| Login |
2012/10/24

シリーズ記事 【山小屋に滞在したサヴォワ地方の旅行記】 目次へ
その15 山の中のレストラン (4)


少し前の日記で、フランスのサヴォワ地方の旅行記を書いていた中で、山奥のレストランで出されて喜んだデザート(右の写真)のことを書きました。

フランスで「ミルティーユ(myrtille)」と呼ぶ果実をのせて焼いたタルト(Tarte aux myrtilles)です。

この日記には、レストランに行った前日、ミルティーユがたくさんあると聞いて、山に登った話しも付け加えていました。

フランスでミルティーユと呼ぶ果実を「ブルーベリー」として書いたこの記事に、albifronsさんがコメントを入れてくださいました。

「日本で言うところのブルーベリーは、アメリカ原産です。
ヨーロッパでのブルーベリーはおそらくビルベリーではないでしょうか?」


実は、書きながら、フランスで「ミルティーユ」と呼ぶ果実を「ブルーベリー」と呼んで良いのだろうかと気になってはいたのです。

私がアルプスの山で見た果樹は樹高が低いし、果実も小粒。フランスの八百屋さんで見かけるミルティーユとは違っているとも感じていました。

山で見たミルティーユがブルーベリーとは違う品種だとなると、私の疑問は解決♪

タルトの写真を入れて書いた日記のタイトルは「ブルーベリーのタルト」としていたのですが、次のように訂正しました:
野生のミルティーユ(ビルベリー) 2012/10/22


ビルベリーという名前を私は聞いたことがなかったので興味を持ち、少し調べてみたのでメモしておきます。いつものことながら、どうでも良いことも知りたくなってしまう私!...


ビルベリーとは?

私がモンブランを望む山の中で見た果樹は、ビルベリー(Bilberry)という品種であることは間違いがないようです。

ビルベリーは、ブルーベリーと同様に、ツツジ科スノキ属の植物。栽培用のブルーベリーより樹高も低くて、実も小粒。それは、以下の情報からも確認できました。
☆ Wikipedia: ビルベリー
☆ ブルーベリー研究室: ブルーベリーの種類

私は耳にしたことがなかったのですが、日本人にビルベリーと言って通じるのでしょうか?

常識がないと自覚している私なので、楽天市場で検索してみました:
ビルベリーを検索

サプリメントなど、食べ物でない商品がゾロ~っと出てきたので驚きました。

ビルベリーはブルーベリーよりも薬効効果がある、として日本では注目されているようです。

日本では、山に登ればビルベリーがあって、それをケーキにして食べる、などということがないから、果実として食べる側面は隠れているのも当然かもしれない...。


ミルティーユとは?

ブルーベリーと、それによく似たビルベリーが存在する、ということは分かりました。
だとしたら、疑問がわいてきます。

フランスで「ミルティーユ(myrtille)」と呼ぶ果実は、ブルーベリー(blueberry)と訳せば良いのか、ビルベリー(bilberry)と訳せば良いのか?

仏和辞典でmyrtilleをひくと、訳語は「ブルーベリー」となっています。

Bilberry(ビルベリー)をGoogle翻訳でフランス語に訳させると、myrtille(ミルティーユ)と出ました。でも、ちゃんとした辞書で調べなければ信じられないので、オックスフォード英仏辞典でひくと、やはりmyrtilleとしか出てこない!

ならば、逆に!
オックスフォード仏英辞典でmyrtilleをひくと、訳語にはbilberryとblueberryの両方が出ました。

英語が日本語にもなったブルーベリーと、ビルベリーの両方に対して、フランス語では「ミルティーユ」と呼ぶ、とみて良いようです。
 
フランスで言うところのミルティーユは、幾つもの種類があるようです:
☆ Tela Botanica: Myrtilleの検索結果

フランス語で、野生のミルティーユだと特定したいなら、「野生の」という形容詞をつけて「myrtille sauvage」というしかない。

そうなると、フランスではミルティーユと簡単に呼ぶ植物を、海の向こうにあるだけなイギリスでは、なぜブルーベリーとビルベリーに分類しているのだろう?... 食べた感じでは、何か違うかな、という程度で、そっくりの果実なのですから、単語を分けなくても良いのに...。

でも、そこまで調べていると際限がなくなってしまうので、これを追及するのは放棄。


フランスで最大の野生ミルティーユの産地はアルデッシュ県

フランスで、野生ミルティーユの収穫量が最も多いのはアルデッシュ県(Ardèche)なのだそう。 年間400トン!

