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2012/07/25

シリーズ記事 【わらぶき屋根のアイリスの花を見て】 目次へ
その11


先日の日記「ブルゴーニュの伝統的な瓦を支える板」に、kaoriさんがとても興味深いコメントをくださいました。

そこに入れた写真(右のもの)をご覧になって、屋根の下地が余りにもシンプルなので驚かれたとのこと。

実は、フランスでは屋根裏部屋に上がることが多いのに、日本では見たことがあったのかさえ記憶がありません。

それで、フランスのがシンプルかどうか、などと、考えてみたこともなかったのです。

改めて、屋根裏部屋で天井を見上げた写真を眺めてみました。

上に入れた写真の、上半分の部分、つまり伝統的と私が呼んだ四角い瓦がふいてある部分を大きく入れてみます。



下の動画は、パリのあるイル・ド・フランス地方の屋根ふき業者のPRビデオ。
職人さんならではの手際なのでしょうが、トントンと瓦を並べてしまうので、なんだか簡単そうに見えてしまう!




屋根裏部屋から瓦が見えてしまうのだ...

それも、私がフランスで屋根裏部屋にのぼると面白い、と感じていた理由の一つだったかもしれないと思いました。

kaoriさんが教えてくださったのですが、日本の屋根瓦は、屋根のてっぺんから下に渡す垂木(たるき)の上に瓦をのせるには、次の4つの工程があるのだそうです。

① 下地(一般的には野地板を隙間なく打ちつけます)
② 下葺き(防水性、断熱性に優れた下地材を敷きます。現代ではアスファルトルーフィング等、昔や伝統的な建物では杉皮やこけら板など)
③ 瓦を引っ掛ける桟木(昔は桟木ではなく、葺き土に瓦がのっていた)
④ 瓦

私はブルゴーニュの瓦を例にしていたのですが、ざっと調べたところ、北フランスに多いスレート石の瓦でも、南フランスで多いカマボコ型の瓦でも、下地の部分は同じに見えました。

つまり、垂木の上に横に細い木を渡しただけで、そこに瓦をとりつけてしまうというスタイル。
Kaoriさんは、①と③の工程が1つになっているのがフランス式、と見ていらっしゃいました。

つまり、②の「下葺き」がない。
ただし、次の日記で書くように、最近はフランスでも、瓦の下に防水・断熱の下地材を入れることが多いように感じます。

日本の屋根は、まず野地板を隙間なく張ったりするのが、すごいと思いました。それでは、屋根裏部屋にあがって天井を見上げても、瓦なんか見えないわけなのですね。

Kaoriさんのブログ「さいふうさいブログ」には、手がけた仕事として屋根裏部屋の様子が見える写真があるのではないかと思って探してみました。

でてきました♪ たとえば、こちらの写真

ほんと。瓦なんか見えない!
屋根裏部屋にしておくにはもったいないくらい、天井がきれいなんですね~。
でも、天井が低いから、普通の部屋としては使えないかな...。


日本とフランスの屋根の構造の違い

先日の日記「ブルゴーニュの伝統的な瓦を支える板」で、屋根瓦をひっかける梁を何と呼ぶのか気になったと書きながら調べていたら、訳語がうまく見つかりませんでした。日本とフランスでは、屋根づくりがかなり違うから適当な単語がなかったらしい。

フランス語では、次のような単語が出てきていました。仏和辞典の訳も入れおきます。

liteau: (おもに屋根小舞にもちいる)貫(ぬき)、小幅板、屋根小舞(こまい)
lattis: 小幅板、木摺(きずり)下地
latte: (木舞などとして用いる幅5センチ程度の)小幅板
voligeage: 野地(のじ)板張り、野地


瓦をひっかける棒は「野地」と呼ぶと適当かと思ったのですが、日本では「野地板」という板を屋根に張る習慣があるとしたら、やはり良くないでしょうね...。「野地貫」と呼べば良いかもしれない。

Kaoriさんからいただいた4段階の中で、③の工程にあった「桟木さんぎ)」という言葉が気に入ったので、これを訳語にしてしまおうかと思います。

それにしても、建築関係の用語って、こんなに豊富にあるとは想像もしていませんでした。この分野の通訳をしなければならない場面にぶつからなかったのは幸運でした! こんな単語がゾロゾロ出てきたら、日本語さえ覚えきれないで、泣き出してしまいます。

