| Login |
2017/08/09
トランプ氏のアメリカ大統領就任演説の中に、こういうフレーズがあったことをブログで書いていました(肌色って、どんな色?)。

Whether we are black or brown or white, we all bleed the same red blood of patriots.

トランプさんは好きではないけれど、人種に係わらず、みな赤い血が流れている、とは上手い表現をするなと思いました。これはありふれた例えなのかも知れないけれど。


ヘモグロビンとヘモシアニン

人間の血が赤いのは、赤血球の中で酸素の運搬をつかさどる色素「ヘモグロビン」には鉄分が含まれているから。 鉄分の代わりに銅を用いた「ヘモシアニン」だと、血液の色は青く見える、ということなのでした。


ヘモグロビン
(Hémoglobine)
Hemoglobin
ヘモシアニン
(Hémocyanine)
Hemocyanin


動物の中には、ヘモシアニンの青い血が流れているものもあるのだそう。静脈血は無色透明なので青くは見えないけれど、エビなど節足動物や、イカなどの軟体動物にある。

そう言われてみると、「ブルゴーニュのエスカルゴ」と呼ばれる品種のカタツムリは、かなり青っぽく見えると思っていたのでした。これもヘモシアニンに由来しているそうです。


Escargot de Bourgogne(Helix pomatia)


貴族の血は青い

人間の血が赤いというのは常識なのに、フランスには「青い血を持っている(avoir du sang bleu)」という表現があります。

貴族の血筋を引いている、つまり、高貴な出である、という意味。つまり、やんごとなきお方だ、という時に使います。

貴族だからといって血が青いはずはありませんから、変な表現ですよね。

青い血の動物もいることを考えたら、名誉なことではないはず。貴族はエスカルゴと同類とか?... でも、「青い血を持っている」というのは貶し言葉では全くないのですから、この表現ができたときにはヘモシアニンを持った動物がいることは意識していなかったはず。

bleu roi(ロイヤルブルー)というのがあるので、それかなと思ったのですが、そうでもないらしい。

bleu roi
#318CE7


「青い血(sang bleu)」というのは、静脈の色なのだそうです。友人が腕の静脈を示して「青いだろう」と言う。なるほど...。

フランスだけではなく、ヨーロッパ諸国では高貴な出のことを青い血と表現するようです。これはスペイン語で「sangre azul(青い血)」から来ているという説もありましたが、どうなのかな...。


静脈が青いのだとするのなら、誰でも同じはずですよね。なぜ貴族の血は青いと言うのか?

貴族は外で肉体労働をするわけではないから、肌が白い。それで、静脈の青さが引き立っている、という表現なのだそうです。

フランスの17世紀、18世紀の貴族たちがやたらに顔を白くするのが流行っていたような気がします。つけぼくろを付けるという変な流行もありましたが、これも肌の白さを際立たせるためにしていたのでした。




「sang bleu(サン・ブルー)」とは静脈が青いことから来た表現だと教えてくれた友人は、こういう言葉もあるけれど知っているかと聞いてきました。

palsambleu(パルサンブルー)

知らない。でも、この単語は仏和辞典にも入っていて、こんちくしょう、やれやれ、という訳語になっていました。

フランス情報では、par la sambleuともいい、par le sang de Dieuの変形だと書いてありました。

こういう罵倒言葉は外国人の私は使わない方が無難だと思っているので、教えてくれたって役には立たないのですけど...。


赤い血が流れている静脈だけれど、肌の上からだと青く見える?

考えてみると、赤い血が流れている静脈が青く見えるのは不思議。

人体の血管の絵を見ると、動脈(心臓から出る血液が流れる血管)は赤く、静脈(心臓に戻る血液が流れる血管)は青く描かれていました。



でも、動脈だろうと静脈だろうと、血液は赤いはずではないですか?

肌を通して見える血管は青っぽく「見える」ということのようです。それを実験して見せてくれるページがありました。

☆ 肌色絵の具と赤ボールペンで、「赤い血が流れる静脈が青く見える理由を実感してみよう!

本当だ。水に溶かした肌色の絵具の中に赤いボールペンの芯を入れると、静脈のように見えるのでした。私は絵具を持っていないので実験できないのですが、白い絵具を使ったらどうなるのかな?... 青さが際立つ?


あらためて自分の腕に浮き出ている静脈を見ると、少し緑色がかった青に見える。青か緑かといったら、私は緑色と言いたくなる...。

友人に見せて、これは何色かと聞いたら「青だ」と言う。私の静脈と友人のを比べてみると、私のは少し緑色っぽいような気がしないでもなかったのですけど...。

黄色人種だから、青ではなくて緑色なのかな?... と真面目に思って言ったら、大笑いされました。

私が黄色と言われるのが嫌いなのを知っているので、よくからかわれるのです。自分から黄色をもちだしたら笑われて当然!

