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2016/12/29
シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!
その13

いつか必要なことがあるかも知れないと思って、何でも写真に撮っている私なのですが、マロングラッセの写真を撮ったのは1回だけでした。



ここのところマロングラッセについて書きながら調べていたので見分けられるようになったのですが、後ろの写っている宣伝の写真で、このマロングラッセは南仏のメーカーのコルシグリア社(Corsiglia)のものだったらしい。

シリーズ記事の8回目で入れた製造方法を見せる動画を見て、誠実に作っている会社だという印象を受けていました:
マロングラッセを作るのには20日間もかかる

写真を眺めたら、ここで買ったマロングラッセが格別に美味しかったのを思い出しました。

でも、写真を撮っていたのは、壊れたマロングラッセを売っていたのが珍しかったからではないかと思います。写真に黄色い矢印を入れた袋です。

紙に包まれた落ち度のないマロングラッセは、100グラムで8.50ユーロ。100グラムとは5個くらいでしょうか? としたら、1個220円というところ? この写真を撮ったのは2012年11月でしたので、その当時のお値段ですけれど。

その左手にあるのは壊れたもので、100グラム6.40ユーロで売っています。



欠陥品なのに値段には大した差がないと思ったのですが、100グラム6.40ユーロというのは、どこが欠陥なのかと思う大きな塊のマロングラッセの値段でした。

その右手にあるリボンがついた袋に入っているのは小さく壊れてしまったもので、そちらは100グラム4ユーロという感じです。500円くらいですか。そうお安くはないですね。日本では、崩れたマロングラッセは半分近いの値段で売られているのですけど。

前回の記事「マロン・クリームはマロングラッセから生まれた」に書いたように、栗のジャムのようなマロン・クリームは、壊れて商品化できないマロングラッセから作られたのが始まりでした。

壊れてもこんなお値段で売れるとしたら、マロンクリームに入れてしまうのはもったいないではないですか? 伝統的な製法でマロングラッセを入れてマロン・クリームを作っていると歌っているメーカーでも、ほんの少し入れるだけなのではないかな?...


日本では、やたらに割れたマロングラッセが売られている!

マロングラッセのまともな写真を持っていないので、ネットショップの商品画像を使わせていただくために探したのですが、気がついたことがありました。

壊れたマロングラッセがたくさん売られているのです。もちろん、お値段には雲泥の差がありますけれど。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

割れマロングラッセ 1kg
価格:3642円(税込、送料無料) (2016/12/30時点)



マロングラッセを検索すると、「訳あり」がどのくらい入っているかご覧ください:
マロングラッセを楽天市場で検索

割れたものを探すためのキーワードまで提案してくるので、さらに探しやすくなります:
「マロングラッセ 割れ」で検索


楽天市場だと商品がたくさん出てきすぎるので、日本のアマゾンで検索すると、こちら。出てくるマロングラッセの3分の1は割れたものと見ました。

不自然ではないですか? マロングラッセを作るときには出来損なってしまうものが出るわけです。でも、日本で売っているマロングラッセに限れば、完成品より失敗作の方が圧倒的に多いと見えるのです。完成品は小さな箱に入れて売っているのに、割れたものは1キロ単位などで売っているのですから。

さらに確かめます。

インターネットで普通にマロングラッセ検索しても、壊れた「訳アリ」のがたくさん入ってきます:
「マロングラッセ」をキーワードにして、日本語Googleで画像検索

変だと私が覆ってしまうのは、フランスのサイトでマロングラッセを探したら、こんな結果にはならないからです。

商品となっているものか、レシピで使った画像が並んでいて、壊れたものの写真はほんの少し紛れ込んでいる程度なのです。

こちらをご覧ください:
「"marrons glacés"」をキーワードにして、仏語Googleで画像検索

マロングラッセとは何かと画像検索しているのですから、欠陥品が影を潜めているのは自然だと思います。


さらに気がついたのは、日本で「訳アリ」として売られている「壊れマロングラッセ」は、かなりお安いことです。フランスで売られているものが日本に入ると3倍くらいの値段になっていることが多いので、日本の市場に出ている訳有りマロングラッセは海外でできた欠陥品ではなさそうだと想像しました。

つまり、日本では、そんなに出来損ないのマロングラッセを作っているということ???

日本では、海老や蟹の手が1本なくなっているだけでも商品価値は落ちるので、壊れたマロングラッセも安く売られるのだろうと思ったのですが、なんだか変...。

そもそも、どうして、そんなに、たくさん、壊れたマロングラッセが日本の市場に出回っているの?!...


日本で崩れたマロングラッセをたくさん売っている理由を考えてみる

そんなことを私が気にする必要は全くないのですが、理由を考えてみました。

推測1:
海外のメーカーが作るマロングラッセの欠陥品を、日本が一手に輸入している?!

日本ではそんなにたくさん食べるスイーツではないのですから、製造過程で出る欠陥品の数だって、たかが知れているではないですか? とすると、まずそう考えられる。


推測2:
日本の栗は割れやすいので、日本で製造するマロングラッセでは欠陥品が大量にできてしまう?

でも、割れマロングラッセの宣伝で、イタリア栗を使っていますというのが多いので辻褄が合わない。マロングラッセを作るには、割れないように注意するではないですか? そうしないとメーカーが損をするわけですから、どうしてそんなに欠陥品を作るのか奇妙...。



推測3:
成型肉のように、割れたものを継ぎ合わせてマロングラッセを作って売る業者がいる?!

売られている割れマロングラッセは1キロ単位などが多いのでした。ちょっと食べれば良いものなのに、一般家庭で1キロも買って、どうするの? と聞きたくなる。

となると、日本が優れた技術を持っている成型肉ならぬ、成型マロンかな、と思ったのです。


栗の納豆が日本では好かれるのでは?...

クレマン・フォジェ社では、壊れたマロングラッセを売っていました:
☆ CLEMENT FAUGIER: Marrons Glacés Brisés Frais

出来損ないのマロングラッセを使ってクレーム・ド・マロン(マロン・クリーム)をつくることを考案した会社です。今でも同社のクレーム・ド・マロンにはマロングラッセのかけらを入れていると言っているのですけど、マロングラッセの欠陥品を商品化して売ってしまったら、マロン・クリームの材料が不足してしまわないの?...

フランスのネットショップでは、割れたマロングラッセをほとんど売っていません。でも、全く無いわけではありませんでした。

フランスのアマゾンで「マロングラッセ」を検索した結果

フランスアマゾンで唯一入っていた商品を眺めてみると...

Value Pack fissure MARRON GLACE 700g  748グラム   56.64ユーロ


フランスで売っているのに、日本語で「マロングラッセ」、さらに「イタリアからの自然の恵み」と表示されているのです! フランス人が見て分かる「marrons glacés」は小さくしか書かれておらず、アクセント記号が抜けた間違いフランス語になっています。

なんなのだろう?

製造過程で壊れたマロングラッセを一手に引き受けているのは日本で、それを世界に販売しているのは日本なの?...

このラベルが付いたものを日本でも売っているのではないかと検索したら、どことなく似ているパッケージで、「イタリア」という文字が入っているものを成城石井が扱っていました:

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

正栄食品 訳ありマロングラッセ 500g 訳アリ わけあり ワケアリ
価格:1826円(税込、送料別) (2016/12/30時点)


フランスのアマゾンで売っているのは100グラムあたり8ユーロ(約1,000円)でしたが、日本で廃売されているのは365円。

説明を読んで謎が解けた想いがしました。こう書いてあるのです:
  • 割れたりくずれてしまった栗をマロングラッセにしました。パンケーキなどのご家庭でのお菓子作りや、お茶菓子としてご利用いただけます。

つまり、栗の甘納豆 ???

そう思うと「訳アリ」マロングラッセの画像で見ていた違和感が消えます。本物のマロングラッセはしっとりしているのですが、訳アリのマロングラッセは砂糖がふいていて変だったのです。

日がたってしまったものを売っているのかと思ったのですが、割れ栗からマロングラッセ風に作ったら、しっとりした出来上がりにはならないでしょうね。

フランスのメーカーでは、栗2つを抱き合わせにして、甘味が過度に浸透しないようにという工夫さえしたいたのですから。

訳ありマロングラッセは、どこで作られたのか書いてないことが多いのですが、成城石井の商品には製造元が明記されていました。その会社のサイトを覗くと、コンステラシオンというのがありました。これかな?

でも、説明は違うのです:
  • マロングラッセの割れ物(ブロークン)に糖衣がけをしてあります。

またマロングラッセの出来損ないに戻ってしまった。でも、いずれにしても、日本で売られている訳アリのマロングラッセは、グラッセと呼ぶ糖皮ではなくて、砂糖でコーティングしているらしい。

ここまで分かったところでインターネット情報の追跡はストップするつもりだったのですが、フランスのアマゾンで売っていたのと同じ商品が日本のアマゾンでも販売されているのに出くわしてしまいました:


フランスのアマゾンに入っていた商品情報にはメーカーの名前は無かったのですが、こちらでは会社の略号を出していました。パッケージが似ていると思った成城石井が扱っていた商品と、同じ日本のメーカーのようです。

フランスのアマゾンで扱っているパッケージを見たときには、中国の商品なのだろうと思ったのですけど、日本の会社でしたか...。



私には何も根拠がないので言えません。

でも、これだけ日本には割れマロングラッセが出回っている。ということは、「訳あり」として日本で売っているのは、マロングラッセの出来損ないではなくて、初めから割れた栗でマロングラッセ風の甘納豆を作っているのではないか、と思ってしまいます。

日本茶を飲みながら食べるには、小粒でつまみやすいと好ましいかもしれない。マロングラッセと甘納豆は全く異なった味だと私は思うのだけれど、日本人には栗の甘納豆が好まれるのかもしれない。とすれば、これだけ「壊れマロングラッセ」が市場に出回っているのは納得できます、

また、お菓子を作るのに使えば「マロン」という名前が使えて高級感を出せので、需要が日本にはある...。

違うかな?...



追記:

マロングラッセを日本でたくさん作っているはずはないでしょうに、なぜそんなに割れマロングラッセが市場に出回っているのか不思議でなりません。... そんなことを考えても何にもならないのに、疑問を持ったまま年を越してしまいました。

コメントをいただいて、日本には栗の甘露煮というのがあったのを思い出しました。これもマロングラッセと同様に、栗を丸のまま残さなければ欠陥品になってしまいますよね。

お正月近くになると、栗の甘露煮はたくさん日本で売られている感じがします。

栗の甘露煮を楽天市場で検索


栗の甘露煮は、割れてしまったら栗きんとんにするわけにもいかないでしょうから、形が崩れたらディスカウントする以外にはないのではないでしょうか?

としたら、「訳あり」の甘露煮がたくさん出るはずですよね。

でも、それらしきものは、ほとんど売っていないのです! 栗の「訳あり」とか「お買い得」で検索すると、割れマロングラッセばかりが目立つのでした。形が不揃いなのが入っているから割安の甘露煮、というのはほんの少しありましたけれど。

唯一、栗の甘露煮の成功品と、割れてしまったののを両方売っているお店を見つけることができました。
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栗の雫
総量200g 固形量100g 
価格:1350円(税込、送料別) (2017/1/2時点)

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栗の雫(ブロークン)
総量200g 固形量100g
価格:918円(税込、送料別) (2017/1/2時点)


日本で売られている割れマロングラッセは変だと勘ぐってしまったのは、製造したマロングラッセは売ってはいないのに割れマロングラッセを売っている会社ばかりだったことでした。マロングラッセのメーカーが、商品化できないからと下請けに回してきたものを、日持ちするように甘納豆風に砂糖をかぶせたのかもしれないのですが、どうも不自然...。

上に入れた栗の甘露煮の欠陥品(ブロークン)は、見た目が悪いだけで、味はほとんど同じなのではないかという印象を持ちました。マロングラッセは、中がジューシーで、そんなに甘味がしみ込んでいないように仕上げ、乾燥させてはいけないという微妙なところがありますが、甘露煮にはそんなデリケートなところはないはずだと思うのです。液体もある瓶に入っているので乾燥してしまうということもないし。

3割お安いなら、私には甘露煮のブロークンで十分。少なくとも、砂糖をまぶして甘納豆のようにした割れマロングラッセより、日本風の甘露煮の方が美味しいだろうと想像します。

甘露煮の割れたのだろうと、皮をむく段階で割れてしまった栗だろうと、世界的にステータスがあるマロングラッセ風にして市場に出した方が売れるのではないかな?... だから、甘露煮の出来損ないはほとんど売っていないのでは?

勝手な推測を色々と書いてしまいましたが、事情を知っていらっしゃる業界の方の目に触れたらバカにされてしまうだろうな...。



「マロン」と言ってもマロンじゃない、などなど... いい加減じゃないか! と言いたくなることが多々見つかって、真面目に考えて調べているのはバカだとよ、と自分に言いたくなっているマロンのお話し...。

あと1つだけ記事を書いて、このシリーズは終わりにします。


続き:


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!



ブログ内リンク:
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
成型肉(せいけいにく)ってなに?無表示で出回る偽ステーキの見分け方
☆ YouTube: メニューの偽装防止に政府の規制は必要か 2013/11/09


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2016/12/28
シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その12

このシリーズの6番目で「栗のマロンとシャテーニュ、言葉の使い分けは? 」を書きながら調べていたら、私には馴染みがなかったマロン・クリームについて面白いことを学びました。

http://www.marmiton.org/recettes/recette-photo_creme-de-marrons-facile_32606.aspx


クレーム・ド・マロンマロン・クリーム

フランス語では「crème de marronsクレーム・ド・マロン)」と呼ばれるものは、日本では「マロン・クリーム」として売られているようです。

クレームの代わりにコンフィチュール(ジャムのこと)、マロンの代わりにシャテーニュ(栗)という単語が使われていたりもしますが、みんな栗のジャムかペーストのようなものです。

ブルゴーニュ名産の「クレーム・ド・カシス」は、カシス(黒すぐり)のリキュールなのですから、紛らわしいではないですか?

普通にフランス語で「クレーム」と言われたら、生クリームのことかと思います。

クリーム色も「クレーム」。

日本では真っ白な生クリームしか買えないように思いますが、本物の生クリームは薄い黄色で、いわゆるクリーム色をしています。

化粧品にもクレーム(クリーム)がありますね。つまり、ドロっとした感じがクレーム?...


なぜ「クレーム・ド・マロン」と呼ぶのか気になりました。普通の果実から作ったものではクレームとは言わないと思うのです。

クレーム・ド・マロンという名の商品を初めて作った会社があったのでした。


クレーム・ド・マロンの元祖はクレマン・フォジェ社

19世紀のフランスで、マロングラッセを大量生産することに成功したのはクレマン・フォジエ(Clément Faugier)でした。

それを書いたのは、シリーズ記事の9番目で、こちら:
マロングラッセとマロンの関係。鶏が先か? 卵が先か?

