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2017/05/30
むかし日本でフランス語を勉強していた頃は、日本語で書かれたフランス語の学習書や、フランス社会を紹介した本は、全部と言えるほど買っていました。それだけ、フランス関係の本が少なかったということですけれど。

最近は、いくらでも本が出版されているのできりがないのと、勉強心がなくなっているので、ちっとも読んでいません。私が見ているフランスは一面だけですから、素直な気持ちで学ばないといけないとは思うのでしょうが、そうも言えるかな?... と考え込んでしまうことがタイトルになっていることもある...。

前回に書いた「フランスにはシャッター通りがない?」の続きです。

こちらは現実とは正反対ではないかと思ってしまった ↓

フランス女性は太らない
― 好きなものを食べ、人生を楽しむ秘訣


ミレイユ・ジュリアーノ (著)


極端なダイエットはしない。頭を使って毎日3食、栄養あるものを適量、心から味わう。そして、歩くことや階段を上ることなどのちょっとした運動を生活にとりいれる。フランスの田舎の四季と食べ物の思い出話とともにカラフルに語られる優雅で健康的な生き方。世界300万部のベストセラーを簡単なレシピ付きで文庫化。

フランスにはスマートな女性もいますが、日常生活で出会う人たちや、テレビに映し出されるフランス女性を見ていると、「太らない」とは絶対に言えないと思うのだけれどな...。少なくとも、太った人が少ない日本人に、フランス女性はスリムです、とは言えないですよ...。

パリのような大都会にはスマートな人たちがいる。それから、生活レベルが高い階層だと、フランス女性はカッコイなと思う体形の人がかなり多いと言えるかもしれない。それと、子どもや若い人たちは、余り食べないからだと感じますが、痩せている場合が多い。

でも、フランスの田舎で見かける女性たちは、30歳過ぎれば太っている方が普通に感じます。

こんな感じ ↓



別のテーマでブログを書くために、先日行ったレストランで撮影していました。こちらに背を向けているのはの利用客らしく、それ以外の2人はレストラン経営者の家族としてお給仕をしていた女性たちです。

私がフランスで付き合っている中年女性は、ほぼ全員が痩せたいと言っています。

無理してダイエットしたり、毎日その辺を散歩をするという努力までしないで良いのではないの... と思いながら観察してしまったら、彼女たちはお尻が大きくなってしまうのだ、と気がつきました。



フランス人が言うには、女性はお尻が大きくなり、男性はお腹が膨らむ、というのが普通の太り方なのだそうです。「私が太ったらお腹が出る」と言ったら、「あなたは変だ」と言われてしまった! でも、日本人の場合はそうではないですか?...

「私のお尻の肉を少しあげたいけどね...」なんて私に言う友達もいました。痩せているのもまた、良いイメージはないのです。

「痩せる」をフランス語に訳すとmaigrir。それから作った単語らしい「maigre」という形容詞があります。それで、若い女性に「あなたはスリムだ」と言うつもりでmaigreを使ったら、「そんなことないわよ~!」と不快な顔をされてしまったことがありました。傍にいた別の友だちが、貶すつもりはないのなら「mince」を使うべきなのだと教えてくれました。


太っていても、痩せていても、ご不満なフランス女性たち...。

ここに写真を入れた女性たちは、理想的な体重を少しオーバーしている、というレベルだと思います。

肥満体とは?...

フランスで「肥満体」と呼ばれる太り方は、このくらいでないといけません ↓

http://www.20minutes.fr/sante/2073071-20170522-video-obesite-efficacite-ballon-gastrique-prouvee-scientifiques-italiens

このレベルになった人たちを見ると、何とかした方が良いのに... と思ってしまいます。歩くのさえ、とても辛そうなので。


太っているかどうかを判断するには、日本でもフランスでもBMI(ボディマス指数)というのを使っていました。

BMI = 体重(Kg) ÷ 身長の2乗(m)

フランスなど欧米諸国では、BMIが25を超えると過体重、30以上は肥満。
日本の厚生労働省は、25を超えたら「肥満」としているそうです。

つまり、身長160cmで体重が65Kgの場合、フランスでは過体重で要注意レベルですが、日本では肥満とされてしまう。この人の体重が78Kgまで増えれば、フランスでも肥満とされる、という違いがありました。


30歳~69歳のフランス人を対象にした最近の調査では、2人に1人が体重オーバーだったのだそう。

フランス人男性の41%が、BMIが25を超える過体重で、そのうち16%がBMI 30を超える肥満体とされたとのこと。女性の場合は、体重オーバーは25%だけですが、その中で肥満体とされたのは男性と同じに16%でした。

女性の方がスマートな人が多いとは言えますが、日本の基準でいったら、フランス女性の4人に1人は肥満体なわけです。

なぜ「フランス女性は太らない」などという断定的な言い方にできたのか不思議だったのですが、この本を書いたのはアメリカ人なのでした。

アメリカ人は太った人が多くて、日本の基準では「肥満」とされるBMI 25以上は7割近いらしい。

OECDが行った成人の肥満率調査(2015年)を見たら、アメリカの肥満率は38.2%でトップですが、フランスは15.3%でした。それからいくと、アメリカ人がフランス人のように太らない方法を知りたがるのは分かります。

でも、日本の肥満率は3.7%と、調査対象とした国々の中で最も肥満率が低くなっていたのです。こちらのPDFの5ページ目に各国の肥満率比較のグラフが入っています。

日本人がこの本を読んで学んだら、太れる方法になってしまうかもしれないではないですか?!...

この本の英語版のタイトルは『French Women Don't Get Fat』 でした。フランスでも翻訳が出ていましたが、フランス人はタイトルをそのまま訳すには気が引けたのではないでしょうか? あるいは、そのまま訳したら、皮肉を言っている、と反感を持たれてしまうと翻訳者は心配した?

フランス語版のタイトルは『Ces Françaises qui ne grossissent pas : Comment font-elles ?』となっていました。「フランス女性」に「Ces(これらの)」を付け、太っていないフランス女性たちのことを書いていると受け取れるようにしたのではないかな?....





