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2012/05/03
先日に出したクイズ「城の敷地に何があったのか?」を考えてくださった皆さま、どうもありがとうございます。 3名の方から正解を出していただきました。

城の庭園で何かを見つけた人たちの写真を入れたのですが、注目を集めた窪みはこんな風になっていました。




昔、ここに氷を入れて冷蔵庫にしていたのです。

その先は穴になっているので、使わなくなった今は立ち入ると危ない。現在は、石壁で塞いでいるのだと思われます。


日本語には「氷室(ひむろ)」という美しい言葉がある

昔の城にあった天然冷蔵庫は、フランス語では「glacière(グラシエール)」と呼びます。今でも、ピクニックのときなどに使うアイスボックスを指す言葉としても使われている単語です。
Glacière Extreme 24L - CAMPINGAZ

少し前にしたスペイン旅行で、アイスボックスに氷を入れると、車のシガーライターから電源をとるシステムなどよりは遥かに冷えることを再認識したところです。
私はドリンク準備係りになる 2012/04/04

日本でも、戦後しばらくの頃には、氷屋さんという職業があって、家庭に大きな氷のブロックを配達してもらって冷蔵庫にしていた時代があったのですよね...。

フランスの城に作られていた天然の冷蔵庫は、普通は土を掘った穴の形になっているので(こちらの絵をご覧ください)、「puit à glace(氷の井戸)」とも呼ばれるのだそうです。

日本では「氷室ひむろ)」という美しい呼び名が存在していました。昔からやっていて、『日本書記』にも氷室に関する記述があったのだそう。
☆ Wikipedia: 氷室(ひむろ)


イタリアの氷室

イタリアのお屋敷に氷室があるのを見たというコメントをいただいたので、イタリア情報を探してみたら、こんな大がかりな氷貯蔵システムの図がでてきました。


☆ Wikipedia: Ghiacciaia
この図をクリックすると大きな画像にリンクしています。

イタリア語で説明が書いてあるので何だか分かりませんが、氷を入れた部屋には、ソーセージなどを吊るしたり、ワインらしきお酒のボトルを入れたりしています。

この図のタイトルだけを自動翻訳してみたら、イタリア北部にあるStrozza(ストロッツァ)の村の中にあった中世の氷室の様子を見せるもののようでした。


シャンティイ城の氷室

ヨーロッパでも、古代ギリシャ・ローマ時代から氷室が存在していたそうです。フランスで本格的に氷室がつくられるようになったのは17世紀半ば。中世の城というのは要塞のためのものだったのですが、城の快適性を求めるようになったら冷蔵庫が必要となったのでしょう。

例えば、パリ国際空港に近いところにあるChâteau de Chantilly(シャンティイ城)には、広大な城の敷地の中に4カ所に氷室が設置されていたのだそうです。

現在のシャンティイ城の姿は、フランス革命で破壊された部分を再建した姿に見えてしまうのですが、コンデ公の時代にはヴェルサイユ宮殿に先駆けた技術が取り入れられた城でした。太陽王ルイ14世も羨むほどの見事な城。

国王を招いた盛大なレセプションのエピソードも残っています。

フランスでは有名な、シャンティイ城の給仕長(レセプション責任者と言った方が良いかもしれない)だったヴァテルを描いた映画で(邦題は「宮廷料理人ヴァテール」)、ルイ14世を迎えたときの大がかりなアトラクションの場面:



当時は人件費の節約なんかに心を痛めることはなかったので、もっと美しい舞台装置だっただろうにと思ってしまった場面ですが...。

ともかく、こんなことを1回だけ見せるためにやっているくらいですから、氷室が4つもあったというのも驚くにはあたりません。

食物を保存するための冷蔵庫が必要だったというだけではなくて、食卓でも氷が必要だったことは推察されます。以前の日記「クイズ: 何を見ているのでしょう?」 に入れたシャンティイ城に展示されている絵画にも、18世紀の食卓でシャンパンを氷で冷やしているのが見えます。

