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2014/05/28
今日は中世祭りがあるから行こうではないかという誘いがあったので、中世の景観が残るSemur-en-Auxoisスミュール・アン・ノーソワ) という町に行くことになりました。

丘の上につくられた城塞都市の姿が残っているので、ブルゴーニュの中でも珍しい景観を誇っています。この町については、すでに下の写真を入れて書いているので省略。


美しい中世の町で見つけた希少物件の売家  2013/09/23


中世祭り

昔の景観が残っている町ではよく中世祭りが行われます。道路に藁をまけば、中世の雰囲気をだせる! でも、石畳にワラをまくとツルツルすべって危ない、と今回気がつきました。 普通は、少し水を撒いたりして、滑らないようにするのではないかな?...

 

祭り会場になった地域の入り口のあたりに貸衣装屋さんが入っていて、祭りに来た人たちが変装するので雰囲気が出ます。

みんなの姿を見たら、私も中世風に変装できる小道具を持っていたのを思い出しました。着てくれば良かった...。

中世に関連したものを売る店もたくさん出ていました。業者さんは、フランス全土で開かれる中世祭りに行けば、それで商売がなりたつくらい中世祭りは多いのかな?...

アトラクションも盛りだくさん。



中世のメロディーを現代風にアレンジした演奏が目立ちました。

 

私は本物の中世音楽が好き。ガンガンやられるのを頭が痛くなってしまう。遠くから聞こえてくる分には、祭りらしくて楽しいのですけど...。


人だかりがあったので何かと思ったら、生きた蛇を持っている親子がいたのでした。

 

色々なものを売っているし、この町の近くでもワインを作っているので、ワインの生産者が出展しているかと思ったら、全くない。食前酒代わりに飲ませてもらおうと思ったのだけど。

町にはカフェもあるし、飲み物や軽食を出す店もでているので、ワインをタダで飲ませてしまう出展は認めなかったのかな? あるいは、こんな祭りではワインを買う人がほとんどいないから来ないのか?... でも、ここはブルゴーニュなんですけどね...。


◆ 「イポクラ」という中世のワイン

出店が売っているのは、ブルゴーニュではない不味そうなワインばかり。
Hypocras-label 
それと、中世の飲み物といったら、これに限る! という「hypocrasイポクラ)」という甘いワインはたくさんありました。

よく出会う飲み物ではないので、それを飲もうかと思ったのですけど、以前に飲んだときに美味しいとは思わないのでパス。

それにしても、このワインはどういうものなのだろう?

辞書には、こう書いてありました。

肉桂、丁子入りの香りが強い甘味ワイン。
中世で珍重された強壮飲料。

あれ、あれ...。
これは蜂蜜が入っているのが特徴だと聞いていたのだけど...。


Wikipediaに書いてあることは全部を信じられないという問題がありますが、そこに書いてあることをメモしてみます。

中世ヨーロッパで飲まれていて、初めはclaret、 pimentなどと呼ばれていた。

clairetと呼ぶワインは、ほんの少し前に知ったところでした。Château Pontus de Tyardという城のイベントに行ったら、色々なブドウの品種を植えた畑をつくるようになって、そこで収穫されたブドウを混ぜて昔風のワインを作っていたのですが、それを「クラレ」と呼んでいたのです。

試飲しましたが、何かを混ぜてカクテルにしないと飲めないような、とてもきついワインでした。と言いながら、飲んでいると慣れてくるので、おしゃべりを続けていたら、グラス1杯飲み干しました。喉が渇いていたせいもあります!

作っているボランティアの人たちを励ますために1本買ってきましたが、開けてみる気にならない...。


中世の製造Wikipediaの記述に戻ります。

Hypocrasは、古代ギリシャの医者Hippocrate(ヒポクラテス)が発明した飲み物だから付いた名前だと言われている。

Hypocrasという言葉が現れたのは14世紀。

このワインは、蜂蜜で非常に甘くなっている。

3リットルのワインに、蜂蜜を200グラムも入れて作るのだそう。それに香辛料を混ぜる。肉桂と丁子は必ず入る。

これを濾過すると、何年も保存できるのだそうです。


Gueuxと呼ばれる人たち

お昼になったので何か食べようということになりました。

フランスのイベントで一番困るのは食事の問題。フランスの友達は、こういうときでも、ちゃんとテーブルに座って食べたがるのですが、そういう人たちが多いから席はたりない。

バーベキューをしている人たちがいる。しかも、塔の横にある、見晴の良い一等地。

わぁ、ここで食べよう~!♪ と思ったら、イベントをオーガナイズしている人たちが食事する場所なのでした。

 

イベントでは住民たちがボランティアで働いているのですが、こういう特権があるから協力するのが楽しくてやっているのだろうと思います。

こちらは食べる場所を探してウロウロしているのに!... でも、ひがむのは止めよう。「Gueuxの居酒屋」と呼ばれるアトラクションでもあるのですから。

フランスで行われる中世祭りにつきものとしては、イポクラという蜂蜜ワインというのの他に、gueux(グー)というのもあります。昔のフランス語で、物乞い、浮浪者の意味があります。

フランス人たち、グーが特別に好きなのかな? ボロをまとって、泥を塗ったような顔にしていて、気が狂ったように演じている人たちが、このイベントでもたくさんいました。 中世の衣装にしようとするとき、これが最もお金をかけないでできるコスチュームだからなのかな?...




ゴロワのビール

上の写真をグーの例として入れながら、書いてある文字が気になったので調べてみました。

Cervoise(セルヴォワーズ)というのは、古代フランスでゴール人が発明したビールのことなのでした。 大麦などを使って作られ、ミントのようなハーブで香りづけすることが多いようです。

ワインが貴重品だった中世には、ミサではワインが使われ、庶民はビールを飲んでいたのでしょう。 セルヴォワーズはワインに似た風味になっているようです。

ややっこしいことに、ビール、ワイン、レモンのリキュールで作るカクテルも「セルヴォワーズ」と呼ばれるのだそう。このイベントで売っていたのは、昔風に作ったビールだっただろうと思いますが。

フランスではその名を付けたビールが存在しているのですが、日本のサイトで検索したら、ビール用のグラスが出てきました。

ふと気がついたのですが、日本でビール用のグラスといっただジョッキですよね?

フランスのカフェでビールを注文すると、このセルヴォワール・グラスのように、厚めのガラスでできた背の高いグラスが多いです。

ビールがジョッキに入って出てきたことが、フランスであったかな?...

フランス人に聞いたら、昔はビール・ジョッキもよく使われていたのだそう。思い出せば、私が日本でフランス語を勉強していたときには、教材の中に、カフェに入った客が「bock(ボック)を1杯ください」と注文している場面がありました。

ボックとはビールジョッキのことだろうと思っていたのですが、これを書きながら辞書で引いたら、分量について記載されていました。

ボック: カフェーで注文できる生ビールの最低量で、demiより少なく、脚付きのグラスに入ってくる。

あれ、あれ...。ボックは脚付きのグラスですか~?

続きがあった。古語として、(約4分の1リットルの)ビールジョッキ、となっていました。はあ、私は古い言葉を学んでしまっていたわけだ...。

つまり、分量がポイントの表現なのですね。 でも...  フランスのアマゾンで売られている商品の画像を検索してみたら...

「Bocks à bière(ビールジョッキ)」を検索
「Verres à bière(ビールグラス)」を検索

フランスで売られているBockというビールジョッキは、4分の1リットルというのにはこだわっていない感じがしたのですけど...。

bock(ボック)を画像検索したらビールそのものが出てきたので混乱してしまったのですが、この言葉には「ボックビール」の意味もあって、ドイツの濃厚で香りの強い黒ビールとありました。なるほど...。


中世祭りは飽きてきてしまったかな?...

簡単にピザを食べて、祭りを後にすることにしました。 人が多いのに圧倒されて疲れてきてしまったからです。

町を出ようとしたら、向こうから歩いてきた家族がみごとい変装していたので写真を撮らせてもらいました。

 

「おみごと」と言ったら、「サンドイッチなんかかじっているのは絵にならないわ」と照れていました。座って食べられるレストランが不足しているのだから、サンドイッチの方が賢いですよ~。


町の門を出ていくと、こちらに向かってくる人たちがゾロゾロ。すごい人気のイベントのようです。

私が中世祭りにであったのは、パリに近いところにある世界遺産にも登録されている美しい町プロヴァン (Provins) でした。写真アルバムを見ると、ちょうど10年前のこと。

この頃からフランスは中世祭りのブームになったと感じていたのですが、ここスミュール・アン・オーソワの中世祭りは今年が15回目の開催なのだそう。

プロヴァンの中世祭りは初めての出会いだったので感激したのですが、その後は何回も行ったので、そろそろ私は飽きてきたかもしれない。ともかく、今回の中世祭りは、音楽がすさまじくて疲れました。

数年前にこの町を通りかかった夕方には、丘の下を流れている川の畔にテントが張られていて、とても雰囲気の良い中世祭りだと思ったのですが、今年のは丘の上でしかアトラクションが行われていないようでした。


YouTubeに入っている動画で確認してみようと思ったら、2009年のときのものが出てきました。


Fêtes médiévales du Roi Chaussé de Semur-en-Auxois

このときのコーディネートの方が中世祭りらしくて好きだな...。馬がたくさん登場しているのが良いです。今回も3頭の馬が建物の日陰で休んでいるところは見たのですが、動画のような騎馬戦を見せるようなデモンストレーションはなかったはず...。

少し前の市町村選挙で、この町の町長が代わって、中世祭りも予算を4分の1減らしたそうなので、その影響なのかな?... この美しい町では、Les fêtes de la Bagueというイベントが行われるので、その映像をイメージとして加えたのではないかという気もするのですが分かりません。