もう1つ、こんな言い方ができてしまうの? と思った本もありました。

フランス人は年をとるほど美しい

ドラ・トーザン (著)

年をとることは成熟すること。わがままに生きる、自由に生きる、細かいことは気にしないのが若返りの秘訣。東京在住のフランス人が教える最高にHAPPYな年のとり方。

成熟することで女性は磨かれる。もっとわがままに生きていい。東京在住パリジェンヌの“美”の教科書。

フランスでは、日本のように女性が年をとったことに対する軽蔑的な見方はないので、このタイトルは間違ってはいないと思います。

悲しみよこんにちは』の著者として日本でも知られているフランソワーズ・サガンが来日したときには、インタビューされると必ず年齢のことを言われると怒っていました。彼女は日本人が描くような素敵なフランス女性ということで、美しく年をとることについて日本の記者は聞きたかったのではないかと想像したのですが、彼女には侮辱だったらしい。

歌手のリアーヌ・フォリーに電話インタビューするのを手伝ったときも、質問文の中には年齢に関するものがありました。30歳になった彼女は、もう若い女の子という魅力だけではやっていけなくなったわけだけれど、それをどう考えているか、という質問でした。そういえば、日本には「三十路(みそじ)」というのがあった。でも、30歳になった程度で、もう若くはないのだ、なんてフランス人に言ったら怒りだされてしまうだろうと思って、婉曲な言い方に変えるのに苦労しました!

日本では、女性が年をとったら女ではなくなるような目で見る傾向がある...。東京都知事だった石原慎太郎が言った「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で、罪です」などというババア発言を、もしもパリ市長がやったら、政治家としての道は完全に閉ざされただろうと思います。


でも、「フランス人は年をとるほど美しい」とまで言えてしまうかな?.. 「美しい」と感じる人になるかどうかは、人によって大きな差がありますよ~。


★ フランス人って、どうしてこんなに食べられるのだろう?...【2】 2006/05/28


高齢になっても、フランスの女性たちが美しくあろうと努力する度合いが強いのは確か。でも、派手な服装やアクセサリーを身につけるのは平気だし、厚化粧もするので、それを下手にやられると化け物だと感じてしまいます!

役場の多目的ホールではよく食事会が開かれて、食事が終わる頃にはダンスを楽しむ時間になります。こういう集まりに来るのは、熟年以上の高齢者たちばかりです。先日も終戦記念日に開かれた集まりに行って、私は踊らないので、高齢者たちが踊っていまるのを眺めていました。フランス女性はセンスが良いというイメージを持っている日本人に見せたら、これがフランス?! と言われてしまうだろうな... と思ったのでした。


ひところの日本では、オバタリアンという言葉が流行りました。1989年に流行語大賞で金賞を取っているので、30年近くも前でしたか。知らない方もあるかもしれないので説明すると、図々しくて、羞恥心がないのがオバサンの特徴だとして、中年女性を貶す言葉です。

でも、フランスの高齢女性たちの図々しさに比べたら、日本のオバタリアンなんて可愛いものですよ~!

フランス女性を京都の案内したとき、お寺の庭でモンペ姿の年取った小柄な女性が掃除をしていたのを見て、「可愛い! なんて可愛らしいのでしょう!」と感激していたのを覚えています。

そう言われたら、フランスの高齢女性には、こういう風に愛らしいと感じる可愛らしさはないはないな、と思いました。威張っていて、憎らしく見える人の方が多いのです。

1970年代に女性解放が進む前に生きたフランス女性たちは、徹底的なレディーファーストを受けて育ってきたので、自分は偉いのだという思いが強いから図々しいのが1つ。さらに、年をとったら大切にされるものだ、と思っているから図々しいのが2つ目の理由。

フランス女性は「わがままに生きている」と言えるかもしれないけれど、それが美しいこととイコールにできるのだろうか? 美しい姿を保っていて、上流階級にいれば、いくらでもチヤホヤしてはもらえるでしょうが、ごく一部のはず。自分勝手で憎らしい高齢女性は、やはりフランス人の男性からは嫌われています。

著者はフランス人らしいので、フランス人向けにはどういう風に言っているのか知りたかったのですが、フランスのアマゾンサイトでDora Tauzinを検索したら、日本語の本しか出していらっしゃらないようでした。


もしも太らなかったり、実際の年齢よりも若く見えるということなら、フランス人の方が日本女性から学ぶことの方が多いはず。... と思ったら、そういう本がフランスでは出版されていました。

日本女性たちはなぜ年をとらず、太らないのか、ということを書いているらしい本 ↓


Pourquoi les Japonaises ne vieillissent pas et ne grossissent pas : L'art de vivre japonais au service de la santé et de la minceur 

他にも、日本人が健康的に痩せていられる秘密は何かという感じで、『Secrets santé et minceur du Japon』という題名の本など、数冊が見つかりました。

最近のフランスで日本食が流行っているのは、健康に良いし、太らない料理だ、ということが大きな魅力になっているからです。タイトルにはしないでも、内容としては日本人を見習おうという本はもっとあるだろうと想像します。


フランス女性は年をとっても美しいと言うよりは、男性たちが高齢でも女性として扱うから、彼女たちは生き生きしていると強調するのなら納得します。でも、それを前面に出したタイトルにすると日本の男性たちには不快感を与えてしまいそう。

最近の日本礼賛ブームの中で、日本に住んでいるフランス人がそんなことを言ったら「反日」とか言われて袋叩きにされるから避けたのかもしれない。もっとも、書籍の批判コメントを見ると、反日扱いしている人たちがいますね。



↓ こちらも、同じようなテーマ?


セクシーに生きる
- 年を重ねるほどに、フランス女性が輝きを増す秘密
ジェイミー・キャット・キャラン(著)

フランス女性はファーストフードを好みません。同じように、即席のセックスも好みません。もちろんアバンチュールに身をやつす瞬間はありますが、その際はすべてが秘密のまま終わるよう、細心の注意をはらいます。愛に関するほとんどすべてにおいて、フランス女性は時間をかけ、ふざけ合いや誘惑、相手を惹きつけるプロセスを愉しむのです。


そういうフランス女性もいる、という程度だと思いますけどね...。





ついでに、不思議に思ってしまった本のタイトルを、もう1つ挙げておきます。

フランス人は10着しか服を持たない
~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~


ジェニファー・L・スコット (著)

間食はせず、食事を存分に楽しむ。上質な物を少しだけ持ち、大切に使う。日常のなかに、ささやかな喜びを見つける。典型的なカリフォルニアガールだった著者は、フランスの貴族の家にホームステイすることになる。その家を取り仕切るマダム・シックから学んだ、毎日を“特別な日”のように生きること。

服をたくさん持つか否かは、人によりますけれどね...。頻繁に会う中なのに、会うたびに違う服を来ている友人も多いです。男性でも、女性でも。

フランスはファッションの国と言われますが、素敵だと感心するようなファッションでいる人は例外的だと思う。生活費の中で最も重きを置いているように見えるのは「住」の部分で、経済的に余裕がなかったら、まず衣服費から節約するかもしれない。

服をたくさん持たないことにしているフランス人もいるでしょう。フランスには四季がありますが、真夏でも真冬の服装を着るほど寒い日もあるし、ジメジメと暑い日はほとんどないので、真夏用の服を持たなくても生活できるかもしれない。

でも、10着というのは余りにも少なすぎるではないですか?!

