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2012/03/31

シリーズ記事 【2012年3月: フランシュ・コンテ地方の旅行】 目次へ
その2


フランスの田舎育ちの友人たちは、子どもときにはアルミのミルク缶を下げて近所の酪農家にミルクを買いに行くのが役割だったと話します。

でも、そういう小規模な酪農家は少なくなって、私が住んでいるところでも、昔はそんな生活をしていたそうですが、ミルクを分けてくれるような酪農家はいなくなっています。

ところが、ブルゴーニュのお隣りにあるフランシュ・コンテ地方の田舎に行くと、昔のフランスが感じさせられます。

大半は組合組織のようですが、小さなチーズ工房が至るところにあるのです。地元の人たちが、作り立てのバターや生クリームを買い物ができるのは羨まし限り...。

ブルゴーニュでは簡単にワインを買いに行けますが、こういうのは毎週買いに行く必要もないのだから、近くにあっても大したメリットにはならないのです。

地元の人たちは、どこのチーズやバターが美味しいのか好みを持っているのでしょうが、旅行者として行くと、あちこちにあるチーズ工房の中からどこを選べば良いのか迷ってしまう。今回のフランシュ・コンテ旅行では、お気に入りにしたミルク工房のほか、レストランで推薦されたところにも行ってみました。


牧場の風景が好き

フランスには長閑は田園風景が広がっているのですが、環境破壊の槍玉にあげられるのは農業です。戦後の農業政策では農業の近代化と大規模経営が推進されました。

広大な穀物畑で、小型飛行機くらいの大きさはあるトラクターが、翼を広げて農薬を撒いているのを見ると、土壌は汚染されているのだろうな... と実感します。

もっとも、面積あたりの農薬使用量では、日本はフランスを抜いて、世界でトップという統計を見ました。発表しない国もあるはずなので、実際には日本が世界第1位とはいえないとは思いますが。

日本では見た目の良い野菜や果物が売られているのですから、農薬使用率が高いと言われなくても、そうだろうなとは感じていました。

でも、国土に占める農用地面積の割合は、フランスは54%で、日本はたったの12%。農薬で国土が汚されているという意識は、日本ではフランスよりずっと低いはすですね。

フランシュ・コンテ地方には森と牧場が広がっています。放牧というのは、ただ野原に家畜を放し飼いにしているのだろうと思っていたのですが、好ましい牧草がよく育つように、草の種を蒔いたり、肥料を与えたりしているのだそう。でも、牛などは、生えている草をそのまま食べるわけですから、殺虫剤などをまいているはずはないですよね?

日本にいたときには牧場が遠い存在だったので、牧場の風景が好きです。春が訪れると、森に小さな花のカーペットができるのを喜ぶのと同様、牧場に牛たちが戻ってきているのを見るのが格別に嬉しい。

書いている3月中旬のフランシュ・コンテの旅行では、お天気が良かったので、おそらく日中だけ放牧しているのだろうと思われる牛の姿がちらほら見えました。


小さなミルク工房に買い物に行く

お気に入りしたミルク工房に、また行きました。人口150人にも満たない小さな村にあります。

ささいなことでもブログに書いておくと記録になります。バターがこんなに美味しいものかと驚いたのは、かなり前だったような気がしていたのですが、たった1年前のことでした:

頭から離れないほど美味しかったバター 2011/07/10

早朝からミルクの加工作業をしていて、午前中だけ買い物ができます。チーズを枠に入れる作業を見てみたいと思っていたのですが、到着したのは午前11時ころ。チーズづくり作業が終わって、ミルクを入れたタンクを清掃しているところでした。



セラーの棚に並べてあるのは、コンテAOCチーズ です。

小さなチーズ製造所なので、熟成期間が半年とか1年半とかになるコンテチーズを熟成するのは、よそに任せているのだそう。

できあがって納品されると、ナイフを入れて検査し、気に入らないものは返品するのだそうです。

「でも、問題ないんですよ」と作業員の人が言いました。
スライスしてパッケージし、スーパーなどに安く売ってしまえるから。

ほう~、それでスーパーで買ったコンテが美味しくないことが多いのですか... と、私は感心。


パターを成型する木枠

作業する人は交代でするようにも聞いていたのですが、前回行ったときと同じ、気持ちの良い青年が応対してくれました。こちらのことも覚えていてくださる。

それで、気になっていたバターを成型する道具(moule à beurre)を見せてもらいました。



バターを売っているのに、これ1個しかないとは驚き。でも、考えてみれば当然ですね。ここにいる作業員は1人だけなのですから、道具は1個あれば十分なのでした!