美しいスミュール・アン・ノーソワの町には、ヨーロッパで最も小さいという愛らしいオペラハウスがあって、そこで毎年音楽祭が開かれていたので通っていました。

ほとんどボランティアで東欧から来た人たちが、町の住民の家にホームステイさせてもらって上演するというコンセプト。従ってハイレベルの音楽祭ではないのですが、舞台が身近に感じられるので、モーツアルトのオペラなどは、昔はこういうのだったのだろうなと思って感動ものでした...。でも、町の経費節減で中止になってから久しくなっています。復活する予定は全くなさそう。

イベントを開催するからには大勢の人に来てもらわないといけない。それで、今回行った中世祭りも、中世音楽をロックミュージックにアレンジして演奏していたのでしょう。私はクラシック音楽が好きなので、そういうのは残念だと思ってしまうのですけど、過半数の人の好みに合わせると、そうなってしまうのだろうな...。

ブログ内リンク:
中世祭りに行く 2008/07/02
小さな教会の楽しいコンサート 2006/09/30
フランス人は仮装するのがお好き? 2005/09/29
★ 目次: ワインなどアルコール飲料に関するテーマ

外部リンク:
ビールの歴史
☆ Wikipédia: Hypocras
☆ Wikipédia: Cervoise
Boissons de Bretagne : la cervoise


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2014/05/21
今年は春になってから、ほとんど雨が降っていません。乾燥しているとブドウの木が病気にはならないはずなので、今年のブドウは健康的に育つだろうと思っていたのですが、そうでもないらしい。

前回の日記「ブドウ畑専用の豪華なトラクター」に書いたワイン農家のご主人は、「今年は腕のみせどころがある難しい年ですよ」なんておっしゃる。

春先に初夏のように暑かったときにブドウが芽を出したのに、その後には気温が下がってしまったために、かなり霜にやられた被害がでているのだそう。新芽がやられたら、今年の実はならない。去年も収穫量が少なかったのですが、今年もそうなりますか...。

それと、強い風が吹いているのが非常に良くないとのこと。氷の上を渡ってきたような冷たい風が、ここのところ吹いていました。

ブドウの木は北風が大嫌いなのですって。私も嫌いですけど、ブドウの木は背が低いので、風なんか気にならないと思ったのだけどね...。


畑にまく薬剤

ワイン農家に買い付けに行ったこの日も、強い風が吹いていました。農家のご主人は、向こうに見える桜の木が揺れるのを眺めながら、明日は風が収まると天気予報が言っていた、と期待していました。

乾燥しているときにはブドウの木が病気にならないので農薬をまく必要がないのだけれど、今年は必要なのだそう。風がおさまらないと薬剤を散布できないので、仕事がとどこおってしまっているのだと話します。

でも、仕事ができないときだったせいか、おしゃべりは延々と続きました。ワインの試飲じゃなくて、風にあたって乾いた喉をうるおしてくれるほど、並々とグラスにワインを注いでくれます。畑に行くことができない従業員の人も、一緒にワインを飲む。

農薬を撒くのはできるだけ少なくしたいし、農薬は高くつくので使いたくない。それなのに、こんなに乾燥しているときに農薬散布をする必要があるなんて不満... と、話します。

薬剤が入った袋が積み重ねてありました。粉末状なので、これを水に溶いて、新しく買ったトラクターで撒くのだそう。



この農家で使うのは、有機農業で許可されている種類の農薬でした。緑色のマークの中に、「Agriculture biologique(有機農業)で使用可能」という文字が目立つように書いてあります。

はぁ、これが少し前から私が気になっていた「soufre」という薬剤ですか? ...


ワインに入れる添加物とは?

日本人から、「フランスでは有毒物質を入れたワインをつくっている」と言われたことが何度もあったので気になっていました。添加物だらけの食品を食べさせられる日本で、なぜフランスワインを非難するのか不思議に思ったのです。

1980年代半ばに、ドイツやオーストリアのワインにジエチレングリコー ルが入っていたというスキャンダルの記憶が私にはあって、フランスワインは添加物に関する規制が厳しいので安全だ、と思っていた私は納得できない...。 

「防腐剤を入れている」と言われたときには、「ありえないですよ~」と答えてしてしまったのですが、何も知らないで返事していたのは確か。

気をつけていたら、白ワインには、sulfiteとかsoufreとかlevureとか呼ぶもの、それから卵を入れているのを知りました。でも、それが有毒物質だとは思っていなかったのです。


シャブリのワインを作っている農家に行ったときに撮った写真。収穫が終わったばかりのときに訪問したのに、忙しく働いているところを見学させてもらったのですが、ギクっとする場面がありました。

アルコールの発酵を促すために使う、levure(酵母)の粉末を収穫したばかりのブドウ液に入れていたのです ↓

 

私にはショックだったけれど、毒物を入れているわけではないのからでしょうが、作業している人は全く平気でしていました。写真なんか撮るのも、全くOK。

そんなものを入れないとワインにならないというのは楽しくない。シャブリはブルゴーニュ地方の北部にあって寒い地方なので、こういう助けが必要なのだろうと思いました。

友達のお気に入りのワイン農家ということで行ったのですが、なんだかその後は行く気がしなくて、このとき限りの訪問になっています。ワインの出来は悪くないのですが、熟成していないのに収穫した白ワイン独特の酸味が気に入らないのです。

最近は、レストランでワインを選ぶときに、知らない生産者しかないときは、シャブリにはバツ印をつけています。ハズレが多すぎるからです。昔は、シャブリのワインといったら、私でさえも目隠しテストで判断できるくらいの特徴があったのに、最近はそういうのがほとんどなくなりました...。

でも、酵母は問題にされていないようです。


問題のワイン添加物とは?

白ワインを飲むと頭が痛くなる人がいます。特に、安物の白ワイン、それから太陽の光が少ない地域で作られるワインがいけない、と私は思っています。

頭痛がおきるのは、ワインに添加する薬物が原因だと、フランスでも最近はかなり話題になってきました。それが入っているかどうかを、EU圏内で生産するワインのレッテルに表記する義務が最近にできたそうです。

私が添加物について気にしだしたのは、ごく最近。ワインに詳しい方だったら、「なんだ今ごろ!」と思われるでしょうね。調べたことをメモしますが、ご存じだったら読み飛ばしてくださいね。
 

最近、またワインは危険な添加剤が入っていると話題にする友人があったので、前々から気になっていたことを調べてみました。

日本人が毒物だとしていたワインの添加物とは、亜硫酸塩(加工物)でした。
 
これを添加する理由は、次の働きがあるからだそうです:
  • ワインの原料であるぶどう果汁の酸化を防ぐ
  • ぶどうに付着していた腐敗菌などの有害微生物の繁殖を防ぐ
  • 発酵段階で出るアルデヒドのような不快な香りの成分を除く
  • できあがったワインの酸化を防ぐ
使用法は、ボンベなどに充填されたガス、あるいは化合物の水溶液というかたち。

亜硫酸の添加量については制限があるし、良心的にワインを作っているところでは、できる限り亜硫酸の添加量を少なくしているそうです。でも、厳しい規制があるビオワインでさえも、これを微量に抑えて使うことは許可されているのでした。

フランスのワインでは、この添加をしないで生産されるワインは例外的に少ないようです。 白ワインだけではなくて、赤ワインにも入れると知って驚きました。

私のフランスの友人の中には、ワイン添加物のせいなのかどうか分かりませんが、白ワインを飲むと、それが質の良いものであるかどうかにかかわらず、頭痛になるので、絶対に白ワインは飲まないという人がいます。 ぜんそくには関係なく、もともと酷い頭痛持ちの人です。


この添加物について調べていたら、日本人からフランスのワインには毒物を混入していると批判された理由がわかりました。

日本では、「酸化防止剤無添加ワイン」というのがたくさん売られているからなのです。フランスで、そんな風なキャッチフレーズで売っているワインは見たことがありません。

酸化防止のためにワインに添加する亜硫酸塩とは何なのか?

亜硫酸をワインづくりに使うのは、古代ローマ時代から行われていたそうです。ワイン醸造用の樽を消毒するために硫黄を焚き、亜硫酸ガスを発生させて樽に充満させるという方法。そうするとワインが劣化しない、というのが分かっていたらしい。

有害物質であることは確か。もちろん、一定量を超えて使用された場合には危険がありますが、ヨーロッパ圏内でも、日本でも、ワインに亜硫酸を添加する量については厳しい規制がありました。


今回行った農家で、日本には酸化防止剤無添加のワインがあるのだと話したら、酸化防止剤を全く入れないでワインは作れない、とまで断言されました。 この農家では、添加量は極力控えているけれど、ボトル詰めする前にガスを混入しているとのこと。

ブドウには自然に少量の亜硫酸が含まれているので、それで十分な場合には亜硫酸の注入はしないそうです。 AOCワインを作っていると、年に何回も検査の人が来るので、科学的に検査して添加物を入れるかどうかのアドバイスはもらえるのだそう。でも、大丈夫だろうと思って添加しなかったら、瓶詰めした後に酸化してしまったために、そのロットを全て捨てたことがあったので、危険は冒したくないようでした。

ワインに亜硫酸が自然に含まれるというのは、畑の手入れで亜硫酸を農薬として散布することもあるからで、今回見た大きな袋はその薬剤だったのでした。しかも、袋には有機農業用と書いてあるので、亜硫酸だけは有機農業(BIO)ワインでも使用が許可されていると確認できました。


日本では無添加ワインというのが流行っている?