フランス式のかっぽう着のようなものがあって、ひと昔前の田舎では高齢女性たちのユニフォームのように見えるほどでした。


★ フランスのエプロン 2009/02/10


これで毎日を過ごせば10着で足りるかもしれない。でも、そういう話しではないですよね? フランス人は洗濯をほとんどしない、という話しでもないでしょう?...

突拍子もないことを書いたタイトルにすると読んでみたい気にさせるから、というのが狙いではないのかな?...



ところで、ここに並べた書籍の著者は、全て日本人ではないのでした。

特にアメリカではフランスに対する憧れが強いようです。フランス女性は美しいし、子どもの躾けも良いのだという本が最近はたくさん出版されているのだそう。そうなると、アメリカに住んでいるフランス人たちは、イメージを破ってしまわないようにしなければいけないわけで、居心地が悪くて困っているのではないか、なんて書いているフランス人もいました!

いずれにしても、日本でもアメリカでもフランス女性が素晴らしいという主張は、パリなどの大都会で生活するセレブたちに代表させているイメージだと感じます。私はそうではないフランス人たちの方が好きなのだけれどな...。


ブログ内リンク:
スリミ・ダイエットをしている友達 2013/07/08
カフェで「ボクの愛しい人」と呼ばれてしまったのには理由がある 2006/08/14
フランスのイメージは良すぎるのでは? 2013/08/02
ちょっと怖いな... 最近の日本礼賛ブーム 2015/03/01

外部リンク:
La femme française, un rêve toujours américain
Le surpoids gagne du terrain, l'obésité stagne en France  26-10-2016
Obésité En France, 15% des adultes sont concernés et la tendance va s'aggraver 19.05.2017
☆ Marie Claire: Les Françaises ne grossissent pas : notre silhouette vue par les Américaines
Mensurations à quoi ressemble la (vraie) femme française
☆ OECD: Obesity Update 2017
☆ Wikipedia: ボディマス指数(BMI) » Indice de masse corporelle(IMC)
☆ PRESIDENT Online: なぜフランス女性は「年を取ること」を恐れないのか?


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カテゴリー: フランス人 | Comment (4) | Top
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2017/05/21
フランスの地方都市で閉店している商店が軒を連ねている風景には慣れていたのですが、先日行ったディジョンにも同じ状態になっている商店街があったので驚きました。

ディジョンはブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏で最大の都市で、コート・ドール県に住む人たちの約半分がこの都市圏に住んでいます。つまり、ブルゴーニュでは最もにぎわっているはずの町なのに、あれほど賑わっていた通りに閉まった店がたくさん並んでいたのでした。しかも、ディジョンの中心地にある商店街といったら、ここは2番目くらいに代表的なところだったのに...。



この通りでは買い物しなくなってから何年もたっていたように思います。歩行者天国になったので、車で通り抜けることもなくなっていました。



日本には「シャッター通り」という言葉がありますが、フランスでは同じような言い方を聞かない気がします。シャッターは閉めないものかなと思って眺めてみると、あることはあるのでした。



でも、シャッターは下さないで閉店している方が多いかな... と、つまらないことを観察。



この通りで、何割くらいが閉店していたり、閉店セールをしているか知りたいとは思ったのですが、そこまでは計算してはみませんでした。

営業している店を見ると、昔とはかなり変わっているのに気がつきました。以前は洒落たものを売っている衣料品店などが多かった商店街だったのに、今では安物を扱ったりしていて、魅力がない店が目立つのです。不況からの生き残り作戦かな?...


いくらフランスの経済が滞っているといっても、こんな大きな町で商売ができなくなっているほどではないと思うので、フランスが深刻な不況だからというだけの理由ではないかもしれない。

ディジョンの町はずれに大きなショッピングセンターが出来たとき(1990年)、そこに入ったのは町の中心部にある商店でした。2カ所に店舗を構えるのは不経済なので、町中の方は徐々に閉店していったのかも知れません。

 

フランスでは夫婦共働きが普通で、日曜日は商店が営業しないので、買い物をするとなったら土曜日しかない。となると、何でもそろっていて広い駐車場があるショッピングセンターや巨大スーパーに行って買い物する方が便利なのです。


私がフランス語を勉強するためにたまたま選んだのがディジョンだったので、一番初めに住んだのはこの町でした。下宿先の家庭と親しくなったので、東京で就職してからも毎年遊びに通っていました。何年たっても何の変化のない美しい古都という感じで、町の目抜き通りにある一番美味しいケーキ屋さんが閉店して、マクドナルドになるらしい、なんていうのが大ニュースになっていた程度でした。

ところが、21世紀になってから、ディジョンの街並みはずいぶん変わりました。

歩行者天国が増え、道路や広場は美しく整備され、若者の姿も目立つようになって活気づいたのです。昔は、日が暮れると人影もまばらになり、商店が休みの日曜日にはゴーストタウンになるような記憶が残っているのですけれど。

歩行者天国が増えた見返りに、駐車場は激減したので、車で買い物に行くには非常に不便になりました。ディジョンの中心部で大きな朝市が開かれるので時々行くのですが、駐車スペースを見つけるまでに、いつも1時間くらい町の中をグルグル回っているように思います。


ディジョンの町が大きく姿を変えたのは、社会党の市長さんになってからでした。この日、その市長さんが歩いているのを見かけたので、観光客が街並みの写真を撮っているような顔をしてカメラに収めてしまいました。



ブルゴーニュ公国時代の宮殿の裏にある小さな公園。ここも見違えるほど美しく整備されたので、それをご視察なさっていたのかな?...

私はディジョンの町が美しくなったのは良いことだと思っているのですが、この市長さんがすることに反対意見を持っている人もかなりいると聞いています。

パリのような大都会に住むのでない限り、車がないと動きがとれないフランスなので、車立ち入り禁止にされた通りに面した商店などは客が減ったと文句をつけるだろうと思います。フランスで誰が極右政党に投票するかというと、1つのパターンは飲食店や商店を営んでいる人たちだと言えるのです。


この日、ブルゴーニュ最大都市でさえも閉まった店がたくさんあることが目についてしまったのは、こういう本が出ていると知ったからでした。

フランスの地方都市には
なぜシャッター通りがないのか:
交通・商業・都市政策を読み解く


ヴァンソン藤井由実 (著)

日本と同じくクルマ社会で、郊外には巨大なショッピングモールがあるのに、なぜフランスの地方都市の中心市街地は活気に溢れ、魅力的なのか。「駐車場と化した広場」から「歩いて楽しいまちなか」への変化の背景にある、歩行者優先の交通政策、中心市街地と郊外を共存させる商業政策、スプロールを防ぐ都市政策を読み解く。