この絵画の細部は興味深いので、もっと続きを書こうと思っていたのに途中でやめていました。食卓を見ると、それぞれにボールが置かれていて、そこに氷を入れてグラスを冷やしているのがわかるのです。

シャンティイ城の一番大きな氷室は、地下2mに作られ、直径9.25m、深さ11m、60万Kgの氷を貯蔵。中サイズのものは、直径7.25m、深さ8m、35万Kgの氷を貯蔵。3番目の小サイズは、直径3m、深さ7m、5万Kgの氷を貯蔵。

庭園に造成した運河が凍れば、その氷を貯蔵できるし、その他にも、きれいな氷を作るための池もあったようです。

大きさが分からない4番目の大きさの氷室を除いても、合計1oo万Kgの氷を貯蔵できたということになりますね。1,000Kgが1トンですから、1,000トン余りの氷を貯蔵できたということ?! 1トンくらいなら想像がつきますが、その千倍となると想像できません。

冬に氷を入れても気温が上がれば溶けますから、そのくらいは必要だったということなのでしょう。

シャンティイ城の中サイズと小サイズの氷室は、1863年まで使われていたそうです。その後は、氷を作って売るのが普及したので、城の氷室は御用済みになったのだろうと思います。

19世紀半ばまで使われいたというシャンティイの氷室は、城と病人のために氷を確保としてたとのこと。なるほど、食べ物の保存だけではなくて、病気や怪我をした人たちのためにも氷は必要なのだと気がつきました。


追記:

後日、ここでご紹介したシャンティイ城に行き、1カ所の氷室を見つけることができました。
シルヴィーの家と氷室(シャンティイ城) 2012/06/08

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★ 目次: クイズを出した記事一覧

情報リンク
ANCIENNES GLACIERES
LES GLACIÈRES
石川県の氷室(雪室)の調査リスト (PDF)
氷室饅頭(ひむろまんじゅう)


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カテゴリー: 建築物 | Comment (2) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
こんばんは! 久し振りのお邪魔です。 で、ずっと積もり積もった記事を拝見し、やはりね、色々教えて頂いた事、新しい発見様々でした。 スペインにもお出かけでしたか。

氷室、そうそう、昨年ヴェネトのブレンタ川沿いの別荘でも氷室の上に造った東屋風の物があって、そこには一般の通りががりの人間も夏には入れて、一時の涼しい空気が足元から吹き出すのを楽しめた、というのを読みました。
入れておられたベルガモ近くの氷室の図を見ると、店も続きに並んでいた様ですね。深さが5,5m 直径3,5mかな、お城の氷室よりは小さめですが、ベルガモ自体が山に近いのでこれでも良く冷えたのかもですね。

新しい映画、宮廷料理人のお話、そして、スペインのビオラ・ダ・ガンバの演奏家についても知り、有難うございます、これは素晴らしい! DVDやCDを探してみます。

2012/05/06 | URL | shinkai  [ 編集 ]
Re:
v-22 shinkaiさんへ

右の建物は何かなと思っていたのですが、お店でしたか。氷室の続きなので、食料など保管するのには便利だったでしょうね。賢い!

>氷室の上に造った東屋
⇒ こちらも良いアイディアですね。思い出せば、城やヴィラの庭園には洞窟があるのですが、これも夏に涼める場所だったわけだ...。

>お城の氷室よりは小さめですが、ベルガモ自体が山に近いのでこれでも良く冷えたのかもですね。
⇒ シャンティーイ城は全くの平地に建てられているので、氷の解け方も激しかったでしょうね。城の氷室の底は解けた水が流れでれるようにしてあったそうなのですが、絵を入れたイタリアの氷室の底はそんな配慮はしていないように見えます。

ここのところ、トルコ、スペインと旅行した日記を書きながら、イタリアのことだったら「詳しくはこちらをお読みください」とshinkaiさんのブログへリンクさせてしまえるのにな... と思っておりました。


2012/05/07 | URL | Otium  [ 編集 ]
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