| Login |
2017/04/06

これだけ並べられたら圧倒されてしまいます。ナイフとフォークとスプーンは、外側から使っていけば良いようになれべられているそうですけど。

中世の食卓では、もっとシンプルでした!

シリーズ記事 【フランスの食事の歴史】目次へ
その4


カテラリーの中で、ナイフだけは無ければならぬ!

下は、フランス王シャルル5世(青い服)が、カール4世(王様の左)と息子のヴェンツェルのために開いた饗宴の絵。料理が運ばれ、それを告げるトランペットが吹かれています。

Banquet de Charles V le Sage.jpg
Corner l'assiette
Jean Fouquet, Les grandes chroniques de France, vers 1460


テーブルの上に置かれているのは、それぞれがナイフ2本、四角い塩入れ、ナプキン、パン、皿、と説明されていました。

この時代には、今のようにグラスを各人の前に置いていませんでした。飲みたかったら、飲み物係りを呼ぶことになります。


カテラリーとしてあるのは、ナイフだけです。

中世の食事で使われたナイフは、今のテーブルナイフのような「安全な」ものではなく、武器にもなるエッジの鋭い短刀でした。

普通は、自前のナイフを取り出して使ったようです。

フォークがないので、ナイフで突き刺して食べるか、手づかみで食べていたことになります。

中世にもスプーンは使われていましたが、スープは日本式にボールを持って飲むことが多かったようです。現代のフランスでは、スープはスプーンを使うので「食べる」と言い、「スープを飲む」とは言わないのですけれど。

この時代にはフォークがないので、スープを飲んで底に残ったものはナイフで突っついて食べたようです。


15世紀に作られた装飾写本『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(Les Très Riches Heures du duc de Berry)』の1月の暦に、当時の宴会風景が描かれています。私がブログのプロフィール写真として使わせていただいている絵なのですが、改めて、どんな食卓なのか眺めてみました。

Les Très Riches Heures du duc de Berry (janvier)
Très riches Heures - Janvier


左奥で青い服を着ているのがベリー公ジャン1世。この装飾写本の分析者によると、これは1414年の公現祭(1月6日)、あるいは1415年の新年の祝いとして、パリの館で開かれた食事風景だとのこと。百年戦争がようやく終わりになろうとしている時期ですね。

中世の食事場面では、犬がよく描かれています。この絵では、グレーハウンド犬が床にいますが、テーブルの上にさえ子犬の姿が見えます。狩猟が大切だったので、犬にも愛着があったのか? 散らばってしまった食べ物をお掃除してくれるから重宝だったのか? あるいは、犬は忠誠のシンボルなので、いることを好んだのか...。

中世も末期になると、テーブルマナーも形づくられてきたし、衛生面も気にするようになったので、食事をするときには、そこらへんにいる犬や猫を撫でた手で食べないとか、犬のよだれを手に付けないようにするとかになったそうです。


上に入れたのはWikipediaに入っている画像なので、クリックすれば大きな画像が開くようにリンクを入れていますが、食卓の部分を切り出してみます。



ナイフを持ってお給仕している男性が2人いますが、これは前回の「中世の食事 (2) 宴会でのテーブルの配置」に書いたécuyer tranchantと呼ばれる、切るサービスをすることが役割の若い騎士です。

この豪勢な宴会では、切ってくれる役割の人がいるので、各人は自分でナイフを持つ必要がないのでしょうか? 各人の前にはナイフが見えません。


下は別の装飾写本(1430年頃)で、女性が1人で食事しています。


Livre d'heures de Marguerite d'Orléans, vers 1430, BnF

やはり大きなナイフが目立っていますね。

左に見えるのは、塩を入れた壺。食卓には塩が欠かせないものだったようです。中世の料理ではハーブもたくさん使っていたので、その後に続く時代よりも味付けが濃かったのではないかという気がします。


パンは皿の代わりになる

各人が使う皿は「tranchoir」と呼ばれていました。trancher(切る)から出来ている言葉で、今日「トランシュワール」と言われたら、まな板のことだと思ってしまうのですけれど。

このトランシュワールという皿は、スライスしたパンか、木の板か、スズで作られた皿でした。薄く切ったパンに料理を乗せ、ソースをパンに吸い取らせてしまうという食べ方はよくしたようです。皿があっても、その上にパンのスライスを置いたりもしていました。

裕福な階層では、皿にするのは堅くなってきたパンで、食べるためのパンは別にあったのだそう。皿として使ったパンは、貧しい人々やペットや家畜に与えられていました。

ともかく、中世の食事では、カテラリーや食器には余りこだわりがなかったようです。皿も、グラスも、2人以上で使う場合が多かったという記述がありました。


手で食べるとなったら、手を洗う必要がある

フォークがフランスで使われるようになったのは、17世紀になってからでした。ナイフの先に突き刺して食べるので、フォークがないのは不便ではなかったようです。それに、手で食べれば良いわけなので。

手で食べるといっても、貴族たちはお上品に(?)3本の指(親指、人差し指、中指)を使っていたそうです。

ともかく、手は清潔にしておかねばならない。食卓につく前には必ず手を洗う風習になっていました。


Chroniques de Jean Froissart, XVe siècle

水差し、受け皿、手ぬぐいを持った係りの人がいて、手を洗わせてくれます。

食事の最中でも、手を洗いたければ係りの人を呼ぶことができたようです。もちろん、食事の後にも手を洗うサービスがありました。

フォークは17世紀から使われるようになりましたが、ルイ14世は手づかみで食べるのを好んだそうです。それで、彼のためには濡れたナプキンがあったという記述がありました。

つまり、おしぼり? その方が手を拭いながら食事するには便利ですよね?

今日のフランス料理では、カエルのもも肉料理や、丸ごと茹でたアーティチョークのように、手を使ってでないと食べられないものがあります。私は日本で買ったオシボリを出すことにしています。フランスでは、小さなタオルといったら、高級レストランのトイレに置いてある白くて小さな四角いタオルくらいくらいしか売っていないので味気ないので。すると、みな、とても便利だと言うのです。

どうしてフランスではオシボリが発達しなかったのか分からない。日本では、すでに『古事記』にオシボリは登場しているし、オシボリを出すサービスは室町時代か、江戸時代には定着したようなのですが。

手づかみで食べるとなると、拭うものが必要です。テーブルナプキンの歴史も面白いので、それはまた別に書くことにします。


続き:
その5 フォークを使って食べることが定着するには、百年以上もかかった


シリーズ記事【フランスの食事の歴史】目次




ブログ内リンク:
★ 目次: レシピ、調理法、テーブルウエアについて書いた記事

外部リンク:
Définition d'un tranchoir
Wikipédia: Les Très Riches Heures du duc de Berry » ベリー公のいとも豪華なる時祷書

にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村
にほんブログ村 グルメブログ フランス料理(グルメ)へ
にほんブログ村