マロングラッセを作ると、製造過程で栗が割れてしまって欠陥品になってしまいます。それで、クレマン・フォジェ社では、そういう欠陥品を利用するために「クレーム・ド・マロン」を考案して売り出したのでした。


logo de Clément Faugier (société)同社のマロングラッセが販売開始したのは1882年。

その3年後、「クレーム・ド・マロン」を1885年に売り出し、その商標登録をしたのは1924年。

右はクレマン・フォジェ社のロゴですが、クレーム・ド・マロンとマロングラッセの文字も入れていますね。

つまり、「クレーム・ド・マロン(マロン・クリーム)」は、単に栗のジャムではなくて、マロングラッセが入っていることを示すために「crème de marrons(クレーム・ド・マロン)」という名前にしたのではないでしょうか?

でも、フランスの法律では、商品をクレームと呼ぶものはコンフィチュール(ジャム)よりも濃厚でないといけないということのようです。クレーム・ド・マロンの場合は、出来上がり100グラムに対して、栗のピューレが38グラム以上ないといけない。confiture(ジャム)やgelée(ジュレ)の場合は35グラム以上ですが、果実によっては6~25グラムの場合もあるのだそう。


現在は色々な会社がクレーム・ド・マロンという名前で販売していますが、何処でもマロングラッセのかけらを入れているようには思えませんでした。

ともかく、このマロン・クリームが有名なので、それを使った料理などには、栗の品種の「マロン」とは関係なしに、名前に「マロン」と入れているようでした。

マロングラッセはバニラで風味を付けますが、マロン・クリームでもそうします。となると、口に入れたときの味覚としては、マロングラッセとマロン・クリームはかなり似たものになるでしょう。たとえマロングラッセのかけらが入っていなくても、それは味にはさほど響かないのでは?

違いが出るのは、渋皮をしっかり除いているかと、バニラの質によるでしょうね。

高い品質のマロングラッセを作っているメーカーではブルボン種のバニラビーンズを使っていました。マロン・クリームの方は、そう高くは売れない商品なので、本物のビーンズは使っていないのではないかな?...

マダガスカル産ブルボン種

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*バニラ・ビーンズ(2本入パック)
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フランスで最高の栗はアルデッシュ産

Châtaigne d'Ardèche AOCアルデッシュ県は、中央山岳地帯にあり、昔から栗の栽培が盛んだっった地域です。

フランスで最高級の栗が生産される地域で、「Châtaigne d'Ardèche(アルデッシュ栗)」として原産地統制呼称のAOC/AOPも獲得しています。

AOCはフランス政府が優れた農産物とその加工食品に与える最高級の認証で、栗で獲得しているのは、少なくとも今のところはアルデッシュだけです。

クレマン・フォジェ社はアルデッシュ県プリヴァ市あります。

このクレマン・フォジエ社が売っているクレーム・ド・マロンは、「Crème de marrons de l'ardèche®」という名が付いており、「アルデッシュのマロン」の文字が入っています。

下が、発売当初から変わらないデザインのクレーム・ド・マロンです。
クレマン・フォジェのクレーム・ド・マロン誕生について詳しく書いているショップにリンクしておきます。 ↓

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クレマン・フォジェ マロンクリーム250g瓶
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フランス製のマロン・クリームが色々あるのを眺めながら、元祖クレマン・フォジェのにはアルデッシュのマロン栗を使っているのだから一番おいしいのだろう、と私は思ったのでした。

コルドン・ブルー

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マロンクリーム
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サバトン

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【サバトン】マロンクリーム 250g
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ボンヌママン マロンクリーム 225g
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マロン・クリームを楽天市場で検索


実を言って、マロン・クリームの食べ比べを私はしたことがありません。このシリーズ記事を書きながらインターネットで見れる色々な動画を眺めていたのですが、あれ? と思うことが出てきました。

マロンで作るクレームを取り上げた題されたテレビのドキュメンタリー番組の中で、クレマン・フォジェ社を訪問していたのですが、その工場の人が、同社のマロングラッセはアルデッシュ栗だけ使っているわけではない、と話していたのです。口ぶりからして、使っているにしても、かなり少なさそうな印象を受けました。

どこの栗を使っているかと国の名前を挙げていたのは、イタリア、スペイン、ポルトガル。... それに、フランス、という感じで話していました。

つまり、クレマン・フォジェ社のは「Crème de marrons de l'ardèche®(アルデッシュ・マロンのクリーム)」と付けて商標登録しているから、というだけのこと。なあんだ...。

考えてみれば、私が勘違いしていたのです。AOC/AOPを取っている栗は「Châtaigne d'Ardèche(アルデッシュ・シャテ-ニュ)」であって、マロンではないのだ! シャテーニュは栗の実のことで、マロンは質の良い栗の実なわけなので、そっちの方が上に思ってしまっていた...。

でも、番組でそれを暴いていたのは、フランス人だって私のように勘違いするからではないかな...。


ドキュメンタリー番組での試食結果

このドキュメンタリーでは、シェフたちに栗で作ったクリームの試食をさせていました。メーカーがどこかは隠して、3種類の商品の味に得点を付けていました。

フランス式の採点は20点満点なのですが、日本式に100点満点に直すと、こういう結果でした。

第1位(70点): 地元の栗栽培農家が作っているクレーム・ド・シャテーニュ
第2位(45点): 元祖クレマン・フォジェのクレーム・ド・マロン
第3位(40点): 大手スーパーの大量生産のクレーム・ド・マロン

ダントツで1位になった農家はLa Ferme du Châtaignierで、テストされた商品はこちらですね。

小規模生産の手作り商品が有名ブランドのものより美味しいというのは、よくあることです。

日本で販売されているマロン・クリームでも、下ののようなのは美味しいのではないかという予感がします。オーガニックの品質保証マークも獲得しているし。


bio project マロンクリーム  ¥ 2,426


それにしても、クレーム・ド・マロンの元祖クレマン・フォジェが、これほど低い点数になってしまったのはお気の毒。

でも、シェフたちは試食しながら、これは栗の渋皮が少し入っていて美味しくないと言っていました。ドキュメンタリーでは、この会社がどう作っているかは最終工程のところしか見せてもらえていていませんでした。メーカー側は、渋皮のタンニンが美味しさを出しているのだなどと説明していたのですが。加熱した後に渋皮を取り除く方が簡単だからではないでしょうか?

第3位になった商品は、添加物も入れてしまっていて味を誤魔化しているし、甘すぎて美味しくないと酷評されていました。そのメーカーが何処であるか、番組では明かしていないのが面白い。フランスのテレビのコマーシャルを見ていると、フランスが美食の国だとは思えないような大量生産している食品ばかり出てくるのですが、そういう大事なスポンサーの会社だから名前を伏せたのだろうと思いました。


インターネットでは、マロン・クリームのランキングをしているサイトもありました:
Les Tests Produits de Gourmets&Co - Les Crèmes de Marrons

1位になっているのが、ディスカウント・スーパーの商品というのがなんだか怪しげなランキングに見えてしまう。でも、ここでもクレマン・フォジェのは、同じようによく知られているサバトンのより下にランクされていますね。


ちなみに、日本の情報ではこうなっていました:

日仏貿易情報: クレマン・フォジエのマロン・クリーム
マロングラッセを加えることにより、栗の味わいがより引き立てられた、口どけ滑らかなマロン・クリーム

日仏商事情報 サバトンのマロンクリーム
マロンを裏ごししたものとマロングラッセ、砂糖、バニラエキス加えたマロンの風味をいかした香り高い製品


アルデッシュ栗を使ったサバトン社の新製品

では、本当にアルデッシュ栗を使ったマロンの食品はないのかと探してみたら、ありました。最近になってからサバトン社が作ったようです。

Confiture de châtaigne d’Ardèche
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

《サバトン》マロンクリームジャム【360g】
価格:1188円(税込、送料別) (2016/12/29時点)

Purée de Châtaigne d'Ardèche

こちらは、AOC/AOPの名称「Châtaigne d'Ardèche(アルデッシュ・シャテ-ニュ)」の名称を入れているので、本当にそれを使っていますね。フランス情報にもありました。

私は食品の品質保証の中ではAOC/AOPはかなり信頼しているので、アルデッシュ栗というのに重きを置くのですが、日本で販売するときには、それほどPRに利用していないような印象を受けました。


クレーム・ド・マロンについてのドキュメンタリー

ここで書いたドキュメンタリー「La crème des marrons(マロンのクリーム)」を入れておきます。1時間近い番組で、この秋に放映され、なかなか視聴率も良かったようです。


Documentaire: La crème des marrons

アルデッシュの栗栽培から、パリでの製菓まで、色々なことを学べます。

生産者は、消費者が大きい栗を喜ぶからハイブリッドの栗が出回っているけれど、そういうのは美味しくないのだ、などと言っていますね。世界一の栗の生産国は中国。フランスにもかなり入っているのでしょうか?
  • サバトン社の訪問場面: 25分経過後のあたりから
  • マロン・クリームの試食場面: 27:44~31:10


ホームメイドで栗のジャムを作る方法

アルデッシュで栗のジャムづくりをしているのを見せる動画がありました。


La recette de confiture de Chataigne ardécoise en V.O. sous titrée

シャテーニュのことをカスターニャと言っている。イタリア語とかスペイン語を思わせるけれど、それとも違うなと思ってしまう言葉。何語を話しているのかと思ったら、この地方の方言なのだそうです。それで標準フランスの字幕がついています。

やはり自家製が一番おいしいだろうな...。



インターネットの動画では、できそこないのマロングラッセの破片をクレーム・ド・マロンに入れているかどうかを見れるものが探し出せなかったのが残念。

その崩れたマロングラッセについても、1つ気になることがあったので続きを書きます。


続き:
 出来損ないのマロングラッセが、日本ではたくさん売られている謎


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!



ブログ内リンク:
評判の良いクレーム・ド・カシスを買いに行く 2016/06/21
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
☆ LES FILMS DE L'ODYSSÉE: LA CRÈME DES MARRONS
☆ France 5: La crème des marrons
☆ France Inter: La crème des marrons
☆ 9docu: La crème des marrons
Les Tests Produits de Gourmets&Co - Les Crèmes de Marrons
☆ 業界サイト: Sabaton lance une nouvelle gamme Premium à base de Châtaignes d’Ardèche AOC pour les pâtissiers et restaurateurs
☆ メーカーサイト: Bocal Confiture de châtaigne d’Ardèche
☆ 仏経済省: Confitures, gelées, marmelades de fruits et autres produits similaires
CLEMENT FAUGIER - L'entreprise  la Création


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2016/12/27
セイヨウトチノキが何であるかを、こう記載していた日本の大百科事典があるそうです:

マロニエという名称はマロン(クリ)に由来し、
マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。

フランスでは街路樹になっていたりするマロニエを見かけます。その樹木の命名が栗のマロンに由来する、というのはあり得そうな気がする。

でも、その実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは、信じがたい思いがします。フランスでは、有毒だから食べてはいけないとしか言われませんので!

シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その11


ニワトリが先か、卵が先か、の続き

マロングラッセについて以下の記事を書いたのですが、今回はその続きです。


いつマロングラッセが誕生したたかには諸説あるのですが、16世紀であろうというのが、フランスやイタリアでは定説になっているようでした。発祥地としては、フランスのリヨンと、イタリアのクーネオが登場しているのですが、現在の国境線が引かれた18世紀までは同じ文化圏だった地域と言えると思います。

栗を砂糖菓子にするレシピは、1667年に刊行された料理の本で初めて紹介されました。マロングラッセが大衆化したのは、工場生産に成功したフランスの企業が創設された1882年

マロニエの木がヨーロッパに入ったのが、これらの時期の後であれば、マロングラッセをマロニエの実で作っていたというのは辻褄が合わないことになります。ヨーロッパでは、中世にはすでには大切な食料となっていましたので。

以下に拾った情報を書きますが、私がたどり着いた結論から先に言っておきます。

マロングラッセが生まれたのは16世紀とすると、セイヨウトチノキで作っていたという話しあり得ない。17世紀以降だとすると、あり得ないこともない...。

とは言え、で作っても非常に手間がかかるマロングラッセを、毒性があり、皮をはがすのも容易ではないマロンで作っていたとは信じられないという先入観で私は染まっています...。


Paradoxe de l'œuf et de la poule


マロニエの木は、いつヨーロッパに入ったのか?

マロニエが入る前から、イタリアやフランスでは栗をマロンと呼んでいたのは確かだと思います。

ここまでに書いたことも含めて、まとめてみます。

栗の木: シャテニエ(châtaignier)

ヨーロッパグリの学名はCastanea sativa。sativaは「栽培された」の意味。

栗の実はシャテーニュ(châtaigne)だが、品質が優れている栗の実はマロン(marron)、そのような実がなる栗の木をマロニエ(marronnier)とも呼ばれる。


マロン
と呼ぶ栗は、植物学的にはイガの中で1つだけ果実が成長したものを言う。

今日のフランスの栗業界では、栗の中の仕切り率が12%以下の実がなる品種の栗の木からとれるものをマロンとしているが、栗に関係する食品名の使い分けはかなりいい加減である。

野生の栗の木には良い栗が実らないが、木材としては優れている。

※ イタリアで栗はcastagnaだが、フランスと同じように品質の良い栗はmarrone(複数形はmarroni)と呼ばれる。


 
栗の実は、フランスでも太古から食されていた。ギリシャのテッサリアは、古代から質の良いとして定評があった。

栗の品質を良くするためにフランスで栽培が始まったのは中世。シャルルマーニュ(カール大帝)は、ワインを飲みながら焼きを食べていた、という伝説がある。

秋に収穫された栗はクリスマスまでも保存できない。そのまま調理しても美味しくない栗や、長期保存するためのは、乾燥して粉にして小麦粉の代わりに使われることが多かった。また、栗は家畜の餌にもされたりしていた。

小麦が育たない地域ではが小麦の代用となっており、栗の木は穀物の代わりになることから、シャテニエは「パンの木」、栗は「貧者のパン」などと呼ばれていた。家畜の餌になることから、「ソーセージの木」、「肉の木」とも呼ばれていた。

16世紀、大きくて風味もある上質の栗は「marron(マロン)」という"カテゴリー"で販売された。イタリアからも上質の栗はフランスに入ってきた。

17世紀には、リヨンの市場で扱われる栗が「marron de Lyon(リヨンのマロン)」として高い評価を受けていることが定着していた。

※ 栗と同様に食糧難から人間を救う食料となるジャガイモは、フランスには1770年に入った。

19世紀ではフランスには栗林が非常に多かったが、20世紀になってからの農村から都市への人口移動、栗の木の病気によって栽培される栗の生産量はかなり減少した。

2006年、アルデッシュ県で生産される栗が「アルデッシュのシャテーニュ(Châtaigne d'Ardèche)」として、高品質保証のAOC(原産地統制呼称)を獲得した。


セイヨウトチノキ: マロニエ(marronnier)
実はマロン(marron)と呼ばれ、食用にはならない。

栗でなくトチノキであることを強調するためには、樹木はマロニエ・ダンド(marronnier d'Inde)、果実はマロン・ダンド(marron d'Inde)と呼ぶ。「ダンド」は「インドの」の意味だが、東インド会社から入ったものや、珍しいものには「インドの」と付けることがよくあった。

マロニエの学名Aesculus hippocastanumAesculusは、食用になる殻斗果のコナラの意味。ippocastanumの方は、馬 (hippos) とシャテーニュ(châtaigne ギリシャ語で(kastanon)に関係している。馬が名前に入っているのは、馬には少量なら与えても大丈夫なことから。

※ 英語圏ではマロニエをhorse-chestnut、hippocastanumと、学名のままで呼ばれているようだ。イタリアでの名称はippocastanoないしcastagno d'Indiaで、マロニエはイタリア全土にある(特に多いのは中央北部)。

現在ではマロニエの葉や果実からは薬も作られている。マロンを馬に与えるにしても、薬にするにしても、毒性を抜く作業が必要である。


原産地は小アジア。氷河期の終わりころには生育していたとみられる。1557年に、バルカン半島にあったものがコンスタンチノープルに入ったと言われる。

1576年(あるいは1591年)、ウィーンにマロニエが入ったのがヨーロッパで初めてであると一般的に言われる。しかし最近では、考古学者と古生物学者が、もっとずっと前からヨーロッパに存在していたことを発見している。

フランスに入ったのは1615年というのが定説(ルイ13世の時代)。植えられたのは、パリのスービーズ館(Hôtel de Soubise)だと言われる。

マロニエが初めに植えられたのはパリの庭園であり、ヴェルサイユ宮殿でも庭園を飾ったことから、マロニエは緑陰樹として適していることからだったと思われる。

1718年、marronnier d'Inde(マロニエ・ダンド)という名称が文献に登場する。

18世紀になると、慢性気管支炎などを治療するために、マロニエの果実から薬を作るようになった。


フランスでは、いつから栗を「マロン」と呼んでいたのか?


