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2008/04/03
ふと、思い出した友人がいます。
フランスの田舎町で、食料品店を夫婦で経営している人。


◆商店を経営するのは難しい

高級食材を扱っているのですが、この不景気で売り上げが落ちていたらしい、と感じていました。スーパーマーケットとの競争も厳しくなったらしく、彼らのお店の売り上げはがた落ちの様子。

ご主人は「モロッコに移住して商売したいと思っている」、などと飛んでもないことを言ったりもしました。

あいかわらず元気そうな声を出してお客さんに応対していましたが、夫妻の顔から笑顔が少なくなっていくのに気が付きました。

その後、お昼少し前に店に立ち寄ったときのこと。

奥さんが身支度をしていて、「これからアルバイトに行くの」と言います。しばらく前から、あるレストランでウエーターをしているのだと知りました。

従業員もいる店の経営者がアルバイトに出るなんて変です。
経営者である彼女が、使用人になり下がるのは辛いはず・・・。

いよいよ店の経営が危なくなってきたのか・・・ と感じました。


◆そして、1年くらいたった、ある日のこと

お店に行ったら、アルバイトに行く時間ではないのに奥さんがいません。

「どうしたの?」とご主人に聞くと、「風邪をひいて寝込んでいる」という返事。心配してみせたら、「いや、大したことないんだ」などとノンキなことを言います。

店で買い物をして、町を歩いていたら、ばったり奥さんと出会いました。

彼女、こんなにきれいな人だったかしら?!・・・ というのが、一目見たときの印象。

きれいにお化粧をしていたせいもあったでしょうが、はつらつと輝いていたのです。

お店の経営が傾く前は、彼女はそんな風に、元気いっぱいの女性だったのを思い出しました。久し振りにその表情を見たから驚いたのだと思います。


彼女が言います。
アルバイトを止めることにしたのですって。

あのレストランの経営者は酷い。働くのが嫌で嫌で仕方なかったのだそうです。

ついに、残業手当を払ってくれないことに文句言ったそうです。

「もう辞めるしかなっくなったのは、私が労働基準局のことを持ちだしたからなの」

店で従業員を雇っているマダムですから、そういう方面の法律には詳しいのでした。それで、「訴えてやる!」と言ったものだから、レストランのオーナーが激怒したとのこと。


◆これがフランスだ、と感じた

辞めることにしたら、すっきりしてしまったそうです。それで、こんなにハツラツとした表情になってしまったらしい。

急に辞めるのは許されないので、1カ月先だかに(正確な猶予期間というのを聞きましたが忘れた)退職することにしたのだそうです。

喧嘩して辞めるのに、働き続けるのって辛いですよね?
日本人の私はそう思います。

でも、こういう場合、フランスでは、病気になるのが一般的なのだ、という説明でした。

なるほど・・・。仮病ですか?!・・・

2週間病欠をもらっていて、その後は、また病気になると言っていたか、別の手段があると言っていたか、忘れました。

フランスの場合はパートで働いていても休暇が与えられることになっているので、それを消化して退職日を迎える、という計算だったように思います。


◆その後の彼女

こだわり食品ばかり売っていたご主人が折れて、安いものも売るようにしたので、お店の方はなんとか経営を立ちなおしたようです。私は良い食品が手に入らなくなったのでがっかりですが、彼らのためには諦めなければなりません。

それにしても、嫌な仕事を辞めたら、あんなに元気になってしまうものだ、と感心したできごとでした。

それと、このできごとがあってからは、レストランで不愉快なウエーターやウエートレスがいても、威張った店員がいても、それほど不愉快に感じなくなりました。日本では想像つかないですが、どちらがお客さんなのか分らないような場面がフランスにはあるのです!

彼らも酷使されているのだなと思うと、お客さんに八つ当たりしたってしょうがないや、と思うようになりました。

でも、日本では、いくらひどい働かせ方をされても、お客さんに八つ当たりなんかしないで、じっと耐えますよね?

精神的によくない・・・。

私の日本の友達のことを思い出すと、こんな仕事をしていたら体によくないのに・・・と心配していた人たちは、ほぼ全員が大きな病気になったように思います。


◆日本人は頑張る

この出来事がある前から、ノンキな私は、仕事で苦労している人を見ると、「そんな会社、やめちゃいなさいよ」と言っていました。

今はこれしかない、と思っても、違う道に入れば、見えなかった道が見えてくる。新しい道がなかったら、それはそれで良いではないか。前のところに残っていた方が良かった、と後悔しなければ良いだけのこと。
・・・と、私は思ってしまいます。

でも、日本人は、みんな頑張る。

仕事が辛くてたまらないと言う人に、言われたことがあります。

「会社をやめなさいって言ってくれたのは、あなただけよ! ありがとう! みんな、頑張れ としか言わないの」

ゴメン。私、変人なのです!