正確にいうと、標高600メートル以上の地域(県の面積の3分の1を占める)が産地。 アルデッシュ県は、私が行ったサヴォア地方と同じローヌ・アルプ地方に入っていますが、もう少し内陸部にあります。

自然公園もあるので、収穫は他の地域よりも厳しい収穫規則が定められていました。それに、野生といっても、収穫量を上げる努力もしているそうです。灌木を切るほか、ヒースや、ジュネ(エニシダ属の植物)などを取り除く、など。

アルデッシュ野生ミルティーユのサイトによると、フランス人のミルティーユ消費量は大したことがないのだそうです。フランス人ひとり当たりの年間消費量は2グラムなのに対して、ドイツ人は年間500グラムを食べる!

確かに、ミルティーユはフランスではよく知られた果実だし、好きという人も多いのですが、生産地から離れたブルゴーニュなどでは、ジャム以外は、シーズンのときに栽培されたものを店で売っているのを見かける程度だと感じます。

ドイツ人がよく食べるのは、太陽の光が不足している国なので、目をよくするミルティーユを体が求めるせいかなと思ったのですが、これは私の勝手な憶測。

でも、体が求めるものを食べるのが最も健康に良い、つまり、食べたいと思うものを食べていれば良い、という主張が好きなのです。

ミルティーユは北欧の森でたくさん採れるのだそう。ドイツ以上に太陽の光が不足していそうな国々。自然は生物が共存できるようになっているのですよね。変に人間が自然に逆らった開発をして欲しくない...。


Vaccinium myrtillus

フランス語はブルーベリーもビルベリーもミルティーユと呼ぶわけですが、野生のミルティーユであることを示すには、学名で「Vaccinium myrtillus」として特定できるのが分かりました。専門家でなければ使わない単語だろうと思いますが。

ミルティーユ(myrtille)という単語も、Vaccinium myrtillusから作られた単語だそう。

Vaccinium myrtillusは、学名なので英語にも存在していて、一般的には、bilberryのほか、European blueberryとも呼ぶ、という記述がありました。

あれ、まあ! 英語ではブルーベリーとは区別してビルベリーだと言っていたのに、ヨーロッパ種ブルーベリーと呼ぶなんて、いい加減ではないですか?!  フランス語でも、ヨーロッパ種のミルティーユと呼んでいましたけど。

さて、Vaccinium myrtillusを日本語で何というのかを見たら、「セイヨウスノキ(西洋酸の木)」という単語が出てきました。セイヨウスノキは、一般にビルベリー、ハイデルベリー、ワートルベリーと呼ばれるのだそう。

そんなにコロコロと単語を変えられると、私の小さな頭は混乱してしまう!...
それでもめげずに、「スノキ」とは何だ? と調べる。

ツツジ科に、ブルーベリーやビルベリーが分類されるスノキ属(すのきぞく)というのがあって、スノキ属の学名はVacciniumなのでした。ここで、野生のミルティーユの学名「Vaccinium myrtillus」に戻ってきたので、なあ~んだ、となりました。

だいぶ分かってはきたのですが、私の問題は解決していません!


ミルティーユは、ブルーベリーなの? ビルベリーなの?