日本で売られている「酸化防止剤無添加ワイン」 とはどんなものなのか、探してみました。

酸化防止剤を入れないという触れ込みのワインは、驚くほどたくさん売られているのでした:
酸化防止剤無添加ワインを楽天市場で検索

大手のアルコール飲料メーカーは、こぞって無添加ワインを出しているようです。

こういうのは、私も日本のスーパーで目にとまっていたような気がしてきました。偽物のワインに見えたので無視していたのだろうと思います。

上に並べた3つの酸化防止剤無添加ワインは、メーカーが違うのですが、共通した雰囲気があります。

まず、いかにも日本語という手書きを思わせる字体で書かれている。外国で生まれたワインという歴史を追い抜いて、日本にだけある独特のアルコール飲料なのだぞ~、というアピールでしょうか?

「酸化防止剤無添加ワイン」という文字を目立たせているのは良いとしても、「おいしい」と書いてあるのは奇妙に思いました。ワインのレッテルに「おいしい」なんて書いてあったら、高貴なワインという感じはなくて、かえって怪しげな飲み物に見えないのでしょうか?...

少し前の日記で、日本人は「おいしい」を連発するのが気になると書いたのですが、ここで再び気になりました!

日本のテレビ番組で気になっていることに関するアンケートのお願い 2014/01/04

この日記にはアンケートを入れたのですが、今現在の投票結果では、半数の回答者は、「美味しい」と言う人は無理して「おいしい」と言っているのではないかと疑ってました。「"美味しい"と言われると、本当に美味しそうに見える」と答えた方は、たった2%だけ。

でも、「おいしい」とアピールするのは効果がある、あるいは、そう言いたくなる、ということなのでしょうね...。


もう1つ、日本の無添加ワインなるものには特徴があると思いました。価格が低いのです。

特殊な技術で作る手間をかけるなら高額の無添加ワインがあっても良いではないかと思って、楽天市場の検索結果を価格が高い順に並べてみたら、出てきた~!

... と喜んだら、12本セットの価格でした。

価格が高い無添加ワインは非常に少ないようですが、ないことはない。 何が違うかというと、ブドウ自体が国産と言えそうです。


左側のスパークリングワインが特に高いのですが、ラベルに目立つように「酸化防止剤無添加」とか「おいしい」とかは書いていないようです。 無添加を売り物にしているわけではなくて、本当においしいのではないかという気になりませんか?


お見事なマーケティング!

安い価格で手に入る「酸化防止剤無添加ワイン」というのは、素晴らしいアイディア商品だと感心しました。

前提として、安く買えるワインがないと、日本ではワイン愛好者は増えないとうのがあったはず。

となると、安い原料を外国から輸入してワインを作る必要があるわけで、粉末に水を混ぜてワインにする方法もあるのだそう。でも、安いだけでは売れない。そういうのは目立たないようにして、何かでアピールでして売る必要があるではないですか?

そこで「無添加♪」という魅力的な言葉をくっつける。そうなれば、得体のしれない原料から作ったワインかどうかなんて、気にならなくなります。

フランスをはじめ、外国のワインにはすべて人体に害を及ぼす劇薬が入っているのに、日本では無添加ワインを作っている、と宣伝する。日本産ワインの株があがります。

無添加で、安くて、おいしい、と三拍子そろったら、売れる商品になるではないですか?!

日本ではワインをセラーで寝かせてから飲める人は少ないし、日本酒でもビールでも長期保存はしない風習があるので、保存がきかない無添加ワインには全く問題はないはず。

さらに...

日本でワインを飲む人たちの中には奇妙なところがあると思うのです。赤ワインは健康に良い、と信じている人たちがいることです。ワインは、好きなら飲めば良いだけだと思う。10年は前のことだったと思うのですが、日本に帰ったら、赤ワインを飲みたいという人がたくさんいるので驚いたことがありました。健康に良いから赤ワインを飲む、なんていうフランス人は、私の知り合いの中には一人もいません。

健康のためにワインを飲む人たちのためには、無添加ワインは理想的です!

人気がでて成功するかどうかは、PRの仕方とアイディアで決まる。芸術作品だって、映画だってしかり。佐村河内守のゴーストライター事件も、その典型だと思います。

そんなこんなで、無添加ワインというネーミングは、ボージョレ―・ヌーヴォーを考え出したのと同じくらいに、優れたアイディアだと思いました。


四日市ぜんそくの原因が、工場から大量に出された亜硫酸ガスだったということが、日本で無添加ワインを成功させた原因だったのかもしれません。

でも、無添加ワインの宣伝のために亜硫酸が危険だと強調されなかったら、それを気にする人はどのくらいいるのでしょうか?

まだ記憶に生々しい福島原発事故だって、放射能汚染の問題は永遠に続くのに、早くも原発再稼働の方向に動いている日本です。東京電力が会社閉鎖とか断罪とかされなかったし、未だに白々しく隠ぺいを続けているも許されているのは、普通の先進国ではありえないことだと思う...。

大手メーカーがワインに添加物が入っていませんというのをキャッチフレーズにして商品がヒットしたのを知ったら、日本は大企業がすべて牛耳れる国なのだろうという思いを強めてしまいました。

フランスの食文化はマトモです、と言いたいのではありません。フランスでテレビのコマーシャルを見ていると、添加物だらけのような大手企業が売っている食品や加工食品ばかりですから!

現代って、そんな時代なのだろうな...。


無添加ワインについては賛否両論

無添加ワインについての日本情報を眺めてみると、捉え方は3通りあるように見えました。

かなりヒステリックに、酸化防止剤を添加したワインを批判している人たちがいます。そんなワインを飲み続けていると、必ずガンになるとまで断言したり、ワインに混入する「酸化防止剤」を「強烈な防腐剤」と呼んでいたりもします。

さらに、発癌性があるともいわれる「亜酸塩(あしょうさんえん)」と、ワイン に添加される「亜酸塩(ありゅうさんえん)」を混同して記述している人もあるので混乱を招きます。

逆に、ワイン業界の人たちは添加物入りワインに寛容。そうでないと売れないですから当然でもあります。基準以下の添加なのだから人体に害はないし、酸化防止剤を使わないワインは本物のワインにはなれない、と断言していました。

ガスの状態で大量に吸い込むと呼吸器系に害がある。ただし、ワインに少量を添加したくらいでは、化学反応によって無害な物質に変化するし、残留する量はごくわずかとなって毒性の心配はないという主張が多かったです。でも、ぜんそくを持っている人は敏感に反応してしまうので、避けた方が良いようです。

それから、本物のワインが好きだから、人体に多少悪かろうと気にしないという人たち。私は、このタイプですね。

今の時代、人体に害があるものは口にしないとなったら、生きていけるに十分な食生活はできないと思う。自給自足の生活をして、外食は絶対にせず、自分が作ったものしか食べないとしたとしても、放射能汚染の危険はある。 福島原発事故がおきたとき、胃がキリキリしてたまらないので主治医のもとに行って、ストレスが原因と話したら、「今の時代、地球上のどこにいたって放射能汚染からは逃れられないですよ」と慰められた(?)のでした...。

いくら健康を気遣ったって、永遠に生きられる人はいません。だったら、したいことをして、毎日を楽しみたいと思ってしまう私...。


どうして酸化防止剤なしにワインができるの?

日本で、千円も出さずに買えるワインというのは、私は薄気味悪く感じてしまいます。酸化防止剤を入れていないとしても、何か変なものを入れているのではないかと思ってしまうので...。

フランスでは亜硫酸を入れることを禁止したらワインが作れない言われているのに、なぜ日本では無添加で、しかも安いワインを作れるのか不思議ではないでかが可能なのか、気になるではないですか?

調べてみたら、日本では次のような手段をおこなっているから、亜硫酸を添加しないでワインが作れるのだと説明されてました。
  • 原料輸入(輸送)や醸造行程の中で、雑菌類に侵されないように処理をほどこす。
  • 日本酒のように加熱処理をして、酵母を殺す。
  • 非常に目の細かい特殊フィルターで濾過して、細菌や酸化で変質する物質を除去する。

なんだか不自然なワインに思えてしまうのですど...。

ところで、間違っていると思える日本情報もありました。フランスでは加熱殺菌は行えないと書いてもあるサイトもあったのですが、最近のフランスでは加熱処理をするワインが登場したことは聞いているのです:
葡萄ジャムからワインを作るなどという醸造法があったの?! 2011/07/28

ボトルの中での熟成をストップされるのが目的だと聞き、加熱したワインなんか飲みたくないと思っただけでした。この手法が、亜硫酸を入れないか、ごく少量に抑えられるかのための手段だったのかもしれないと思えてきたのですが、そんなことはないように思うのですが...。


ご存じの方があったら教えて欲しいのですが、酸化防止剤無添加ワインは、ワインの味がするのでしょうか?...

白ワインは悪くないのがあるとして推薦されていた無添加ワインには、ここのワインがありました

一度くらい無添加ワインというのを飲んでみたい気はしますが、やはり自分でお金を出しては買わないだろうな...。

アルコール飲料は、とっていないと生きられないというものではありません。添加物が入っているのが嫌だったら、ワイン風につくった飲料を飲まなくても良いのに... と思ってしまうのですけど...。

でも、ノンアルコールビールなんていうのもあった。アルコールが受け付けられない人でも、みんなと同じに飲みたいものなのかな?...



