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2012/06/17

シリーズ記事 【ヴィシー政権下、1942年のユダヤ人一斉検挙】 目次へ
その4


前回の日記(フランス映画『黄色い星の子供たち(La Rafle)』)に続いて、同じく1942年におきたヴェル・ディーヴの一斉検挙(この事件について書いた日記)を扱い、さらに同じく2010年に公開された映画について書きます。

映画「サラの鍵(Elle s'appelait Sarah)」

サラの鍵 [DVD]Elle s'appelait Sarah
日本公開: 1011年フランス公開: 2010年


タチアナ・ド・ロネが、2006年に出版した小説「サラの鍵Elle s'appelait Sarah)」を映画化したものです。

2009年末で発行数200万部というベストセラーでした。

英語版では、映画も小説も「Sarah's Key」。

この小説は英語で書いたのだそうです。タチアナ・ド・ロネはイギリス人の家系で、完璧なバイリンガルなのです。

その後に出たフランス語版は、翻訳者によって訳されたのだそう。

なぜ彼女がフランス語で書きなおさずに翻訳させたのか、またフランス語版の題名が「彼女の名はサラだった」となったのか、不思議です...。

邦題は英語の題名からとっているのですね。ユダヤ人の少女サラが持っていた鍵が重要な役割を果たしているので、こちらの題名の方が良いとも思えます。

映画『サラの鍵』公式サイト
☆  Movie Walker: サラの鍵
☆ Goo映画: サラの鍵
☆ 監督・キャスト(写真付き): Casting Elle s'appelait Sarah(AlloCin�・)




この映画は、飛行機の中という悪条件で見ました。ビデオ画面は小さいし、騒音で良く聞こえない。それでも感動を与えられた映画でした。

命を救ってあげようとする行為だったのに、仲良しの弟を殺してしまった少女サラ。その苦しみが痛いほど伝わってきました。

ユダヤ人迫害という問題を抜きにしてもありうる話しだし、サスペンスもあって、良くできたストーリーです。

ヴェル・ディヴの一斉検挙という事件とサラについて取材する主人公のアメリカ人ジャーナリストの女性が、自分の生き方まで変えていくというのも並行して進行します。でも、私はサラの悲劇の方ばかりを見てしまいました。

「サラの鍵」予告編:


2本立てで映画の抜粋を見せる動画:
1.
2.



監督はジル・パケ=ブレネール(Gilles Paquet-Brenner)

ジル・パケ=ブレネール(Gilles Paquet-Brenner)監督にはユダヤ系のルーツがあり、迫害で命を落とした親族も何人かいるそうです。ユダヤ系ドイツ人の音楽家だった祖父は、フランス人たちに密告されたために強制収容所で死んでいます。小説を読んで、これを映画化したいと強く願ったのだそう。

監督が最も難しいと思ったシーンの一つは、子どもたちが両親と切り離されて電車に乗せられる場面だったそうです。撮影開始の数日前、この場面を体験した生存者のAnnette Muller(1991年に出版されたLa petite fille du Vel'd'Hiv'の著者)に会っていたためのプレッシャーもありました。



監督は語っています。
映画を見た人々が、自分にも関係することだ、と受け取ってくれる映画になっていることを期待する。


原作者はタチアナ・ド・ロネ(Tatiana de Rosnay)

彼女は小説の主人公であるジャーナリストのジュリアのように、ヴェル・ディーヴの一斉検挙について知りたいとのめり込んだようです。

インスピレーションを受けたのは『La Mémoire des murs(2003年)』を書いていたとき。ヴェル・ディヴの跡地に行ってみて、大きなショックを受けたのだそうです。余りにも寂しげな道で、そばには内務省の別館があるのも強いショックを受けた。

それから、フランス人にはよく知られていないこの事件について調べ始め、そのときの自分の驚きと心情を主人公のジャーナリストであるジュリアに重ねて書いたそうです。サラは娘さんの姿から。

タチアナ・ド・ロネが「サラの鍵」を書きたいと思った動機などを語る:

Tatiana de Rosnay: "Elle s'appelait Sarah" et le Vel' d'Hiv'

ポケット版が出版されるときのタチアナ・ド・ロネ:


☆ タチアナ・ド・ロネが作家になった経緯を語る: Tatiana de Rosnay : comment j'ai été publiée ?(動画)

彼女についての情報を眺めていたら、びっくりするようなエピソードがありました。次の次の日記で書こうとしているテーマにつながるので、後日ご紹介することにします。


ヴェル・ディーヴの一斉検挙を扱った2つの映画

「黄色い星の子供たち」は事実をもとにして作られたのですが、「サラの鍵」の方はフィクション。 それなのに、フィクションの方が現実に即して描かれたような印象を受けました。

両方の映画がテーマとしてヴェル・ディーヴ事件についても、「サラの鍵」の方が迫害を受けたユダヤ人たちの苦しみが伝わってきました。

私の感想は一般的ではない可能性もあるので、データを並べて比較してみます。

映画の題名黄色い星の子供たちサラの鍵
入場者数258万人82万人
製作費2,000万 ユーロ1,000万 ユーロ
受賞   セザール賞(主演女優賞)
評価(5点満点):
 マスコミ
 観客

2.8
3.6

3.3
3.9
映画初公開日2010/10/102010/10/13
出所:AlloCiné  Cinéma (2012/06/19現在)

製作費も倍だし、映画公開PRも大々的にしたと思える「黄色い星の子供たち」は、入場者数が「サラの鍵」の3倍くらいになっています。でも、評判としては「サラの鍵」の方が上を行っているようです。

追記:
タチアナ・ド・ロネがパスポートを更新できなかった経緯について:
最近のフランスでは「一斉検挙」が流行っていた 2012/06/19


― 続く ―




内部リンク:
フランス映画『黄色い星の子供たち(La Rafle)』 2010/11/06
ナチス占領下のフランスを描いた映画「さよなら子供たち」 2010/11/06
ヴェル・ディーヴの一斉検挙に関する情報 2012/06/15
★ 目次: 戦争に触れて書いた日記
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外部リンク:
『サラの鍵』ジル・パケ=ブレネール監督が語るホロコーストとその思い


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