読んだわけではないので何も言えません。フランスの地方都市が美しく整備されてきているのは確か。でも、シャッター通りは増え続けていると私は感じるのだけれど...。

著者によると、人口10万から80万を地方都市と呼んでいるのだそうです。ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏では、その定義に当てはまる都市はディジョン市(15万人)とブザンソン市(12万人)しかなく、県庁所在地レベルでも人口は5万人を超えません。

フランス全体でみると、パリとマルセイユを除いた40の大都市を対象としているということになります。そのくらい飛びぬけて大きな町々についてのことだったら、「シャッター通りはない」と言い切れるかもしれない...。

でも、パリのシャッター通りについて報告がありました。ルーブル博物館の横にあるアンティークモールは、2割位くらいしか店が開いていないらしい。博物館のように骨董品を眺められるのが好きで、何度も行ったことがあるところなので、あそこがそうなったのかと驚きます。やはり不況の影響かな...。


他にも、そう言えるかなと不思議に思った書籍のタイトルがあったので書きました:
フランス女性は誰でも美しい? 2017/05/30

ブログ内リンク:
★ 目次: ブルゴーニュの古都ディジョンの観光スポットや特産品など
★ シリーズ記事目次: フランスの市町村について 2008/11/19

外部リンク:
☆ AFP: 大都市びいきに怒る「忘れられた」地方部、仏大統領選
☆ 現代ビジネス: 極右マリーヌ・ルペンが握る「EU崩壊」の引き金
☆ 教えて!goo: 欧米の都市にシャッター通りはありますか?
☆ Wikipedia: フランスの都市の一覧


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2017/05/18
5月になって初めてだったと思いますが、青空が広がって、夏のように清々しいと感じた日がありました。久しぶりに浴びる太陽の光が嬉しい。日本で「夏」といったら、暑くてたまらないイメージですけれど...。

その日は、友人とレストランでランチをすることにしていました。



こういう日にはレストランのテラス席で食事したい、しかもイタリア料理、ということで意見が一致しました。

皆も外で食事をしたいと思うでしょうから、席が空いていない恐れもあるので心配したのですが、行くことにしたイタリアンレストランではテラスには1人も座っていないのでした。店の中には客がちらほら...。

久しぶりに行った店なのですが、ご主人は私たちの好みまで覚えていて、「トリュフづくしのメニューがありますよ」と言う。でも、簡単に平日ランチをとるつもりだったので、高価なトリュフは断りました。


非常に美味しいイタリアワインだったのだけれど...

ワインはお給仕をしている経営者のご主人に任せ、白のイタリアワインとだけリクエストしました。お勧めで持ってきてくれたワインが非常に美味しい。料理が出てくる前から食前酒として飲み始めました。

写真を撮ったので名前を確認すると「Feudi di San Gregorio Fiano di Avellino 2015」

ワイナリーの片仮名表記が分かったので、情報を探してみる。
☆ フェウディ ディ サングレゴリオで検索

同じボトルが見つかりました。


ショップの説明によると、かなり評判の良いワイナリーのようでした。このワインのブドウの品種はfiano(フィアーノ種)なのだそう。でも、イタリアワインはイタリアに旅行したときに飲むくらいなので、ワイナリーの名前やブドウの品種を思えるために調べてみたわけではありません。このワインを探してみたのは、幾らくらいで売っているのか知りたかっただけなのです。


◆ フランスの不況は深刻なんだな...

お給仕をしていたオーナーのイタリア人夫妻は、お客が少ないので暇だったのか、頻繁に店の外に出てきてきました。つまり、私たちのそばでウロチョロしているわけなので、余り感じが良くない...。

私がレストランに入ったときには、人の動きがある場所が嫌い。トイレのそばとか、調理場からの通り道にある席は避けるのですが、店の入り口にあるテラス席も同じように避けるべきなのだ、と気がついた次第です。

そばに来られて不快に感じたのは、特にオーナーの奥様らしいイタリア人女性でした。通りかかる人たちに挨拶して、つまりは呼び込みをしているつもりらしい。フランスでそういうことをやったら嫌われるだけだと思うのだけれど...。

手持無沙汰なら調理場で手伝えば良いのに、と友人に言ったら、レストランのオーナーの奥さんは皿洗いなんかしないよ、と返事されました。それなら、家に残って、ソファーに寝っ転がってテレビでも見ていたら良いのに...。

閑古鳥が鳴いているのを感じたレストランだったのですが、ここだけではないようなのでした。

私たちが食事したレストランは、車が立ち入り禁止の細い道路に張り出したテラス席だったのですが、向かい側にはクレープ屋さんがあります。



こちらで食事をしたことはないのですが、安さが人気なのか、テラス席で食事をしている人たちがかなりいたのを記憶しています。でも、この日は誰もいない。店では客が来ないことが分かっているのか、テーブル席は2つ3つ作っていただけで、後は折りたたんだまま。店には人影が見えたのですが、私たちが食事をしている間中、人の出入りは全くありませんでした。

不況だからかな?... この店の前に出している看板には、9.90ユーロ(約1,200円)とフランスのレストランにしては非常に安いランチメニューもあったのですけど...。

あたりを見回していると、この歩行者天国の細い道にある数軒のレストランでは、どこでもお客がいない様子...。


 ぼられたのかと疑ってしまった...

私たちが食事をしたイタリアンレストランでは、ご主人もよく出てきて話しかけてきました。

美味しいかと聞いてくるので、友人は料理もワインも美味しいと繰り返していました。

私は、以前はもう少し洗練された料理を出してきたなと思ったのですけれど...。その証拠に、この日の私は料理の写真を1枚も撮っていませんでした。

シェフが変わったらしい。それでも、久しぶりに青空が広がった日にテラス席での食事が嬉しいのは確か。楽しい気分になれば、料理も格別に美味しく感じます。

店のご主人は、お客が減っていることを嘆いていました。大統領選挙の前だったので、現政権が悪いのだ! という議論をふっかけてくるのではないかと心配したのですが、さすがにお客に政治の話しはしないというブレーキはあった様子。

TripAdvisorのサイトが気に入らん、とおっしゃる。悪意で書いている人たちがいるとか、なんとか...。ああいうサイトに書いてあるコメントは信用できないとか返事をしました。私たちがワインも料理も美味しいと言っているので、コメントを入れて欲しいと言ってきました。

イタリア系の人たちは、そういう発想をするものなのかな...。以前にも、同じ町の別のイタリアンで食事したとき、お勘定をするカウンターで「美味しかった」とお礼を言ったら、食後酒を振る舞ってくれて、TripAdvisorに良いコメントを書き込んでくれと頼まれたことがあったのを思い出しました。