これはブナ材の木枠だそうです。夏にはバターが型に少しへばりついてしまうので、本当は菩提樹の木で作れれたものが最高なのだ、と言っていました。

バター型としては、他にもプラタナスの木も使われますが、タンニンがなく、木目の細かい木が向いているようです。

こういうバターの型抜き道具は、ガラクタ市なのでよく売っているので、飾りに欲しいなと思ったりもします。

博物館にある19世紀のバター成型木枠へのリンクを入れておきます。これは菩提樹の木で作ったものだと思うので。
Moule à beurre

木型で成型したバターの話しなどしても日本では馴染みがないだろうな... と思ったのですが、何でも売っている日本。木枠で型抜きしたらしい模様が入ったバターも売っていました。

バターはヘラで叩くか、木型で締めこむかして、水分を抜いた方が美味しくなります。

でも、この日本で売っているバターは、250グラムの3個セットで1万円近いお値段でした。 つまり、1個あたり3,000円強?!

いくら美味しと思っても、バターにそんなお金をかける方がいるのでしょうか? 売っているのだから、そういう身分の方々もいらっしゃるのでしょうけれど...。

ちなみに、私が買ったバターは、同じく250グラムで、1個1.30ユーロ(約150円)です。もっとも、これは地元の生産者直売だからのお値段ではあります。パリなどで、こういう手作りバターを買ったら、軽く倍額にはなるでしょうね。とはいえ、日本のは、その10倍?! すごい...。 


レストランで推薦された大きなミルク工房にも行ってみる

私がお気に入りにしたミルク工房は午前中しか買い物ができません。レストランの給仕長とおしゃべりをしていて、近くに行ったのに閉まっていて買えなかったという話しをしました。

給仕長は食材調達にタッチしているらしく、話しにでるミルク工房をみな知っているようでした。私のお気に入り工房が閉まっていたら、近くにあるこちらに行くと良い、と教えてくれました。大規模生産だけれど、乳製品の質は良いとのことで、レストランではこちらで買い付けをしてるようでした。

美味しいレストランで教えてくれる情報は貴重です。この地域には小さなミルク工房が軒並みあるので、お気に入りのところが閉まっていたときのために、何処が良いのか知っておくのは悪くない。そちらを覗いてみることにしました。

お気に入り工房からは、車で5分くらいのところにある村でした。

建物も大きいし、ちゃんと売店コーナーもありました。大規模と言っても、日本の感覚からいったら、とても小さなミルク工房でしたけど!



始めに目に飛び込んできたのは、近所の人が置いているという豚肉ソーセージです。

チーズを作っている作業を見学したとき、豆乳のように見えるプチ・レ(乳清)を流して洗っていたので、もったいない... と言ったら、豚に与えるのだと言われたのです。

こんな美味しいチーズができるプチ・レで育った豚肉もおいしいはず。

フランシュ・コンテはハム・ソーセージでも定評がある地方なのですが、豚肉の違いもあるのかもしれない。プチ・レの話しを思いながらソーセージを食べたいと思っていたので、まず、これを買うことにしました。

初めに行ったところには春に仕込んだコンテとモンドールのチーズがなかったので、これも買いました。

コンテチーズは、私は春か夏の草を食べた牛の乳で作られたもの、しかも1年くらい熟成したものが私は好きです。生産者やチーズ専門店で買うときは、何月の乳から作ったチーズかを聞けばすぐに教えてくれます。

でも、日本のデパートなどで買うときは、何カ月熟成したものだという表示を見て、自分で計算しなければならないのでしょうね...。輸入して店頭にならぶまでの期間も加味しなければならないでしょうから、春のミルクとこだわろうとしても手に入るのだろうか?...

