Vienne、Haute-Vienne、Yonne、Essonne、Hauts-de-Seine、Seine-Saint-Denis、Val-de-Marne、Val-d'Oise
13Alpes-de-Haute-Provence、Hautes-Alpes、Alpes-Maritimes、Ardennes、Cantal、Jura、Lozère、Puy-de-Dôme、Pyrénées-Atlantiques、Hautes-Pyrénées、Pyrénées-Orientales、Vaucluse、Vosges
6Corse-du-Sud、Haute-Corse、GuadeloupeMartiniqueMayotteLa Réunion
海岸など5Calvados(注1)、Côtes-d'Armor、Manche(海峡)、Morbihan(小さな海)、Pas-de-Calais(注2
植物的特徴2Landes(ヒースなど低木しか生えない荒地)、Yvelines(森の名前)
地理的位置2Finistère(地の果て)、Nord(北)
歴史的地名5
(3)
Alpes-de-Haute-Provence、Landes、Savoie、Haute-Savoie、Guyane
町の名前4(2)Paris、Territoire de Belfort、Seine-Saint-Denis、Vaucluse
風景、
詩的表現
1Côte-d'Or(黄金の丘 注3


は重複してリストに入っている県。2度目に出てくるときはの印にしました。

注1:   Calvados(カルヴァドス県)
リンゴで作ったブランデーのカルヴァドスを思い浮かべてしまうのですが、これは県の海岸線に10キロくらい続く白い岸壁「rochers du Calvados」から来ているのだそうです。「Basse-Orne」とか「Orne-infèrieure」と命名されそうになったのを、地元の議員の提案が採用されてカルヴァドスになったとのこと。

注2: Pas-de-Calais(パ・ド・カレ県)
この「Pas」はpassage(通り道)から来ているとのこと。イギリスとの国境になるドーバー海峡を結ぶところにあることからの命名。

注3:Côte-d'Or(コート・ドール県)
この命名を提案したのは、地元の議員で弁護士だったCharles-André-Rémy Arnoult。この地方のブドウ畑が秋に黄葉した風景をイメージしています。

こういうのが黄金の丘「コート・ドール」のイメージでしょうね。ボーヌのブドウ畑の秋の風景です。

Vignoble Beaune

コート・ドールの県名を決める議会では、ご多分に漏れずもれず県内を流れるセーヌ河からHaute-SeineとかSeine-et-Saôneという名前にしようという案があったそうです。セーヌ河はコート・ドール県から流れている川なのですが、セーヌと言われたらパリを思い浮かべてしまうので、それにならなくて良かったと思います。

日本では、南仏の観光地「コート・ダジュール(Côte d'Azur)」がよく知られているので、それにあやかった命名かと思われる方もあるかもしれませんが、フランス革命期に作られた「コート・ドール」の命名から百年もたってからのことです。

コート・ダジュールの名付け親は、コート・ドールの県庁所在地ディジョンで生まれた詩人・作家で、カンヌにある別荘で冬を過ごしていたStéphen Liégeardによるものです(1887年)。「or(黄金)」を「azur(紺碧)」に置き換えただけ。

昔の地方の名前は美しいものが多かったのに、県名は味気ない名前ばかりだと感じます。Haut(上)とかBas(下)を使っているのも考えがなさすぎる。Finistère(地の果て)というのはラテン語から来ているので美しいかなとは思うけれど、Nord(北)というのは可哀想。

地域圏の名前でも、上と下で分けた命名がありますが、「下」にされてしまった地域の人たちは変えて欲しいと言っているのだそう。地域圏の方は合併させる動きが出ているので、「下」というのはなくなるだろうな...。

フランス革命が勃発してすぐに県名を考えたので時間がなかっただろうし、動乱期なので考えたりなんかする余裕がなかったのかもしれない。コート・ドール県に住む人が、「フランスの県で美しい名前がついているのはコート・ドールだけだ」と言っていたのですが、本当なのですね。

★ シリーズ記事目次: フランスのワイン産地
 
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フランスの地域圏名 新旧対照表 2017/01/11
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2015/12/20

シリーズ記事目次 【フランスのワイン産地】 目次へ
その3


前回ロワールワインについて書いたのですが、改めてロワール川流域のブドウ畑が広い地域なのだと気がつきました:
ロワールワインの産地が広いので驚いた

それでロワール川(La Loire)について書きたくなったのですが、この河川の名前を日本語でどう表記するかにつまずきます。


フランス語で「川」と言いたいとき...