お勘定をするとき、少なからず驚きました。私たちがとった平日ランチメニューは1人18ユーロだったのですが、ワインが38ユーロとなっていたのです。

飲んだワインは美味しかったのですけど、イタリアワインがそんなにするとは思っていなかった。日本円にして5,000円くらい。ブルゴーニュワインだって、そう悪くないのが選べるお値段ですよ...。

私たちが「美味しい」と連発したので、値段をふっかけたのではないかと疑ってしまいました。友達はTripAdvisorに何か書き込んであげると言っていたのですが、やめたみたい。遠からぬ将来、このレストランは閉店になっているのではないか、と私たちは思いました。


食事をした後、腹ごなしをするために街を少し散歩しました。

街の中にあるショッピングストリートを通ると、閉店になっている店ばかりなので驚きました。少し前に『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか』という本の題名を見ていたので、余計に気になったのです。フランスには「シャッター通り」と呼べるものがたくさん目につくけどな...。あるいは、フランスの商店が閉まるときにはシャッターを下ろさないものだったっけ?...、と思って眺めました。

そのことついて、続きで書きます。


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2017/05/12
少し前から書いている、ディジョン市(ブルゴーニュ地方)にあるノートルダム教会の外壁にある彫刻の続きです。

シリーズ記事目次 【これはサラマンダー? あるいはドラゴン?目次へ
その4


願いごとをしながら左手でフクロウの彫刻を撫でたとき、すぐそばに変なものが待ち構えているというお話し。下の写真で、赤い矢印を付けた部分にある小さな彫刻です。



この小さなモンスターに願いごとを食べられてしまわないように気を付けるというものなのですが、ステンドグラスの窓枠に彫られている小さな動物は何か?...


サラマンダーではなくて、ドラゴン?



私は、ずっとサラマンダー(salamandre)と呼んでいました。サラマンダーなどというのは私には無縁の動物でしたから、自分で連想したはずはありません。日本人にディジョンの町を案内してもらったことはないので、誰かディジョンに住む友達か、ブルゴーニュ大学がオーガナイズした見学のときか何かで教えてくれたのだろうと思います。サラマンドルというフランス語も、そのときに覚えたはず。


伝説上のサラマンダー(salamandra)とは何か?

Wikipediaでは、次のように説明していました:

四大精霊のうち、火を司る精霊・妖精(elementals)。 手に乗る位の小さなトカゲもしくはドラゴンのような姿をしており、燃える炎の中や溶岩の中に住んでいる。
サラマンダー (妖精)


でも、これを書きながら友人に話したら、あれがサラマンダーのはずはない、と断言されたのです。ドラゴン(dragon)だと言うのです。

インターネットでフランス情報を調べていたら、ドラゴンとしている人もいたのですが、サラマンダーとしている人の方が多いように感じたのですけれど...。


実在のサラマンダー

両生類有尾目のサラマンダーは、フランスにも生息しているので、それとは違うということ?

気持ち悪いので小さな画像で入れますが、こういう4つ足の動物。平気な方は画像をクリックして拡大画像をご覧ください。

Salamandra salamandra 

確かに、ノートルダム教会の壁に彫られている小さなモンスターとはかなり違う...。

伝説のサラマンダーならまだしも、本物に似ていたら気持ち悪いと思うのですけれど、好きな方もいらっしゃるのかな?...





フランソワ1世のサラマンダー

サラマンダーと聞いたら、フランソワ1世のシンボルとなっているサラマンダーを私は思い浮かべます。ノートルダム教会の壁に潜んでいるのとは向いている方向が逆なだけで、よく似ているではありませんか?




耳のようなものが付いているのまで同じですよ~。

でも、鼻のところが違う、と言う友達がいました。



サラマンダーの鼻ずらは、ノッペリしているものだと言うのです。

フランソワ1世のサラマンダーの左右を逆転させた画像で検証してみると、違うかな?... 鼻の部分に注目すると、ノートルダム教会のモンスターは竜に見えてくる...。



口から火を噴いているように見えるところが同じでは?... と言ったら、サラマンダーの場合は、口から出ているのは舌で、火は体の回りに描かれている、とのこと。


だんだん、ドラゴンと呼ぶべきかな、と思えてきました。

ノートルダム教会の彫刻はサラマンダーではない、というのには理があるかなと思えたのは、時代的な問題です。

ブルゴーニュ公国(843年 - 1477年)の都だったディジョンにノートルダム教会が建てられたのは13世紀前半でした。モンスターがいる外壁の部分は、14世紀か15世紀に増築された礼拝堂の部分で、そのときに彫られたのだとしても、サラマンダーをエンブレムにしたフランソワ1世より前の時代なのです。

フランソワ1世(François Ier de France 1494~1547)がフランス国王だったのは、1515年から47年まででした。


ドラゴンとは、なに?

小さなモンスターはドラゴン(dragon)だったとして、はて、ドラゴンってどんな動物だったっけ?

フランス国立図書館で行われた中世の動物に関する展示会「Bestiaire du Moyen Âge」のサイトに入っているドラゴンの絵のコーナーを眺めてみました。絵をクリックすると拡大画像と説明が出ます。


聖ゲオルギオスは竜の退治で名高いので、この聖人の絵にはドラゴンが一緒に描かれます。

Paolo Uccello 047b.jpg
Vouivre représentée dans Saint Georges et le dragon de Paolo Ucello, 1450


ドラゴンには背中に羽を付けた形のイメージなのではないか、としつこく思うのだけれど...。


そっくりの動物を見つけた

ディジョンのノートルダム教会が建てられた時代のモンスターの画像を探していたら、目を引くものが見つかりました。

ノルマン・コンクエストを描いた「バイユーのタペストリー」に入っている画面です。



ヘイスティングズの戦い(1066年)でのハロルド2世の死を描いた画面。イングランド軍の軍旗なのですが、アップすると、こちら:


A dragon (known later in heraldry as a wyvern) which appears twice in the death scene of King Harold II on the Bayeux Tapestry depicting the Battle of Hastings in 1066.