サヴォワ地方のレストランで食べたのは「ミルティーユのタルト」だった、と書いてしまえば簡単だったわけですが、ミルティーユが日本語になっているのかどうか分からない。

デザートを運んできてくれた人は「ミルティーユのタルトです」とだけ言っていたのですから、栽培されたブルーベリーだったのか、山に自生していたビルベリーだったのか、私は断言できないのです。

山の中の食材を使っているレストランなので、当然ながら、山でとったミルティーユ(つまり、ビルベリー)だとほぼ確信はしていました。

レストランが、はっきりと「野生ミルティーユのタルトです」と言って出した方が観光客は喜ぶと思うけれど、そういう気取ったことはしないレストランでした。

チーズも、AOCの折り紙つきルブルションの出来たての状態で出されたのですが、メニューには、ただ「カイエ」とだけ書いてありました。何のチーズかと質問したので教えてもらっただけ。聞かなかったら、そこらへんで作ったただのチーズだと思って食べてしまうところでした。


日本には、かなりフランス語が入っているので、「ミルティーユ」で通じるのかもしれない。

楽天市場で検索してみました:
ミルティーユを検索

検索にヒットしてくるものはあったのですが、日本にミルティーユという単語が定着しているようには見えませんでした。

フランスでつくられたタルトでも、「ブルーベリーのタルト」と呼んでいます。


私の勝手な結論

正確に知ろうと調べたらきりがないので、次のように結論することにしました。フランスのサイトで得た情報をまとめてみたものです。

Vaccinium myrtillus:  ビルベリー

フランス語のミルティーユ(Myrtille)は、Vaccinium myrtillusから来ている単語。
樹高が約30cm。
品種は450種類くらいあり、その一部が高山に自生している。

Vaccinium corymbosum:  ブルーベリー

北アメリカ原産。
樹高は約1.5m。
種類は450くらいある。
Vaccinium corymbosumのミルティーユは、Myrtille d'Amérique、Bleuet à corymbes、Corymbelle、Myrtille arbustive、Myrtille géante、Grande myrtilleなどと呼んで、区別できる。

始めのは「アメリカのミルティーユ」。最後の2つの呼称は「大きなミルティーユ」という、いい加減な呼び名! ミルティーユをBleuet(ブルエ)と呼ぶ地方もあるのは知らなかった。ブルエと聞いたら、私は野に咲く青い花を思い浮かべてしまうのですけど。

この北アメリカ原産のブルーベリーがヨーロッパ(ドイツ)に入ったのは1934年。フランスでは1980年代から本格的に栽培が始まり、現在では市販されているミルティーユの大半はこの品種である。


つまり、フランス語で「ミルティーユ」と呼ぶ果実は、ブルーベリーなのか、ビルベリーなのかは、説明されなければ特定できないことになります。ただし、野生のミルティーユはビルベリーで、店で買うものはブルーベリーの可能性が高いとは言えるのでしょう。

結局のところ、フランスで、野生だか栽培物だか分からないミルティーユのタルトを出されたときは、「ミルティーユのタルトを食べました」と言うしかないのではないのかな?...


あるいは、面倒なので、ビルベリーもブルーベリーと呼んでしまうか...。

楽天市場で商品名を眺めてみると、野生種ブルーベリーというのもかなりあります:
ブルーベリーを検索ビルベリーにはサプリメントのイメージが強いので、外国から輸入したビルベリーは「ブルーベリー」として売っているようにも見えました。野生種ブルーベリー、ワイルドブルーベリーなどというのがあります。

