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2012/05/12

シリーズ記事 【フランス新大統領の誕生】 目次へ
その2


日本語のニュース・サイトでフランス関連記事を眺めていたら、事実婚のフランス大統領は史上初めという記事が多いのが目につきました。

新大統領となったフランソワ・オランド氏(François Hollande)は、一緒に暮らしているバレリー・トリルベレール(Valérie Trierweiler)と法的には結婚していないのです。

目にした記事は、例えば...
大統領夫人の役目、大丈夫?=事実婚のバレリーさん-仏
恋愛大国フランスの新大統領 - 田村 耕太郎
<仏大統領>初の「事実婚」夫人 政治記者「続ける」
フランス次期大統領「夫人」 事実婚批判を一蹴

オランド 事実婚」をキーワードにして検索したみたら、何ページにも渡って、おびただしい数がヒットして来たのでびっくりしました!
Google検索で「オランド 事実婚」をキーワードにして検索

フランス語サイトではどうなのかと検索してみたら、初めの数個にある記事が関係している程度なのでした。
仏語Google検索で「Hollande "union libre"」をキーワードにして検索

別のキーワードでも検索してみたのですが、日本のようにずばり取り扱っているのが余り出てこない。

どうして日本では、そんなに、結婚していない女性がファーストレディーになることを気にするのだろう? ちょっと異常ではないですか?...

フランスでは事実婚が法的な結婚に劣るものではないと肯定的に紹介している記事もあるのですが、ともかく正式に結婚していない大統領ということが特異なことと受け取られているらしい。

フランスの報道にあるオランド氏の私生活批判では、パートナーは頭脳明晰な女性ではあるけれど、余り好感を持てない人物だというあたりに焦点がいっている感じがします。


日本は後進国?

「オランド氏が事実婚だということが日本では大きく報道されているみたい」とフランス人に話したら、「日本は遅れているんだね」と言われてしまいました。

「遅れている」という言い方は嬉しくないのだけれど、「親の面倒を見るのが大変で、悲劇的状況になっている友達が何人もいる」と話すときも、そういう言われ方をされるのです。

つまり、フランスも、昔は日本と同じだったけれど、時代は変わった、ということなのだけれど...。

フランス人にとっての日本のイメージは、ハイテク技術、大都会、ファッションの先端をいっているなどなので、それと同時に昔の因習が根強く残っているというのは理解できないらしい。

友人は続けて、日本人がオランド氏が結婚していないことを取り上げるのは、オランド氏の欠点を探したいからではないか、と言いました。

でも、サルコジだって、さすがに、それを取り上げなかったよ。大臣の中にも事実婚カップルがいるし、選挙人たちにも事実婚が多いのだから、それを言ったら顰蹙をかってしまうのが分かってから。第一、そんなことを言うなら、サルコジは離婚経験者だと責められる。オランドは離婚経験ゼロ。だって、結婚したことがないのだから!

そう言って笑っていました。

そもそも、フランスの法律では、大統領夫人には何の権限もない存在なのだから、どうでも良いのだそう。

思い出せば、サルコジ氏が大統領になったとき、当時の奥さんに、国がお金を支払うクレジットカードを持たせてしまったことがスキャンダルになっていたっけ(すぐにカードは取り上げられた)。

ところで、フランスは同性の結婚を認めていないのが「遅れている」として、オランド氏はそれを認める法律を作ると公約していました。検索をかけたとき、「オランド 結婚」をキーワードにしたら、その関連記事ばかりがヒットしてきていました。


事実婚とは何か?

結婚していない男女が一緒に住んでいるケースのことを、最近の日本語では「事実婚」という言葉が定着しているようですね。

フランスのカップルのあり方には、法的な結婚(mariage)、民事連帯契約(PACS)、自由結婚(union libre)の3種類あります。

「事実婚」というのは、法的に結婚していない男女カップル全てを総称できるということかな?...

Wikipediaにある「事実婚」の記述を見たら、「内縁」関係より上のランクで用いられることが多いらしい。

フランス語で内縁関係は「concubinage」なので、それをWikipediaで検索して、そこからリンクされている日本語ページを開いてみたら、なんと「側室」が出てきたので仰天しました! それ以外のフランス語や日本語からWikipediaの言語を行き来してみようとしたら、リンクがないのが多い。日本とフランスでは、この分野の共通概念が定着していないのだろうか?...

オランド氏に関する記事の中では、フランスの事実婚とは何かを説明しているものもありました。でも、事実婚は「婚姻届を出さない、一種のお試し婚」などというのがあったので、これにも驚きました。法的に結婚しなくても不利はないという理由もあるので、事実婚やPACSを選択して結婚届を出さないカップルも多いのですから、「お試し婚」などと言ったら怒られますよ...。


事実婚は外交上で問題がある?