よく見ると、背中には羽のようなものが付いているようにも見えますね。イギリスの紋章に「ワイバーン」と呼ばれるドラゴンがあるのですが、それの前身らしい。つまり、この軍旗はサラマンダーのようにも見えますが、ドラゴンなわけなのでした。

ワイバーン
Héraldique meuble Dragon (wyvern)
Dragon héraldique (ou Wyvern)
ウェールズの旗
ウェールズの旗


「ワイバーン」というのは、フランス語ではvouivre。中世にはブルゴーニュでは好んで使われたモチーフのようなのでした。インターネットで出てきた情報の中には、ディジョンのフクロウの傍にいる動物に「vouivre」という単語を使っている人もいました。私も知ったかぶりでそうフランス人に言うことにしようかと思ったのですが、ヴーイヴルなんていう発音はすぐに忘れてしまいそう...。

どっちみち、伝説上の動物。ディジョンのノートルダム教会に潜んでいる小さなモンスターは、サラマンダーでも、ドラゴンでも、どちらでも良いのですが、今後はドラゴンと呼ぼうかと思います。何人かのフランス人の友達に画像を見せて聞いてみたら、みんなドラゴンと呼んでいたので。


シリーズ記事 【これはサラマンダー? あるいはドラゴン? 】目次


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やっと見ることができた「バイユーのタペストリー」 2009/11/06
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★ 目次: ブルゴーニュの歴史

外部リンク:
Wikipedia: サラマンダー | ファイアサラマンダー | サラマンダー (妖精)
Wikipédia(仏語): Salamandre (amphibien)| Salamandre (animal légendaire)
Dijon, capitale de la Bourgogne
☆ BnF: La tempérante salamandre aux origines de la devise de François Ier
☆ Wikipedia: ドラゴン » Dragon européen
☆ Wikipedia: ワイバーン »  Wyvern »  Vouivre
la tapisserie de Bayeux, naissance de l’héraldique
L'étrange mort du Roi Harold II
Wikipedia: List of English flags Historical flags / National flags and ensigns
知っておきたい伝説の英雄とモンスター (閲覧回数制限あり)


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2017/05/04
ブルゴーニュ公国の都だったディジョンの町に来た人なら、必ず訪れるはずの観光スポットがあります。


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その3



ディジョンのノートルダム教会とフクロウ」に書いたように、旧市街の中心部にあるフクロウの彫刻を見に行くのが観光コース。

これを左手で触りながら願いごとをすると、その願いが叶うと言われているのです。

頭に耳のように見える羽があるので、これは本当はフクロウではなくてミミズクだ、と最近になって発見されたのですが、それは重要ではありません。

ともかく、このすり減った彫刻を、左手で触るというのが重要なのです!


このディジョン名物のフクロウは、ノートルダム教会の正面に立って左側にある道を入って少しのところで出会えます。



フクロウはフランス語で「シュエット(chouette)」なので、この通りの名前はRue de la Chouetteシュエット通り)。

教会の祭壇はメッカの方向、つまり東を向いています。ですから、このシュエット通りは教会の北側に回る道となります。


フクロウを左手で撫ぜなければいけない理由

幸運をもたらしてくれるとされるフクロウ。ただし、左手で撫でるということになっています。

右手でするとご利益がないと言われている理由の1つは、フクロウのすぐそばには、変なものが待ち構えているから、とも言われます。

下の写真で、赤い矢印を付けた部分にある小さな彫刻です。



フクロウは左手で撫ぜながら願いごとをしないと、そばに潜んでいる小さなモンスターが願いごとを食べられてしまう、ということなのです。フクロウを右手で触るとモンスターの方を向いてしまいますが、左手をあげれば背を向けることになるので安全、というわけ。


悪さをする小さなモンスターは、サラマンダー? ドラゴン?

願いごとを食べてしまうと言われる彫刻をアップで入れます。



何に見えますか?

ドラゴン(dragon)だと言う地元の人たちもいますが、私はずっとサラマンドル(salamandre)と呼んでいます。想像上の動物だから、どちらでも良いので、とりあえず、ここではサラマンダーとしておきます。

サラマンダーだとしたら、気になることがあるのです。


◆ フランソワ1世のシンボルとなっているサラマンダーは逆を向いている

フランソワ1世のサラマンダーは、どちらを見ている?」で書いたように、火をつかさどるとされている伝説上の動物です。

フランソワ1世のシンボルとなっているサラマンダーは、これ。

Nutrisco et extinguo Salamandre de François I 


ディジョンのノートルダム教会の外壁に彫られているモンスターがサラマンダーだとしたら、フランソワ1世のシンボルのサラマンダーとは逆の方向を向いているのです。

紋章は言葉で全てを言い表せるように決まりがあるのですが、フランソワ1世の紋章にあるサラマンダーは「左を向いている」と表現されていました。紋章学では、盾を持った人から見た左右で表現する法則があるので逆になるわけです。

ディジョンのモンスターは紋章ではないのだから、これは左を向いていることになる?


右か左かを考えると、いつも頭が混乱してくる私...。

日本から来た友人を案内したとき、サラマンダーに願いごとを食べられないように気を付けてと言ったら、今まで私は気にしていなかったことを指摘されました。

「でも、サラマンダーは、そっぽを向いているよ」

確かに、その通りなのでした。サラマンダーだかドラゴンだかの体はフクロウの方を向いていますが、首をひねっていて、頭は全く逆の方を向いているのでした。

右手でフクロウを撫ぜると、サラマンダーと目が合ってしまうからダメだと聞いていたように思うのですが、そっぽを向いているのだから目が合うはずはない!

とすると、フクロウを撫ぜた後にサラマンダーの前を通りすぎると、その時に願い事を食べられてしまうというわけですね。後ろから狙われるというのは薄気味悪い...。

フランソワ1世のシンボルのサラマンダーと同じ方向を向かせておいたら、フクロウと、そこに立って願いごとをしている人を振り返っている姿なので自然なのですけど...。


ところで、ブルゴーニュ公国(843年 - 1477年)の都だったディジョンにノートルダム教会が建てられたのは13世紀前半。フクロウの彫刻がある部分は、ディジョンの裕福な商人だったシャンベラン家の礼拝室の外壁で、それは15世紀に作られたとみられています。

ディジョンのモンスターは、フランソワ1世(在位 1515年~47年)より前の時代なのでしょうから、どちらを向いているかは気にしないことにしました。


◆ 左右どちらの手でフクロウに触るかより、歩く方向がポイントでは?