フランスワインで、酸化防止剤添加ワインかどうかを見分ける方法

フランスでも、当然ながら亜硫酸をワインに使うことについては神経質になる人たちがおり、この問題はネットでも盛んに論議されていました。

最近では、EUの規則として、ワインのボトルに亜硫酸が入っているかを表記する義務もあります。

台所に転がっている飲み終わったワインボトルのラベルの写真をとって入れようと思ったのですが、最近のレッテルは水につけておいても剥がれないので、ラベルをスキャンする考えは放棄。

そもそも、亜硫酸が入っているかどうかは、ワインを作っている人たちだって表記したくないでしょうから、このブログの枠内に収める画像を入れても文字は読めなかったと思います。ボトルの文字が横書きなのに、その外れにボトルを横にしたら見えるように書かれてありました。しかも、虫眼鏡を持ち出さないと見えないくらいの小さな文字!

読めるほど大きな文字で表示しているワインもあるようですので、その画像を入れたサイトの画面をキャプチャして入れます。

http://theobromine.uchini.be/?p=80   [Labo] Dosage du SO2 dans le vin

丸い枠で囲っているのが、亜硫酸が含まれているという表記。
Contient des sulfites」と書いてあります。

私が台所でチェックした空き瓶もこれと同じフレーズばかりだったのですが、「Contient de l’anhydride sulfureux」という表記も許可されているようです。

亜硫酸が含まれていると表示するだけで、どのくらいの分量なのかは表示する義務がないようです。いい加減ではないですか?

亜硫酸はワインには自然に含まれているものなのだそうで、亜硫酸ゼロというのはありえないのだそう。添加したか否かに関わらず、1リットルあたりの10 mg以上になっているワインに表記の義務があるとのことでした。

フランスの場合、1リットルあたりの亜硫酸の最大許可量は、赤ワインは160mg、白ワインとロゼワインは210mgとなっていました。表示義務が発生する最低限の10mgとは大きな差があるので、分量を示さない表記は無意味だという主張もありました。

ネットで挙げていた例では、オーガニックワインのボトルの裏面シールの長々した説明で、亜硫酸は添加ゼロで、自然には2mg/l と書いてあります。少なくしようと思えば、このくらいに収められるという例ですね。 

何でも有害なものは明らかにすることには賛成です。どの程度の添加なのか分からなくても、アレルギーがある人はご注意という警告にはなります。上に入れた画像で、赤枠の横にある妊婦にバツ印マークとともに余計なおせっかいだとは思うけど、危険を隠して「安全です、安全です」と言っているよりはマシです...。


フランスにも、酸化防止剤無添加ワインという商品があるのだろうか?

スペインのワインでも、酸化防止剤無添加を触れ込みにしているワインが日本に輸入されていました。



としたら、フランスで「酸化剤無添加」を特徴にして売っているワインがあっても不思議ではない!

とりあえず、知っている有機農業をしているブルゴーニュのワイン農家が、添加物についてどういっているのかを見てみました。

ギヨ・ブルー という、すごいこだわり方でワインを作っている農家。

以前にもブログで書いたことがありました:
ガメ種のブドウでは美味しいシャンパンを作れない? 2013/12/21

この農家のワインを扱っている日本のショップでは添加物については何も言っていませんので、ドメーヌのサイトをチェック。

アルコール度をあげるための酵母の添加は全くしていないと明記。でも、SO2の使用と加糖は、「厳しく最低限に制限している」と書いてありました。

やっぱり添加していますか...。

この農家で添加していたら、フランスで無添加というのはかなり少ないだろうな... という気がしてくる...。


でも、探してみたら、ありますね...。 さすが日本はこだわるので、「フランス」と「無添加ワイン」で検索すると出てきました。

下は、「事実上の」酸化防止剤無添加として売っているワイン:



日本の無添加ワインは安いのが特徴に見えたのですが、フランス製となると本物のワインにしなければいけないので、安いというわけではないのは当然でしょうね。

頭が痛くなる可能性が高いので私は避ける傾向にあるアルザスの白ワインでも、無添加というのがありました。


ともかく、フランスでも無添加ワインを特徴として売っているワインがあるらしい。それはそうでしょうね。探してみたら、ちゃんと酸化防止剤無添加ワインを探せるフランスのサイトもありました。


ワイン関係の単語

酸化防止剤のことが気になり始めてから、ワイン農家に行ったときに聞いたりしていたのですが、この類いの単語は正確に把握していないので、会話についていけませんでした。

理解しやすいだろうと思って日本語情報をみたら、発癌性があるともいわれる「亜硝酸塩(あしょうさんえん)」と、ワイン に添加される「亜硫酸塩(ありゅうさんえん)」を混同して記述していたりもするので、さらに混乱...。

この際なので、ワイン添加物に関する用語を拾って書き出してみます。「su」で始まる単語と、「sou」で始まる単語があって、ややっこしいので!...

sulfite亜硫酸塩、亜硫酸
Dioxyde de soufre
Anhydride sulfureux
SO2
E220
二酸化硫黄、亜硫酸ガス (SO2の無機化合物)
※英語: Sulfur dioxide
soufre硫黄
sulfiter果汁醪(ろう)に亜硫酸を添加する
(樽を)亜硫酸で処理する
sulfitage亜硫酸添加
※酸化防止、微生物・細菌の繁殖抑制、清澄などを目的に醸造過程で行われる。
soufrage硫黄処理
soufrer果汁醪(ろう)に亜硫酸を添加する
樽を硫黄燻蒸する
levure酵母、酵母菌、イースト
levurage[醸造](アルコール発酵を促すための)酵母添加
chaptalisation加糖、補糖。
アルコール分の供給などのため、発酵前のブドウ液に糖分を添加する作業。
chaptalisatliser発酵前のブドウ駅に糖分を追加する
soutirage澱引き
※樽熟中、ワインの上澄みだけを別の樽に移し、澱を取り除くこと。
Traitement de la vigneブドウ畑の薬剤散布

日本語でのワイン食品添加物としては、亜硫酸塩、亜硫酸、二酸化硫黄と表示されている場合とがあるそうです。亜硫酸は、二酸化硫黄を水に溶かしたもの。亜硫酸塩は、亜硫酸を中和したもの。この2つは本質的には同じとのことでした。

 シリーズ記事: ワイン農家を訪問して


  

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昔のポスターに見たフランスワインの効用 2007/04/24
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2014/05/18
ブルゴーニュ南部、マコネ地域で白ワインを作っている農家にワインを買いに行きました。

デイリーワイン用として、最近は一番気に入っているワインを作っている農家です。

ブドウが完熟してから収穫してワインを作っているので、酸味がなくて飲みやすいのです。それと、売値が他の農家に比べて安いので、大量買いには魅力的♪

少し前に行ったときには、新しいトラクターを買う話しをしていたので、それを見せてもらいました。


ブドウ畑用のトラクター

フランスのブドウ畑で使うトラクターは「アンジャンベール(enjambeur)」と呼ばれ、特殊な形をしています。ブドウの木をまたいで動くようにできているからです。

アンジャンベールにしては、やたらに大きなトラクターでした。



普通のは畝を1つまたぐのですが、これは2列の畝をまたぐのだそう。

素朴な形のアンジャンベールを撮影した写真を入れた日記も書いていたので、そのときの写真を入れて違いをお見せします。


ブドウ畑でワイン農家のご主人を捕まえる 2010/08/25

こんな形のを見慣れているのですが、今回見せてもらったのはやたらに立派。

周囲がよく見えるようにビデオカメラが幾つもついていたりと、至れり尽くせりの作りのようです。

運転席は普通に畑で使うトラクターのように、完全なガラス張り。畑に農薬をまくとき、消費者に害を与える以上に農業者の健康被害が大きいわけなのですが、これだと完全装備ということなのでした。

お買い得の中古トラクターを買っていたのですが、値段は20万ユーロだったのですって。日本円にしたら、3,000万円近く。フランスの田舎だったら、立派な家が買えてしまえる価格です。

メンテナンス費用も高いのだそうです。フロントガラスが壊れたとか、タイヤがパンクしたとかいう場合の修理代が幾らかかるかを話してくれたのですが、お金には興味がないので耳から筒抜けしてしまった。 貧乏人の自営本能からお金は無視しているのだろうな...。

そんなにお金があるようには見えない農家なのですが、すごい買い物ができてしまうのだと感心だけはしました。

フランスのサラリーマンたちが農家をやっかんでしまうのは無理ないです。穀物栽培農家が何台も持っているトラクターなどといったら、こんな可愛いブドウ畑用とは違って、圧倒されるくらいにすごいマシーンですから!

フランスにいるとトラクターの巨大さに驚くので、ブログでも何回も写真を入れていたと思うけれど、たとえば、こちらのトラクター ↓


民家になっているテンプル騎士団の館を見学 2013/05/30

国民の胃袋を養う農業者たちだから、補助金がたくさん入るのは良いじゃないかとも思えますけど、庶民には桁違いの金額を払うお買い物です。

これはどうでも良いお話しでして、今回ワイン農家で話しを聞いた後に調べてみて興味深かったこをと次に書きます。

続く...

 シリーズ記事: ワイン農家を訪問して




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2014/05/17
今年のフランスは、冬には雨ばかり降っていて、その反動からか、春は雨が少ない。ここ3カ月近く、雨が降っても、ほんのお湿り程度で止んでしまいます。

庭の植物を見ていると、水分が好きな植物と、逆に乾燥しているとちっとも背が高くならない植物とがあって、それぞれの好みが見れるので面白いです。

雨が降らなくて健康そうなのはイチゴ。栽培用の野イチゴ苗、道端でとってきた野イチゴの苗、普通のイチゴが野生化したものが混じっている一角があるのですが、みごとに実を付けてくれます。雨が多い年だと、ナメクジに食べられてしまって、人間用はなくなってしまうのですが。

家の壁に這わせているブドウも、こんなに実がなるのを見たことがあったかな、と思うのど実を付けています。ブドウの木は実がなってから小さな花を咲かせるので、花と言えばよいのか、実が付いたと言えばよいのか分からないのですが。




ブルゴーニュワインになるブドウ畑も元気そう...。

通りかかったので車を止めて眺めたジブリのワインになる畑です ↓



こちらも、実を付けていました。



ここ数年、天候に恵まれなかったフランスのワイン。今年は良い年になってくれるように期待していました。ところが、今年は天候に恵まれていないのだそう。

ワインを買いにいった醸造農家のご主人は、「今年は難しい年になる...」と言っていました。

ブドウは「厳しい天候に痛めつけられた方が良いワイン」ができると言う人もいたのですが、ここのところ、ブドウの木が嫌いな天気になっているとのこと。

へぇ、そういうのがお嫌いでしたか?...
私も嫌いですけど、ブドウの木も嫌いとは知らなかった!