フランス人が川を呼ぶときには2つの単語があります。海に流れ込んでいるならfleuve。そうでなかったら rivière

ドライブしていて河川が見えたとき、日本だったら「わあ~、広い川だ」と言えば良いのですが、フランスだと、どっちかの単語を使わないといけないのですよね。fleuveなのにrivièreと言ってしまったら、フランス人に直されます。

例えば、我がブルゴーニュ地方にはSaône(ソーヌ川)が流れています。

ソーヌ・エ・ロワール県(Saône-et-Loire)の県庁所在地マコン(Mâcon)を、ソーヌ川ごしに眺めた風景がWikipediaにあったので入れます。

こういう川を見て、fleuveかrivièreか判断できますか?

Mâcon, le pont Saint-Laurent franchissant la Saône.

ソーヌ川が県境になっていて、この写真はマコン市の対岸にあるSaint-Laurent-sur-Saône(ローヌ・アルプ地方のアン県)でカメラを構えています。この写真を撮った人の後ろにはレストランが軒をつられている場所。

fleuveかrivièreかを考えるとき、海に流れ込むくらい大きな川だったらfleuveだろうと思いがちです。ソーヌ川は立派なのでfleuveと呼んだら、マコン市の高校に通った友達から「rivièreだ」と間違いを指摘されたのを思い出します。「フランス人でもよく間違える」と言ってくれましたけど。

このソーヌ川はフランスで9番目に長い河川ですけれど(全長480km)、ローヌ川(全長812Km)の支流なので rivière。

パリを通って海に流れ込むセーヌ川は、ブルゴーニュ地方のコート・ドール県に水源があるくらいなので、ブルゴーニュ地方の中でセーヌ川を見るときは、マコンの町で見るソーヌ川のような大河ではありません。

それで、セーヌ川をfleuveと呼んで、ソーヌ川をrivièreと呼ぶのは、私にはしっくり来ないのですけど...。


◆ 「ロワール川と書くのが正しいけれど、ロワール河と表記したい

fleuveもrivièreも入る総称としては「cours d'eau」という単語があります。直訳してしまえば「水の流れ」ですが、「河川」というのに対応するように思います。川が流れているのが見えたとき、日本人は「あぁ、河川だ!」とは言わないのと同じように、フランス人も日常会話では「あぁ、cours d'eauだ!」とは言わないと思うのです。

川の名前を知っているなら、fleuveなのかrivièreなのかを知らなくても問題なし。「あぁ、ソーヌ川だ」と言えば良いわけですから。

ところで、フランスで河川の名前には「かわ」という文字が入っていません。住所を見ても、町なのか村なのか全く分からないのと同じ。ただし河川の名前は女性名詞か男性名詞かに分かれています。

フランスで一番長い川で、ロワールワインの地域にも関係するla Loire(ラ・ロワール)。ところが、その支流にle Loir(ル・ロワール)という名前の川があります。最後にEがあるかの違いがありますが、LoireとLoirは同じ発音です。でも、その前に付いている冠詞で女性名詞か男性名詞かで両方は区別できます。なのでフランス人には困らないのでしょうけれど、日本語で書いてしまえば両方とも「ロワール川」なので紛らわしい!

ともかく、la Loireはfleuveで、le Loirの方はrivière。

英語でも、日常会話では河川は「river」を知っていれば良いのではないでしょうか? フランスではどうして海に流れるかどうかで単語を区別するのだろう? 国が大きな6角形をしていて、河川が海に流れつくのが大変だから?

fleuveかrivièreかを間違えると注意されるせいか、いつの頃からか、私は日本語でもそれを区別しないと落ち着かなくなったようです。フランスの河川がfleuveなら「河」で、rivièreなら「川」と、ずっと書いていました。

でも、正しい日本語では、日本の河川は「川」と表記するのだそうなのです。「河」を使うのは中国。「黄河」などにあるように。

フランスの河川に「河」と書いたら間違っていると知ったのですが、直すのはやめようかと悩んでいます。だって、fleuveのla Loireを「ロワール河」として、その支流でrivièreのle Loirの方は「ロワール川」と書けば、2つが区別できるのですから。