フクロウに願いごとをするときは、左側の手をあげて、サラマンダーだかドラゴンだか分からない小さなモンスターには世を向けるのがポイントです。

願いごとをするときに左手を使うというのも縁起担ぎなのでしょうが、意地悪なモンスターのことを考えると、シュエット通りを歩く方向の方が大事に思えてきました。

教会の裏側からシュエット通りを進めば、モンスターの前を通り過ぎ、フクロウを左手で撫ぜながら願いごとをし、それから歩みを進めて教会の正面に出ることになります。モンスターはそっぽを向いているわけですから、フクロウに手をかけている人も見ていないわけです。



つまり、教会の入り口がある西側からシュエット通りを歩くのではなくて、地図に入れた赤い矢印の方向から歩く。


ストリートヴューで確認。教会の左手の路地を入ります。



彫刻がどのあたりにあるか分かっていないと見つけにくいですが、フクロウとサラマンダーがいる地点は、こちらです


観光ガイドブックなどでは、たいていはフクロウを左手で撫ぜなければいけないということだけを強調しています。地元の人たちでも、隅っこに小さな彫刻があることを知っているのは少数ではないかという気もします。

ディジョン市では、地面にはフクロウの絵を描いたプレートを埋め込んでいて、それをたどっていけば主な観光スポットを見て回れるようにしています。でも、ノートルダム教会とフクロウを見るコースでは、願い事をした後に小さなモンスターの前を通るという矢印の方向にしていたのに気が付きました。



ディジョン市のツーリストオフィスでは「ふうろうの観光コース(Parcours de la Chouette)」という小冊子を作っていますが、教会の正面からシュエット通りに回り込むコースにしていたはず。

日本語が入っている地図があったので(こちら)見てみましたが、ディジョン駅の方から歩き始めるように番号が振ってあって、ストリートビューに入れたように、ノートルダム教会の左手からシュエット通りに入るようにしていますね。




悪戯をする小さなモンスターの話しをディジョンっ子の友達に話したら、ドラゴンに決まっている、と言われました。

インターネットで情報を検索すると、ドラゴンと呼んでいる人よりも、サラマンダーと呼んでいる人の方が多かったのですけれど...。

サラマンダーが右を向いているか、左を向いているかを気にしていたのですが、新たな疑問が生まれてしまました。

同じく幻獣のドラゴンとは何か?

中世に描かれたドラゴンの画像を眺めて、ノートルダム教会に潜んでいる小さなモンスターはどちらなのかを考えてみたいと思います。


続き:
この小さなモンスターは、サラマンダー? ドラゴン?

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2017/05/02
中世に栄えたブルゴーニュ公国時代に都だったディジョン市(Dijon)には、昔にタイムスリップした感覚になる美しい旧市街が残っています。

路地に入り込んだりして散策すると楽しいのですが、主な観光スポットだけ見ることにした場合に見るのは、ブルゴーニュ公国時代の宮殿(Palais des ducs de Bourgogne)と、そこに近いところにあるノートルダム教会(Église Notre-Dame de Dijon)のあたりでしょうね。

宮殿の塔の上からディジョン市の北側を見た眺め。中央に高くそびえているのはノートルダム教会の尖塔です。

Panorama du nord de Dijon vu depuis la Tour Philippe le Bon, avec en premier plan l'église Notre-Dame de Dijon.


ノートルダム教会に祭られているマリア像がおこした奇跡

昔のディジョンには、教会の鐘楼が百もあったと言われます。今ではそんなにたくさんは教会が残ってはいないのですが、見学する価値が最もあるのはノートルダム教会かもしれません。少なくとも、ガイドさんは話すことには事欠かない。

この教会の正面に立つと、本来は雨どいのはずのガーゴイルがたくさん付いているので目をひかれます。それについては、ブログですでに書いていました:
クイズ: なぜガーゴイルがたくさんあるのか? 2006/10/23


ノートルダムとは、我らの婦人の意味で、つまり聖母マリアを祭っている教会です。このノートルダム教会に祭られているのはマリア様なのですが、少し変わっています。

Notre-Dame Dijon Vierge noire
La statue de Notre-Dame de Bon-Espoir

11世紀か12世紀に作られた像で、フランスにあるマリア像の中でも最も古いものに数えられるそうです。

もともとは幼子のイエスを抱いたマリア像でした。18世紀にマリアの両腕は無くなってしまい、フランス革命のときにイエスも消えてしまいました。それで衣を着せたりもしているわけです。

マリアの顔は、ほぼ完全に昔のままで残っているのだそうです。もっとも、始めは普通の肌色だったのに、16世紀か17世紀に黒く塗られました。20世紀になってから顔色を元に戻しています。それでも少し色の黒い顔なのですが、「Vierge noire(黒い聖母)」とは呼べないのだそう。

ここの聖母マリアは「Notre-Dame de Bon-Espoir」と呼ばれます。良き希望のノートルダム、とでも訳しますか?

ディジョンに住む人たちは、このマリア像に思い入れがあると感じていました。ディジョンの町が敵から解放された奇跡が2度起こした、というお話しからなのかもしれません。

1回目は、1513年スイス軍に包囲されて絶望的な状態になったとき(Siège de Dijon)。9月11日、ディジョンの人々がマリア像を掲げた礼拝行進したら、その2日後にスイス軍たちは何だか分からないけれど引き上げて行ったそうです。

2回目は、第二次大戦中の1944年。ドイツ軍に占領されていたディジョンを守ってくれるようにと、9月10日のミサでディジョン司教がマリア様に祈ったら、その日の夜から翌日(つまり、1513年に礼拝行列をした日)にかけてドイツ軍が出て行った。

つまり、ディジョンにとって9月11日は縁起の良い日? なぜ2度とも9月だったのかな?... この時期はブドウの収穫の準備で大切な時期、という関連くらいしか私には思いつかない...。


こういう話しには興味をひかれない観光客も多いかもしれません。私も昔に聞いたことがあったのでしょうが、すっかり忘れていたので書き出してみました。

ここには誰もが喜ぶ観光スポットがあります!


ノートルダム教会の外壁にあるフクロウの彫刻

歴史的なことよりも、ちょっと面白い逸話があったりするとツーリストに喜んでもらえるので良いわけなのですが、ここにはそれがあるのです。

教会の祭壇はメッカの方向、つまり東を向いていますから、観光スポットは教会の北側に回る道にあります。そこにあるフクロウの彫刻に左手をかざして願いごとをすると叶う、と言われるのです。



ガイドさんつきのツアーでは、必ずここに行くでしょうね。でも、地元の人たちも昔からフクロウを撫ぜています。それで石壁に彫られているフクロウは、ツルツルになっています。


シュエット通り

フクロウはフランス語でシュエット。フクロウの彫刻がある通りだから、ここは「シュエット通り」という名前になっています。

Dijon - rue de la Chouette

でも、通りの名前は、ずっと同じだったわけではないのでした。

始めはフクロウにちなんで「Rue de la chouette(シュエット通り)」だったのですが、ノートルダム教会の横の道なのだからというので、「Rue Notre-Dame(ノートルダム通り)」になりました。

その後の通りの名前は、革命家のグラキュース・バブーフ(Gracchus Babeuf 1760~97年)の名前を付けられたり、パリ・コミューンに参加して革命歌『インターナショナル』を作詞した詩人ウジェーヌ・ポティエの名前が付けられたりしていました。

1957年から「シュエット通り」に戻ったのだそうです。

フクロウは、フランス語でシュエット(chouette)。この細い石畳の道が「シュエット通り(Rue de la Chouette)」と呼ばれるのは、これに由来しています。


21世紀になったら...