追記:
この点に関して、albifronsからの詳しいご報告をいただきました。始めに入っているコメントをご覧ください。



日本にある野生のブルーベリー・ファミリー

コメントで、日本にもブルーベリーの種類の木が自生していることを教えていただきました。

クロマメノキ(黒豆の木、学名:Vaccinium uliginosum)】

フランス語ではMyrtille des marais(沼のミルティーユ)。

別名は、Myrtille de loup(狼のミルティーユ)、orcette、airelle des marais、airelle bleue、embrune。

クロマメノキという名を私は聞いたことがありませんでした。

楽天市場で検索してみると、ある程度の数がヒット:
クロマメノキを検索

でも、苗木かサプリメントのようなものばかり。ビルベリーの扱いと似ていますね...。

フランスのmyrtille des maraisないしmyrtille de loupを使ったレシピーを探してみると、非常に少ない。

そのまま食べても余りおいしくないのかな?... あるいは、フランスでは区別せずに、ミルティーユとして料理に使っている可能性もある。


【ハスカップ(学名: Lonicera caerulea var.)】

これは私も聞いたことがある名前。

市場にもたくさん出ていました。
ハスカップを楽天市場で検索

ハスカップの実を見ると、少しブルーベリーに似ています。

でも、ブルーベリーはツツジ科スノキ属なのに、ハスカップはスイカズラ科スイカズラ属なのだそうです。

フランス語ではChèvrefeuille bleu(青スイカズラ)と呼んでいます。ミルティーユの文字は付いていません。その品種の中に、食用となる実がなる種類(ロシア原産)もあって栽培もされているのだそうですが、フランスには普及していないそうで、この植物のレシピも見つかりませんでした。

普通のスイカズラ(chèvrefeuille)はフランスでポピュラーな植物です。自然に生えているのも多いし、香りが良いので庭に植えたりもします。 この植物の実は有毒なのだそう。

ハスカップなら良いけれど(アイヌ語らしい)、「青いスイカズラ」と呼ばれると、食用にするのは怖い気がするのですけど...。

庭に咲いているスイカズラの写真を入れた過去の日記:
香りを放つスイカズラ 2009/06/01




内部リンク:
野生のミルティーユ(ビルベリー) 2012/10/22
クイズ: 200年近く前からあるブドウ畑は、何が違うのでしょうか? 2011/08/02 ブルーベリーの育て方に言及したコメント
ディジョンの町で見たもの 2011/08/02 買ったミルティーユ

情報リンク:
ブルーベリー の育て方&栽培 ブルーベリー ノート
☆ 果実ナビ: ブルーベリー Blueberry


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村



カテゴリー: 食材: 果実 | Comment (3) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
日本でも一般的には厳密にブルーベリーとビルベリーを区別していない様です。

文中の楽天アフィに出ているビルベリー~ワイルドブルーベリーという宣伝文句からも判ります。

ヨーロッパ原産=ビルベリー
アメリカ原産=ブルーベリー
と言うのが本来の区分になります。(日本では)

ワイルドブルーベリーというのは、ブルーベリーの中でもラビットアイ系という暖地適応種のうち、原種から選抜された品種を指す事が多いです。(不味い)
(写真はおそらくスワニー?)
もちろんこれはビルベリーではありませんが、コマーシャル的にビルベリーという言葉を使っています。
一般的には
ビルベリー=アントシアニンが多くて目に良いブルーベリー
程度の認識です。

2本以上の品種が・・・という話もありましたが、この「系」が異なると授粉しません。
先ほど書いた暖地適応のラビットアイと、寒冷地適応のハイブッシュがあります。(両者の掛け合わせもあります)
おそらくブルゴーニュであればハイブッシュだと思われますので、こちらを植える必要があります。

あとブルーベリーが目にいいというのは・・・・・

デマですので・・・
2012/10/25 | URL | albifrons  [ 編集 ]
Re:
v-22 albifronsさんへ

またまた詳しく、かつ明快に教えてくださってありがとうございます♪

ワイルドブルーベリーがビルベリーとは限らないとすると、ややっこしいですね。商売をする人たちは売れるように命名してしまうので混乱する...。それが狙いでしょうが!

>「系」が異なると授粉しません。
⇒ 気難しい植物なのですね。でも、植物は皆そういうものかもしれない...。

>デマですので・・・
⇒ そうじゃないかという気もしていました(笑)!
2012/10/25 | URL | Otium  [ 編集 ]
Re:
ご連絡どうもありがとうございます。myrtilleをブルーベリーと訳しても良いのだろうかと気になるのは私だけではないと知って嬉しく思いました。
2014/11/09 | URL | Otium  [ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する