でも、「川」としなければいけないのでしょうね。仏和辞典で確認すると、fleuveもrivièreも「川」という訳語になっていました。


ここまで書きながら、河川の名前が女性名詞ならfleuveで、男性名詞ならrivièreかなと思いました。だとすると、大きな発見♪

でも、そうではなかった!

fleuveとして、セーヌ川(la Seine)もロワール川(la Loire)も女性。でも、rivièreのソーヌ川(la Saône)も女性でした。ローヌ川はfleuveだけれど、こちらは男性でLe Rhône...。

フランス人は「フランス語はデカルトの言葉で、論理的なのだ」と言うけれど、それならもっと規則を見つけ出せるような明確な言語にしてもらいたいのだけれどな...。

やはり私は、la Loireは「ロワール河」と書きたい...。


小説谷間の百合の舞台


お城巡りで有名な観光地となっているロワール地方。

バルザック(Honoré de Balzac)の長編小説『谷間の百合』は、この地方が舞台になっています。

小説を読んだ私は、こんな風に思い描いていました。

切り立った山に囲まれた谷。そこに咲く白いユリの花...。
そんなイメージを持つモルソフ伯爵夫人。
Mortsaufという名前に「mort(死)」が入っているので不吉...。

フランス語の原題は『Le Lys dans la vallée』です。

これは英語でスズランを意味する「lily of the valley」をフランス語にした、と聞きました。

スズランは、フランス語ではmuguet。
それでも、イメージはさほど変わりませんでした。

谷間にひっそりと咲くスズランの可憐な花...。

ところが、初めてロワール地方に行ってみると、「谷間」という言葉から連想していたのとはかけ離れた風景が広がっていたのでびっくりしました。

今でも、ロワール河といったら、こういう平野を流れる姿を思い浮かべます。

Vue sur la Loire aux environs de Chaumont-sur-Loire.

私が気に入ったショーモン城のあるChaumont-sur-Loireに流れているロワール河の写真です。

当然ながら、ロワール河も上流の方なら「谷間」と呼べる風景の中に流れていますね。Wikipediaには、こんな写真も入っていました。

Gorges de la Loire (Grangent)

Barrage de Grangentのところ、Saint-Just-Saint-Rambert(ローヌ・アルプ地方のロワール県)で撮影したのだそう。

私が「谷間の百合」からイメージしたのは、こういう山間部にある谷間だったのでした。

小説の題名は「Le Lys dans la vallée」。この「vallée(英語でvalley)」を「谷間」と訳していたわけです。

バルザック(Honoré de Balzac 1799~1850年)は『谷間の百合(1836年)』を、彼が1824年から1837年に滞在していたChâteau de Sachéという城を舞台にして描いていたといわれます。今はバルザック博物館になっているそうです。この城はSachéという名前の村にあって、地図で示すと、こちら。やはり「谷間」のイメージはないですね。

追記: バルザックが時間を過ごしたその城の様子を見せる映像があったので入れておきます。


Val de Loire : Balzac au château de Saché


谷とか、渓谷とか...

ロワールの城巡りで有名な地域は、観光ガイドでもよく登場しますし、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

世界遺産としての登録名は、フランス語では「Val de Loire entre Sully-sur-Loire et Chalonnes」ですが、日本語では「シュリー・シュル・ロワールとシャロンヌ間の ロワール渓谷」となるようです。Wikipediaでは「ロワール渓谷」と題したページで紹介されていました。

渓谷? もっとすごい谷間を想像してしまいませんか?

山が多い日本語では、河川の流域と言われると渓谷になってしまうのでしょうか?

仏和大辞典を中心にして、河川に関係する単語を拾ってみました。


vallée広く谷一般を指すが、普通川の名とともに用いて平野を流れる大河の流域をいい、その場合は日本の谷の概念からは遠い。
※ la vallée de la Loire ロワール川流域(ワイン産地で使われている)

vallon,
val
ともに小さな谷を意味するが、valは地名と結びついた若干の用例。慣用句のほかにはあまり用いられない。
※ le Val de Loire(世界遺産の指定地域名としても使われている)

ravin険しく狭隘な渓谷。日本の渓谷は主としてravinに当たる。

cañon両岸が切りたち、深くえぐれた谷。渓谷。
その大規模な例がコロラド・キャノン。

bassin盆地、流域(bassin versant、bassin fluvialなど)
※ le Bassin parisien(パリ盆地)、le bassin de la Seine(セーヌ河流域)



フランスのワイン地図で、ロワール河の流域の地域は、フランス語だと「Vignoble de la vallée de la Loire」とか「vignoble de la loire」とか呼ばれていました。日本では「ロワールワイン」と呼ばれるようです。「渓谷」なんてのは付ける人はいないのではないでしょうか? 谷間で生産されたワインなんて、日当たりが悪くておいしくないだろうと思ってしまいますから。

ロワール古城めぐりの観光ツアーを募集するときも、「渓谷」の文字は入れないのではないかと思いました。だって、ロワール渓谷のお城と言われたら、こんな風な城を想像してしまうではないですか?