 ラ・フォンテーヌの『寓話』に登場する「火中の栗を拾う」という表現

日本語で「火中のを拾う」という名訳ができている「tirer les marrons du feu」という表現がフランスにあります。

ラ・フォンテーヌ『寓話(Fables de La Fontaine)』の第9巻 第17話「猿と猫(Le Singe et le Chat)」に出ているために有名になった表現です。


ギュスターヴ・ドレの挿絵

この寓話が発表されたのは1678年

でも、「tirer les marrons du feu(火中の栗を拾う)」はラ・フォンテーヌが考え出した表現ではなくて、その前から使われていた表現なのだそうです。

古い文献に現れた栗としてのマロンを挙げてみます。
  • 1526年: Claude Grugetの『Les Diverses leçons de Pierre Messie』で、「fruit du marronnierマロニエの果実)」として(P. 888)。

  • 1640年: Antoine Oudinの『Curiosités françoises(フランス奇言集)』で、「tirer les Marrons du feu avec la patte du chat(猫の脚で火中のマロンを取り出す」として。

  • 1655年: モリエールの喜劇『L'Étourdi ou les Contretemps(粗忽者)』で、「tirer les marrons de la patte du chat(猫の脚でマロンを取り出す)」として(第5幕)。

少なくとも、17世紀にはマロンと呼ぶ栗が身近な存在だったと言えると思います。


 マロングラッセのレシピが初めて文献に登場したのも17世紀

マロングラッセとマロンの関係。鶏が先か? 卵が先か?(シリーズ記事 その9)」に書いたように、フランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌが1667年に刊行した『Traité de confiture ou Le nouveau et parfait confiturier』にマロングラッセのレシピが紹介されていました。

このレシピでも、栗はマロン(marron)という単語を使っています。

17世紀には、「Marron de Lyon(リヨンのマロン)」という栗が美味しいという定評が出来上がっていたそうですので、それを使ったレシピなのかもしれません。

リヨンのマロンといっても、リヨン市で栗が取れたわけではなくて、大都市なので周辺から栗が集まったためです。フランスの栗の産地であるアルデッシュ県にも近いし、イタリアにも遠くはない。少なくとも、パリよりはずっと栗が集まりやすい場所でした。

マロングラッセは、16世紀にリヨンで誕生したという説は、それをもとにしていると思われます。

16世紀には、大きくて美味しい栗を「マロン」と呼んでいたそうなのですが、イタリアから入った栗も、アルデッシュ産のものも、販売する価値があるような美しい栗はマロンと呼んでいたのではないでしょうか。

栗は小麦の代わりになるために「貧者のパン」とも呼ばれていたし、家畜の飼料にもされていたのですから、ただ栗の実であることを示す「シャテーニュ」ではなくて、「マロン」と呼びたかった気持ちは理解できる気がします。


 マロンの語原はイタリア語

marron(マロン)には色々な意味があるので複雑です。

フランス語の「マロン(marron)」という単語は、ラテン語のmaroに語源があると言われています。リヨン周辺地域で昔にあった言葉では、そのラテン語を受けて「marr-」という接頭語が「小石」の意味で使われていたのだそう。

フランスの植物情報では、マロニエ(marronnier)という名前が付いたのは、この実が小石(マロン)のように丸かったからという説明もありましたが、仏仏辞典には記載がなかったので、真偽のほどは分かりませんでした。

ともかく、イタリア語から入ったマロン(古いフランス語ではmaronと綴った)という単語は、10世紀のフランスでは使われていたようです。



マロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは信じられないので、おかしいと言いたくて背景を調べて書いてしまいました。

同じように疑問を持たれた方が記事を書かれています。こちらの方がスッキリしていて良いですね:
マロングラッセはかつて本当にセイヨウトチノキ(マロニエ)の実が使用されていたのか

そこに書かれている情報によると、飢饉のときにマロニエの実を食べていたという記載があるそうなのですが、私が調べたフランス語情報では1つも出てきませんでした。マロンを食べるためのあく抜きをする方法も全くなし。

フランスは昔から食料には恵まれていたので、マロンまで食べなくても切り抜けられたのだろうと思いますけれど...。

飢饉も乗り越えられるジャガイモを普及させるために、フランス王家はかなり苦労していました(ジャガイモの花で書いています) 。日本のドイツ文学者とおしゃべりをしたとき、ドイツでは南米からジャガイモが入ったときには人々が簡単に飛びついていたと言われたので違いを感じて興味深かったのでした。


マロニエの実を食べていたはずはない、と少し違った角度からも立証してみたいと思って私も書いたわけなのですが、日本の百科事典に書かれていたことは本当なのだろうか? と調べる必要もなかった、と思っているのが正直な気持ちです...。


以下のことは分からなかったのですが、保留にしておきます:

栗の「マロン」は、植物学の定義ではイガの中に実が1つだけ大きく成長したものを指すのだそうですが、その定義がいつ出来たのかは分かりませんでした。

16世紀に「マロン」と呼んでフランスで販売されていた栗が、イガの中に実が1つだけの栗を指していたのかどうかの情報は見つけることができませんでした。植物学的定義がこの時代にはできていなかったとしたら、市場では栽培して大きな実になって美味しい栗を「マロン」と呼んでいた可能性は大きいと思います。


まだマロンには不思議が残っているので、もう少し(!)続けます。

続き:
 マロン・クリームはマロングラッセから生まれた


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!




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★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
【研究機関の情報、辞典】
☆ Cairn: Classer et nommer les fruits du châtaignier ou la construction d'un lien à la nature
☆ CNRTL: Définition de MARRON |  Etymologie de MARRON
☆ Bibliothèque municipale de Lyon: Marrons et châtaignes
☆ Larousse:  Définitions  marron
☆ Littré: marron (définition, citations, étymologie)
☆ Tela Botanica: Le chataîgnier l'arbre à pain, providence de nos ancêtres

【その他のソース】
☆ Doctissimo: Marronier d'Inde (Aesculus hippocastanum)
Introduction du marronnier en France
☆ Le Rendez-vous des Arts Culinaires: Histoire de la châtaigne
☆ Grand Paris: Caractéristiques du marronnier d'Inde
La Châtaigne  un peu de botanique
☆ L'atelier des Chefs: Tirer les marrons du feu… (avec la patte du chat)
☆ ルネサンスのセレブたち: 庶民の腹を満たした栗の話 イタリア情報

【火中の栗を拾う】
☆ 北鎌フランス語講座 - ことわざ編 成句 tirer les marrons du feu
☆ 故事ことわざ辞典: 火中の栗を拾う
☆ Wikipedia: The Monkey and the Cat
Fable Jean de La Fontaine  le singe et le chat
能楽さんぽ  火中の栗を拾う

【焼き売り屋(Marchand de marrons)】
☆ France pittoresque: Marchand de marrons d'autrefois
☆ Google Livres: Le Castoiement ou Instruction du perè à son fils
☆ Wikisource: Les rues de Paris-Les Vieilles Rues (Le Vieux Paris)


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カテゴリー: 植物 | Comment (0) | Top
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2016/12/23
日本に定着しているらしい「昔はマロニエの実でマロングラッセを作っていた」というのは変だと思って、少し前からマロンについて書いています。

フランスでは、栗のことを「マロン」と呼びますが、セイヨウトチノキのマロニエの実も「マロン」なので、ややっこしい。前回の記事から、この2つをマーカーで識別できるようにしました。

フランスで栗の実マロンと呼ぶようになったのはいつなのか、ももそもマロニエと呼ばれる樹木はいつヨーロッパに入ったのかを調べていたら、またまた奇妙なことに出会いました。


シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その10


セイヨウトチノキマロニエ)について調べていたら、フランス美術でよく登場していたと書いてありました。

特に、19世紀末から20世紀にかけて開花したアール・ヌーヴォーでは、ナンシー派が好んでマロニエをモチーフにしていたのだそう。

右に入れたのは、ナンシー派美術館で見られる作品。

ウージェーヌ・ヴァラン(Eugène Vallin)がエミール・ガレのために作ったドアで、彫り込まれているのはmarronnier(マロニエ)だという説明がありました。

栗の木マロニエなのかは、花が咲いていたり、実がなったりしていると簡単に見分けがつきます。

でも、このドアの画像を拡大してみると、花や実はないので、余りよく分からない。

でも、葉の形はマロニエに見えます。マロニエという言葉で真っ先に思い浮かべるセイヨウトチノキマロニエを連想するし、ナンシー派がマロニエのモチーフを好んだと聞いた先入観もあるので、マロニエなのだろうと思いました。


英語でもトチノキと栗の木は混乱する?

マロニエの花は、栗の花と違って華々しくて美しいです。

ヨーロッパグリ

シャテニエ
châtaignier
セイヨウトチノキ

マロニエ
marronnier
(marronnier d'Inde)
Feuilles de châtaignier


絵画でもマロニエが描かれているだろうと思って検索して出てきたのが、下のルノワールが描いた作品でした。

Pierre-Auguste Renoir - Chestnut Tree in Bloom.jpg

「Le marronnier en fleurs(花咲くマロニエ)」と題されていました。

検索を続けていると、同じルノワールの作品で「Châtaignier en fleurs(花咲く栗の木)」という文字が目に飛び込んできました。

面白い! 同じ1881年の作品になっているのです。ひょっとして、私のようにマロニエ栗の木の違いをルノワールも気にしていたのだろうか?

興味を持って画像を探してみたら...
同じ絵なのでした!!!

余り有名な作品ではないらしくて、この絵画に関する詳しい情報は出てきませんでした。これを栗の木にしているのは絵画の複製を売っているサイトなので、怪しげ。

Wikipediaに画像が入っているのを見つけたので眺めると(上に入れた画像をクリックすると拡大します)、私にはマロニエに見えます。

ちなみに、使わせていただいた画像のファイル名は「Chestnut Tree in Bloom.jpg」。英語では栗の木としているのかな?...

日本では、フランスの絵画でも英語の題名を訳していることが多いので、日本でも栗の木になっているのでは? やはり、売られているポスターでは「花咲く栗の木」になっていました


フランス語でmarronnier(マロニエ)と言われても、どちらの木なのか特定できないのですが、英語でもそうなのでしょうか? chestnutを使うなら、horse-chestnutと言わないとマロニエにならないと思うのですけど。

でも、絵画を見たら判断できると思うのですけど...。


探していたら、ゴッホは栗の木を何枚も描いていたと知りました。

画像を探すと、Blossoming Chestnut Branchesが出てきました。チェスナットとなっちますが、これもマロニエに見えますけど...。この画像はWikipediaで大きなものは見つけられませんでした。何処かで盗まれて行方不明になっていたけれど、見つかった作品のようです。

このゴッホの作品の正しい題名は「Branches de marronniers en fleurs(1890年)」のはずです。つまり、「花咲くマロニエの枝」。これはパリのルーブル美術館に所蔵されている作品なので、フランス政府のサイトJocondeの作品紹介ページで題名が確認できました。

ゴッホは、幾つもマロニエの絵を描いていたようです。
でも...。

下は、パソコンのマウスパットとして売られているアイテムです ↓

Vincent Van Gogh Tapis De Souris - Châtaignier En Fleurs II, 1890

フランス語で「花咲く栗の木」として売られているのですけど、ショップにある画像を拡大して眺めると、どう見たってマロニエの木なのです..。

こちらも、正式な絵画の題名は「Marronniers en fleurs blanches(白い花が咲いているマロニエ)」で、1890年の作品でした。


絵画は食べないから問題がない!

フランス情報で、栗のマロンとマロニエのマロンの違いを説明しているときには、100%と言えるほど、間違えないようにと書いてありました。毒があるマロンを誤って食べてしまったら問題だからでしょう。

でも、栗の木の絵だと思ってマロニエの木が描いてある絵画の複製を買った人が食べるはずはないのですから、全く問題はないわけです。どうでも良いわけですよね...。マロニエの実のマロンで作るのが本物のマロングラッセだから食べてみたい、と思わせてしまうよりは罪がないです。


このシリーズ記事は、2つか3つ書くつもりだったのに、次々と不思議なことにぶつかるので記事が増えています。このままではマロンを抱えたまた年を超してしまいそう...。

フランスには、落ちてきたばかりマロンを拾って2つか3つをポケットに入れておくと、リューマチや腎臓の痛みを回避できるという昔の迷信を未だに信じる人がいるようですが。マロンから出るエッセンスが効果を出すようで、固くなったら新しいのと取り換える必要があるとのこと。

マロンを紙幣で包んでおくとお金が増えるという迷信もあるのだそう。エキゾチックな樹木なので、何か不思議な力を持っているように思われたのでしょうね。


フランスでは、いつマロニエと呼ぶ樹木が入ったのか、栗をマロンと呼ぶようになったのはいつなのか、という本題を次回に書きます。


続き:
 栗のマロンが先か? マロニエのマロンが先か?

★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!

ブログ内リンク:
★ 目次: 縁起物や迷信について書いた記事 (フランスを中心に)
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
☆ INRA: D'arbre en Art - Les feuillus
D'arbre en art: l'arboretum d'Amance
☆ Grand Paris: Caractéristiques du marronnier d'Inde
☆ Si l'art était conté...: VAN GOGH A AUVERS - 6. Les marronniers
☆ MMM: ナンシー派美術館
☆ Se connaître: Le marronnier d’Inde


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2016/12/22
シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その9


マロングラッセの発祥に関して、日本では奇妙に思えることが定着しているようだ、と書きました:
日本で言われるマロングラッセのお話しは、フランス的な冗談では?

