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2011/10/05

シリーズ記事 【2011年秋: フランシュ・コンテ地方の旅行】 目次へ
その7
観光 (3)


今回の旅行で滞在した地域に、重要文化財に指定されているtaillanderie(タイヤンドリー)があるので見学することにしました。

説明を聞いて鍛冶屋(forgeron)の一種なのだろうと想像したのですが、タイヤンドリーとは農具や工具の刃物を専門に作る鍛冶屋のことでした。今は消えてしまった職業。

仏和辞典をひくと「刃物製造(販売)業、刃物類」となっています。作る人(刃物職人)はtaillandier。

帰ってから友人に旅行の話しをしたときに「タイヤンドリーってなんだかわかる?」と聞いてみたら、やはり知りませんでした。言葉の感じからでしょうが「宝石を切り出す仕事?」と言われました。

教養レベルが高いフランス人に聞いてみたら、ちゃんと知っていましたね。昔の小説にはよく出てくる単語なのだそうです。

見学したタイヤンドリーは、谷間の川の畔にありました。

工場が建てられたのは1798年で、1969年まで稼働していたのだそう。今はガイドつきで見学できる博物館となっていました。



装置が今でも動くのがすごいです。巨大なフイゴを動かすデモンストレーションは圧巻でした。

バスでやって来た団体さんと一緒に見学することになってしまったので、うまく写真をとれませんでした。ご興味がある方は最後にいれる参考資料をご覧ください。

下の動画では、中ごろに見学した工場が出てきます(モノクロ部分)。まだ稼働していた時期のニュース映像かもしれません。 



水車を回す力で鋼鉄を打つ木づちを動かしています。 




fauxと呼ばれる長柄の大鎌

この刃物工場で作られるものの中で、見事なのは大きなfaux(フォー)でした。畑の草を切るときに使う道具です。「フォー」というのは「間違っている」という単語と同じ綴り。


鋼鉄の大鎌(かま)
拡大写真は博物館サイトに入っています

おそらく日本でも使われていた道具でしょうし、私もフランスのイベントか何かで見たことがありました。



この工場の目玉商品は大鎌だったようです。全盛期には生産する道具の6割くらいを占めていました。


大変な仕事だったのだろうな...

ここの刃物製鉄工場は農家のようにもなっていたそうで、働いている人たちの食料をまかなっていたとのこと。

工場を出た裏側の風景です。



写真には写ってはいませんが、右手には巨大なフイゴを動かす大きな水車がありました。

人里離れた山の中の風景は美しかったです。谷間の行き詰まりにある日本の陶芸の里を思い出しました。

でも、こういうところだと寒さは厳しいでしょうね。工場の中からは騒音がものすごかったはず...。

見学の最後で見たビデオには、こういう仕事をした経験のある高齢者たちが登場して、大きな怪我をすることもあるし、鉄を熱する暑さも強烈だし、冬の寒さも厳しいのだと話していました。

そのビデオの一部がYouTubeに入っていました。 




見学した工場のデータ
・1890~1914年: 従業員数25名。年間35,000点(うち2万は大鎌)を製造。
・第一次世界大戦勃発により働き手が不足したが、それ以上に農業の機械化が経営に打撃を与える。鎌の需要は減少し、水力利用は電動モーターの登場によって危ぶまれる。
・1939年: 従業員数は8名に減少。
・1969年: 工場の閉鎖。当時の従業員はわずか3名で、年間3,000点を製造しているに過ぎなかった。

情報リンク
☆ 博物館のサイト: La taillanderie   Nans-sous-Sainte-Anne
⇒ コレクション  ⇒ 資料PDF

写真をたくさん入れているブログ: Taillanderie de Nans-sous-Sainte-Anne

ブログ内の関連記事:
★ このシリーズ記事の目次: 2011年秋 フランシュ・コンテ地方の旅行
目次: 旅行したときに書いたシリーズ日記のピックアップ


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コメント
この記事へのコメント
私の包丁
日本の田畑で使う農具は小さなサイズのものが多いからか、今も個人の工房がチラホラ残っているようです。
私がいま使っている包丁も、鎌やクワを作る個人の工房の手打ちの包丁です。これが、切れて切れて、千切りするのが気持ちよくてびっくりするほどだったのです。私の研ぎ方が悪くて、切れがにぶってますが…。
しかも、値段も工芸品価格でなく、道具価格。3千円台で買いました。
こういう生活文化技術は、消えずにぜひ残ってほしいです。
otiumさんが見学されたところは、設備も大がかりみたいだから、維持するのも大変だったのでしょうね。
2011/10/09 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
Re: 私の包丁
v-22すぎちゃんへ

今でも鎌やクワを使っていると聞いて検索してみたら、芝刈りに大鎌が便利というのがありました(http://blog.new-agriculture.net/blog/2008/07/000601.html)。ということは、大鎌も消えてはいないらしい。フランスのこういう道具は近代的な工場で作られてしまうのではないかと思うので日本のを調べたら、「津軽打刃物」という動画が出てきました(http://www.youtube.com/watch?v=J6Vbw1UR1NQ)。近代化しているけれど、原理はtaillanderieと同じですね。こういう仕事をしている人がフランスに残っているとして、水車や薪を使わない場合にtaillanderieと呼ぶのかな?... taillanderieとしてフランスに残っているのは1カ所という記述もあったのですが、その後は消えたかもしれない。

鎌やクワの手作り工房で安く包丁が買えてしまうとは良いですね。さぞキレが良いでしょうね。思い出せば、砥石のことを書いたときに、刀屋さんで包丁を買うという方がコメントを入れてくださっていました。

>設備も大がかりみたいだから、維持するのも大変だったのでしょうね。
⇒ 工場の歴史についてメモを最後に加筆しました。こんな僻地でも工場が栄えたのは、大鎌のようなおいそれとは作れないものを水と森がある地域で生産することに価値があったためで、近代化によってやっていけなくなったのだろうなと思いました。

伝統工芸は残って欲しいですよね。日本に比べると、フランスは消滅している度合が高いですね。社会保護制度がしっかりしていて、労働条件が厳しいのは良いけれど、その反面、家内工業は生き残りが難しい国だと感じています。
2011/10/09 | URL | Otium  [ 編集 ]
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