日本の報道でも、オランド大統領が事実婚なのが問題になるのは、外国との関係だという言い方ですね。 そんなことを日本人が心配してあげる必要はないと思うのだけれど...。

サルコジ氏が奥さんに逃げられたときには、ただちに再婚相手を見つけだし、そっこく彼女にフランス国籍を獲得させていました(普通の人がフランス国籍を獲得するのは大変なのだけれど、こういうケースだと簡単にできる!)。

そうしておくのが無難で賢いのかもしれない。でもね、ローマ法王との問題を取り上げるなら、大統領夫人には、過去に同棲していた相手の息子との間にもうけた子どもがいる、などという方が罪は重いのでは?...

拾って読んだ日本の報道記事の中では、フランス大統領が事実婚なのが外交上で問題になる国として、日本があがっていないのが奇妙でした。

大統領のパートナーくらいの高い地位だと問題にならないでしょうけれど、普通レベルのフランス人だったら、結婚していないカップルは日本では白い目で見られると感じています。

知り合いの男性が日本で講演をするために招聘されたとき、彼のパートナーを自費で連れて行くと言うので、「面倒を避けるために、妻として彼女を日本人に紹介した方が良いよ。パスポートを見せて証明しろと言われるはずはないのだから」とアドバイスしてしまいました。

日本人にフランスの話しをしていたとき、フランスで生まれる子どもたちの半分くらいは両親が結婚していないカップルだと言ったら、可哀そうに~! と反応をされてしまったことがありました。非嫡出子でも何も不利なことはないのだ、と説明しても納得してくれない。

「可哀そう」などという目で見る方が差別だと思うけれど。でも、日本のシングルマザーは悲惨な状況に放置されるものなので、そう見てしまうのだろうな...。


自由を認める

フランスでも、法的な結婚を重視する人たちはいます。

カトリックでは同棲という存在を認めていないので、そういう価値観を維持している年配者もいます。たいていは、若い人の気持ちを尊重して諦めているように見えますが。それから、古い家系では因習があるらしい。やはり「世継ぎ」がいないといけない、長男は結婚しないと城主となれないなど...。

私が付き合っているフランス人たちの中では少ないのですが、「年頃になったら結婚しなければいけない」というプレッシャーで結婚した友人たちもいます。傍から見ていると幸せそうに見えなくて、すぐに結婚が破綻したケースばかり。

それでも、親族からのプレッシャーがありながらも離婚できるのは、フランスの良さだと思います。あるいは、1回結婚して離婚すると許されるのかな?...  日本の友達の中にも、人から「なぜ結婚しないのか」と言われると、「離婚したことがありますので」と答えることにしている美人がいました。そう答えると、後は何も言わなくなるから、と理由を説明していました。

日本の記事を読んでいて、「恋愛大国フランス」という表現もあったのに気がつきました。そう表現できるかな? 一緒に暮らすパートナーを選ぶのもし、シングルになっても困らない体制がフランスにはあるのが大きいと思うので、「自由」という方が適切ではないかと思うけれど...。

でも、日本にも良さがあると思うのです。

フランスは、結婚していようが、いまいが、カップルで行動する国です。食事に招待されたときも、カップルで参加する。お相手がいない男性たちは平気で自分だけ参加しているように感じますが、私の観察では、女性が一人で参加するのには抵抗があるらしい。

フランスではカップルで行動する習慣があるのは不便でもあります。例えば、親友が見つけた伴侶が好きになれない場合。親友には会いたいけれど、その人の伴侶には会いたくないという理由で、友人関係が壊れてしまうのを多々見てきています。

日本の男女関係は淡泊。夫は自分の付き合いを持ち、奥さんの方は自分の付き合いができる、という分離ができるのは、悪くはないのでは?...

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係

外部リンク:
OVNINAVI: 「内縁関係」は、 フランス語では「union libre」
男女共同参画社会に関する世論調査 内閣府大臣官房政府広報室 平成21年10月調査
「事実婚」は晩婚国ニッポンの少子化対策となるか
ほんとはPACSより簡単ですごい日本の「事実婚」(フランス婚)!