平凡社 世界大百科事典の「セイヨウトチノキ」のところに、こう記載されているそうなのです:
マロニエという名称はマロン(クリ)に由来し、
マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。


ここのところ栗の実について書いているのですが、フランスのサイトはどこでも、栗の木シャテニエ)とマロニエを混同しないように、としつこいくらい書いてありました。毒性があるというマロニエの実を間違えて食べてしまって事故をおこされては困るからでしょう。

百科事典に書いてあれば信頼します。マロニエの実で作った本物のマロングラッセを食べたいという人までありました。日本のトチノキからはお菓子が作られますから、セイヨウトチノキも食べられると思っても不思議はありません。


今回は、百科事典に書いてあったことが本当なのかを調べたことを書きます。

フランスでは、マロンマロニエと言う言葉が、ヨーロッパグリセイヨウトチノキの両方で使われるので、非常にややっこしいです。このページでは、マーカーで区別することにしました。

ヨーロッパグリ
châtaignier
(marronnier d'Inde)
  • マロニエ(セイヨウトチノキ)の実はマロンと呼ばれるが、これは食用にはならない。
  • シャテニエ(栗の木)の実は、シャテーニュと呼ばれる。しかし、品質が優れている栗をマロンと呼び、そういうマロンがなる木はマロニエと呼ばれる。

マロニエからは薬が作られ、葉も皮も実も使われるそうです。あく抜きをすれば食べられないことはないのかと思って調べてみましたが、マロニエの実をどうすれば食べられるかという情報は全く出てきませんでした。苦いのだと書いてあるので、食べてみようとした人はいたのかもしれませんけれど。

次にひっかかるのは、近世になってヨーロッパに入った樹木をマロニエと名付けたのは、栗のマロンから来ているという点ですが、これはあり得そうな気はします。

マロニエが入ったとき、すでにマロングラッセなるお菓子が存在していたのだとしたら、昔はマロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは成り立たないことになります。


Paradoxe de l'œuf et de la poule

マロニエはいつフランスに入ったのか? そもそも、マロングラッセはいつ、どこで考案されたのか?

それを知りたくて調べてみたのですが、どの情報を信じて良いのか分からない。分からないことをブログに書くべきではないとは思ったのですが、拾い出した情報をメモしておきます。正確な事をお知りになりたい方は、専門書の文献で確認してくださるようにお願いいたします!


マロングラッセは、いつ生まれたのか?


 マロングラッセMarron glacéとは何か?

「glacé(グラッセ)」はglacerの過去分詞で、「グラッセした」となる。

グラッセは「凍った」という意味もありますが、料理で使うときは、艶を持たせるときに使われます。野菜の艶煮、バター煮、肉や魚の料理でするり焼き、ゼリーや濃縮汁をかけて表面に艶をだす、シロップ漬け果実の糖衣コーティングなど。

菓子では、糖衣を着た、粉砂糖がかかったということになる。もちろん、フリーザーで凍らせたものもグラッセ。アイスコーヒーも、café glacé(カフェ・グラッセ)と呼ばれます。

マロングラッセには独特の艶があって、それが「グラッセ」なわけです。最後に行われる艶出しの行程がglaçage(グラサージュ)と呼ばれていました。

艶がなかったら、マロンのコンフィと呼ぶべきでしょうね。ところが、マロン・コンフィのレシピを探しても殆ど出てきません。あったのは、こちら(Marrons confits)。グラサージュはしていないし、写真でも艶のないマロンが見えます。

コンフィというと、甘くしない料理もあるわけで、Le confit de châtaignes aux petits oignons et aux noixというレシピもみつかりました。料理の付け合わせとして、栗、玉ねぎ、クルミなどで作っています。

marron confit(マロン・コンフィ)、châtaigne confite(シャテーニュ・コンフィ)としているレシピ「Marron confit ou plutôt châtaigne confite」では、最後にグラサージュを最後にしていて、普通に家庭でマロングラッセを作るレシピと変わらないように見えました。

初めてお目見えしたマロングラッセは艶がないものだったのではないかと思うので、艶がなくてもマロングラッセと言うのかどうかを確認したかったのですが、よく分かりません。

ともかく、栗を甘く煮た甘いお菓子として食べるレシピがマロングラッセのルーツだ、とは言えると思います。


 マロングラッセ誕生は砂糖の歴史に関係しているはず

マロングラッセが、いつ、どこで生まれたかには諸説があるのですが、フランスで定説になっているのは、次のような歴史です。
  • 16世紀に、フランスイタリアでつくられたであろう。
  • 1664年に発行された書物の中に、マロングラッセと呼べるデザートのレシピが入っていた。
  • 1882年に、マロングラッセは工場生産されるようになり普及した。

16世紀か17世紀にマロングラッセが誕生したという説には理由があります。

コロンブスがアメリカ大陸を発見したのは1492年。

16世紀になると、ブラジル・カリブ海の島々で大規模なサトウキビ栽培が行われるようになり、生産された砂糖(粗糖)がヨーロッパに輸出されます。

今まではできなかった砂糖をふんだんに使ったスイーツのレシピの開発が進んだと見るのは自然に思えます。

当時のフランスでは、すでに「マロン」と呼ばれる上質の栗が市場で売られていました。

18世紀後半になると、産業革命によって技術革新が起こり、精製度が高く均質な砂糖が大量にできるようになりました。

それによって、これまでの贅沢品で限られた人々しか口にできなかったマロングラッセが工場生産されるようになり、庶民も手に入れられるスイーツとなり、外国へも輸出されるようになります。


 フランス発祥説も、イタリア発祥説も、
   両国の国境にあるサヴォワ地域で、16世紀に生まれたとしている


マロングラッセの最も古い誕生としては、フランス、あるいはイタリアというのがありました。

Wikipediaのフランス語ページでは原産地はフランスと見出しを付けているのに対して、イタリア語ページではフランスとイタリアとなっているのが面白い。でも誕生したのは何処かという記述では、両ページとも同じことを書いていました。


 フランス発祥説
16世紀に、フランス中部のリヨンでマロングラッセが登場した。

リヨンは、現在のフランスで最大の栗の生産地アルデッシュ県(ローヌ・アルプ地方)に近い大都市。


 イタリア発祥説
16世紀、イタリアのピエモンテクーネオ(Cuneo)で生まれた。

こちらも栗の産地で、ヨーロッパ諸国に輸出される栗の集積地であった。

Karl Emmanuel I Savoyen MATEO.jpgクーネオだとする根拠は、サヴォイア公などの称号を持つカルロ・エマヌエーレ1世(1562~1630年)の調理人が考え出し、サヴォワ公国の宮廷でマロングラッセが喜ばれた、というところから来ている。

ルロ・エマヌエーレ1世は、イタリアのピエモンテ州やフランスのローヌ・アルプ地方及びスイスのフランス語圏にまたがるサヴォワ一帯を支配していた家系。


イタリアが発症の地だとする説には、それをフランスにもたらしたのは誰かという仮説もある。

Portrait de Catherine de Médicis (vers 1555).フランス王妃のカトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Médicis 1519~1589年)が。故郷のイタリアから嫁いで来たときの荷物にマロングラッセが入っていた、というもの。

1533年9月1日、カトリーヌはイタリアを去り、フランソワ1世の次男オルレアン公アンリ(後のアンリ2世)の妻としてフランスに来ている。

彼女は血なまぐさい歴史で知られるが、進んでいたイタリアの食文化を伝え、今日のフランスの美食を築いた功績者でもあった。

マカロン、ヌガー、パン・デピスフランジパーヌ(アーモンドクリーム)なども、彼女がフランスにもたらしたと言われる。



マロングラッセの発祥地にリヨンが登場しています。リヨン市は、フランス最大の栗の産地であるアルデッシュ県にも近いし、イタリアからもパリに行くより遥かに近いです。

16世紀にはすでにリヨンの市場で取引されていた上質の栗「マロン」は、フランス産とイタリア産の両方だったのではないでしょうか?

⇒ 3地点を結んだ地図を表示


フランスで唯一の栗の原産地呼称AOC/APOを持っているのがアルデッシュ県で、この県にはマロングラッセのメーカーが幾つもあるので、フランス説にしたいという気持ちが働いているのではないかという気がしないでもありません。

フランスかイタリアか、というのは現代の国境を考えているから分けるのであって、あのあたりでマロングラッセが誕生したのだろう、という程度で良いのではないかと思ってしまいます。何か文献に残っているわけでもありませんので。

昔のフランスで栗を売る人の掛け声に「J'ai chastaignes de Lombardie !(ロンバルディアの栗がありますよ!)」というのがありました。大きくて質の良い栗はイタリアからフランスに入ったのかもしれない気もします。イタリアから入った栗を使ってフランス側がマロングラッセを考案したって良いわけではあります。

イタリア発祥説のクーネオがあるピエモンテは、18世紀始めまで国境を跨るサヴォア公国Duché de Savoie) だったので、文化はフランスと共有していたはずです。

1416年から1713年まで存在したサヴォア公国は。現在のイタリア北西部(現ヴァッレ・ダオスタ州、ピエモンテ州)、フランス東部のサヴォワ地方や現アルプ=マリティーム県、スイスのジュネーヴをテリトリーにしていました。首都は、1563年にトリノ(現在はイタリア)に遷都されるまで、現在はフランスになっているシャンベリでした。

16世紀のサヴォワ公国の地図があったので下に入れます。このあたりでマロングラッセが誕生した?

サヴォイア公国の位置
起きな地図にある白線が現在の国境です。


下はサヴォア公国の15世紀の地図ですが、その左上で枠から少し外れたところに赤丸があるのがLyon(リヨン市)です。

クリックすると拡大地図が開きます。
Savoie 15e siecle

地図は、こちらのサイトに入れてくださっているものの方が見やすいかもしれません:
サヴォイア家(サヴォワ家)


マロングラッセの誕生説は、現代に近づいてくると証拠もあって、かなりはっきりしてきます。


 17世紀半ばのフランスでレシピが文献に登場した

ヴェルサイユ宮殿で、ルイ14世の食卓にマロングラッセが登場していた、という説があります。ルイ14世は大変な美食家で、大食漢でもありました。

日本ではよく、ナポレオンに愛されたワインとか食品とか言って宣伝しますが、フランス人には余り宣伝効果はないだろうと思います。食べ物にうつつを抜かしていたら、あんなに戦場ばかりにいて、敵も味方も死なせたりしてはいられませんから。

ルイ14世の時代だったという説の大きな証拠になっている書籍があります。

17世紀半ば、料理人ラ・ヴァレンヌが著した『Traité de confiture ou Le nouveau et parfait confiturier(1667年)』に、栗を砂糖のシロップ煮にして乾いた状態にするレシピが入っているのです。

この本の題名には定訳がないのですが、訳したら『ジャム概論、あるいは最新かつ完璧なジャム製造者』というところでしょうか?



現在のマロングラッセと同じものではないでしょうが、それのルーツと言えるレシピが文献に現れたものとしては、これが最も古いと言われます。

著者のフランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌ(François Pierre (de) La Varenne 1618~1678年)はブルゴーニュのディジョン生まれの人で、ブルゴーニュ南部を統治していたデュクセル侯爵(Marquis d’Uxelles)の料理人として10年間ほど働きました。

マッシュルーム・ペーストの「duxelles(デュクセル)」も彼が考案して侯爵の名前が付けられたレシピでした。

彼がデュクセル侯爵家に使えていた1651年に出した『フランスの料理人(Le Cuisinier françois』は、大成功をおさめ、再販を続けました。イタリア語にも翻訳されています。今日でも、中世的な料理を現代的なフランスのガストロノミーにまで高めたという記念碑的な料理の本だと言われています。

この中では、今日よく知られているベシャメルソース、ブーケ・ガルニなどのような用語も色々と使われており、ミルフィーユのようなレシピもあるとのこと。

その後、ラ・ヴァレンヌはルイ14世の大臣だったルーヴォワ候の料理人になっています。ということで、ルイ14世も彼のマロングラッセを食べただろう、ということのようです。


 1827年、グラサージュをほどこしたマロングラッセがパリに登場

おそらくド・ラ・ヴァレンヌのレシピでは、現在あるような艶のあるマロングラッセではなかっただろうと思うのは、マロンの艶出しを考案したという人物がいるからです。

糖菓製造者のBélissaire Boissierが、glaçage(グラサージュ)と呼ぶ艶のあるマロングラッセの製造法を作り出したとされています。

彼の会社は現在もパリの高級住宅地16区に美しいブティックを構えています。

ボワシエ社のサイトを読むと、ド・ラ・ヴァレンヌの著書から150年たったとき、ベリセール・ボワシエが今日のマロングラッセの製造法を発明したとして、簡単な説明があるだけでした。

ド・ラ・ヴァレンヌの著書が発表されたのは1667年ですから、その150年後だったら、1817年に発明したということですよね? ボワシエ氏の会社が創設されたのは1827年でした。ずれている...。でも、それは気にしないことにします。



少し奇妙な感じがしました。マロングラッセの歴史の中には、ほとんどボワシエ社のことは書かれていなかったのです。出てくるのは、ボワシエ社が発信している情報か、この会社を紹介している記事くらいなのです。

日本の情報では「マロングラッセの発祥の店」と書いてある記事が多かったのですが、フランスでは製造法を確立したと言うだけではマロングラッセを誕生させたとまでは言わないのかな?... もちろん、フランス情報でも「マロングラッセの初めてのレシピを産んだ」というような紹介もあったのですが、内々だから書いているような気もしました。

ボワシエ社の方では、マロングラッセの歴史に残る店であると宣伝する気持ちはないのかも知れません。サイトでは商品が美しく紹介されているのですが、歴史のところはほんの少し書かれているだけで、栗のグラサージュを発明した人の写真も、昔の店や商品など見せる写真も全くありません。店には何も昔の記録がないのかな...。

店の宣伝としては、文豪ヴィクトール・ユーゴー(1802~1885年)のお気に入りの店だったということの方が誇らしく思っているようでした。

ユーゴーが飴をほめるポエムのフレーズをよく使っています。彼がお気に入りだったのは「Bonbons « boule »」というキャンディー(こういうのだそうです)。今ではよくありそうな飴玉ですが、これもボワシエの考案だったのだそう。


あと10年くらいで操業200年になる老舗のボワシエとは違って、フランス情報のマロングラッセの歴史には必ず登場する会社があります。


 マロングラッセが工場生産で普及するようになったのは、1882年のフランス

マロングラッセの歴史の中で、これだけが確定的なこと、という感じで紹介されています。

初めて工場生産して販売したのはフランスで、それは1882年だった。

logo de Clément Faugier (société)土木技師だったClément Faugier(クレマン・フォジエ)が、1882年、栗の産地として名高いアルデッシュ県でマロングラッセを工場生産を始めたのです。

自分の名前を付けた会社を設立して、この会社は現在も続いています。

それまではごく限られた人々しか口にすることがでなかったマロングラッセを、庶民でも食べられるスイーツにした功績が評価されるのでしょう。

同社の成功は、同じようにマロングラッセのメーカーを生み出します。

1896年、前回の記事(マロングラッセを作るのには20日間もかかる)に入れた動画で製造を見せていたコルスィグリア社(Corsiglia)が、南仏マルセイユでマロングラッセを作り始めています。マロングラッセ製造の特許獲得は1931年にしたとのこと。

クレマン・フォルジェ社と同じアルデッシュ県でも、マロングラッセを作る会社が創設されています。1907年にサバトン社( Sabaton)、1920年にアンベール社(Imbert)。


栗の産地アルデッシュでは、マロングラッセの揺り籠はここ、という感じで活動している感じがしました。そのアルデッシュのマロングラッセを取材した映像を入れておきます。

マロングラッセの歴史にも触れていて、ランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌの名前を出しているのですが、別の著書とチャンポンにしていますね...。


Marrons glacés d'Ardèche (Aubenas)

工場見学で登場していたのはサバトン社でした。マロングラッセの歴史のお話しでクレマン・フォルジェを出しておきながら、なぜそこを見学しなかったのかな?...