それでも、幾つか単語を覚えたので、復習のために、Wikipediaにあった図に書きこんでみます。


Charpente de toitureより


日本の屋根の方は、こんな具合。

 
☆ Wikipedia:小屋組部分 より

この2つの図を比べると似てはいます。でも、日本の屋根の方は、瓦をひっかける板の部分は出てきていない。あと3つが上乗せされてから瓦がのるのでした。

日本の屋根がどうなっているのか示すページがでてきました。Kaoriさんのご説明が絵でよく分かりました♪
屋根の構造

日本の木造建築って高いレベルなんだな... と改めて感心しました。

実は、ここのところフランスの屋根について書いていて、考え方を変えたことがあったのです。フランスは石造建築の文化だと思っていたけれど、木造だって大したものではないか。

でも、また前に戻ってしまった。やっぱり、フランスは木造建築の文化じゃないのだ。

思いだしたのは、たまに見る、木で覆われた天井がある教会。見学したときの説明では、いつも、この天井は船職人が作った、というのです。なるほど、船の底を天井に張り付けたような作りなのです。
豪華なのもありますが、シンプルなのだと、こんな感じの天井

それで、なぜ船職人が天井なんかを作るかといえば、普通の大工さんだとそういう天井は作れないからなのだそう。日本の大工さんだったら、教会の天井だって木でつくれると思うけどな...。


トタン屋根をはるには野地板が必要?

フランスの屋根の構造と各部の名称は、Toit et couvertureのページがWikipediaより詳細です。

その中にvoligeという名称があって、これが「野地板」に見えます。トタン屋根にはこの板を張るらしい。

つまり、フランスでトタン屋根にするのは、瓦の屋根より手間がかかるということ?!

実は、フランスではトタン屋根はほとんど見かけないのが気になっていました。たま~に、農家の大きな屋根でこれがある程度。

それを見ると、「なんて見苦しいものを作っているのだ。建築許可なんか出すべきではない!」などと文句を言う友人もいます。トタン屋根はめったに見ないから、よけいに醜く見えるのです。

日本はトタン屋根が多いのですよね..。さびてしまって、本当に醜いのまである。茅葺き屋根の上にのせてしまうのはトタン屋根ではないのかも知れないけれど、あれも美しいとは思えない...。

野地板を張らなければならないからトタン屋根は敬遠するという理由で、フランスにはトタン屋根が少ないのだとしたら、良いことだと思います。そういう理由があるのだとしたら、少ないことが納得できてしまう。

でも、フランスでも、トタン屋根の方が瓦よりはお金がかからないのではないかな?... いつか機会があったら聞いてみようっと。

でも、農家の人に質問するには微妙です。「あなたは安いから納屋をトタン屋根にしたのですか?」なんて、聞けないではないですか?! 「フランスにはトタン屋根がないけれど、この方がゴミが落ちてこなくて清潔で良いですよね?」なんて、白々しく切り出してみる?...


瓦屋根だけだったら、雨漏りしても仕方ないんだ

初めに大きく入れた写真で、左の方に星のようなものが3つあるのが気になりませんでしたか?

写真のシミではなくて、屋根の穴。空から光が入っているのです。

本来なら、瓦を交換しなければいけないのでしょうね。でも、この程度の穴だったら、屋根職人を呼ぶ費用は節約するのが普通だと思います。

写真アルバムで、「瓦」とキーワードを入れている写真を眺めていたら、18世紀からテラコッタの瓦やタイルを作っている工場を見学したときの写真が出てきました。



瓦を作っているところだから、屋根の修復はまめにやっているのだろうと思って眺めたのですが、やっぱり穴が1つ見えました!

考えてみれば、日本の屋根づくりの方が自然かもしれない。いきなり瓦を乗せたら、風雨で痛んで、どこかしらで瓦がかけたり、ずれたりしたところから雨漏りしますよ。

フランスは、日本ほどには雨が降らないので野地板は必要なかったのかな?...


でも、瓦をじかにのせた屋根の下に住んだのは昔の話しであって、最近のフランスでは、屋根裏部屋の天井で瓦むき出しにはしない家の方が多いと思います。

雨漏り対策というより、断熱効果をつけて光熱費を安くするために。

屋根が瓦だけだと、屋根裏部屋は締め切ったままにしておいても、部屋の方の暖房がとられてしまって不経済だからです。集中暖房が一般的ですから、屋根裏部屋が外と同じに寒かったらお金がかかってたまりません。

瓦の下に敷くシートのことを次回の日記で書きます。

続きへ: 現代のフランスで行われる屋根の下地づくり

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