コンテを楽天市場で検索

チーズにも美味しい季節というのがあるのですが、日本人が魚を食べる時期ほどにはフランス人たちはこだわっていない感じがします。

それでも、ラクレットとモンドールは寒い時期に食べるチーズと決まっている感じはあります。モンドールの方は生産時期が決まっているから、当然ながら1年中食べるわけにはいかないわけですが。


教えてもらったチーズ工房は、バターやチーズのお値段は、私がお気に入りにしたミルク工房と比べると、ほんの少し高めでした。でも、地元の美味しいレストランが選んでいるだけあって、文句ない味でした。

ブログ内の関連記事:
目次: 乳製品(チーズ、バター)に関して書いた日記
目次: 旅行したときに書いたシリーズ日記のピックアップ


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コメント
この記事へのコメント
昨年のバターの記事、拝見した記憶があります。
何かコメントを書いたような気がしていたのですが、何もありませんでした(笑)。

我が家のすぐ近くの八ヶ岳農業実践大学がでは農業だけでなく酪農の実践もあるので、爆上があります。バターやチーズといった乳製品も作って販売していますが、残念ながら、特別に美味しいと言う訳ではありません。でも時々出かけて行っては、のんびりと草を食んでいる牛や、眠そうに尾を振っている牛たちを見に出かけることは楽しみのひとつです。

バターの木型をみて、和菓子の木型を連想しました。
(大きさは全然違うでしょうけれど)。
歴史のある和菓子店などでは今でも代大伝わる木型でお菓子を作っているようです。
また使わなくなったものを、店内にディスプレイしているところもあります。
何の木か聞いたことはないのですが、緻密な木質に精巧な堀が施されていて本当に綺麗です。
最後にアップしてくださったパンも美味しそうですね。
私が通う修道院の神父様が焼かれるパンも全粒粉を使った香ばしくて重いパンです。
日本では真っ白でふわふわと頼りないパンが主流ですが、美味しいチーズにはやはりこうしたしっかりしたパンが合いますよね。
そしてワイン!
最近、シルーブルの若いワインで素晴らしく美味しいものに当りました。
こうした小さな事が嬉しいですね。
2012/04/09 | URL | aosta  [ 編集 ]
追伸です。
ご紹介していただきましたtaliashiho2さんのブログですが、とても素敵だったので、コメントを残してまいりました=^_^=
イタリアにお住まいなのですね。
Otiumさんもtaliashiho2さんも、単に観光名所の紹介だけでなく、そこに暮らすことの楽しみや御苦労など、読み応えのあるブログで素晴らしいと思います。
2012/04/09 | URL | aosta  [ 編集 ]
Re:
v-22 aostaさんへ

>バターやチーズといった乳製品も作って販売していますが、残念ながら、特別に美味しいと言う訳ではありません。
⇒ お近くにあるのに、それは残念ですね。大学のサイトに入っている牛の画像を見たら、やはり日本なのでホルシュタイン種のようでした。私が好きなコンテとバターは、素晴らしい乳製品ができるモンベリアルド種の牛のミルクで作られます。搾乳量が多いホルシュタイン種にとって代わられそうになった時期もあったのですが、この地方では頑なに伝統を守りました。今ではミルクが高く売れるので、酪農経営としても賢い選択だったようです。八ヶ岳農業実践大学では、実験的にモンベリアルドなどの高品質の牛を育て、そのバターやチーズがいかに美味しいかの実験をしてくれると良いのに...。育てているかもしれないけれど、ホルシュタインの乳とまぜて加工したら量的に負けて、風味は消えてしまうと思う...。

>バターの木型をみて、和菓子の木型を連想しました。
⇒ 私も同じです。和菓子の木型も美しいですよね。

フランスのピクニック、あるいは何もないときの代表的な食べ物は、ハム・ソーセージ類、チーズ、パン、ワインです。フランス人の食事の基本はこれなんだな、と感じます。美味しいものがそろえば、それで嬉しいご馳走になってしまう。

>私が通う修道院の神父様が焼かれるパンも全粒粉を使った香ばしくて重いパンです。
⇒ 伝統的なパン・ド・カンパーニュのようなパンではないかと想像しました。昔のフランスでは、パンを日曜日に焼いたそうです。バゲットは、毎日パンを買わせようとしてパン屋が考え出したアイディアのパン! 次の日曜日には、着飾って教会に行き、焼き立てのパンを食べる喜びを味わう。贅沢はできなくても、日々の喜びを味わえたのだろうなと思います。

>日本では真っ白でふわふわと頼りないパンが主流ですが、美味しいチーズにはやはりこうしたしっかりしたパンが合いますよね。
⇒ そうですね。私はコンテのようなハードタイプのチーズなら、パンなしでチーズをたくさん食べたくなるのですが、フランス人たちにはフランスパンがないとチーズが食べられないようです。つい先日行っていたスペインでは、チーズは前菜として食べることに気がつきました。イタリアも、チーズをデザート前に食べるという習慣は少ないように思います。フランス人にとって、チーズには特別な思い入れがあるのを感じます。