続く...

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2014/05/10

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その7

友人が遺産相続した家を掃除していたら、屋根裏部屋で古めかしそうな彫刻があったというので、それを見に行ったことをブログに書いていました。

1年たってコメントが入ってきた日、偶然にもその友人が訪ねてました。彫刻をプロの鑑定士に見てもらったと聞いていたので、どんな意味を持っていると判定されたのかを聞いてみました。

この彫刻は何を現しているのかと、私が勝手に解釈してみたときの日記:
屋根裏部屋にあった古めかしい彫刻の解読を試みる 2013/06/12

屋根裏部屋の石壁にはめ込まれていて、ずっと無視されてきていたらしい彫刻は、これです ↓



この彫刻に書いた記事に入れてくださったコメントで学んだキリスト教関係の美術品の寓意を読み取るポイントが面白くて、ここのところキリスト教と植物の関係について書いてきたのですが、本題の、この彫刻は何を意味するのか、に戻ります。

友人が鑑定を依頼した人は仕事の関係の知り合いで、財産に関する保険の査定額も出している人なので、鑑定結果は信頼できるのだとのことでした。

その道のプロが、この彫刻をどう解釈したのか?...


同じような場面を描いた作品がたくさんある!

鑑定士が「この場面だ」と言ったフランス語をキーワードにして画像検索にかけてみたら、屋根裏部屋の彫刻と共通点がある構図の美術作品がたくさん出てきました!

Bernt Notke Gregorsmesse Arhus.jpg 
バーント・ノトケ(1435-1509)

Gregorsmesse lorenzkirche

Huanitzin.jpg 
1539年、メキシコ

Messe des hl Papstes Gregor Bode-Museum.jpg 
1480年

画像検索の結果で出てきたものの全てには、共通するるところがあります。キリストと、祈りをささげている僧侶の姿が、必ず入っている!


屋根裏部屋の彫刻を改めて眺める

屋根裏部屋にあった彫刻を取り外して自宅に運び込んだという友人は、鑑定士が「○○の場面だ」と判断したとしか言わないので、どこからそう判断したのかを考えました。

屋根裏部屋で見つかった彫刻を見てみましょう。

まず、キリストだろう、と私でさえも想像できた人物がいます。



手を交差しているので、十字架にかけられた後なのだろうと想像しました。 右手には傷の跡らしきシミが見えます。


その頭上に、冠らしきものを持った人がいます。



コメントを入れてくださったaostaさんのコメントは、これは石棺から立ち上がる姿で描かれるキリストの復活の様子で、天使が茨の冠をとりはずしている場面ではないか、と解釈なさっていました。

鑑定士の判断もその通りで、復活したキリストであることが重要な意味を持っていたのでした!


しかし、鑑定士が何の場面なのかを決めたのは、その下の部分のようです。

キリストが入っているのは石棺だとして、その下に、上に向かって手を差し伸べている人がいます。 何か丸いものを持っている。



ここからは、鑑定士の判断を聞いてから見えてきたことを書きます。

中央には、男性が持っている丸いものは、ホスチア(聖体)でしょう。 聖体パンにしては大き過ぎるので奇妙ですが...。

その左手にある、百合を象徴するモチーフが刻まれている四角い部分の上にあるのは、これまた不釣り合いに大きいですが、聖杯に見えてきました。

そうなると、これは僧侶か司祭がミサを挙げている場面に見えます。
その上に復活したキリストがいる、という構図になります。

ここまで分析する前に、キリスト教にお詳しい方は何の場面だと直感がひらめきますか?

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2014/05/07

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その6

前回の日記「受難を意味するパッションフラワーの不思議」で、日本でトケイソウと呼ばれる植物について書いていたとき、その特異な花を南米で発見したスペイン人たちは、どんな花を見たのだろうかと気になりました。

フランス語の呼び名に従ってパッションフラワーと書きましたが、トケイソウには500種類くらいあるのだそうなので。

変わった花なのでアーチ型に仕立てた鉢植えを買うことがあるのですが、ここは寒すぎるのか、間違っても実なんかはならないし、翌年まで生き延びてくれるのはごく稀にしかありません。

私が親しんでいるパッションフラワーは、こんな花です。



つまり、私が知っているのは白と青の花。

でも、前回の日記に書いたように、南米でパッションフラワーを見たスペイン人たちは、キリストの受難を象徴する花だと感激したのでした。受難のシンボルなら、鮮血を思わせる赤い花の方がぴったりするではないですか?

それで、スペイン人が見たのは赤いパッションフラワーだったのかどうかが気になりました。


変なパッションフラワーを見つけた

パッションフラワーが文献に初めて現れたのは1553年で、「granadilla(小さなザクロ)」という名で紹介されたのだそう。 それから10年余りたって出版された著書では「flos de passionis(受難の花)」という名前を使った、とのこと。

その図版がインターネットに入っているのではないかと思って画像検索をかけてみたら、目が釘づけになってしまった絵画がありました。

'Madonna and Child' by Joos van Cleve, Cincinnati Art Museum 

聖母マリアが右手に持ち、それを幼子のキリストが見ている花は、奇妙な形をしたパッションフルーツではないですか?!

上に入れた画像をクリックすると拡大しますが、花の部分を大きくした画像を入れます。

http://www.flwildflowers.com/clues/ 

下の部分は完全にカーネーションの花ですよね? それの上に、パッションフルーツに見せるような部分が付いている...。

「Madonna and Child」という英語名の題名で出てきたのですが、16世紀のオランダの画家Joos van Cleveの1535年の作品でした。

つまり、スペイン人たちがまだパッションフルーツの花を発見していないであろう時期です。 奇妙...。噂だけは流れていて、それを想像して描いたのでしょうか?

種明かしをしているサイトがありました。

最近になって調査したところ、もともとはカーネーションの花が描かれていたのに、絵画が描かれてから百年くらいたったときにパッションフルーツの花のような部分が描き加えられた、と判断されたのだそうです。

その方が自然ですね。幼子が目を向けているのはカーネーションの部分です。普通だったら、風車の玩具のような部分に目を向けるのが自然だと思う。

なあんだ...。

でも、この絵画についての記述があったページでは、パッションフラワーを描いた古い図版が入っているので興味深かったです:
Clues to van Cleve 'Mystery Artist' in Early Passiflora Art


なぜカーネーションの花?

加筆してパッションフルーツの花にしてしまったJoos van Cleveの絵画に、カーネーションの花が描かれているのが気になりました。

聖母マリアと薔薇の関係を学んだばかりなのですが、どうやらカーネーションもキリスト教のシンボルになっているらしい。たくさんの絵画にカーネーションの花が描かれていました。

こちらは、レオナルド・ダ・ヴィンチの初期の作品 ↓


La Madone à l'œillet, Léonard de Vinci (1479年頃)

ここでも、幼子のキリストが、妙にカーネーションの花に興味を示しています。 キリストの将来を暗示して描かれるイコノグラフィーなのでしょうね...。


カーネーションか、ナデシコか?

カーネーションと書いてきましたが、「ナデシコ」と言った方が良いのかもしれない。フランス語ではœilletœillet には色々な種類がありますが、こちらはバラの花がroseかéglantineかという俗称の区別はなくて、œilletに何かを付けて品種を特定していました。

たとえば、日本で「カーネーション」と呼ぶ品種は、学名がDianthus caryophyllusで、フランス語ではœillet communというのが正式な名前のようです。植物に詳しい人でもない限り、ナデシコ科の花はすべて「œillet」と呼んでいるように思います。

œillet はラテン語のcarnatioに語源があり、聖母マリアによるキリストのincarnation(受肉)につながる。カーネーションという呼び名は、この単語からでしょうね。

ギリシャ語の語源のDios anthosは「神の花」の意味があり、ラテン語になるとDianthusで、この単語がナデシコの学名に使われています。

その他、ナデシコとキリストの関係を説明するものもありました。

日本語情報では、キリストが処刑されたときにマリアが流した涙がカーネーションになったのだ、という記述がありました。

フランス語情報では、十字架にかけられた(あるいは、十字架を背負って歩いた)キリストが流した血が赤いナデシコになった、十字架を背負って歩く我が子を見たマリアが流した涙がナデシコになった、など等の記述がありました。

それから、ナデシコが十字架で使われた釘を想起させるというもの。

種の形が釘に似ていると書いてあるものがあるのですが、ナデシコの種は釘の形をしているようには思えないのですけど...。
Wikipediaに入っているナデシコの種の画像

フランスの記述では、この植物の形が釘と書かれていました。その方が似ているように感じます。真っ直ぐ伸びた先に、釘のような頭の花がついているので。 特に、カーネーションのような大きな花でないナデシコなら、釘そのものという感じがします。

追記:

コメントをいただいて、釘に見えるのは花の部分だと結論しました。

この花は、花びらを支える部分(花床と呼ぶ部分でしょうか?)が長いので、釘のように見えます。

Dianthus armeria 060805.jpg


それから、素朴なナデシコと呼べるような花は、花弁が5枚ですね。

キリストが十字架にかかって負った傷は5つ。それで5弁の薔薇に特別な意味があると知ってから、馬鹿の1つ覚えで「5」を探しています。


ナデシコとクローブに関係がある?

