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2012/01/23
ブルゴーニュ地方で最も大きな町ディジョンの旧市街で開かれる朝市は、フランスの都市の中でも有数の充実した朝市だと言われています。

農家の直売が多いのも魅力です。朝市といっても、普通の店ばかりが入っているところは朝市である価値はありませんから。



ディジョンの朝市の建物は、ギュスターヴ・エッフェル(Gustave Eiffel)の会社が19世紀に建てた建築物です。パリのエッフェル塔をつくったことで名が知られているエッフェルはディジョン生まれなせいもあって、ブルゴーニュには所々に彼の建築物があります。

火曜、木曜、金曜、土曜の午前中に開かれますが、一番賑やかなのは金曜日。先日行ったとき、シーズンなのでジビエを探してみました。


食堂楽の町ディジョンなのに、ジビエが見当たらない...

冬の風物詩のイメージになるようなジビエ専門店はなくなったのですが、片隅にジビエをおいている肉屋さんは少しあるはず。ところが、この日、狩猟の獲物が見当たりません。

疑問を持つと徹底的に調べたくなる私。広い朝市会場を歩き回って探してみました。でも、ない!

どうしちゃったのかな?...

ディジョンがあるコート・ドール県には、狩猟ができる森が広がっているのです。

ワイン好きの人だったら、コート・ドールはブドウ畑ばかりなのかとイメージするかもしれませんが、農地に占めるブドウ畑はほんの一部にすぎません。特に県北部は「森しかない」と悪口を言えるくらいに森だらけなのです。リヨンからハンターたちが大勢やって来るくらい、狩猟場としても評価されています。

それなのに、なぜ食道楽の町ディジョンでジビエを売っていないのだろう?...
妙に気になってしまいました。

ディジョンの朝市でジビエを見かけることがほとんどないのは前々から気になっていて、すでにブログでも書いていました。
ジビエのシーズン 2010/10/24

この日記を書いてから1か月後、パリの朝市でたくさんのジビエが売られているのを見て驚いたことは書いていなかったかな?... 記憶が薄れたときに便利なので、できるだけブログにメモしているつもりなのですが、書きたいことが多すぎて追いつきません...。

パリで行った朝市では、こんな店を見て仰天してしまったのです。

 
パリの朝市(2010年11月末撮影)

デリケートな神経を持っていらっしゃる方だったら、卒倒してしまいそうな写真を入れてしまって、申し訳ない!

フランスを旅行した日本人が、このパリの朝市を見学したとしましょう。
すると、こう思うのではないですか?

フランス人はジビエが好きだと聞いていたけれど、ほんとう。
こんなにたくさん売っているんだ.~!

私は、パリでジビエがたくさん並んでいるのを見て、これが同じフランスかと驚いてしまったのです。ディジョンの朝市とは比較にならないほど小規模な朝市なのに、こんなにジビエが並んでいたのですから。


ジビエを食べるフランス人は誰か?

ブルゴーニュの典型的な郷土料理は赤ワインでコトコト煮込んだものが多く、ジビエ料理にも通じるところがあるのです。だから、ブルゴーニュの人がジビエを嫌い、だから売らない、ということもないはず。

親戚や友人にハンターがいるから、ジビエを売っても買う人がいない、ということもないと思う...。

どうして売っていないのだろう?...

ディジョン市ではエコロジストの勢力が強くて、市営朝市会場にジビエを展示させない? でも、それは考え過ぎだろうな...。

でも、あれだけたくさんのジビエが並んでいたパリの方が例外だ、という気はするのです。ジビエを市場に出すには衛生検査などが面倒なため、ハンターは食べきれないほど獲物があっても売らないと聞いています。

昔のハンターたちは、食べきれないジビエを老人ホームに寄付していたそうですが、今では禁止されているのだそうです。もちろん、食べても大丈夫というお墨付きをもらえる施設に持っていって検査に合格したらプレゼントできるのでしょうが、そんな時間とお金をかけてまでは寄付しない。

野生動物の肉を検査するのは大変なので、商品化されると値段は高くなる。パリの人は経済的にも裕福なので、高いジビエを買う人も多いはずですから売っている、ということではないでしょうか?

