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2017/04/10
フランスにいて、どうしてこれがないと食事できないのかな、と思うことがあります。


Serviette de table pliée artistiquement

人を招待したときにはナプキンを出して恰好をつけるというのではなくて、家庭での食事でもナプキンはなければならないものになっているのです。手で食べる料理には必要ですが、そうでなかったらいらないのではないか、と私は思ってしまうのですけど...。

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その7



古代ローマのナプキン

古代ローマ時代でも、mappa と呼ぶナプキンが使われていたのだそうです。

ただし、テーブルに置かれるのではなくて、各人が自前のものを持って行くものでした。白い布というシンブルなもので、時には金糸で縁取りがある程度。顔を拭いたりもしていたらしい。

としたら、日本人の感覚ではハンカチみたいなものではないですか?

フランス人にとってのハンカチは、ちょっと違うので、食事の席で出してきて使うわけにはいきません。

フランス語でハンカチはmouchoirで、命名からして鼻をかむときに使うのが大きな目的のようなのです。後は涙を拭く? 私はハンカチで鼻をかんだりすることがないので、ハンカチは清潔なものだと思っているのですけれど、フランス人に貸してあげるなどとは言わないようにしています。

ともかく、西洋ではナプキンとハンカチは別ものらしい!

古代ローマ時代には使われていた小さなナプキンは、中世には消えました。


中世

テーブルには大きなテーブルクロスがかけられるので、その端で手や口を拭い、ナイフも同様に拭っていたそうです。

当時のテーブルは、食事の時に脚台に板を乗せて作られ、2つ折りにしたテーブルクロス(doublierと呼ぶ)をかけました。このダブルクロス(doublier)は、そのうちテーブルの淵に長い布を置くことによってとって変えられます(longuièreと呼ぶ)。


La Dernière Cène, de Dirk Bouts, panneau appartenant au retable du Saint Sacrement (1468)
ディルク・ボウツ『最後の晩餐』



13世紀には、中世のテーブルナプキンと呼べるものが登場します(touailleと呼ぶ)。これは4メートルの長さがあるものを2つ折りにして縫い合わせたものを棒に付けたもので、壁に布巾(torchon)のようにかけておいて使いました。

それって、トイレにある手拭きにあるシステム? 当時の食卓にはフォークはなく、手づかみで食べていたので、手拭きは必要でした。touailleという言葉は、ナプキンというか手ぬぐいという感じで17世紀くらいまで使われたとのこと。貧しい家庭では、そういうものを手ぬぐいとして使っていたのでしょうね。

もっとも、宴会では「中世の食事 (3) 食べる道具としては、ナイフとパンがあれば十分」に書いたように、手を洗わせてくれるサービスもありました。




16世紀ルネサンス期

今日のテーブルナプキンが登場する。四角か長方形で、かなり大きいナプキンでした(長さ1メートルのものもあった)。

大きなナプキンが必要だったのは、当時に流行したコルレット(Collerette)と呼ぶギャザーがついたレースなどの飾り襟を保護するためでした。形が似ていることから果物のイチゴを意味するfraise(フレーズ)とも呼ばれた襟です。

マルグリット・ド・ヴァロワ
William I, Prince of Orange by Adriaen Thomasz. Key Rijksmuseum Amsterdam SK-A-3148.jpg
ウィレム1世 (オラニエ公) 
マリー・ド・メディシス
MargaretevonValois.jpg
マルグリット・ド・ヴァロワ
アンリ3世 (フランス王)

フランソワ・ダランソン
  

こういう突拍子もない(と、私には思える!)襟が、ルネサンス期、16世紀半ばから17世紀前半に王侯貴族や富裕な市民の間で流行しました。

日本にポルトガル人たちが来たときも、これが流行していた時期でしたね。学校の教科書でにあった南蛮貿易の挿絵を見て、不釣り合いに大きな襟に目が行ってしまったのを思い出します。

この時代には、裕福さを誇示するために大きな襟を付けることを競い合っていました。取り外しはできるのに、食事のときも付けたまま。

この服装がフランスでフォークを使うことを定着したさせたのですが、フォークで食べ物を口に持っていくだけでは、手間をかけてつくるレースの貴重品であるご自慢の襟を汚してしまうこともあります。