ところで、上に入れたレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の題名をフランス語で入れるのは悪いかなと思って、イタリア語を調べてみました。「Madonna del Garofano」だそうです。

ということは、フランス語でœillet(ナデシコ)は、イタリア語でGarofanoということらしい。

ここで釘との関係がでています。

オーブンに入れて肉を焼くときに肉に釘を打つように刺して使う「クローブ」。

日本語でも「丁子(ちょうじ)」とも呼びますから、どうみても釘のような形。これは咲く前の花を乾燥させたものなのだそう。

この実をフランス語ではgirofleと呼ぶのですが、イタリア語ではChiodi di garofanoなのでした。


シャルトルーのナデシコ

私はなぜか、母の日のシンボルにされているカーネーションの花は余り好きではありません。余り好きではない、というよりは、全然好きではない。子どもの頃に紙で作らされた美しくない花が記憶に残ってしまっているからかな?...

野に咲くナデシコの方がずっと美しいと思う。こちらがカーネーションの原種ではないでしょうか?

野生のナデシコの中で特別に美しいと思うのは、œillet des chartreuxという品種です。間違った画像を入れてしまわないように、野生植物の散策道で表札がついていた本物の写真を入れます。少しピンボケですけど...。



フランスの野原には、色々な品種のナデシコが咲いているのですが、œillet des chartreuxは際立って美しいです。なにしろ、ピンク色が日の光に輝くように鮮やか! 

œillet des chartreuxというのは、「カルトジオ会のナデシコ」という意味です。

学名は、Dianthus carthusianorum(ディアンツス・カルツシアノルム) 。

日本ではカルトジオ会との関係は無視されているようです。学名で言われるより、「シャルトルーのナデシコ」と呼んだ方が美しい花のイメージになると思うのですけど...。

ナデシコは薬用効果もあるそうで、シャルトルーズ修道院で大量に栽培されていた品種に対して付けた呼び名だそうです。

ナデシコがキリストの受肉や受難の関連もあったら、修道院では特別好んで育てたのかもしれない。

でも、グランド・シャルトルーズ修道院で生産されている薬草酒で有名ですから、ナデシコに限らず様々な植物を育てているだろうと思います。


シャルトリューズの薬草酒

修道院でも、調法はごく限られた僧侶しか知らないという秘薬(現在は2名らしい)。

こんな特殊な酒は日本には余り入っていないだろうと思ったのですが、かなり入っていました:
シャルトリューズの酒を楽天市場で検索

中でもすごいのは、エリキシルÉlixir)という薬用酒。

木製のケースに小さな瓶が入っていて、いかにも万病に効く「ありがたい」お薬」に見えます。

生まれたのは1605年。
約130種の薬草、香草、花から作ったという不思議なリキュールです。

アルコール度は69度なので、そのままでは飲まず、角砂糖にたらして食べるのが一般的な方法になっています。

日本ではリキュールとして売られているようですが、本来は体力が弱った病人のための薬なのです。

日本にいる私の恩師が難病だと診断されたとき、砂糖に染ませたエリキシルの食べさせたのを思い出しました。

もしも神様が存在するなら、私みたいに自分勝手なことをして生きている人間が難病になるべきだと思いました。私の恩師は、友達仲間でも「仏様みないな人」と言う人がいるくらい献身的な人のです。

「治療法がないと言うのに、頭を切る手術なんて危険過ぎるから止めろ! 若いなら、賭けをする価値はあるだろうけど...」などと暴言をはいてしまった私。何かしなければいけないと責任を感じて色々やった中に、エリキシルがあったのでした。

そんな薬草に効果があったはずはないけれど、「体がどんどん麻痺して、すぐに歩くこともできなくなる」と病院で言われた症状には進行しなくて、あれから数年たつ今は、何事もなかったかのように元気で生活しています。

このときのことを書くとしたらブログ1本を立ち上げる必要がありますが、難病などという分野では、モルモットを必要としている外科医の言葉にのるのは危険が大きすぎると思う。現代医学で治癒できる病気は医師の指示に従うべきですが、「病は気から」というのもある、と思った経験でした。

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: 縁起物や迷信について書いた記事 (フランスを中心に)
★ 目次: 薬として飲める酒、症状を回復する食べ物

外部リンク:
Clues to van Cleve 'Mystery Artist' in Early Passiflora Art
Passion flower in famous Madonna painting was added after artist died, art museum agrees
☆ L’oeillet peint : une fleur picturale   
La Vierge tenant une fleur : symbolique de la rose et de l'œillet
L'œillet des chartreux
カルトゥジアン・ピンク(Carthusian pink)ホソバナデシコ(細葉撫子)
Une fleur à la boutonnière, "symbole d'une vie exquise"...
☆ Wikipédia: Élixir (liqueur)


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2014/05/06

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その5


フランス語でfleur de la passionと呼ばれるパッションフラワーは、特異な花の形をしています。



いかにも南国的な花なので、「passion(パッション)」という言葉は「情熱」のことだろうと思っていたのですが、「キリストの受難(passion du Christ)」を意味する命名なのだそうです。

そう言われれば、キリストがかぶらされた茨の冠に見えてくる...。

私が美しいと思うバッハの『マタイ受難曲』も、フランス語の題名は『Passion selon saint Matthieu(マタイによる受難曲)』だった...。

日本ではキリスト教文化がないので、この花は時計に似ていることから、トケイソウと呼ぶのが一般的になっているような感じがしました。

先日から書いている彫刻の解読に関する記事に入れてくださったコメントで、キリスト教では「5」という数字がキリストの受難を意味すると教えてもらい、ひょっとして、この花も5に関係しているのだろうかと調べてみました。


パッションフラワーの花の構造

ただ花がキリストがかぶされたイバラの冠に似ている、というだけではないのでした。

雄しべが5本、花弁が5枚で、10人の使徒を表す、と書いてありました。

あらためて花を眺めてみる。 花びらの数は10枚ではないですか?



でも、花弁と萼片が交互になっているからであって、本当の花びらは5枚なのでした。そこまでは納得。

花弁と萼片で合計10枚。あるいは、雄しべが5本と花弁が5枚を合わせても合計10ですね。ともかく、10という数字が出て、それが10人の使徒を現していると説明されています。


10人の使徒?

使徒(Apôtre)というのは、最後の晩餐に描かれる十二使徒だったのでは?...

パッションフラワーの花の説明で、ユダとペトロを除いて10人の使徒と説明しているページがありました。裏切りもののユダを除いたというのは納得できます。もう一人除いたのはペトロと記述されていました。それで10人が残るという計算。

ペトロは、イエスの受難のときに逃走し、イエスを否認した人でした。でも、ペトロは「天の国の鍵」をイエスから受けたとされ、私でさえも知っている重要な使徒なのですから、ここで除外されるのが理解できない...。

でも、キリストが十字架にかけられるときに立ち会った使徒は10人いうことになる。

さらに調べてみました。

別のフランス語情報では、十二使徒から除かれているのはユダとトマスだと書いていました。 聖トマスは、イエスが復活したという他の弟子たちの言葉を信じなかったけれど、実際にイエスを見て感激したという使徒だったとのことなので、抜かされても仕方ないのかな?...

花弁が10だということに意義を持たせる「十使徒」という定番があるのでしょうか? ざっと調べてみたところ出てきません。としたら、パッションフラワーの雄しべ5本と花弁5枚で10人の使徒を現すというのはこじつけではないかと思ってしまう...。

徹底的にパッションフラワーとキリストの受難の関連性を説明している文章では、次のようになっていました。
  • 雄しべ5本: キリストが受けた5つの傷
  • 柱頭3本: 釘
  • 脂肪柱: 十字架
  • 花弁とガク5枚ずつの合計10枚: 10人の使徒
  • 葉: ユダがキリストを売ったときに得た30枚の銀貨。あるいは、槍。
  • 巻きひげ: ムチ


Passiflora caerulea

柱頭の先は確かに釘に見えます。でも、磔にした釘は4本必要だったはずと思ったのですが、足はクロスされていたので3本なのですね。

葉は何に見えるかな?...

http://www.larousse.fr/encyclopedie/images/Passiflore/1003313 
Encyclopédie Larousse en ligne - Passiflore

葉を、ユダが受け取った銀貨に見立てるのは、こじつけ過ぎると思うけど...。槍というのもピンとこない...。

いずれにしても、カトリック教会がパッションフラワーをキリストの受難を象徴する花だと正式に定めているとは思えないので、花をどう見るのが正しいのかは考えないことにしました。


◆ 誰がパッションフラワーと名づけたのか?

16世紀、大航海時代に南米に渡ったスペインのイエズス会士がパッションフラワーを発見したのだそうです。つるになって天に伸びる花は、この地で布教する任務を正当化したのかもしれません。

アッシジのフランチェスコ(François d'Assise 1181/82~1226年)が、キリストが磔になった十字架の上に咲く花』を夢に見たという話しがあり、宣教師たちがパッションフラワーをみて、まさにこの花だと思った、ということにもなっているらしい。

パッションフラワーの花は、500以上の種類があるのだそう。

キリストの受難の象徴といえば赤だと思うのですが、パッションフラワーにも真紅の花が咲く種類があるようです。

Passion flower stamen

この植物の名前が初めて文献に現れたのは、スペインのコンキスタドールPedro Cieza de Leónによるコロンビアのサンティアゴ・デ・カリに関する記述にある「granadilla(小さなザクロ)」。1553年のこと。

それから間もなく、スペインの医師・植物学者Nicolas Monardesが著書の中で「flos de passionis(受難の花)」という名前を使ったのが始めらしい(1569~1574年)。

スペイン人が発見したのはどんな花だったのかと画像を探してみたら、奇妙な絵画が出てきました。

1535年にオランダの画家が描いた聖母子像なのですが、そこにパッションフラワーに似た花が描かれているのです。文献で植物が紹介されたのより20年近く早いことになります。奇妙ではないですか?