先ほどのボワシエのマロングラッセに比べると、随分お安いのですね。といっても、こんなのを私は買えませんけど...。やはり、プレゼントでいただきたい!


フランス情報に、ほんの少しイタリア情報を眺めながら長々と書いてしまいましたが、マロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていた、というお話しは微塵も出てこなかったことはお分かりいただけたかと思います。

マロングラッセがいつ登場したのかを書いた後、第2の検証として、いつから栗がマロンと呼ばれていたのか、いつマロニエがヨーロッパに入ったのか、を書いていたのですが、長くなってしまったので、ここで区切っておきます。


寄り道した続き:
フランス絵画の題名でも、栗の木とマロニエは混同されている


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!




外部リンク:
【報道機関の情報】
☆ Le Figaro Madame: Glacés, les marrons, glacés ! 
☆ Libération: Confit devant le marron glacé
☆ L'Express Styles: Tout ce qu'il faut savoir sur le marron glacé

【栗業界、マロングラッセのメーカー情報】
☆ Comité Interprofessionnel de la Chataîgne d'Ardèch: L'HISTOIRE DU MARRON GLACÉ
☆ CLEMENT FAUGIER: Marrons Glacés une Histoire de Plaisir et de Gourmandise
☆ Maison Boissier: Confiseries
☆Terra Gourma: Marrons glacés Boissier
☆ Maison Corsiglia: Vos questions

【その他のソース】
☆ JACQUES BERTHOMEAU: Autrefois les marrons glacés étaient de Privas, et maintenant d’où viennent-ils
☆ Keldelice: Le marron glacé
☆ Provence 7: Marron Glacé en Provence
☆ Italien Pasta.com: Marrons glacés
☆ dedélices.com: Quelle est l’origine des marrons glacés
☆ Livres Cuisine Recettes Histoire: François Pierre La Varenne 1618 - 1678
☆ anecdotrip.com: Louis XIV
☆ Wikipedia: Marron glacé » マロングラッセ

【フランス以外の情報】
☆ Université de Liège - Catherine de Médicis à la base de la gastronomie française (ベルギー)
Continental Cookery
☆ Wikipediaイタリア語: Marron glacé
Le fruit merveilleux de «l’arbre à pain» (ロシア)
☆ cibo360: Marron glaces(イタリア)
マロングラッセはかつて本当にセイヨウトチノキ(マロニエ)の実が使用されていたのか
☆ 世界の料理研究家たち...その条件と能力: フランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌ氏
☆ ケーキの寺子屋: アントナン・カレーム
☆ University of Chicago: Français ou italien   l'histoire du marron glacé
☆ 納豆学会: 納豆と甘納豆について 甘納豆が誕生したのは1857年

【砂糖の歴史】
☆ 農畜産業振興機構: 砂糖の歴史(インドから西方へ)
☆ 三井製糖: こうして砂糖は広まった~世界一周、砂糖の旅~

ブログ内リンク:
にんじんのグラッセはフランス人には珍しい? 2010/02/25
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ


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2016/12/21
日本で言えば「お正月のご馳走」、フランスで言えば「クリスマスのご馳走」というのがありますが、そういうのは今では薄れましたね。

海がないブルゴーニュでは、サーモンがクリスマスのご馳走だったと言う友人がいましたが、今は全く問題なく食べられる。フォアグラもご馳走だったはずですが、1年を通してかなり頻繁に食べる機会があります。

いまだに高価過ぎてめったに食べられないのは、シャポンと、マロングラッセかもしれない。

シャポンが何であるかは書いていました:
フランスで最高のクリスマス料理: シャポン 2005/12/05

シャポンは去勢して育てた雄鶏なのですが、農家ではクリスマス用に育てているので、シーズン外れのときにはまず手に入りません。

マロングラッセは1年中買えるとはいえ、やはり高価なので出てくる機会が少ない食品です。

シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その8


ヒマダネ記事はマロニエと呼ばれる

クリスマスが近づいたら、ニュースではマロングラッセの話題が増えてきました。

クリスマスプレゼントしてもらえるのをフランス人たちは期待するらしい。マロングラッセといっても、スーパーで売っている得体の知れないものから、手作りまでありますけれど。フランスのニュースで、1キロ150ユーロ(2万円弱)もするのだと書いてありました。1キロ食べなくても良いのですが、フランスの食材はキロ単位の値段で言うからでしょうか。


そう言えば、毎年決まってニュースで話題にするネタのことをmarronnier(マロニエ)とフランスでは呼ぶのでした。日本語にはそういう言い方が思い当たらないので辞書をひいたら、「(季節をテーマにした)ヒマダネ記事」と訳していました。

新学期になったとか、初雪が降りました、夏のヴァカンスシーズンなので道路が渋滞していますなど、毎年ニュースで時期になると出てくる話題を「マロニエ」と呼ぶ。

ここでまた、なぜマロニエなのかと思ってしまうではないですか?

パリのテュイルリー公園にある、1792年の8月10日事件のときに命を落としたスイス人の歩兵連隊の墓の上に、マロニエの花が春になると咲く、と毎年ニュースで取り上げられる。それを茶化したのか、そういうのを「マロニエ」と呼ぶようになったのだ、という説明がありました。

Wikipediaの記事でベニバナトチノキの品種のマロニエを出していたので赤い花を入れたのですが、花の色には余り関係がなさそうです。

毎年繰り返される話題を扱った記事のことを、イギリスではchestnut、アメリカではevergreenと呼ぶとのこと。

ヒマネタがマロニエと呼ばれるようになった経緯については諸説あるそうなので、放置することにします。ここのところ私が調べているのは食べられる栗のマロンから作るマロングラッセですので!



マロングラッセを作るには、大変な手間がかかる

法外と言いたくなるほど高い値段で売られるマロングラッセですが、材料が限定されるのに加え、製造には非常に手間がかかるからだそうです。

マロングラッセのメーカーでは、クリスマスシーズンには製造が追いつかないくらい忙しいようです。でも、ドル箱商品のはず。よく知られたメーカーのサバトン社では、売り上げの3分の1がマロングラッセの販売によるものなのだそう。

栗をイガから取り出してから商品になるまでに20日間かかるのだ、という記事がありました。

まず、大きくて、割れやすくなくて、できるだけ実の固い栗を選ぶ必要がある。フランスで最高級の栗が収穫できる産地といったら、原産地呼称AOC/AOPを獲得しているアルデッシュ産の栗なのですが、栗の風味は良いけれど、大きさは余りマロングラッセ向きではないようです。

イガから取り出してから1週間くらい水に浸しておくと、水面に浮かび上がってくる栗がある。それは何か問題がある血管品ということで使わない。それからナイフで皮をむく作業があるのですが、これがまた大変でしょうね。

その後にも、長い、長い行程...。


栗2つを布のネットで包んでシロップ煮する

フランスの有名メーカーがマロングラッセを作っている行程を見せる動画があったので、幾つか眺めました。

美しい画面が出ていたのは、こちらのニュース。南仏でマロングラッセを作って120年になるコルシグリア社(Corsiglia)です。イタリア系の家で、ニューヨークで菓子づくりをしていたご先祖がマルセイユでマロングラッセを作る店を開いたとのこと。


YouTube: Gastronomie les Corsiglia, spécialistes du marron glacé
⇒ 
動画を入れた記事

最後にマロングラッセを割って見せていますが、出来の良し悪しを見分けるためにはナイフでは切らないと言っていますね。こんな風に中身がジューシーになっているのが本物だそうです。中まで固くなっていたら、製造法がいい加減だったか、日が立ちすぎてしまっているとのこと。

コルシグリア社のサイトを見たら、栗はイタリア産のmarron de Turin(トリノ・マロン)、marron de Naples(ナポリ・マロン)、それから入手できれば地元産のMarron de Collobrièresを使っているそうです。

同じ会社ですが、下の動画の方が詳しく製造過程が見られます。


Les secrets de fabrication des marrons glacés

面白いことに気がつきました。

栗を砂糖シロップで煮るときに、栗が崩れないように布のネットでくるむのですが、栗を2個ずつくるむのが本来の製法のようです。これは甘味がしみ込みすぎないようにするのが大きな目的なのだそう。

2つを抱き合わせたようにネットでくるむのを、イガの中で生まれたときと同じ状態にするという説明。そうやって栗に休んでいただくということでしょうか?

今回の私のシリーズ記事では、イガの中に1つだけ入っている栗をマロンと呼び、それで作るのがマロングラッセだ、ということが日本では定着していると聞いて不思議に思ったことから書き始めました。植物学の上からはマロンはそうだったけれど、現在ではそうとは限らないということで、実際に映像を見て確信しました。

サバトン社(Sabaton)の製造過程を見せる動画も入れておきます ↓


Les marrons glacés

比べて眺めていると、どちらが美味しいか見えてしまう気がしました...。


フランスで有名なマロングラッセのメーカーは?

フランスで有名なマロングラッセのメーカーをリストアップしておきます。リンクしたのはメーカーのサイトです。

パリにメーカーがあるのを除くと、栗の生産地として知られるアルプス山脈に近いフランス中部と南フランスがマロングラッセの故郷なのだなという風に感じました。



どんな風にマロングラッセを作っているのかを見たので、次はマロングラッセはいつできたのか、ということについて書きます。

続き: マロングラッセとマロンの関係。鶏が先か? 卵が先か?


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!






ブログ内リンク:
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
C'est le printemps ! parole de marronnier des Tuileries
Qu'est ce qu'un marronnier en journalisme?

Gros plan la fabrication des marrons glacés chez Sabaton (サバトン社の製造過程を見せる動画あり)
☆ Sabaton: Les secrets de fabrication du marron glacé


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2016/12/19
日本から友達が来たときには、フランスの友人に観光案内を手伝ってもらうことにしています。

私とだけ付き合っていないで、フランス人とおしゃべりする方がフランスという国がよく見えるだろうし、友達から何か聞かれたらフランス人に答えてもらえるので、私にとっても利点があるからです。

ところが、困ったときがありました。


日本人は冗談を真に受ける?

フランス人はジョークを連発するのですが、私の友達は冗談を言って笑わせようとしているとは思わない。自分が知らなかったことを教えてくれていると思って感心してしまうのです。

そのうち、フランス人の方は彼女が何でも信じてしまうことを面白がって、あること、ないこと、全部ジョークにして遊んでしまうようになったのでした。

英語は流暢ではない人だったので、洗練したジョークは言えない。それで、黒い馬がいるのを指さして、「あれはアフリカの馬です♪」なんてバカなことまで言い出すのでした...。

彼女が「ほうとうに?」と言いながら感心しているので、フランス人は「ほんとうに」という日本語まで覚えてしまった! イントネーションで少し疑っているというのが分かると、頷きながら語尾を下げて「おんとに~」と言葉を返して(Hを発音できないため)、「本当にそうなんですよ」という感じまで出してしまうのでした。知り合いにアントニーという名の男の子がいるので、ホントニーは覚えやすかったらしい。

フランスの友人には、私の友達は素直な人なのだから、そういう悪ふざけはしないで欲しい、ときつく叱りました。

日本の友達には、相手は冗談で言っているのだから真に受けないで、と言いました。

でも彼女は、何か言われると、まず信じてしまうのです。とても良い性格の人なので、相手が言ったことに感心してみせるのが礼儀だと思っていたのかもしれない...。

参りました! 彼女が日本に帰ってから、教えてもらったことを他の人達に話したらマズイではないですか?!

ジョークの分かる日本人もいらっしゃいます。フランス人から何か言われると、真っ先にアッハハと笑う。そういうタイプの人は、フランス人から一目置かれます。そもそも、フランスの政治家の場合でも、何か貶されたら、怒ったりりはせずに、機知のきいたジョークを言って相手をやり込める能力が評価されています。

でも、日本人でジョークが分かる人はかなり少ないと感じています。真面目な席で通訳するときには、フランス人が何か冗談を言った後には、「これは冗談でけど♪」と私は勝手に付け加えてしまうことがあります。

誰も笑わないと、フランス人は私が下手に訳したからだろうと思ってしまうわけなので、そういう濡れ衣をかぶされないためです。訳す前に「それは冗談で言っているのでしょう?」と、ちらっと相手に確認したりもできますので。


日本人の鵜呑み度は70%

マスコミ報道の「鵜呑度」を国際比較した数値がありました。

アンケート調査はやり方によってどうにでもなってしまうけれど、これはかなり当たっているのではないか、と私の個人的な経験から思いました。

イギリスが最も疑い深くて、14%の人しか信じていない。

その後にはアメリカ、ロシア、イタリアと続き、フランスは第5位で35%。

日本人は、先進国の中では飛びぬけて信じやすい国民で、70%となっているのです!


パーセンテージはともかく、言われたことを疑わずに信じる日本人が多いのは確かだと感じています。

それで、その特性に気がついたフランス人は面白がって遊んでしまう?



シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その7

栗の木シャテニエの果実
 ・シャテーニュ(châtaigne)
 ・マロン(marron)
マロニエの果実
 ・マロン(marron)


フランス的な冗談を真に受けてしまったのでは?

そう思ったのは、日本ではこう言われていると聞いたときでした。

かつてマロニエの実を使ってマロングラッセを作っていたが、
後にクリの実で代用するようになった。


こんな場面を思い描きました。

パリたくさんあるマロニエ並木を、フランス人男性と、日本人の女の子が歩いている。落ちているマロンを拾って、フランス人はこう言う。

- マロングラッセ、知っているでしょう? 昔は、このマロニエの実で作っていたんだよ。

- マロニエの実は食べられないって聞いたけど...。

- そうなんだ。マロニエの実はあく抜きが大変だから、栗で代用してマロングラッセが作られるようになったんだ。

- 本当に...。知らなかった~! わぁ~、みんなに教えてあげよう~♪

- 教えてあげなよ。フランスでも知っている人は少ないんだよ♪


パリっ子たちは偉そうな口をきくので、男性の口調と表情まで浮かんでしまいました。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

フランス マルキーズ・ド・セヴィニエ マロングラッセ
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まず、毒があるマロニエの実を食べていたはずはないではないですか? 飢饉のときに食べていたというのならまだしも、手間がかかるマロングラッセを作っていたというのは信じられません。

マロングラッセは、フランスではクリスマスのときにしか食べないような高価なスイーツです。

大変な手間をかけて作らないから高い値段で売るのでしょうが、それを作るのにわざわざマロニエの実(マロン)を材料にするはずはないと思うのです。

本来は食べられないものを苦労して食品に仕上げるのは、日本の食文化ではないですか? 

