2012/07/11
シリーズ記事 【わらぶき屋根のアイリスの花を見て】 目次へ
その8
茅葺き屋根の良い点の1つに、カヤは軽いので屋根を支える木組みが軽くて済む、というのがありました。
そのことを書いた日記:
★ エコロジー住宅として見直された茅葺き屋根のメリット 2012/07/09
前回の日記「石を厚く切り出して使う瓦(ラーヴ、ローズ)」で、屋根が重くなるというのでは群を抜いている石の瓦について書きながら、その屋根を支える木組みのことを日本語では何と呼んだら良いのか迷いました。
フランス語では、charpente(シャルパント)と呼ぶ部分のことです。
◆ charpenteは何と訳す?
フランスで城や修道院などを見学したときには、シャルパントの見学というのがあります。
見学するのは、こういう屋根裏部屋。
ここから上を見上げたときに見えるのが、charpente(シャルパント)と呼ぶものです。
もちろん、charpenteを仏和辞典でひけば、一番初めに、次のような訳が出てきます。
(建築物、船などの)骨組(構造)、構造、屋根組
「屋根組」ね...。何となく気に入らない...。
例えば、立派な建物を見学したとき、「屋根組を見に行きましょう」と言ったら、なんだかつまらないではないですか? それに、「屋根組」と言われたら、あれだ、と想像できますか?
これは、修復中の知人の家で屋根裏部屋を見たときの写真です。民家と言っても、昔は修道院、続いて工場に使われたという歴史を持つ大きな建物なのですけど。
シャルパントを見学すると、実に色々な色々な木の組み方があり、中には仰天するほど立派なのもあるので興味深いのです。
下は、ブルゴーニュ地方にあるサン・ファルジョー城のシャルパントです。
Château de Saint Fargeau
charpente(シャルパント)は普通に使われている単語です。
charpentier(シャルパンティエ)というのが大工さんのことですから、始まりの部分は同じなので、シャルパントは簡単に覚えてしまいます。
大工さんは屋根を支える部分を作るのが大事な仕事なのかな?... 英語でも、大工さんはcarpenter(カーペンター)ですから、同じファミリーでしょうね。
日本で屋根裏部屋を見学することがあったら、こういうものを何と呼ぶのか覚えたはずですが、そういう機会があったかどうか記憶がないので、言葉が思い浮かびません。
やっぱり、「屋根組」と呼ぶのかな?...
Wikipediaで「Charpente」を出してみても、そのフランス語から日本語ページへのリンクはないのです。日本人は屋根裏部屋に上って梁を眺めるという趣味がないのだろうか?...
◆ 垂木(たるき)って、なに?
どうも「屋根組」とか「屋根を支える骨組み構造」などというのが気に入らない。何かしら美しい表現が日本語にもあるのではないかと思って、探してみました。
「垂木(たるき)」という、聞いたことのない単語が出てきました。これかな?...
☆ 垂木(たるき)
でも、垂木はシャルパントの一部らしい。
「丈夫な屋根を完成させるためには垂木がしっかりと棟木(むなぎ)・母屋(もや)それに桁に固定されていることが重要になってきます」とありました。
そうか、茅葺き屋根を支える構造はそんなにしっかりしたものではないと先日の日記で書いたとき、やたらに太い垂木をつくる必要はない、と言ったら良かったのかもしれない。
シャルパントの各部分のフランス語の名称を図で示しているのがありました:
☆ Les différentes pièces de bois d'une charpente traditionnelle
☆ LA CHARPENTE - Les principales pièces des charpentes traditionnelles
図にある「chevron」というのが垂木(たるき)らしい。
◆ シャルパントとは「小屋組」?
覚えても使うことはないであろう単語が、日本語とフランス語でぞろぞろ出てきました。もうシャルパントの訳語を探すのはやめようと思ったとき、これではないかという単語に出会いました。
☆ Wikipedia: 小屋組部分
ここにある図は、さっきのフランス語でシャルパントを説明していた図と同じです!