彼女は「ありがとう! 嬉しいわ~!」を繰り返していました。

でも、別れるときには、「私、がんばって、あと3年、定年まで働く!」と言うので、私はびっくりしました。

私は、そういう風に励ましたつもりではなかったのだけれど・・・。

でも、嬉しそうにそう言われると、「頑張ってね!」とお別れする以外ありませんでした。

彼女は治療できない病気を抱えていて、そのうち失明してしまうと宣告されていたのです。それなら早期退職をして、元気なうちに彼女が趣味にしている海外旅行を思う存分楽しむように、と私は勧めたのだけれど・・・。

定年まで働けば、年金が多いのだということでした。

元気なうちの貴重な3年を、ストレスがたまるばかりの職場で耐えるのは、もったいない、と私は思ったのですが・・・。


◆私って変人・・・

人それぞれの生き方があります。だから、こちらの考えを押し付けるのは間違っています。

誰でも限られた期間を生きるにすぎない。だったら、どれだけ自分がしたいことができるかが一番大切だ、と私は思ってしまうのですけれど・・・。

やっぱり、私は日本人風に考えられない人間なのかも知れない・・・。

日本で勤めていたフランス系の会社を辞めてフランスに行くのだと言ったとき、上司のフランス人が私に言ったことを思い出します。

「あなたがフランスに行ったら、水を得た魚のようになるだろう」

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コメント
この記事へのコメント
がまん
日本人の美徳ですもんね。特に女の人には押し付けられる・・・。わたしも、すぐ、「そんなとこで働いてなくていいよ。やめちゃえ。」とか「そんなヤツと一緒にいることない。離婚しちゃえ。」と(娘たちに)本気で言うので、多少あきれられています。



でも、そうして変えていかないと、この国ってどうしようもないな、というのが最近の感想ですね。
2008/04/05 | URL | Saule  [ 編集 ]
早期退職
未だ日本ではマイナスイメージが強く、特に定年まで働くのをよしとする風潮がありますね~。



私自身、フルタイムの仕事は体調を崩して数年で辞めてしまったし、主人もこの3月で早期退職し、現在は在宅で自分のしたい仕事を専業でしています。



福祉のお粗末な国柄だからか、皆さん定職や安定収入に拘るのかもしれません。

特に高齢者の医療負担は、年々増すばかりです。。
2008/04/05 | URL | ひなの。  [ 編集 ]
【Re】Sauleさんへ / がまん
>「そんなとこで働いてなくていいよ。やめちゃえ。」とか「そんなヤツと一緒にいることない。離婚しちゃえ。」と(娘たちに)本気で言うので、多少あきれられています。



⇒ そういうことを言ってくれる母親って、本当に子どもの幸せを願っている人だと思います。世の中には、「子どものため」とか言いながら、結局は親としての自分の安泰を第一に考えて子どもを教育している親がたくさんいますから!



それと、いじめの問題でも考えてしまうことがあります。日本の場合、いじめを受けて苦しんでいる子どもの親は、「がまんしなさい」と子どもに言っている人が多いような気がするのです。苛めをする子は、絶えてしまう子はますます虐めるのではないかと思えてなりません。



>でも、そうして変えていかないと、この国ってどうしようもないな、というのが最近の感想ですね。



⇒ 昔の日本には義理や人情があって、我慢しても報われるというのがあったと思います。同時に、我慢する階層を利用して社会が成り立っていた、というのもあったでしょうね。価値観が乱れた今の日本では、ただ負け犬になるのは避けなければいけないと思ってしまいます。

2008/04/06 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
【Re】ひなの。さんへ / 早期退職
>未だ日本ではマイナスイメージが強く、特に定年まで働くのをよしとする風潮がありますね~。



⇒ 転職や、フリーで働くことに対する認識も同じですね・・・。



>福祉のお粗末な国柄だからか、皆さん定職や安定収入に拘るのかもしれません。



⇒ フランス人は、税金や社会保険が高いと文句を言うし、政治家の汚職はフランスにもあります。でも、国民が支払ったお金はかなり還元されている、と目に見えています。これだけ経済大国の日本が稼いだお金はどこに消えているのだろう?・・・ というのが、とても不思議です。

2008/04/06 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
働き方
日ごろ外国人に囲まれているせいか、

私もスルゴニッシモさんのような職業観を持っています。

しかし、夫は典型的なサラリーマン。

ほとんど終電の時間まで働き、週末も仕事を持ち帰っています。

去年は夏休みもありませんでした。。。

(でも”仕事だからしょうがない”とのこと)

フランス人の学習者に話したら、当然のように

「どうして彼はその会社を辞めないんですか!?」

と言っていました。
2008/04/07 | URL | YUMI@J301  [ 編集 ]
【Re】YUMI@J301さんへ / 働き方
>フランス人の学習者に話したら、当然のように

>「どうして彼はその会社を辞めないんですか!?」

>と言っていました。



⇒ そうでしょうね。でも、日本だと、別の会社に行っても同じなのですよね・・・。



日本人は有給休暇を持っていても使い切らないわけで、それがフランス人には全く理解できないみたいです。日本人から見ると、フランスではどうして有給休暇を使いきれるのだろう? ということになってしまうのでしょうけれど!

2008/04/07 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
Re:急に元気になった友達(04/03)
なるほど!なるほど!



ボクも友人がすぐにでもやめそうな感じの時、

やめちゃえば と言うことがあります。

でもみんなやめないですね。



ボクも変人のひとりですね。
2008/04/07 | URL | ヒデオ1999  [ 編集 ]
【Re】ヒデオ1999さんへ / 急に元気になった友達
>ボクも友人がすぐにでもやめそうな感じの時、

>やめちゃえば と言うことがあります。

>ボクも変人のひとりですね。



⇒ ああ、ビデオさんもそうですか♪(安心) ブログを拝見していて、偽善的なことはなさらない方だろうな、と思っていました。



>でもみんなやめないですね。



⇒ で、やはり、そういうものですか。ひどい親の元を離れるために家出するとか、嫌な配偶者と別れるとかいうのは、色々と感情的な拘束があって難しいものだと思うのですが、仕事を辞めるというのは、そう難しいものではないのですけれどね。それで病気になったり、自殺してしまったりするまで我慢することはないと思うのですけど・・・。

2008/04/07 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
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