致死性が高いフグの卵巣をぬか漬けにしたという珍味をお土産でいただいたことがありますが、美味しいわけでもないので持て余したことがあります。


日本では定着していた!

誰か、私の友達のようにナイーブな人が、パリで聞いたといってブログにでも書いていたのだろう、と思いました。

ところが、「マロニエの実を使ってマロングラッセを作っていた」をキーワードにして検索すると、たくさんヒットするのでした。今では消えているのですが、かってはWikipediaにそう書いてあったようです。

同じ文章を使っていると感じるものには、次のようなものがありました。これをコピーしてキーワード検索をすると、たくさんヒットします。
  • かつてマロニエの実を使ってマロングラッセを作っていたが、後にクリの実で代用するようになった。

  • マロングラッセに使うマロニエの実をクリで代用したことから、 クリのこともマロンと呼ぶようになった。

  • フランス語のマロン=marronは元来このマロニエの実に由来するが、食用においてはヨーロッパグリの方が適していたことから後者を指すのが一般的になった。


そういうのは奇妙だと思うのは私だけではなくて、間違っていると指摘なさっていらっしゃる方がありました:
マロングラッセはかつて本当にセイヨウトチノキ(マロニエ)の実が使用されていたのか

この記事を読んで分かったのですが、「平凡社 世界大百科事典」の「セイヨウトチノキ」のところに、こう記載されているのだそうです:
  • マロニエという名称はマロン(クリ)に由来し、マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。
百科事典に書いてあれば、信じますよね。

まして、先日に書いたように(辞書が頼りにできないと困る...)、仏和辞典のシャテーニュ(栗の実)のところには、「ふつうは食用にしない」と書いてあるのですから、裏付けられてしまうではないですか?

Yahoo!知恵袋には、「本物のマロングラッセを食べてみたい」というのまで入っていました。本物のマロングラッセはマロニエの実で作ったものだと信じていらして、それを売っている店を教えて欲しいというのです。

マロングラッセは栗の実のマロンで作るのだと回答していらっしゃる方があったのですが、ベストアンサーには選ばれてはいませんでした。ちょっと怖いではないですか? 質問された方が諦めきれなくて、ご自分でレシピを探して、セイヨウトチノキの実でマロングラッセを作って食べてしまったら危ないですよ。

毒性を利用するのか、マロニエの実から薬は作られるそうですが、人によっては食べたらかなり危険なことにもなるそうです。

フランスの情報も探してみましたが、マロニエの実でマロングラッセを作っていたというのは1つも見つかりませんでした。冗談で言いたくなる人はいそうですが、それさえもない。そんなことを書いて真に受けた人がいたら、被害者から告訴されることだってあり得るので避けるのではないでしょうか?

ここのところ、栗とマロニエの実のマロンについて書きながらフランス情報をたくさん読んでいますが、マロニエの実は有毒だから、栗のマロンと間違えないようにと、必ずと言って良いほど強調していました。


マロニエはヨーロッパに昔からあったわけではなく、それが入る前から、どこの国でもしていたように、フランスでも栗を食べていました。マロニエの実を食べる必要はなかったと思うのです。

マロニエと呼ぶことにした樹木がフランスにが入ったとき、すでにマロングラッセなるお菓子が存在していたのだとしたら、昔はマロニエの実(マロン)でマロングラッセを作っていたというのは成り立たないことになります。

また、栗をマロンと呼ぶことが、マロニエが入る前からあったら、マロングラッセを栗で作るようになったから栗をマロンと呼ぶようになったわけではないのは立証できます。

それを調べたので書こうとしたのですが、前置きが長くなってしまったので別の記事にします。


少し寄り道をした続き:
マロングラッセを作るのには20日間もかかる


★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!
今回は、その7でした。




ブログ内リンク:
★ 目次: フランス人のジョークについて書いた記事
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
検証:世界で最も「情報民度」が低いのが日本人である!
☆ 国立健康・栄養研究所: セイヨウトチノキ(マロニエ) - 「健康食品」の安全性・有効性情報
Centre Antipoison Animal et Environnemental de l'Ouest: Le marronnier


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カテゴリー: 日仏の比較 | Comment (4) | Top
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2016/12/15
私がデジカメ写真を撮るようになってから、栗の実を撮影したのはこれ1枚だけだったようです ↓



シャブリの町の八百屋さんで撮影していました。ブルゴーニュワインの銘柄にもなっているシャブリの産地の中心になっている町です、

栗にしては値段が高いと思って写真をとっていたのか? あるいは、マロンと呼ばれる高級な栗があるのだ、と一緒に旅行していた友人が教えてくれたからだったのか?

この町にはワインビジネスで経済的に潤っている人たちが住んでいるからなのか、この八百屋さんも高級な食材も扱っているのです。珍しい野菜なども売られているので、陳列されているものを眺めるだけでも楽しめてしまいます。このときは、森で採れる野生キノコなども写真に収めていました。

シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その6

ここのところ栗について書いています。日本では、マロンと呼ばれる栗はイガの中に1つだけ実が入っている栗だと言われていると聞いて、そんな珍しい栗だからマロンは高いのかと思ったのですが、そうでもないらしい。結局のところ、フランスでは大きくて見事な栗が「マロン」として売られているのではないかと思い始めているところです。


安いマロンもある...

上に入れた写真では、栗にはMarron(マロン)と書いてあって、1キロ5.50ユーロ。600円くらいですね。10年前に撮っているので、今はもっと高いのかな。もう生栗を売るシーズンは終わっているので、今のお値段は探しても出てきませんでした。

2008年の新聞記事が見つかったので呼んでみたら、その年は栗の不作だったらしくて栗の値段が高騰していると書いてありました。貧しい人たちの食べ物だった栗が、今ではぜいたく品になってしまったという内容の記事。

スーパーでも1キロ850円もするマロンが売られているのもあるとのこと。パリでは、bouche de Bétizacという品種の栗(マロンにされている品種のはず)が、1キロ12.8ユーロ(1,500円)という法外な値段で売られていた、などと書いてありました。

マロングラッセは高価だというのはありますが、それ以外の栗はフランスでは余りにも高かったら買い手が少ないと思うのですけれど。来客があったときに栗を使った料理を出しても、野生のキノコを出すときのようには感激してもらえませんから。


材料費がこのくらい高いマロンで加工食品を作ったら、そのお値段も高くなると思うのですが、そうでもないのです。

例えば、こちら ↓
左は、栗の食品を作っているを有名メーカーのマロンのピューレです。

439グラム入りの缶が、250円くらい。

商品画像を拡大してみると、正面に書いてある文字で、材料は「シャテーニュ」と水だと分かります。

つまり、商品を手に取って眺めてみただけで、マロンとシャテーニュの文字が並んでいるわけなのですよね...。


前回に書いたように(フランスでは、どのような栗を「マロン」と呼ぶのか)、栗をマロンと呼ぶためには業界では基準がありました。栗の仕切り率が12%以上あったら、「マロン」ではなくて「シャテーニュ」になります。

その条件をクリアーしていない栗でも、「マロン」という文字を入れて売って問題がないのだろうか?


栗の加工食品や料理の名前はどうなっている?

フランスにある栗の加工食品や料理名で、マロンとシャテーニュという言葉がどう使い分けられているかを眺めてみました。マロンもシャテーニュも栗には違いないのですが、なんとなく法則のようなものがあるように感じたので最後に書いてみます。

なお、フランス南部にある栗の生産地では、昔から栗をたくさん食べていたようで、色々なものがありましたので加えておきます。食べ物の名前はその地域で使われていた言葉なので、文字を見ただけでは私には想像もできませんけれど。


一般的に知られている食品
Marrons chauds


Châtaigne
s grillées


焼き栗
※ 秋から冬にかけての街頭にある屋台には「マロン・ショー」と書いてあることが多いですが、「châtaignes grillées(焼きシャテーニュ)」と書いてあることもあります。家で作ることもありますので、シャテーニュは使わないということはありません。

Marrons (Confits) Entiers

ホールマロン
サバトン社のMarrons Entiers: マロン (日本代理店情報: マロン
クレマン・フォジエ社の「Marrons Confits Entiers au Sirop」の原料: 
マロン

Marrons précuits

ボイル剥栗

Farine de châtaigne

栗の粉(シャテーニュ)

Wiki仏語
  
※ 調べまくって確認したわけではありませんが、栗を小麦粉のようにしたものは、絶対にマロンという文字は使わないように感じます。
※ 乾燥させた栗で作る栗粉は、昔のコルシカ島ではよく使われていました。たいていは、下に入れるPulendaにしていたのだそう。
Crème de marrons

マロン・クリーム

Wiki仏語
クレマン・フォジエ社の「Crème de Marrons de l'Ardèche」の原料: シャテーニュ(50%)、砂糖、グルコースシロップ、マロングラッセ、バニラ ほか (日本代理店情報: 栗)
サバトン社の「Confiture de Châtaigne - Crème de Marrons」: シャテーニュ

Confiture de châtaignes

シャテーニュ・ジャム

Pâte de Marrons

マロン・ペースト
クレマン・フォジエ社の Purée de Marrons Natureの原料: シャテーニュ

Purée de marrons

マロン・ピューレ
サバトン社フランスPurée de Marrons: シャテーニュ (日本代理店情報: マロン
クレマン・フォジエ社の
Purée de Marrons Nature: シャテーニュ
スイーツ
Marron glacé

マロングラッセ

Wiki仏語
Wiki日本語
 
クレマン・フォジエ社の「Marrons Glacés Gros Cassés Frais」の材料: マロン、シロップ、バニラ

Mont-blanc

モンブラン

Wiki仏語
Wiki日本語
マロン・クリームを使ったケーキ。アルザス地方では「torche aux marrons」と呼ばれる。

Bonbons à la Crème
de Marrons de l'Ardèche

アルデッシュのマロン・クリーム飴

フランスのメーカーサイト
原料: マロン・クリーム(25%)シャテーニュ(50%) ほか
料理
Dinde aux marrons

七面鳥の栗添え

Wiki仏語
※ レシピとしては、「Dinde aux châtaignes」も存在しています。

Velouté de potimarron
aux
châtaignes

シャテーニュ入り南瓜のヴルーテ(スープ)
※ こちらもマロンを入れた料理名にしているものもあります(Velouté de marrons) 。私の個人的な感覚ですが、マロンよりシャテーニュの方がアトラクティブです。こちらは、亡き3つ星シェフのレシピVelouté de Châtaignes

アルデッシュ県栗生産者委員会(Comité Interprofessionnel de la Chataîgne d'Ardèche)のレシピ:
Recettes
アルコール飲料
Liqueur de Châtaigne

シャテ-ニュのリキュール

栗の生産地にある伝統的な加工食品と郷土料理
Pulenda

Wiki仏語

※ 栗(シャテーニュ)の粉で作ったパン

Ardéchois à la crème de marrons


Wiki仏語

マロン・クリームとラム酒で作られたケーキ

Bajana

別名:
Soupe de châtaignes des Cevennes

Wiki仏語

※ 乾燥させた栗で作る伝統的なスープ

Lou Pisadou

Wiki仏語

マロン・クリームで作るガレット

Castagnou

Wiki仏語

シャテーニュ・リキュール(ないしシロップ)
に白ワインを加えてつくるキールのような食前酒


Pietra

Wiki仏語


※ モルトとシャテーニュの粉で作ったビール


マロンとシャテーニュの使い分けは?

眺めてみて、私はこんな風な規則があるのではないかと思いました。


1栗が原型を留めていて、何かを作る材料として売る場合

栗がマロンであるかシャテーニュであるかを明確にしている。
【例: ホール・マロン、栗の粉】

2マロン・グラッセ

大きくて見事で、割れない栗が好ましいので、マロンを原料とするが原則である。一般向けのレシピでも、材料にはマロンを指定している。安く売っているマロン・グラッセではシャテーニュを使っている場合もあるのではないかと疑うのだが。

3定着している料理名

マロンを原料に使っているか否かは気にせずに「マロン」という言葉を使う傾向がある。
【例: 焼き栗のマロン・ショー、七面鳥のマロン詰め】

4栗のジャム

Crème de marrons(マロン・クリーム)もConfiture de châtaignes(シャテーニュのジャム)も同じような栗のジャムだが、マロンという言葉を出すときには「クレーム」を使い、シャテーニュなら「コンフィチュール(ジャムのこと)」と組み合わせることが多いように感じた。ただし、「マロンのジャム」となっている場合もある。

マロン・クリームは、本来はマロングラッセを入れたジャムだが、商品化されているものでも入れない場合もあると言われる。一般向けのレシピでは、マロングラッセは入れない方が多いように感じた。

クレーム・ド・マロン(マロン・クリームのこと)という名前には「マロン」の文字が入っているわけだが、マロンでなくてシャテーニュで作ることもあり、その場合にマロングラッセが入っていなければ「マロン」とは無関係なわけで、コンフィチュール・ド・シャテーニュ(シャテーニュのジャム)とすべきなのだが、クレーム・ド・マロンは定着した名前なので気にしないようだ。

5マロン・クリームを使ってあれば「マロン」が付いた料理になる

ケーキなどの材料にマロン・クリームを使っているときには、シャテーニュで作っていても「マロン」としているようだ。

マロン・クリームに類似したペーストやピューレは、マロン・クリームを連想させるために「マロン」という言葉を使っているように感じる。

5栗の粉を使った料理

栗の粉(Farine de châtaigne) がシャテーニュなので、料理でもシャテーニュを使う。
【例: Soupe de châtaignes】

6栗で作ったアルコール飲料

マロンと付けているものは無いように感じた。自然に生えている栗の木から取れるシャテーニュの方が野性味があって美味しいのではないか、と私は感じる。

7推察: かなり、いい加減に使い分けているのではないだろうか?...

マロングラッセ、大量にマロンを使う料理を除けば、「マロン」を味わうのだとは意識しない方が良いのではないか?



ここにリストアップしたクレーム・ド・マロン(日本ではマロン・クリームと呼ばれているらしい)に私は余り馴染みがありません。フランスで栗の産地を旅行したときには買って帰ったような気がしますが、食べたのかどうかの記憶もありません。

どんなものなのかなと調べてみたら、面白い誕生の歴史があったのです。それを後で書くことにします。

続き:  日本で言われるマロングラッセのお話しは、フランス的な冗談では?

★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!