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コメント
この記事へのコメント
ムツカシイですね・・・
今回は「事実婚」を軸に色々なことがぎゅっと詰まった記事ですね。なるほどと読みすすめながらコメントもまとめきれずにいますが・・・

事実婚という関係は、10年ほど前にフランスに行った時に初めて知りました。当時はやっぱり私も軽い衝撃というか強い印象を受けた記憶がありますが、事実婚という観念が日本の社会で普及していないので「不慣れ」だったんだと思います。今回のメディアの取り上げ方からして、10年経っても日本の社会的にはやっぱり「不慣れ」な様ですが。

個人的には「事実婚」は強い確信を持つ必要があると思っているので自信がありません:苦笑。単純な交際と事実婚の違いはなんだろうとか、アカの他人が一緒にいるのに自分の信念だけで貫けるのかとか。事実婚の人はすごいなぁとさえ思ってしまいます。

形式的な結婚は、早まって後悔するということも有り得ますが、一方では法的な面をはじめとして拘束されるので覚悟が決まることもあるのではと思っています。それが重荷になって後悔に繋がることもある訳ですが。

それと余談ながら、日本人が例えばフランスとかイタリアでフランス人とかイタリア人と事実婚するのは難しいのかなぁと思っています。自分の滞在身分がよほどしっかりしていれば別ですが、外国人として滞在許可を取得することの大変さとか、それを通じ○○人であることに固執することで生まれる強いアイデンティティとかがどんな影響をあたえるのかが未知数です。

どうも自分の弱さを露呈するに終わってしまった気がしますが(苦笑)、今回はこんなことを思いました。
2012/05/16 | URL | azu  [ 編集 ]
Re: ムツカシイですね・・・
v-22 azuさんへ

>事実婚という関係は、10年ほど前にフランスに行った時に初めて知りました。
⇒ 私は、むかし、日本に来ていたドイツ人夫妻とおしゃべりをしていたとき、「一緒に暮らしてみもしないで結婚するのは無謀だ」と言われて、「なるほど、そうかな~」と思ったのが一番古い記憶だと思います。それがあったので、フランスで非婚カップルと出会っても驚かなかったような...。

私がフランスのことを知って最も驚いたのは、1968年の5月革命の存在でした。カトリック教の観念があった国なので障害は大きかったはずなのに、避妊が容認され、同棲も許され、家族のあり方も変化するという180度の方向展開ができてしまった。日本でも学生運動が荒れ狂ったのに、その後の日本社会は何も変化しなかった...。

>単純な交際と事実婚の違いはなんだろう
⇒ 事実婚という区別は、結婚カップルと同等の社会保護を受けるために役場に届け出するのに必要なだけではないかと思っています。結婚しないカップルが出てきた当初はunion libreなどという言葉を作って正当性を主張したわけですが、非婚カップルが定着した今ではそう言う必要はなくなっています。「日本は遅れている」と言った友人は、「concubinageという言葉は耳にしなくなった」と指摘していました。

ただし、結婚しているか、していない関係かというのは、未だに区別しています。食事会などで知り合いになった人が、自己紹介のように「私たちは結婚していない」と言うことが多いのが気になっています。同棲関係が普通と見る若い世代は言わなくて、それより上の年代の人たちにその傾向があると観察しています。ファーストネームで呼ぶので姓が違うのには気がつかないのですから、私に知らせてくれる必要は全くないので不思議。妻と夫という呼び名は結婚しているカップルにしか使わないので、それを使って欲しくないということなのかな?... あるいは、法的結婚をしていないのが誇りなのか?...

>アカの他人が一緒にいるのに自分の信念だけで貫けるのかとか。事実婚の人はすごいなぁとさえ思ってしまいます。
⇒ フランスでは、法的に結婚しても、カップルが破綻する危険性は同じだと感じています。「アカの他人」という表現が面白いですね。フランスでは、結婚していても、相手は個人として、つまりはアカの他人として扱っていると感じます。他人に奥さんのことを平気で褒めたりする男性をみると、妻は自分の身内だという意識が彼にはないのだろうと思うわけです。

5月革命以前の世代では、レディーファースト精神が強く、仲が悪くても別れない傾向があります。女性解放は良いですが、それと同時に、女性にも覚悟が必要なのだなと感じます。フランスには男性が女性にかしずくgalanterie françaiseの歴史があるので、それを逆手にとって女性が強くなれたのかな... とも思います。

お兄さんと結婚した日本人のことを、働いていないと批判しているフランス女性がいました。いつ別れるか分からないのだから、仕事を持っていないと心配だと言うのです。この日本人女性を、夫が「奴隷のようにこきつかっている」のを見るのが堪らない、と言う男性もいました。男女が同等の立場になっていないカップルは正常ではないと見えるのでしょうね...。
2012/05/17 | URL | Otium  [ 編集 ]
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