先日も、近所に住む友達が家庭菜園でとれた野菜をくれると言ってきたとき、黄色いズッキーニもいるかと聞かれて「欲しい」と答えたら笑われてしまった。

黄色人種と言うけど、日本人の肌は黄色いわけでないとフランスの友人たちは分かっているから面白がるのです。特に私の体には色素が不足しているらしくて、日本人にしては肌が白くて、余り日焼けもできないのです。そしてフランス人は、北欧の人たちのように白くはない。友人と日焼けしていない肌を比べると、私の肌の方が白くさえ見えます。

ところで、日本でも、静脈の色は青と表現するのでした。

「青筋を立てる」という表現もある。これは怒ったりしたとき、顔面に静脈が浮き出ることから来ているのだそう。

顔が青ざめているとか、青白いと言う表現もあった。フランス語だと、色が薄いという意味で「pâle」と表現されて、青とは関係ないのですけど。

黄色人種の日本人の静脈が青いとしたら、貴族たちが色白だから静脈が特に青いという表現は当たらないような気がするのですけれどね...。


ステーキの焼き加減にも「ブルー」がある

血が青いという表現が存在するわけですが、ステーキの焼き方にも「ブルー」がありました。

肉の両面をさっさと焼いた状態で、レアよりも生焼けのこと。

いくら焼き足りなくても、肉が青い色をしているはずはないし、静脈が見えるというわけでもないでしょうから、奇妙な表現ではないですか?!

ステーキの焼き加減に関するフランス語の表現:
  • bien cuit  ウェルダン(64度)
  • à point  ミディアム(59度)
  • saignant  レア(52度)
  • bleu    超レア(45度)
※ カッコ内は、焼き上げたときの肉の内部の温度として記載されていたものです。


フランスのレストランでステーキを注文すると、どう焼いて欲しいかと聞いてきますが、ブルーと答えていた人は記憶にありません。よく焼いていないのが美味だとする人たちは、saignant(セニャン)と言うことが多いと感じています。私も肉は硬くなっていないのが好きなので、牛肉や鴨肉の焼き方を聞かれたときには「セニャン」と答えています。

フランスでは基本的な4種類の焼き加減を見せる動画がありました。


Comment faire cuire de la viande rouge ?


貴族の血が青いというのは、フランス情報でも、日本語情報でも、たくさん出てきたのですが、ステーキの焼き方で「青い」と表現する理由の方は見つけるのに少し苦労しました。

なぜ「ブルー」と表現するのかといえば、酸素との関係だそうです。

真っ赤な肉が、酸素に触れると少し青がかって見える。分厚い生肉を切ってみると分かる、というフランス情報の説明がありました。


熟成肉は何色?

肉が青っぽく見えるのは、古くなってときのような気がしていたのだけれどな...。

時々、肉屋で熟成させた牛肉を売っていることがあります。特別な方法でエージングさせるそうで、普通の肉よりかなり高い値段で売られています。それを好む食通がいるのですが、変色しているので私には美味しそうには見えないのですけど。

そういう牛肉は、 bœuf rassi(硬くなってしまったパンに対する形容詞)、あるいはbœuf maturé(熟成したという形容詞)と呼びます。

どんな色の牛肉なのか、フランスの肉屋サイトに入っている写真を見てみました:
Le bœuf maturé

青いというより、黒ずんでいるという感じかな?...

熟成させた牛肉は、日本では流行っているような感じがしました。でも、色は長期保存していないのと同じように赤いように見える...。



ビーフの熟成肉には、ウェットエージングとドライエージングがあるのだそう。フランスで見るのは、正に「ドライ」と呼ぶのにふさわしい感じに見えるのですけれど、分からない...。ともかく、フランスで売っている熟成の牛肉の見た目だったら、日本では買いたい人はごく限られるだろう、という気はします。

ブログ内のリンク:
肌色って、どんな色? 2017/03/03
★ 目次: 色について書いた記事
★ 目次: エスカルゴについて書いた記事
★ 目次: 肉牛(シャロレー種など)、牛肉など牛に関する話題

外部リンク:
青い血 (あおいち)とは【ピクシブ百科事典】
青い血が流れる生物ベスト12
Pourquoi voyons nous nos veines bleues ?
「赤い血」が流れてるはずの静脈が「青く」見える理由(納得したい人向け)
Bleu, les expressions
☆ Langue-fr.net: Sang bleu
Recette et remède de grand mère: Sang bleu
☆ 青い血の系譜
美白の化粧文化史: ヒートアップする、白い肌熱
☆ Wikipédia: Bleu roi
À points de cuisson : bleu, saignant, à point, bien cuit
Viande bleue, sang bleu ?
☆ Le Guichet du Savoir: Pourquoi dit-on bleue pour une viande
お肉の焼き加減と種類について
レアやミディアムだけじゃない!?まだまだあるステーキの焼き方の種類とは
熟成肉、ブームはいいけど間違った方向に進み始めている
ドライエイジングビーフの作り方 - 知ろう!本物のドライエイジングビーフ
Bon sang ! / Palsambleu !


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村
にほんブログ村 グルメブログ フランス料理(グルメ)へ
にほんブログ村