続き:  カーネーション? なでしこ?

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
果実の知識【パッションフルーツ】 
☆ Wikipedia: トケイソウ
十二使徒の象徴ー図像解釈と持物


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2014/05/05

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その4


十字架にかけられたキリストがおった5つの傷。その「5」を象徴する5弁のバラの花。それを教えていただいた私が思い浮かべたのは、フランスの道端に咲いている野生のバラでした。

バラについて書いた前回の日記:
キリストの受難と薔薇の関係 2014/05/04


エグランティーヌ

野生のバラは、植物としてはÉglantier(エグランティエ)、花はéglantine(エグランティーヌ)と呼ばれます。



品種改良される前のバラの原種なのだろうと思います。

フランスに来て初めて見たときには、これが「野バラ」という植物なのだと感激しました。道端に自生しているのはもったいないくらいに、清楚で美しい花だと思っています。 もともと、花屋さんで売っている人工的に改良したのが見え見えの花より、野生植物の繊細さが好きな私なのですけれど...。



エグランティエには何種類もあるのですが、フランスで最も一般的なのは、学名でRosa canina(ロサ・カニーナ)という品種だそうです。

私はフランス人から教えられた単語Églantierとéglantineで覚えて呼んでいたのですが、「Rosier(バラの木)」を使った呼び名も存在していました。

Rosier des Chiens(犬のバラ)
Rosier des haies(生け垣バラ)
Églantier des chiens(犬のエグランティエ)

日本語ではイヌバラ と呼ばれていました。

淡いピンク色のバリエーション。ほとんど白いのもありますが、淡いながらも鮮やかなピンク色の花だと、本当に美しいと思って惚れ惚れとしてしまいます。

アルプスに行ったときには、背が高くは伸びないのではないかと思う種類がありました。ピンクの色は鮮やか! こちらは違う品種でした。


Rosier des Alpes, Eglantier à fruits pendants, Eglantier des Alpes, Rosier sans épines,Rosa pendulina
学名: Rosa pendulina



キリストが受けた5つの傷を象徴するバラの花ということで調べているのですが、野生のバラは血を連想されるような赤い花にはならないような気がします。

でも、花が咲き終わって存在を忘れたころ、ローズヒップが野原に目につくようになります。 秋の気配が深まって寂しくなったころなので、鮮やかな色が余計に目立つのです。



キリストが十字架にかかったことを連想させる花なら、この赤い実がなることを関連づけても良いのではないかと私は思うのですが、そういう記述には出会いませんでした。

ところで、この濃いオレンジ色の実(仏語でCynorrhodonないしcynorhodon)は、普通にはgratte-cul (尻をひっかく)という変な名前で呼びます。この実のトゲをベッドに忍ばせた、という昔のいたずらの風習からついた呼び名なのだそう。英語でローズヒップと言いますが、語源は同じなのかな? culもヒップも「お尻」なので。

ローズヒップにはビタミンが多く含まれているのだそう(特にビタミンC)。ジャムも作れるのだそうです。氷点下になった後に収穫し、黒いトゲの部分を除いてから普通のジャムのように作る、というレシピがありました。栄養素はあるにしても美味しくなさそうなので、作ってみる気はしませんが...。

ロシア人の知人を受け入れた友人がいたのですが、フランスの野原でノーズヒップを誰も採らないらしいのを見て、こんなにあったら商売になるのに... とため息をついていました。ロシアではお酒にするらしいのですが、かなり高価なのだそう。寒さが厳しい国なので、今でも冬超えをするための貴重なビタミン原なのでしょうか。


シューベルト作曲「野ばら」

フランスで見る野生のバラ。その花を呼ぶ「エグランティーヌ(églantine)」を、私はずっと「野ばら」と訳していました。改めて仏和辞典で確認してみたら、やはり「野バラ(の花)」と書いてありました。

そういえば、シューベルトの歌曲に『野ばら』というのがありました。ゲーテの詩に曲をつけたもので、日本では誰でも知っているはず。



この『野ばら』という曲の題名がどうなっているのか調べてみました。
私の予想に反して、フランス語の題名は「エグランティーヌ」ではなかった!

 歌曲の名前
ドイツ語Heidenröslein
日本語野ばら
フランス語Petite Rose (小さなバラ)
イタリア語Rosellina della landa
英語Heidenröslein (Rose on the Heath, Little Rose of the Field)

日本とフランスが原題にある「荒野」を排除してしまっているところで共通していました。

ドイツ語と日本語の歌詞、さらにドイツ語の直訳が入っているページ:
シューベルトの 「野ばら」

日本での歌曲の題名は「野ばら」なのですが、歌詞としては「野中の薔薇」と言っています。「紅(くれない)におう」と歌っている部分は、ドイツ語では「赤い小さな薔薇」なのですね。

でも、日本語の題名では「野」と付けて野原に咲くバラであることを連想させています。フランスの題名の方は「小さなバラ」で、野生のバラであることは完全に無視。

☆ フランス語訳: Petite Rose (Wikipédia)

petite rose rouge(小さな赤い薔薇)、Petite rose de la lande(荒野の小さな薔薇)と言っています。

日本語の歌詞では、ヒースやシダなどの低木しか生えない荒野であることは無視していますね。でも、日本の国土にはそんな殺風景な景色はないから、「野中」くらいで良かったのでしょう。

バラの花を折ってしまったのは、ドイツ語では「乱暴な少年」と言っているし、フランス語訳でも「意地悪な男の子」と言っているのですが、日本語の歌詞では「童」なんて言っているだけ、という違いも目につきました。

ドイツ語の直訳でも、フランス語訳でも、この詩は美しい女の子を傷つけてしまった男の子の話しなのに、日本語の歌詞では徹底的にぼやかされていますね...。小学校唱歌にするための配慮だったのでしょうか?  20世紀初頭の日本で作詞されたわけなので、男尊女卑が底辺にあったからなのか?...

でも、これは私が探していた問題からは外れているので、エグランティーヌと呼んでくれなかったことは無視します。


花弁が5枚の薔薇なのに...

キリストの5つの傷を象徴する5枚の花弁の薔薇がエグランティーヌだったとすると、なんだか可愛そう...。

第一に、「犬のバラ」なんていう名前が付けられていること。学名のRosa caninaもそれだろうと想像するし、英語でドッグローズ、日本語でイヌバラ、フランス語でも「犬のバラ」という意味の名前でも呼ばれているわけです。

なぜ犬なのか、というのはちゃんと調べなかったのですが、たぶん、どこにでもあるバラ、野原を歩いているとトゲに刺されて憎らしい、というくらいの意味ではないかと想像します。「犬」というのが、フランスでは悪いことに対して持ち出されるのです。例えば、「犬の天気」というと、雨ばかり降っていて気が滅入ってしまうような天気、という具合。日本でも「犬畜生」というのがある...。

でも、ローズヒップが狂犬病の薬になったという記述もあるので、そのためだったかもしれませんけれど、こんなに美しい花をドッグローズとかイヌバラとか呼ぶなんてけしからん!

エグランティーヌという名前は、「ティーヌ」で終わるところが可愛いと思うのです。フランスの女性の名前に、クリスティーヌとか○ティーヌとかいうのがあるので(いずれも聖人の名前から付けた命名ですけれど)。

第二に、イヌバラの実を呼ぶのに「お尻」なんかに関係づけられていること。

でも、そんな悪いイメージと結び付けられるのは、バラの品種改良が進んで、野生のバラがありふれているとさげすまれ、マリア様のイメージはもっと高貴なバラと結びついて残ったのでしょうね。そもそも、Rosa caninaなんて不名誉な学名を付けたのは、近代になってからではないですか?

エグランティーヌはピンク色だったとしても、赤い花もどこかに咲いていて、それがキリストの血の色としても良いのだし...。それに5枚の花びらの薔薇のお話しをしてくださったaostaさんによると、エグランティーヌの葉は林檎の香りがするとのこと。罪を犯していないマリア様のイメージに相応しいではないですか?...

そんなことを思ってしまったのは、エグランティーヌについて調べてみたら、私が好きなこの花がドッグローズとかイヌバラなんて呼ばれていることを知って怒ってしまったからでした!