フランスのジビエ市場について少し調べてみました。

フランスは、狩猟地域の面積は4,270万haでヨーロッパで第3位だが(1位はスペイン 5,060万ha、2位はスゥエーデン4,410万ha)、ハンター数は130万人とダントツでトップ。

フランスのジビエ市場からみると、消費量は15,000トンで、一人当たり300グラム/年と推定されている(トップのフィンランドでは一人当たり9キロ/年)。ところが、フランスで狩猟されるジビエは43,000トンとみられる。この数値の開きは、ハンターが獲物を市場に出さずに自ら消費していることが原因。フランスの市場に出るジビエの60%は輸入品である。


つまりのところ、ハンターとその縁故者たちはジビエをたくさん食べるけれど、そうでない場合にはほとんど食べないということなのでしょう。全く食べる機会がないフランス人は多いでしょうから、このデータは正しいだろうな、という気がします。

ブルゴーニュ北部の森林地帯で育った友達夫妻は、「子どものころ、冬はジビエばかり食べさせられていたので、もううんざり!」と言っていました。

ジビエをご馳走だといって珍重するのは都会人かもしれない。だとすると、パリではたくさん売っていたのは納得できます。



ブログ内の関連記事:
目次: ジビエに関する日記
目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

情報リンク
コート・ドール県内の朝市リスト
Gibier de chasse : Un tableau d’excellence


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カテゴリー: 食材: 肉類 | Comment (2) | Top
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コメント
この記事へのコメント
御無沙汰しておりましたが、お変わりありませんか?
フランスのジビエ事情、なるほどとなっとくさせられながら拝見いたしました。
赤のフルボディが好きな私、ジビエは大好き。
でも日本の、それも田舎ではそうそう口にする機会はありません。
近くにジビエ専門のオーベルジュもないわけではありませんが、いかんせんお高い!!
一方、雪で真っ白になった我が家の庭には、毎朝鹿やウサギの足跡で一杯。
森の鹿は本当に美しい。そして神秘的なまでに命そのもの。

保護政策によって増えすぎた鹿を食卓に、という動きもあるようですが、一般家庭に普及するのは難しそうです。個人的には鹿は美味しいと思います。
感謝しながら頂くことでまっとうされる命もあるはずです。
八ヶ岳山麓の信州側に残る御狩野という地名は、その昔諏訪大社が神に捧げる鹿を狩った神聖な場所でした。
神にささげられたあとの鹿は「鹿食免」(かじきめん)として、神官や、氏子たちにふるまわれたとか。
本来、血を「汚れ」として忌み嫌う神道の神社で、千年の昔から、昭和の初期までこうした生贄の神事が継承されてきたことを不思議に思います。

ジビエの話からずいぶん脱線してしまいました。
今年もよろしくお願い致します。



2012/01/24 | URL | aosta  [ 編集 ]
Re:
v-22aostaさんへ

コメントありがとうございます。相変わらずの毎日を送りながら元気でおります。aostaさんのブログはいつも読ませていただいているのですが、しばらく書き込みはしていなかったような...。

>近くにジビエ専門のオーベルジュもないわけではありませんが、いかんせんお高い!!
⇒ やはりお高いのですか。農村開発に携わる方々から、日本では野生の動物が増えすぎて被害が大きいためにジビエを食べるように運動していると聞いていたので、安く食べられるようになったのかなと思っていたのですが。調理に手間がかかるでしょうから高くなるのは仕方がないかもしれませんが、手が届かないくらいの料金になっていたら普及はしないでしょうね...。

いつだったか、aostaさんに諏訪大社のことを教えていただいて、とても興味を持ったのを思い出しました。フランスのハンターたちも、まるでエコロジストのように生態系を守る役割を強調しています。野原で見かける野生動物には神秘的な美しさがあるので、それを食べるのには抵抗がありますが、できるだけ関連づけないようにしています。

>個人的には鹿は美味しいと思います。
⇒ 私もそう思います。特に、セール(オス鹿)よりビッシュ(メス鹿)。日本のオス鹿はフランスのセールほどには巨大ではないと思うので、日本ではどちらでも美味しいかもしれないですね。イノシシ肉は、テリーヌにすると成功する確率が高いと感じますが(野生のキノコやハシバミが入っているのが好き)、料理はよほど上手にやらないと美味しくならない。

最近、日本でイノシシを収穫する人の映像を見て、少なからずショックを受けました。農家の庭らしきところで餌付けをしておびき寄せ、それからオリを設置して捕獲していたのです。日本では罠で野生動物を捕獲することが禁止されていないことを知って驚きました。汗を流すこともなく、自分の命を危うくすることもなく捕まえるのはフェアではないと思ってしまいます...。

本来の日本文化は人間と自然を同等に扱うものだと思うのですが、最近では、人間の下に動物を位置づけるキリスト教文化の方が動物を尊重しているのではないかという気もしてきています。これは日本のペット産業について感じることですが。
2012/01/25 | URL | Otium  [ 編集 ]
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