そこで、大きなナプキン(風呂敷のような感じでしょうか?)を首の回りに巻くようになりました。つまり、それまでは、赤ちゃんのよだれかけのようにナプキンを首の回りに巻くなどということはしていなかったのです。それ以前は、ナプキンは肩にかけるか、左腕に付けていたのだそう。

もちろん、こんな襟をカバーできるように上手くナプキンを撒くのは一人ではできないので、隣に座った人同士が首の後ろでナプキンを結ぶのを手伝うという礼儀作法までできたのでした。

そこから、今日でも使われている「joindre les deux bouts」という表現ができたのだそう。文字通りにいえば「両端を結ぶ」という意味なのですが、「帳じりを合わせる」とか「なんとかやり繰りする」という意味で使われるのです。たいていは否定文で使われて、今月はお金のやりくりがつかない、などという時に使われます。

つまり、こんな大きな襟をしているから、ナプキンでうまく隠して、それが落ちてこないようにしっかり結ぶのは大変だった、ということでしょうか。

ともかく、フランス人たちが嫌っていたフォークを使い、ナプキンもして、お上品に食べるようになったのは、こんな不便なファッションのおかげだったようです。

コルレットの流行は1630年代で下火になり、それ以降は控えめな襟になりました。

この時代、ダマスク風麻布のナプキンも普及しました。行儀作法として、グラスに口を付ける前にはナプキンで口や手を拭います。

ナプキンにはバラの香りを付けたり、鳥、動物、果物などの形に折ってテーブルに置くことも行われるようになりました。


ルイ14世の時代

ルイ14世(在位 在位: 1643~1715年)の食卓では、一人ひとりにフォークやスプーンが置かれるようになりました。とはいえ、王様は彼はフォークを使いたがらず、相変わらず手で食べていたそうです。

料理の間には濡れたナプキンが出されたと書いてあったのですが、それがどんなものだったのかは突き止めることができませんでした。


18世紀

ナプキンで覆わなければならないような大きな襟はなくなっていますが、18世紀に描かれた食事の絵画を眺めると、相変わらず大きなナプキンを使っていたのではないかと思わせます。大きな風呂敷のサイズくらい?

18世紀半ばの作品で、狩猟のときに野外で食事をとっている風景です。

Déjeuner de jambon - Nicolas Lancret - musée Condé
Le Déjeuner de jambon(1735年), Nicolas Lancret, Musée Condé

今でも、フランスの奥深くの田舎に行ったら、首にナプキンを挟んで食事するお爺さんがいそうな気がしますけど...。

18世紀、食卓は豪華になり、食器も凝ったものになってきます。カトラリーも現在と同じようになり、ナプキンは、食事の最初から最後まで使われるようになりました。

ナプキンはテーブルアートで重要な位置を占めるようになり、刺繍を施したり姓名の頭文字を入れたりする豪華なナプキンや、奇をてらった折り方も登場します。


19世紀

ナプキンは小さくなり、ナプキンリングも登場しました。

Napkin ring


20世紀以降

ナプキンは、どんどん小さくなります。

花嫁道具として、テーブルクロスやナプキンに姓名の頭文字を刺繍したりもする風習ができました。




今日では、大勢で集まるホームパーティーでは使い捨ての紙ナプキンを使うことも多いですね。


続き:
★ 昔のフランスには、ダイニングルームがなかった

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ブログ内リンク:
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外部リンク:
La Serviette De Table : Histoire D'une Invention
☆ Wikipedia: ナプキン » 仏語 Serviette de table » 伊語 Tovagliolo
Etiquette and Napkin History
ナプキン(napkin)
Histoire de l’art de la table  la serviette de l’Antiquité à aujourd’hui
Si vous mangez avec une fourchette et que vous n’arrivez pas à « joindre les deux bouts », c’est parce qu’il y a eu la Saint-Barthélémy !
L’origine de ces fameuses expressions : « Joindre les deux bouts »
☆ Wikipedia: Collerette (costume) | Fraise (costume) » 襞襟(ひだえり)
☆ Wikipedia: おしぼり
☆ Wikipedia: ハンカチ » Mouchoir


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