ブログ内リンク:
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
chataignes et marrons produits du terroir français specialites regionales
Quelques préparations culinaires à base de Châtaignes et Marron
☆ Le marron: Va t-il prendre une châtaigne | Dâme châtaigne - Châtaignes
☆ ladepeche.fr: La châtaigne fruit du pauvre hier, fruit de luxe aujourd'hui - 30-10-2008


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カテゴリー: 食材: 果実 | Comment (5) | Top
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2016/12/12
フランスでは、栗は「シャテーニュ」と呼ばれたり、「マロン」と呼ばれたりします。さらに、マロニエという木があって、その実は栗に似た形をしていて「マロン」と呼ばれますば、こちらは食用にはなりません。ややっこしい...。

シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その5


私が気になって書き始めたのは、食べる栗のシャテーニュとマロンがどう違うかです。

すでに書いたことを整理してみます:
  • マロニエはセイヨウトチノキ。
  • マロニエの果実「マロン」は、食べることができない。
  • マロニエと栗の木(シャテニエ)は、咲く花が全く違うなどの特徴があるので見分けることができる。
  • フランスにマロニエが入ったのは1615年というのが定説。

  • 栗の木はシャテニエ、食べられないマロンと呼ぶ実がなる木はマロニエ。しかし、辞書にある「マロニエ」には「栽培された栗の木」という記述がある。栗の木には、マロンと呼ばれる実がなる品種があり、その木のことを業界では「マロニエ」と呼んだりしているのだ。

  • 日本では、イガの中に栗が1つだけあるものを「マロン」だとする定義が定着している。
  • フランスでも、本来のマロンはイガの中に実が1つだけの栗だったらしい。この場合のマロンは、イガの中の外側にある胚珠が発育不全なために、中央の1つの実が残って大きくて丸い栗の実になったケース。
  • フランス語のmarron(マロン)の語原はラテン語。
  • 16世紀のフランスでは、イタリア語から入った言葉の「マロン」と呼ぶ栗が美味しいとの評判があった。
  • 私の憶測: 小麦が収穫できない地域ではシャテーニュが小麦粉の代わりに庶民の栄養源となっていたために、悪いイメージがあるので、大きくて美味しい栗はマロンと呼んだのではないか。


日本では「イガの中に実が1つ」の栗をマロンと呼ぶと言われているのですが、フランスでのマロンの定義はどうなのかということを今回は書こうとしています。

インターネットで検索すると、栗のマロンとシャテーニュがどう違うかを書いたフランスの情報はたくさんあるのですが、読んでいると混乱してくるので難航しました。植物関係の用語は、フランス語でも日本語でも、私には何のことかよく分からないので...。

勇気づけられたのは、ヨーロッパ栗を輸入している菓子メーカー「仏蘭西焼菓子調進所 足立音衛門」のサイトに入っている情報でした。私がそうではないかと推察していたことを的確に示していると思えたのです。「ヨーロッパ栗へのこだわり」に書かれている「マロン(イタリア語でマローネ)」が何であるかの説明は、こうなっていました:
  • 基本的に毬の中に栗の実が一つ程度入った大粒の栗で、中央部に割れ目のないものを指すと言われています。
この「割れ目がないもの」というのが、フランスでマロンと呼ばれるときの最大のポイントになっているように私には思えたのです。つまり、イガの中に実が1つであるか否かは、二の次というわけです。




フランスの栗栽培者には、マロンとシャテーニュの区別は簡単

フランス人でも、栗のマロンとシャテーニュの違いがどこにあるのか分かっていないようです。でも、栗を栽培して収穫する職業に携わる人たち(農業者ではなくて、castanéiculteurと呼ぶと学びました)や、栗を扱う業界の人たちにとっては、この2種類の栗の区別は非常に明白なのだそうです。

最も単純な説明は、これ:
  • マロンは、栽培されている栗の木から収穫される。
  • 自然に生えている栗の木から取れる実は、シャテーニュ。

マロンは、品種改良したり、接ぎ木したりして栽培している栗の木から取れる栗の実ということになります。接ぎ木した栗の木であることがポイントらしい。

でも、フランスの栗栽培では、平地の果樹園のようなところに栗の木をたくさん植えているというより、山の中で自然に生えているように見える栗林であることも多いのです。

栽培されている栗がマロンであるというだけではなくて、まだ裏がありそう...。

マロンとは何かを簡潔に説明している栗栽培農家の人の声がありました。


Châtaigne ou marron ?

「シャテーニュとマロンはどう違うのですか?」と聞かれて、「ハッ、ハア~」と言って2人で笑っているところを見ると、よくされる質問なのでしょうね。

彼女が言っているマロンと呼ばれる栗の定義:
  • 栗の木には、マロンとされる実がなる品種と、シャテーニュとされる実がなる品種がある。
  • マロンとされるのは、皮が1つで、仕切られていない。つまり、胚芽は1つ。
言葉だけでは理解できないので、図や写真で説明しているのを探しました。まず、「仕切られていない」というのは何のことなのかが第一の疑問です!


Q 1. これは何の絵?

まず、ややっこしいのは、食べる栗のマロンと、食べられないマロニエの実(マロン)がよく似ていることです。つまり、マロニエの実のマロンには「仕切りがない」のです。似ているから、両方とも「マロン」と呼ばれるのでしょうけれど。

栗の木とマロニエの樹木としての違いを見せる画像を、このページの最後に入れておきます

栗のマロンとシャテーニュの違いを説明しているサイトでは、判で押したように、こんな絵が入っていました。




Marron(マロン)と書いてあるだけでは、栗の実なのか、マロニエの実なのか分かりません。

描かれているマロンは食べられないマロニエの実だということもあり得ますが、両方とも栗の絵だと私は思いました。

栗の特徴は、頭のてっぺんにトーチ(たいまつ)の先みたいになっていると学んだのですが、上の絵には両方ともそれが見えるからです。

これが、栗のトーチと呼ばれる部分 ↓


マロニエの実の方は、頭のてっぺんがツルンとしているのだそうです(画像入りサイト)。

2つの絵を示しているのは、栗のシャテーニュとマロンの違いを説明するために入れているのですから、描かれているのはマロンとシャテーニュの違いを見せるための2種類の栗を示しているのだろう、と想像します。

しかし...

この2つの絵は何を見せようとしているのでしょう? イガの中に栗が1つだけなのがマロンだというのを示しているなら、イガを輪切りにした絵となります。でも、私には、栗を輪切りにしたようにしか見えないのですけれど...。


◆ フランスの栗業界でのマロンの定義

確信できたのは、マロンとシャテーニュは栗の木の品種で区別されているということでした。つまり、栗の木には、マロンが収穫できる品種と、シャテーニュとされる実がなる品種がある。

栗業界のサイトが示しているマロンとシャテーニュの違いは、下の絵でした。それを見せながらしている説明によって、市場に出る栗をマロンかシャテーニュかを決めている定義が分かります。


技術者は次のように用語を使う。
マロン marron は、仕切られている果実 fruit cloisonné (果実の仁 amande が複数の2番目の皮 deuxième peaux によって2つに分割されている)が12%未満である栗の木の品種。
シャテーニュ châtaigne は、仕切られている果実の割合が12%以上の品種。
☆ もう少し詳しい情報: Fructification chataignier 

図の上に描かれているのは、イガの中に栗が3つ入っているのだ分かります。下は、また同じような絵。ここでも「仕切られている」ことがポイントなわけです。

マロンが何であるかの説明ですが、1本の栗の木から取れる実で「fruit cloisonné(仕切られている果実)」の割合が12%未満なら「マロン」がなる栗の木の品種とされる。つまり、全部がそうでなくてもマロンで良いということになるわけですね。

※ 前回の記事「イガの中に実が1つだけの栗がマロンって、本当なの?」を書きながら、イタリア語の情報をフランス語に自動翻訳させて読んだのですが、イタリアでも「12%」でボーダーラインをひいていました。フランスとイタリアの基準が同じということは、欧州連合(EU)で決めているのかと思ったのですが、この定義がフランスで使われるようになったのは1954年であるという情報がありました。


Q 2. 「仕切られている」って、何が分割されているということ?

仕切られていない実がマロンで、仕切られていたらシャテーニュとされる。
それは分かりました。

シャテーニュとマロンの輪切りの絵でも、それを示していると考えられます。

「仕切られている」と訳したのですが、たいていは「cloisonné」という単語を使っています。仕切られていることを示す名詞はcloisonnement。仕切っているのはcloison(隔壁)。

こういう単語は、マンションが3つの部屋に「区切られている」とか、諸国間に市場の「障壁」があるとかいう時に使う単語なので、イメージはわきます。

でも、仕切られている、分割されている栗とは、何のこと?
何が仕切られているの?

イガの中に幾つかの栗の実が入っているのがシャテーニュ、ということ?
あるいは、1つの栗の実の中身を問題にしていて、その中で何かが幾つかに分かれているということ?

前者だとすると、イガの中に実が1つしか入っていないものがマロンである、という日本での定義になります。そうではないと主張するには抵抗があるので、日本の定義通りだと仮定した場合を考えてみます。


Q 3. イガの中に複数の栗が入っていたら、
    それは仕切られているということ?

イガの中に栗が3つ入っている場合、「3つに区切られている」という言い方をするのは不自然ではないですか? 日本人は「イガの中に3個の栗が入っている」と言いますよね?

でも、フランス人的感覚だと、3つに分かれていると言うのかもしれない。日本人のフランス語教師が、日本とフランスでは捉え方が違うのだ言っていたことを思い出しました。

何の例だったか忘れたので、ある地方に県が幾つあるかというのをどう表現しているかを例に出します。例えば、「ブルゴーニュ地方は4つの県に分かれている」という表現がフランスでは普通です。日本では、「東北地方には6つの県がある」とか「6県からなる」というような言い方をしませんか?

そういう捉え方の違いがあるとしたら、イガの中の栗も「3つに分かれている」というような捉え方をフランスではするのかもしれない...。

英語と仏語でページを入れている栗の苗木を売っているサイトでは、仕切れレている(cloisonnement)を英語ページではdividingとしていました。英語に直しても分けられているという意味ですから、何が仕切られているのかは分からない。

マロンとされる栗が収穫できる栗の木の品種があるわけなので、マロンとされる品種の栗の画像を探しました。

仕切り率が5%以下として売っている「Belle épine」という品種:
Plants de châtaigniers variété Belle épine英語ページ

ここに入っている栗の写真では、イガの中に栗が3つ入っています。もし1つでないのが5%以下の品種なら、イガの中に1つしか実がない写真を入れるのが普通ではないですか? 売っている苗木に全部同じ写真を使っているのかと疑ったのですが、ちゃんと品種ごとに違う写真を入れているのです。

もう1つの植木屋さんで、同じ品種と思われるものに入っている写真でも、イガの中に1つの写真ではありません:
Vente Châtaignier 'Marron Belle Epine' (Castanea sativa)

マロンとはイガの中に1つしか実がない栗である、という定義は疑いたくなってきます...。


Q 4. アマンド(仁)とは、なに?

栗の実の中に「amande(アマンド)」が1つしかない栗が「マロン」なのだ、という説明がありました。つまり、日本で言われているように「イガの中に栗の実が1つあるのがマロン」ではなくて、1つなのは「アマンド」。

では、アマンドとは何なのか?

「アマンド」というフランス語を聞いては真っ先に思い浮かべるのは、ナッツのアーモンドです。amandeを仏和大辞典でひくと、植物用語として「(梅や桃などの果実の核にある)」という訳語が入っていました。それに相当するのだろうと判断。

仁(じん)とは何か?
  • 種子の中にある「仁(じん)」と呼ばれる部分は、子葉となるための胚と、胚の栄養分である胚乳とからなる。
  • いわゆる食べられる木の実となり、栗などの堅果類、アーモンドなどの核果類、カシューナッツなどの熱帯果樹などいくつかに分類される。
  • かぼちゃの種やごまなどは、果実以外の植物の「種」であり、「種子類」と分類される。

さっきの絵(こちら)で、シャテーニュの絵では2つに分かれていましたが、これはアマンドが2つある、ということなのかな?...

アマンドが1つなのをマロンと呼ぶと説明している情報で、よく似たシャテーニュの絵に「amande(アマンド)」と書き加えているのが、こちらの絵

でも、専門家が書いたものではないらしいので、これが本当に正しいのかは分かりません。

栗の場合のアマンド(仁)が何なのかは放置することにします。私の興味は、「マロン」と呼ばれる栗は、イガの中に1つ入っているものなのか、栗の実の中が分かれていることを意味するのかどうか、ということなので。


Q 5. 栗を仕切っているtan(タン皮)とは、なに?

問題にされている仕切りですが、何が仕切っているかというと、tanタン皮)だというのは確かなようです。

仏和辞典で「タン皮」と訳されていたわけですが、それが何なのか分からないので、マロンとシャテーニュの違いを説明しているサイトに書かれている「タン皮」が何であるかの説明を読んで、謎解きゲームの開始 ♪
  • 2番目の皮。
  • ベージュ色の薄い皮で、苦い。
  • 普通の栗の木ではタン皮ができてしまうが、栗の中にタン皮があると苦いので、それがないマロンが美味しいとされる。
  • タン皮が発達しすぎると、実の中が亀裂してしまう場合がある。

もしも「仕切られている」というのをイガの中に複数の実があることだとすると、その仕切りになっているのは堅い鬼皮で、そんなものを食べて苦いなどと言うはずはありません。だとしたら、栗を仕切っているタン皮とは栗の渋皮のこと...

下は、芽が出始めている栗の断面図です。



この図の右にある皮の部分に対する単語で、外側はpéricarpe(果皮、種子を包む果実の部分)とあるのは、鬼皮のことだろうと思います(情報)。その内側と思われる部分がtan(タン皮)ですが、これは渋皮ですよね?

としたら、一番初めに入れた絵にあったシャテーニュの絵では、渋皮で仕切られていることを見せていることになります。

でも、栗の実の中に渋皮がありましたっけ?!

日本語で栗の詳しい情報が見つけることができなかったのですが、ドングリは詳しく書いていらっしゃる方があり、「大泉緑地の奇妙なドングリ」に入っている図6-3-3が「仕切られている」というのと同じなのではないかと思いました。

しかも、説明してくださっているのです。渋皮を取り除いた栗を食べたときに、渋皮が口の中に残る感覚がすることがあるのは、これと同じです、と。

そういうのがtan(タン皮)で、それがないのがマロンということなのではないと思って良いのではないでしょうか? つまり、フランスの栗業界では、イガの中に実が1つかどうかの問題にしていない?!



日本の栗は、はっきりと栗の実の中で亀裂しているのが多いのかも知れないと思いました。「渋皮煮」をキーワードにして画像検索すると、その典型的なものが入っていました。


渋皮煮を楽天市場で検索

九州の知人が作った渋皮煮を味わったときは、余りの美味しさに驚いたのですが、亀裂が入っている栗だったら、渋皮煮には問題ないとしても、マロングラッセを作ることはできないだろうと思います。


栗が割れると困る代表は、マロングラッセ

栗の実の中にあるのは薄い皮とはいえ、仕切りになっているタン皮(tan)には少し苦みがあるので、お菓子を作るには望ましくない。逆に、料理で使う栗では、それが独特の風味を出すことにもなる。そこでマロンとシャテーニュを使い分けるの意味があるのではないでしょうか?

マロングラッセというお菓子は、障壁のないマロンで作るのは理解できます。実の中で仕切りになっている薄皮があると、栗の実が崩れやすいだろうと想像できますから。

大きい栗で作ればマロングラッセは見事ですが、それよりも亀裂する可能性が少ない栗を選ぶ方が重要だろうと思います。実が割れてしまったら、ずっと安い価格に下げなければ売れません。
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◆ 「仕切られている」とは、栗の実の中が区切られていることだろうと判断

フランスのサイトの情報を眺めていると、日本と同じように、イガの中に果実が1つなのがマロンだという人もいました。でも、実際に販売されている栗に関しては、業界の人たちが言う「fruit non cloisonné(仕切りがない果実)」がマロンとされていているはず。

ヨーロッパ栗へのこだわり」のページにあった、マロンは「中央部に割れ目のないものを指す」というのは、フランスで「仕切られていない」と表現されているのと同じことなのだろうと思いました。

仕切られている栗というのは、下の断面図に見えるようね薄い皮が栗の実の中にあるということでは?