>ご紹介していただきましたtaliashiho2さんのブログ
⇒ コメント、読ませていただきました。イタリアが大好きだし、昔の芸術作品に興味があるし、フランス文化のルーツも見えるので、興味深く読んでいるブログです。内容が盛りだくさんなので、全部を把握していくのは難しいのですが! 私は自分用のメモとしてブログを書いているだけなのですが、彼女のブログは読者を意識して観光情報を提供してくれているのも魅力です。
2012/04/10 | URL | Otium  [ 編集 ]
お久しぶりです。
Otiumさん、こんにちは、お久しぶりです。

以前、と言っても半年以上前だと思いますがコメントさせていただきました、ゆっきぃと言います。
その後も時々ブログを読ませて頂いてました。

ブルゴーニュは今日も暑いでしょうね。
ここはフランスで一番気温が低くて、助かっています。
未だに扇風機を使っていません。(笑)

私も大好きなバターですが、ご存知だと思いますが、ここブルターニュでも、小さな村の牧場でも販売しています。
そしてdemi-sel ばかりです。(ブルターニュ人ですよね(笑)
私はそんな場所をを訪れるのが、大好きです。
「お気に入りのバターを買いに行く」って、日本では考えられないことですが、とても楽しいですよね。
私は牧場生産の新しいバターを見つけると、すぐに買いたくなって、未だに、これ、と言うバターを決めていません。
ちなみに先日試したバターは、私にはとても塩が多く感じました。

ブルターニュで美味しいチーズはありませんが、バターは美味しいですよ。
ちなみに、私も夫も一番好きなチーズは“コンテ”です。

またお邪魔します。
2015/07/15 | URL | ゆっきぃ  [ 編集 ]
Re: お久しぶりです。
v-22 ゆっきぃさんへ

お久しぶりですのコメント、ありがとうございます♪

>ブルゴーニュは今日も暑いでしょうね。
⇒ 猛暑は一時的なものなのだろうと思っていたのですが、涼しくはならず、また猛暑が戻ってくるとか...。朝晩は寒いくらいなので、「暑い!」と叫びたくなるのは1日6時間くらいなので、東京の暑さからいうと何でもないと思います。でも、日中の照りつけ方は、正にバーベキューにされている気分。外出から帰って家のドアを開けると、冷蔵庫の扉をあけた心地がします。

地球の温暖化が騒がれているのを聞くと、フランスは(私にとってはフランス=ブルゴーニュですが)平均気温が10度くらい上がったら居心地が良いのにと思っていたのですが、こんな風に気温が上がると、やはり異常かな... と思い始めました。でも、また寒くなるのだろうな... という気持ちはぬぐえません。

>ここはフランスで一番気温が低くて、助かっています。
⇒ ニュースで猛暑と騒いでいるので、温度が低いところのことは天気予報で注意していなかったのですが、ゆっきぃさんのところでは最高気温が20度?!

ブルターニュを1カ月間旅行したときは、7月から8月にかけての時期だったのに、快晴はたった2日間だけでした。雨が多いとは聞いていたけれど、ここまでスゴイとは予想していませんでした。毎日移動して、テントを張るという旅行だったので、暗くて、寒くて参った...。でも、猛暑で参っているときに旅行していたら、印象が180度変わったでしょうね。こちらは暑いというだけではなくて、雨が降らないので、牧場も枯れ野原になってしまっています!

>「お気に入りのバターを買いに行く」って、日本では考えられないことですが、とても楽しいですよね。
⇒ ワインなどは買い置きができるものなので、住む価値があるのは酪農地帯だなと思います。美味しいのは日持ちしないから頻繁に買う必要がある小規模農家の乳製品なので。

>demi-sel ばかりです。
⇒ これが美味しいのですよね...。こちらでは、特別という感じでしか売っていません。

>先日試したバターは、私にはとても塩が多く感じました。
⇒ ブルターニュでは塩加減もバター選びの要素になるのですね。考えていなかった! でも、言われてみれば当然。ブルゴーニュ南部の山羊チーズがどの農家が美味しいか試してまわったのですが、塩加減も大きな要素でしたから。

>私も夫も一番好きなチーズは“コンテ”です。
⇒ そうですか♪ AOCで認可しているモンベリアルド種の牛は、本当に良い乳を出すと思います。幸い、近郊にある農家が、この牛を飼育して、加熱しないミルクと生クリームを朝市で売っているので、いつもそれを買っています。
2015/07/15 | URL | Otium  [ 編集 ]
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