Schloss Neuschwanstein

これはドイツのロマンティック街道のハイライトの1つとなっているノイシュヴァンシュタイン城です。こういう風景だったら、ライン渓谷と呼んでもしっくりしますけど...。


ロワール河はフランスで最も長い河川

前回の日記「ロワールワインの産地が広いので驚いた」で書いたロワール川(Loire)は、全長1,006キロで、フランスで最も長い河川です。

どんな地域を流れているのか、地図をしげしげと眺めてみました。

Cours de la Loire.

太い青で示されているのがロワール河(La Loire)。

ロワール河の流域(bassin versant)は11.7万km2の広さがあり、フランスの総面積の5分の1を占める、という記述がありました。それをワイン産地の区分にしてしまったら、ずいぶん広くなってしまうではないですか。

ロワール河流域のブドウ畑(Vignoble de la vallée de la Loire)の面積は7万ヘクタールで(そのうち52,000ヘクタールが原産地呼称AOC/AOPを持つ)、15の県にまたがっているのだそう。





詳しいロワールワイン地図は、こちら


有名なロワールの古城めぐりの観光地

世界遺産として登録された「Val de Loire entre Sully-sur-Loire et Chalonnes(シュリー・シュル・ロワールとシャロンヌ間の ロワール渓谷)」として選ばれた地域は、ロワール河流域の全てではなくて、280Kmの長さ、いわゆるChâteaux de la Loireと呼ぶ城めぐりで有名な観光地を指定しています。

それが「Le Val de Loire」と呼ばれる地域で、下の地図が赤枠で示しています。

Val de Loire ← クリックすると拡大 ↓

Châteaux de la Loire

ロワール河も上流の方は山岳地帯で、そこなら「ロワール渓谷」と呼んで良いと思うのですが、世界遺産が指定したのは平野部のところだけです。それを「ロワール渓谷」と呼んでしまうのに抵抗を感じるのは私だけでしょうか?...

「ロワール渓谷」と呼ばれた地域を空から見た映像があったので入れておきます。


Des racines & des ailes - Loire Paramoteur


不思議なロワール...

ブルゴーニュ地方にあるソーヌ・エ・ロワール県(Saône-et-Loire)は、ソーヌ川とロワール河が流れているためにつけられている名前です。

その県の中にあるDigoin(ディグワン)という町を流れるロワール河に架かる奇妙な橋について以前に書いていました。


クイズ: ロワール河にかかる珍しい橋とは? 2007/04/27

そのソーヌ・エ・ロワール県ですが、県の名前を変えて欲しいと思う人もいるようです。この地方と無縁の人が「ロワール」と聞いたら、お城巡りで有名なVal de Loireと呼ばれる地域を思い浮かべてしまう。「ソーヌ&ロワール」という県名では、どこにあるのか頭に浮かばないではないか、というわけです。

ソーヌ・エ・ロワールの県観光局では、ブルゴーニュ地方の南部にある県だとして「Bourgogne du Sud」という呼び名を使ってPRしています。観光局のサイトも、www.bourgogne-du-sud.com/というドメイン名を取っています。

フランス本土には96の県があるのですが、そのうち6つの県の名前には「ロワール(Loire)」の文字が入っているのです。

ここから考えて書いた記事:
フランスの県名は味気なさすぎる
「リヨンには3つの川が流れている」と言ったのは誰?

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★ シリーズ記事目次: ロワール河にかかる珍しい橋 2007/05/13
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外部リンク:
Pourquoi la Vallée de la Loire?
Musée Balzac(Château de Saché)
バルザック研究会サイト
Définition de VAL
☆ 日本語への旅: 川と河
☆ 日本河川協会: 河と川の使い分けを教えてください
「川」と「河」と「河川」の違い


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