私は栗を売る仕事には無縁なので、マロンの定義なんかどうでも良いではないかと思い始めたとき、栗の産地として名高いコート・ダジュールのイゾラで栗の収穫をしているニュースがYouTubeに入っているのに出会いました。どうでも良いと思いながらも、まだしつこく探求を止められなかったわけですが!...

ご覧ください! 私の推察は間違っていなかった... かもしれませんよ~♪


ISOLA RECOLTE CHATAIGNES

栗を収穫している人が、実をナイフで割って「果肉(chair)しかない」と言って見せているのです。テロップのおかげで、2つに切った栗の断面はほとんど見えないのが残念。彼はこう言っています。

この栗からはマロングラッセが作れますよ。
シャテーニュは、中部が仕切られている(cloisonné)。

栗を扱うプロにとって、イガの中に実が1つしか入っていないことより、実の中に薄皮が入っていないことの方が重要だということになりませんか?

栗の苗木を扱っている会社のサイトにある売れ行きトップ3の1つになっていたVerdale(仕切り率 > 5%)は、その品種の栗の写真を入れているのですが、栗の中身に分割が入っていないのを見せるために輪切りにしたものが入っています。

ついでに、この動画を見て、もう1つ発見しました。犬も歩けば棒にあたる。無知でもネットでサーフィンしていれば棒にあたる...。

昨日の日記「辞書が頼りにできないと困る...」で、栽培されている栗の木をマロニエというのは本当なのだろうか、と書いたのですが、このニュースの中では、栗を売る人もアナウンサーも、マロンができる栗の木をマロニエと呼んでいました。私は栗の産地とは無縁なので聞いたことがなかったのですが、栗の木も「マロニエ」と呼ばれるようです。


マロンという栗であるかどうかは、気にすることはない?

もしも栗業界で基準になているマロンの定義で「12%未満」というのが、栗の実の中が薄皮で仕切られていないことを意味しているとしたら、イガの中に実が1つかどうか、実が大きいかどうかというのは全く無視していることになります。

現在のフランス国内で流通している栗では、12%のボーダーラインは超さない品種が半部以上で、むしろ栗の実の中に薄皮がたくさんある品種の方が珍しいような感じで書いている記事もありました。そうかも知れないという気もします。栽培するなら、美味しいとされるマロンの苗を植えるでしょうから。

生栗をマロンだとして高い値段で売るときには、見事にふっくらとした大きな栗なのではないでしょうか?

マロンもシャテーニュも、栗であることには違いありません。マロンとして売られている栗が特別なものだとして飛びつかなくても良いということ?... 栗の産地の人たちは、「マロンはツーリスト向け」などと言っているらしいのです。

マロンなんかどうでも良いと思ってしまいながらも、謎が次々でてくる栗のお話しはまだ続けます。


続き:  栗のマロンとシャテーニュ、言葉の使い分けは?

★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!



シャテニエ
Châtaignier
ブナ科 クリ属
マロニエ
Marronnier
トチノキ科 トチノキ属
果実:
 ・シャテーニュ(châtaigne)
 ・マロン(marron)
果実:
 ・マロン(marron)
Graine de Marron



続き:  栗のマロンとシャテーニュ、言葉の使い分けは?

★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!

マロングラッセのメーカーの製造過程で、イガの中に実が1つだけの栗を使っているわけではないことが見える動画を入れた記事:
マロングラッセを作るのには20日間もかかる <その8>





ブログ内リンク:
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
【栗のシャテーニュとマロンの違い】
☆ Chataigniers Noyers Coulié: Fructification chataignier 
☆ Esprit de Pays Dordogne-Périgord: La Châtaigne  un peu de botanique
La châtaigne et le marron
Marrons ou châtaignes, quelle différence
Châtaignes et marrons en Cévennes
☆ Terroirsdechefs.com : Le Marron et la Châtaigne, chauds ou glacés
☆Gustave La châtaigne et le marron
☆ Futura Planète: Définition  Châtaignier - Castanea sativa
   » Quelle est la différence entre une châtaigne et un marron
大泉緑地の奇妙なドングリ その2

【栗業界サイトの情報】
Comité Interprofessionnel de la Chataîgne d'Ardèche
   » Châtaignes et marrons ?
Castagnades (Parc Naturel Régional des Monts d'Ardèche): Tout savoir sur... la châtaigne d'Ardèche
Confrérie de la Châtaigne d'Ardèche
LA CHATAIGNE EN ARDECHE
Variétés de châtaignes & marrons en Cévennes
Connaissance de la châtaigne

【単語、語源】
☆ CNRTL / Etymologie: Châtaigne  | Marron
☆ Wikipedia: (仏)Châtaigne » (伊) Castagna
☆ Wikipedia: (仏) Marron (fruit) » マロン (植物)

【シャテニエ / 栗の木】
☆ Faculté de Biologie: La CHÂTAIGNE : un akène
☆ Cairn.info : Classer et nommer les fruits du châtaignier ou la construction d'un lien à la naturea
châtaigniers oubliés
☆ SECRETS DE JARDINS: CHATAIGNIER
☆ Nature Gastronomique et Médicinale: Le Châtaignier
☆ YouTube: Sur la route des châtaignes - Les carnets de Julie
☆ Encyclopédie de Diderot et d'Alembert: CHATAIGNES
☆ Chataigniers Noyers Coulié: Plants issus de greffes sur P.G. résistants
☆ 果物ナビ: くり 栗 Chestnut
果実の種と核と仁の違いを教えて下さい。

【栗の接ぎ木】
☆ YouTube: greffe(s) Au coeur de la châtaigneraie
☆ YouTube: 岡山県森林研究所
足立音衛門: 西洋と東洋が交差するトルコ共和国に栗を訪ねて


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2016/12/09
『ターヘル・アナトミア』を翻訳した『解體新書』が刊行されたのは1774年ですか。よく訳したな... と、しみじみ思ってしまいます。長崎に出島があって、オランダ人に分からないことを聞けたかもしれないですが、その言葉を話すからといって母国語の、まして専門用語などは正確には教えてくれないのですよね。

さらに、明治時代になって外国に留学した日本人たちも、よくサバイバルできたと感心します。文化が違うと、置き換えられない言葉がたくさんありすぎる。訳語を作れない場合でも感覚的に分かれば良いとしても、感覚的に分かるのさえ難しいことも多々あります!

そもそも、辞書というのは信頼できるものなのか? この夏、19世紀のフランスの国語辞書を手に入れた友人が、読んでみると愉快なのだと話しました。開いて見せてくれたのは「黒人」の項目。知能が劣っている人間だと書いてあるのです。「この時代の人たちにとっての認識がそうだったから、そうなっているのだ」と笑っていました。

「それじゃ~! 日本人は何だと書いてあるの?」と私。友人は「ジャポネ」を探す。体が小さいと書いてありました。それしか特徴を見いだせなかったのでしょうかね...。みんなで大笑いしました。

現代になっても、日本語を母国語にしている人にとって、英語以外の外国語を勉強するのは大変だと思います。なにしろ、頼りにできる辞書がない! 私が特殊なフランス語の訳語を探すときは、英和・和英辞典で確認して、それから英仏・仏英辞典で確認、あるいはその逆をしないとなりません。


私が使っているフランス語の辞書

和仏辞典で頼れるのは小学館ロベール仏和大辞典だけ。ハードカバーの辞書は持ち歩けないほど大きいので、フランス用と日本用に2冊買いました。それが入った電子辞書が登場したときには、ハードカバー1冊買う値段なのに、他にもたくさんの辞書が入っているので驚きました。

小学館ロベール仏和大辞典
ハードカバー
カシオ電子辞書 エクスワード
フランス語モデル XD-Y7200 コンテンツ100


でも、この仏和大辞典は刊行されてから30年近くもたつのに、一度も改訂されていないのです。

ここのところ栗についてブログに書きながら、栗に関連した植物関係の用語の日本語訳が見つからないので困っております。

それで、パソコンにインストールしてあるプチ・ロワイヤル仏和辞典もひいてみました。

いつもは全く使っていないのです。

知りたい単語は、必ずと言ってよいほど入っていないので、買ってから1週間もしないうちに投資したことを後悔した辞書なのですが、間違っていることまで書いてあるとは知らなかった!


シリーズ記事目次 【栗のマロンには不思議がいっぱい!目次へ
その4


ありえへんことが書いてある?

栗について書いていたら、次々と分からないことが出てきているのですが、とりあえず栗を指すシャテーニュとマロンがどう違うのかを調べています。こういうことだと思うということを書いた記事をブログに入れたのですが、やはり私の解釈が正しいのかどうか確信が持てない。それでアップロードした記事は引っ込めて、また調べております。

色々なフランスのサイトに入っている文章を読むと、ますます混乱してくるのです。インターネットで情報を得られるのは便利なのですが、誰でも公開できるために間違ったことも入っているわけで、どれが本当なのか分からなくなってしまう...。

いつもは使わない辞書なのですが、栗に関する単語を使っている例文の中に、私が知りたい単語が入っているかと調べたわけですが、やはり小さな辞書には入っていませんでした。

ところが、基本的な単語の訳文で首を傾げることが書いてあったのです。私が???と思った箇所を赤字にしてみます。

châtaigne
❶栗の実  [参考] ふつうは食用にしない. 食用のクリはmarronという

châtaignier
❶栗の木

marron
❶栗(の実)
❹マロニエの実(= marron d’Inde)  [参考] 栗の木châtaignierの実は本来châtaigneというが,食用という観点からはふつうmarronと呼ぶ.マロニエmarronnierの実もmarronだが,こちらは食べられない

marronnier
❶〖植〗マロニエ(= marronnier d’Inde) [参考] パリの街路樹はマロニエが多く5月に花をつける
(栽培された)栗の木
[プチ・ロワイヤル仏和(第4版)・和仏(第3版)辞典]

大先生が書いていらっしゃる辞書なので文句はつけられませんが、「châtaigne(シャテーニュ)は食べない」というのは間違いだと思うのですけれど...。実際に「シャテーニュ」として栗の実が売られているし、料理の名前にも使われているのですから。

書いた方は、栗は「マロン」と呼ばれると確信していらっしゃるようですね。私は栗の木の下に実が落ちていたら、シャテーニュと言う人の方が多いのではないかと思うのですけど、統計をとったわけではないので分かりません。

マロニエという木の実である「マロニエ」は食べられないと書いてある部分もあるのですが、marronnier(マロニエ)の訳に「(栽培された)栗の木」というところでひっかかりました。

マロニエはトチノキ科で、栗の木はブナ科ですよね。マロニエを「栗の木」と言ってしまって良いのでしょうか?

パリの並木道にあるマロニエも栽培しているわけですよね。この辞書をフランス語の勉強に使っている日本人が、marronnierの項目だけ見た後にパリに行って、マロニエの実を拾って食べてしまったらどうするの?! お腹をこわして、数日間は苦しむようですよ。

でも、この部分は間違いではないらしいのでした。仏仏辞典にある「marronnier」の項目でも「Châtaignier cultivé」書いてあるのです。「日常的な使い方では」と付けている辞書もありましたが。これは「栽培された栗の木」としか訳せません。

全く混乱してしまう。栽培されている栗の木の中には「マロン」と呼ぶ栗が収穫できる品種があるというのは分かったところなのですが、そういう栗の実がなる木をmarronnierと呼ぶのでしょうか? そういう栗の木を栽培している人はそう呼んでいるのかな?...

フランスの画家テオドール・ルソーの作品に、「栗の並木」とでも訳せる作品がありました。


L’Allée des châtaigniers, Théodore Rousseau

マロニエの並木はパリでよく見ますが、栗の木で並木を作るなんて知らなかった。こういうのを「栽培された栗の木」として「マロニエ」と呼ぶのかな? これは全く確かめようがないので、あきらめて放置します。インターネットでmarronnierとchâtaignierをキーワードにして検索したら、この2つは違うものだ、という記事しか出てこないでしょうから。

食べるための栗を、フランス人はマロンと呼ぶのが普通なのかという方は気になる。料理や加工食品の名前ではマロンという文字がよく出てくるので、そうかな... という気もしてきます。

でも、少なくとも生の栗については、シャテーニュという言葉を使う方が多い、と私は思うのですけど。例えば、AOC/AOP(原産地呼称)を取っているアルデッシュ県の栗でも、その認定呼称の名称は「Chataîgne d'Ardèche(アルデッシュのシャテーニュ)」です。そこの栗業界が作っている組織のサイトでは、シャテーニュとマロンとの違いを示すときにマロンという単語を使っているだけで、他ではシャテーニュで統一しているように感じました。

わからん!

そもそも、私は栗とは無縁なのです。ブルゴーニュ地方で栗の木が生えているのは、ごく限られた地域です。酸性度が必要なのではないかな。ブドウ栽培に適しているような土壌では栗は育たないと思う。日本にいるときは東京だし、栗の木を見ることは滅多にないわけです。

栗を食べることも非常に少ないです。日本の栗の和菓子はさっぱりしていて美味しいと思うので、見かけたら買っているように思います。でも、フランスで栗のケーキは買わないです。フランス料理は胃にもたれるので、デザートで栗を食べる気にはならないので。レストランや友人の家で、栗が付け合わせになっている料理を食べたことがあるかどうかさえ記憶にありません。

そんなわけで、今までは全く興味がなかった栗なのに、調べていると次々と不思議なことが出てくるのです。

辞書では専門用語の意味が分からないし、植物学や栗業界に詳しい人も友人の中にはいないので、私の疑問に答えくれるフランス人がいない...。ブルゴーニュでは栗を食べる文化がなかったので、栗のことを友人に質問したら、冷たい答えも返ってきました。あんな不味いものなんかどうでも良いじゃない? マロングラッセなんてメチャメチャに高いから買わない!

J'en ai marre des marrons...
Ce n’est pas marrant, les marrons...

乗りかけてしまった船なので、栗のお話しはまだ続けます。


追記:

この記事をアップロードしてから少し後、南仏で栗を収穫しているニュースの動画を見たら、アナウンサーも栗栽培をしている男性も、マロンのなる木のことを「マロニエ」と呼んでいました。そういう風に紛らわしいから、並木になっているようなマロニエの木のことをmarronnier d'Inde、その実はmarron d'Indeと呼ぶことがあるのですね。

ついでに、そのニュースに出てきた人、つまりこの分野でのプロが、栗を見せながらマロンとシャテーニュの違いを説明していました。この違いについて、私の解釈は間違っているとフランス人に言われていたのですが、私の方が合っているのではないかと思えました。それで、保留にしていたマロンとシャテーニュの違いについての記事を書きあげることにします。


続きへ ⇒  フランスでは、どのような栗を「マロン」と呼ぶのか

★ シリーズ記事目次: 栗のマロンには不思議がいっぱい!



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