小屋組が何であるかの説明は次のようになっていました。
屋根を支えるために設けた骨組み。小屋梁・母屋・垂木・棟木などから構成されている。
建物の屋根部分の骨組み。屋根の荷重や風圧力・積載荷重などを軸組に伝える役割をもつ。木造住宅においては和式と洋式に大別される。和式の小屋組は棟木(むなぎ)・母屋(もや)・垂木(たるき)・小屋束・小屋貫・小屋梁などで構成される。
ということは、シャルパントは「小屋組」と呼べば良い?♪
でも、「こやぐみ」なんて味気ない言葉ではないですか?... 「屋根組」というのよりちっぽくさく感じます...。
◆ 見事な小屋組構造
フランス語で「シャルパント」と言われれば、古い家の立派な木組み構造を思い浮かべるのだけれど(見学するのはそういう所ばかりなせいもある...)、「小屋」と言われてしまうと...。
シャルパントって、みごとなのです。
Cathédrale Saint-Étienne de Meaux
検索していた最後になって、シャルパントの各部分の名称を入れた動画を見つけました。ロワール河の古城巡りでの観光スポット、アゼ・ル・リドー城の美しいシャルパントです↓
Château d'Azay le Rideau
色々調べていたら、フランスのシャルパントの構造をつくる技術は、ユネスコの無形文化財として登録されていたのだと知りました。
☆ UNESCO: La tradition du tracé dans la charpente française
この私が気にしているシャルパントは、本当に日本語では小屋組と呼ぶものなのかどうか教えてくださったら嬉しいです。
ブログに書いていると、コメントで色々と教えてくださる方があるので期待してしまっているのですが...。
追記:
専門家の方から、これは「小屋組」と呼ぶと教えていただきました♪
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この記事へのコメント
Otiumさん こんにちは♪
いろいろ調べられていますね。
一般的には、建築用語では屋根裏の構造部分のことを、小屋組といいますね。
日本の茅葺の小屋組には、真束組(おだち組)とか、叉首組(さすぐみ)という組み方があります。
構造的な違いを敢えて考えずに、一般的に屋根裏部分を指すのならば、味気ないかもしれませんが、小屋組 と言いますね。。。
いろいろ調べられていますね。
一般的には、建築用語では屋根裏の構造部分のことを、小屋組といいますね。
日本の茅葺の小屋組には、真束組(おだち組)とか、叉首組(さすぐみ)という組み方があります。
構造的な違いを敢えて考えずに、一般的に屋根裏部分を指すのならば、味気ないかもしれませんが、小屋組 と言いますね。。。
kaoriさんへ
コメントありがとうございます!♪ 正直もうしまして、いつかKaoriさんの目に留まったら教えてくださるのではないかと期待しておりました。
やはり小屋組で良いのですね。辞書にも出てこない訳語が分かって嬉しいです!
少し前に江戸東京博物館に行ったら、江戸時代の建物の断面があり、シャルパントが見えました。前々から気になっていたので良いチャンスと喜び、これを何と呼ぶのかガイドさんに聞いたのですが、答えが出てこなかったのです。ひょっとして、シャルパントにあたる日本語はないのだろうか、と調べてみる気になりました。
小屋組の部分には色々な名称がついていて、始めのうちに見つけたのは言葉の説明だったのでチンプンカンプン。図を見つけたら分かりやすくはなりましたが、ゾロゾロ出てきた聞きなれない単語を全部覚える建築家の方は大変だな... と思いました。考えてみれば、各部分の働きを理解しなければ、しっかりと木を組み立てることはできないわけで、なるほど... と感心した次第です。
コメントありがとうございます!♪ 正直もうしまして、いつかKaoriさんの目に留まったら教えてくださるのではないかと期待しておりました。
やはり小屋組で良いのですね。辞書にも出てこない訳語が分かって嬉しいです!
少し前に江戸東京博物館に行ったら、江戸時代の建物の断面があり、シャルパントが見えました。前々から気になっていたので良いチャンスと喜び、これを何と呼ぶのかガイドさんに聞いたのですが、答えが出てこなかったのです。ひょっとして、シャルパントにあたる日本語はないのだろうか、と調べてみる気になりました。
小屋組の部分には色々な名称がついていて、始めのうちに見つけたのは言葉の説明だったのでチンプンカンプン。図を見つけたら分かりやすくはなりましたが、ゾロゾロ出てきた聞きなれない単語を全部覚える建築家の方は大変だな... と思いました。考えてみれば、各部分の働きを理解しなければ、しっかりと木を組み立てることはできないわけで、なるほど... と感心した次第です。
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