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★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: 宗教建築物に関する記事

外部リンク:
ÉGLANTIER, crevé(e) d’être fatigué(e).
Eglantier, cousin sauvage du rosier : carte d’identité
☆ Wikipédia: Rosa canina
Y a-t-il une différence botanique entre le rosier rugueux et l'églantier?
Gelée de baies d'églantier (ou de gratte-cul)


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2014/05/04

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その3


以前に書いた日記にいただいたコメントで色々なことを学んだメモの続きです。


キリスト教における5の意味

キリストが十字架にかけられた負った傷は五つ。両手首、両足、わき腹。これをフランスでは「Plaies du Christ」と呼ぶ。

Sacré-Coeur Köln.jpg
Plaies du Christ, Cologne(15世紀)


5つの花弁のバラ

聖母マリアの受胎告知の絵画でい百合が描かれるのは知っていたのですが、赤い薔薇も聖母の純潔を表すシンボルなのだそう。

コメントに入れてくださった記事のリンク( 「モンテフェルトロ祭壇画」 (1) 卵をめぐるあれこれ)で、バラの花のモチーフを知りました。

ピエロ・デラ・フランチェスカが描いた「聖会話」です。


La Conversation sacrée, Piero della Francesca (1472)

注目したのは、画面上の左右にある5枚の花びらがあるモチーフ。ここの部分です

5つの花びらがある花のデザインは、よく見かける模様なのです。

Rose BVA紋章にも、「rose héraldique(紋章の薔薇)」と呼ばれるデザインがあります。

紋章に描かれる花としては、「Fleur de lys(フルール・ド・リス)」と呼ばれる百合の花の次に多いかもしれない。

キリスト教では、薔薇に意味があると言われて気がつきました。フランス語でroseという薔薇にまつわる単語がある。

フランス語日本語
rose薔薇
rosaceバラ窓
rosaireロザリオ

「バラ窓」という日本語は、何となくは気になっていたのです。なぜ薔薇に例えるのかと。ロザリオ(rosaire)というのは、中世ラテン語でrosarium、(聖母マリアの)バラの冠のことだったのでした。

薔薇の花が宗教画によく描かれている、というのは気にしたことがありませんでした。でも、検索してみるたくさん出てくる。Mikipediaにも「Madonna of the roses」というカテゴリーができていました。そこには入っていない絵画も多いので、マリアと薔薇の花の組み合わせは無数にあるように感じます。

Martin Schongauer Madonna in Rose Garden
La Vierge au buisson de roses, Martin Schongauer (1473)


花びらが5枚のバラの花?

5という数字はキリストの傷の数。

そこから、5枚の花びらがあるバラの花が描かれる。

でも、普通に薔薇と聞いて思い浮かべるのは、花びらがたくさん重なったバラの花ではないですか?

観賞用の薔薇でも存在はしますが、私が5枚の花弁があるバラと聞いて思い浮かべるのは野ばらです。

でも、そうすると困るのです。

バラの花は、フランス語でrose(ローズ)。野原に自生している「野ばら」の花は、églantine(エグランティンヌ)と呼ぶのです。聖母マリアのシンボルとされる薔薇はどちらなのかと思ってしまう...。

聖母マリアと薔薇の組み合わせの絵画を眺めてみたら、花びらが5枚以上あるバラの花の方が多いように感じました。マリアのシンボルとするときは「rose」の方を使うことが多いようです。églantine(野ばら)もバラ科の植物であるので、バラを特定するときにはroseで良いのかもしれません。

それでも、題名に「églantine(野ばらの花)」の文字を使って、マリアに野ばらを添えた絵画も見つけました。

http://www.pba-lille.fr/spip.php?article150 
La Vierge à l'églantine, Bastiano Mainardi - Palais des Beaux Arts de Lille

疑問は残ります。

キリストの5つの傷を現すには5枚の花弁がある赤い薔薇らしい。5枚の花びらがあると聞いたら、私には野原で見かけるéglantine(日本ではイヌバラと呼ばれる種類)なのですが、フランスで見る野生のバラは色に濃い薄いはあっても、血を現すほど真っ赤な花にはならないように思うのです。

とすると、やはりroseと呼ぶべきないのだろうか?...

églantineは清楚で美しいと思うので、好きな花です。マリア様にはこちらの方が相応しいとさえ思ってしまう。疑問を解くためにも、エグランティーヌを調べてみたら、新たな疑問が生まれてしまいました...。

続き:
エグランティーヌと呼ばれる野バラ

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フランス王家の紋章はユリの花 2012/06/11
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外部リンク:
☆ Wikipédia: Plaies du Christ
☆ Wikipédia: Rosaire
☆ Wikipédia: La rose en héraldique
☆ Wikipédia: Plaies du Christ
☆ Wikipédia: Rosa Mystica
聖母マリアと薔薇のシンボリズム
薔薇にまつわるお話
『薔薇の中の薔薇』 / 聖母マリアのカンティガス
ロザリオの祈り


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2014/05/03

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その2


友人が遺産相続した父親の家があり、とりあえずガラクタを捨てて掃除をしていたら、屋根裏部屋の壁に古めかしそうな彫刻が埋められていました。



この彫刻が何を意味するかを私が勝手に想像して日記にしていました。それから一年近くたった今、キリスト教文化にお詳しいaostaさんがコメントを入れてくださり、色々と知らなかったことを学んだのでメモしておくことにしました。

その記事はこちらです:
屋根裏部屋にあった古めかしい彫刻の解読を試みる 2013/06/12


4つの花弁のモチーフの意味は?

この彫刻が何であるかを解読してみようとしたとき、4つの花弁を持つ花のように見えるものが気になっていました。 手を前に組んだ人の下にある模様です。

これは、世界遺産に登録されているヴェズレー村にあるサント・マドレーヌ大聖堂の壁面にあったデザインと同じように見えます。


ヴェズレー大聖堂: 素晴らしいロマネスクの柱頭彫刻 2013/06/24

ヴェズレーの大聖堂は12世紀に建築されたロマネスク様式。この時代に使われていたということは、何か意味を持っていたはずではないですか?

さらに、良く似た構図の絵が見つかりました。15世紀のフレスコ画で、天使に支えられたキリストです。

Andrea del castagno, Christ in the Sepulchre with Two Angels by Andrea del Castagno 01
Andrea del Castagno - Christ au sépulcre avec deux anges, 1447 - Fresque Florence

屋根裏部屋で見つかった彫刻には両側から支える天使はいないものと酷似しています。フレスコ画では、下にある四角いものが墓として描かれています。しかも、花びらマークが3つあるのも同じ。

フレスコ画の方は、花弁の中央にある部分(柱頭?)が人の顔に見えるし、左右の花弁は丸くないので不思議です...。

これについて、コメントをくださったaostaさんが謎を解読してくださいました!
仏語でも把握しておかないとフランスで観光するときには役に立たないので、それも入れて理解したことをまとめてみます。

キリスト教では、天使には9つの階級がある

archange: 大天使、9階層の天使のうち第8階級の天使。
カトリックの3大天使: 「受胎告知」の画面に現れるガブリエル(Gabriel)、ミカエル(Michel)、ラファエル(Raphaël)

9階級のうち、最上級の天使は、セラフィム(でSéraphin)。熾天使(してんし)とも呼ばれる。
セラフィムは3対6枚の翼を持ち、2枚の翼で頭を、2枚で体を隠す姿で描かれるのだそうです。このような姿ではないでしょうか?

Seraphim - Petites Heures de Jean de Berry
Seraphim - Petites Heures de Jean de Berry

aostaさんの解説によれば、セラフィムは絵画作品では顔から直接羽が生えているような造形で描かれることが多いので、場合によっては羽が花びらのように見えることもあるかもしれないとのこと。

上に入れたフレスコ画で、キリストの墓に描かれた4枚の花弁にしては奇妙なデザインは、セラフィムと説明されれば納得できます。

さらに、セラフィムが持つ6枚の翼は、上と下を閉じればを4枚の花弁で描くことができると見えてきました。 

Giotto - Legend of St Francis - -19- - Stigmatization of St Francis.jpg
『聖痕を受ける聖フランチェスコ』 (フレスコ画; ジョット・ディ・ボンドーネ作)

StFrGiottoLouvre.jpg
François d'Assise recevant les stigmates par Giotto


4つの花弁がある花のモチーフが3つ並んでいる意味は?

aostaさんは、キリスト教における「3」という数字の意味を指摘されました。

「3」という数字は、三位一体に通じる数であり、天を象徴するもの、そしてキリスト教で最高の徳とされている「信仰・希望・愛」を示す数でもあることから神聖な数字とされている。

屋根裏部屋の彫刻でも、フレスコ画の墓でも、3つのモチーフが描かれているのは、そのためではないかという分析です。こちらも納得!

さらに、「天」を象徴する3に、地を象徴する「4」を加えた「7」も完全数といわれるのだそう。


スミレでたとえる意味は?

屋根裏部屋にあったキリストの墓と思われるものに入っていたのは、花びらが4枚のモチーフです。

ロマネスク教会の基本的なモチーフを紹介するフランスのサイトに入っていたデザインにそっくりで、そのモチーフをスミレの花(Les violettes)と呼んでいました。

Violetteフランス語でスミレに相当する単語は、violetteとpenséeがあります。その見分け方は、次のことなのだそう。
  • violette(ヴィオレット): 2枚の花弁が立っており、3枚の花弁が下を向いている。
  • pensée(パンセ): 4枚の花弁が立っており、他より大きな5枚目は頭をもたげている。


いずれにしても、スミレというのは花弁が5枚です。花びらが4枚のモチーフをなぜスミレと呼ぶのか?...  もっとも、その呼び方は他には見つからなかったので、このサイトが使っている名称が正しいのかどうかはわかりません。

aostaさんは、薔薇の花は聖母の純潔やキリストの受難を意味する花であることを教えてくださり、次のページをリンクしてくださいました:
「モンテフェルトロ祭壇画」 (1) 卵をめぐるあれこれ

ここで私は、4枚の花弁のモチーフから、キリスト教と薔薇の関係に興味を持ちました。百合の花が重要な意味を持つのは知っていましたが、バラは気にしたことがなかったのです。

キリスト教とバラの関係を調べてみたら、発見をしたり、また新たな疑問がわいてきました。それについては長くなるので、次回で書きます。

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外部リンク:
☆ Wikipédia: Angélologie
☆ Wikipédia: Archange
Glossaire 8 : Les frises dans l’art roman (3)


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