2001年1月5日に事件がおきました。

ディジョンっ子たちが愛しているフクロウが、何者かによってハンマーで傷つけられたのが発見されたのです。地元の新聞では1面に大きく取り上げて大騒ぎ。お正月気分が抜けていない静かな朝、ニュースに驚いた記憶がまだ生々しいのですが、もう10数年も前のことでした。

そのことを書いた記事:
ディジョンの名物フクロウ 2012/09/08

フクロウに願いごとをしたのに聞き届けられなかった人が腹いせにやったのでしょうか? 結局、犯人は見つからず。でも、フクロウの彫刻は忠実に復元されました。


つい最近、2014年のこと。またまた地元で騒がれたニュースが飛び出しました。

chouette(シュエット)、つまりフクロウとして昔から親しまれていたのですが、実はミミズクだった、というもの。

ハンマーで叩かれる前に撮影されていた絵葉書の画像を入れます。



耳があるように見えますよね? こんな風に耳のように見える羽が頭にあるフクロウは世界中に存在しないそうで、この特徴からミミズクの彫刻だと判定できるのだそうです。

その時のことを書いた記事:
ディジョン名物はフクロウだと思っていたら、ミミズクだった? 2014/08/18


このニュースは、地元の新聞社にとってはスクープだったのでしょうが、住民たちは無視した感じもあります。いまさらミミズクと言われたって、というところでしょうか?

ミミズクなら「hibou(イブー)」と呼ばなければいけないのですが、通りの名前も変わらないし、みんなも相変わらず「シュエット」と呼んでいます。

ミミズクやフクロウの絵は紋章にも使われるのですが、この2つは昔から混同されることが多かったようです。

それに、ブルゴーニュの人たちにとって、ミミズクでも良いではないか、という気持ちもあるのかもしれません。

ブルゴーニュ公たちのことをDucと呼ぶのですが、それにgrand(偉大な)と加えた名前がついたミミズクがいるのです。


Hibou grand-duc(学名 Bubo bubo)

ブルゴーニュでは絶滅の危機になっている貴重なミミズクの種類なのですが、日本語ではワシミミズクと呼ぶようです。とすると、「大公」ということで同じだ、という理屈にはなりませんね。


なぜ、そこにフクロウがいる?

フクロウの彫刻には地元の人たちの思い入れが強いので、なぜフクロウがいるのかには数々の推測がなされています。

フクロウは、愛される鳥ではなかったはずなのです。迷信深かった昔は、フクロウは凶兆のシンボルとされていて、悪運払いのために納屋のドアに釘打ちされていたそうです。

ところで、このノートルダム教会がある辺りは、中世には庶民たちの家が建っている地域でした。当時の庶民の家の壁は木で出来ていたので、頻繁に大火事がおこったようです。フクロウは屋根裏部屋に住んでいたので、夜に火がおこると危険を知らせた、とも言われます。

1137年6月には、ディジョンの町が全焼する大火が起こっていました。ノートルダム教会が建てられたのは、その百年後ですが、まだ大火の記憶は残っていたでしょうね。


ここにフクロウがいる理由には、こんなものがあります。

フクロウは夜の鳥。そして、この彫刻のフクロウは教会の北側の壁を支える柱にあります。北側、夜、ということで、このフクロウはキリスト教徒にとって闇の存在であるユダヤ人のシンボルだったとする説があります。

教会のあたりには市が立ったので、中世には金銭の商売をすることだけが許されていたユダヤ人たちがここに店を開いた?...

そうかと思えば、このフクロウはキリストを象徴しているとする人もいます。神は暗闇にいる人間も愛したから、というわけ。

さらにキリスト教以前のパガニスムを持ち出して、ギリシア神話に登場する知恵の女神アテナのシンボルだという説もあります。ゴシック様式のこの教会が建設される間、女神様が守ってくれた、というわけ。

そういえば、アテナは梟(グラウクス)に関連づけられていましたね。


アテナ-フクロウとアテナ-ペガサス 2 の硬貨、ギリシャの神および女神コイン コレクション


地元ディジョンの歴史家Eugène Fyot(1866-1937年)は、この教会の設計監督者の一人がChouetとという名前だったから、自分のサイン代わりにフクロウ(chouette)を彫った、という仮説を出したのだそう。

中世に建てられた建物には、人物や動物など色々と不可解な彫刻が施されているので、それが何の意味を持つのかを考えていたらきりがありません。


シャンベラン家の礼拝堂の外壁にフクロウがいる?

ブルゴーニュ公国(843年 - 1477年)の都だったディジョンにノートルダム教会が建てられたのは13世紀前半。フクロウの彫刻があるのは、ディジョンの裕福な商人だったシャンベラン家の礼拝室の外壁の部分で、その礼拝室は15世紀に作られたとみられています。

教会の中にあるチャペルの部分なのですが、礼拝堂と言えば良いでしょうか? 教会側廊に作られている個室のような空間です。おそらく、裕福な人たちがプライベートな礼拝空間として持てたのでしょうね。

シャンベラン家では、礼拝堂を作ったのと同じ時期に、ディジョンの中心地にフランボワイアン(火焔式)ゴシック様式の見事な館(Hôtel Chambellan)を住居として建てています。

その館にも面白い彫刻があるのです。



赤枠を入れた部分をご覧ください。螺旋階段になっている塔の入り口に、階段を登ろうとしているエスカルゴが3匹いるかのように彫刻されているのです。



螺旋階段はエスカルゴ(かたつむり)に例えられます! 館を建てさせたアンリ・シャンベランは1490年から93年までディジョン市長を務めたそうですが、遊び心があったのかな?...

この階段を登りつめたところの天井には、あっと驚くほど見事な彫刻が施されています(Wikipediaに入っている画像)。庭師が背負った籠螺旋階段はエスカルゴ(かたつむり)に例えられます!植物が伸びて天井一面に広がっているという図。


フクロウに左手をかざして願いごとをしなければいけない理由

それについて書きだしたのですが、前置きが長くなってしまいました。

フクロウの近くにある、目立たない小さな彫刻が願いごとを食べてしまわないように左手を使わなければならないと言われるのですが、そこにも謎があるのです。それについて、次回に書きます。


続き:
ディジョンの観光スポット「シュエット通り」の歩き方

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外部リンク:
Découvrez l'histoire urbaine de Dijon et son évolution
☆ Wikipédia: Ville aux cent clochers
☆ Wikipedia: Duché de Bourgogne » ブルゴーニュ公国
☆ Wikipédia: Église Notre-Dame de Dijon
Thèses et anti-thèses sur la chouette de Dijon
La chouette de Dijon : mythes et légendes
Héraldie: Le hibou et la chouette en héraldique
パリ・コミューンの詩人たち──ウジューヌ・ポティエ
『インタナショナル』日本語訳


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