| Login |
2012/11/02
シャンティイ市にある広大な森の中を散歩したとき、面白い標識があったので写真をとりました。



正式の道路標識ではないのですが、パリはこちら と、示しています。

でも、ここからパリまでは、50Kmくらい距離があるのです。

森の小道を散策している人が、歩いてパリまで行くことなんかないと思う。私が徒歩旅行をした経験から考えると、歩いて2日かかる道のりになるのですから。

細道なので、車が通るわけでもありません。

としたら、パリの方角が分かって、何になるの?…

森の中で迷った人のために、シャンティイ町の中心地はこちら、駅はこちら、シャンティイ城はこちら、と表示するのなら分かるのですけれど...。


京都に対して、プチ・パリというのがあっても良いのではないか?

以前から気になっていたことがあります。

日本には「小京都」と呼ばれる町がありますよね。歴史的に京都に匹敵する文化が栄えた町で、京都を小さくしたみたいな魅力的な町、というイメージ。

帰国したときには、地方に仕事で行くと、たいていその周辺で観光を楽しみます。

どこに行こうかと探すとき、私は昔の美しい姿が残っているところが好きなので、「小京都」をキーワードにして場所を探していました。「重要伝統的建造物群保存地区」というのもあると知ったので、この次からは、これをキーワードに探そうかとも思っています。

小京都の感覚からいくと、「プチ・パリ」というのがあっても良いと思われませんか?

でも、フランス人は、「プチ・パリ(Petit Paris)」という言い方をしません。

プチ・パリという名のテーマパークがパリにはあるのですが(Le Petit-Paris)、これはパリを小さくしたミニチュアパークなので、文字通りに小さいパリなだけ。

宿泊施設の名前として使われているのは、時々見ます。

Wikipediaによると、昔はプチ・パリという市町村名が存在はしていたそうです。でも、単なる地名なので意味がないですね。それに、その名前を使うのは止めてしまっている。


日本ではプチホテルという言葉がある

「プチホテル」という言葉が、最近の日本では使われています。

フランス語のプティと、英語のホテルの組み合わせ。フランス語風に「プティトテル(Petit hôtel)」と発音したらフランス語。

日本語のプチホテルは、小さなホテルというだけではなくて、ちょっとした魅力があり、快適性でも問題がない、お勧めホテルというイメージではないですか?

「ヨーロッパにはプチホテルというカテゴリーがある」と書いてあるケースもあるのですが、私はフランスでそういう呼び名の区別を見たことがありません。

小規模な個人経営ホテルというのなら、フランスにはLogisというホテル・チェーンのようなものがあります。

このNPOは、戦後に地方の家族経営ホテルが加盟するネットワークとして誕生したという背景があるので、地方ではよく看板を見ますが、都市にあるのは例外的存在です。日本人がパリのお勧めプチホテルを選ぶときには、ここに加盟しているホテルでは選んでいないだろうと思います。

ヨーロッパにあるプチホテルというのは、フランス以外の国には存在しているのかどうか、私には分かりません。フランス以外の国で「プチ」というフランス語を使っているのだろうか?...


日本では、「プチ・パリ」という表現も使われていた

プチホテルなんていうのがあるのだから、プチ・パリもあるのかも知れない。
そう思って検索してみました。

店の名前などには当然使われていますね。

さらに「
プチ・パリ」という表現を使った書籍を発見!

フランス人が書いているので、あれ~? っと思って紹介を読んでみたら、書いていたのは在日フランス人なのでした。

日本人が「プチ・パリ」と言われたら、パリの雰囲気があるところのことだろう、と想像しますよね?

この本では、神楽坂をプチ・パリと呼んでいるようです。

神楽坂がある飯田橋には、フランス人学校があるので、このあたりにはフランス人がたくさん住んでいます。さらに、東京日仏学院もあります。私が勤めていたフランス系企業も、このあたりにありました。だから、フランスの雰囲気が強い地域だ、と私も感じていました。

でも、フランスとは言わないで、パリを出してくるのが、日本人向けのタイトルだな...。

思い出せば、アルザスのストラスブールの旧市街は「Petite France(プティトゥ・フランス)」 と呼ばれています。ドイツ領になったこともある町だから、美しい地区を「小さなフランス」と呼びたかったのだろうか?...


◆ 「プチ・パリ」の呼びたくなるような町

フランスには、プチ・パリと呼びたくなるような古都が各地にあります。

例えば、ブルゴーニュ公国の都ディジョン。歴史的保存地区の面積の上からは、パリ市、ボルドー市に続いて、ディジョン市はフランス第3位の座にあります。

ディジョンの旧市街は本当に美しいのですが、凱旋門、半円の広場、オペラ座... と、パリを思わせるところまであります。

でも、ディジョンの凱旋門はパリのより古いし、パリを真似て作った都ではありません!



パリほどは広がってはおらず、歩いて回れるディジョンの旧市街は、まさにプチ・パリの雰囲気。

でも、ディジョンをプチ・パリとは絶対に! 呼ばない。
ディジョンっ子にそう言ったら、喜ぶはずはないと思います。

そもそも、ブルゴーニュ公国は、当時のフランス王国より勢力がある国だったのですから、プチ・パリなどと言ったら名誉棄損です!

フランスでは、小京都というような言葉で歴史ある町を探すわけにはいきません。

では、どうするか?

フランス文化省は「Villes et pays d'art et d'histoire(芸術と歴史の町と里)」という分類を作っています(1985年創設)。

選ばれている町のリストはこちら。2011年現在で166カ所(街が108、地域が58)。 もちろん、ディジョンも入っています。

ただし、何処かの町に行ったときは、旧市街(Vieille Ville)を探します。英語にしたらOld toown。歴史ある町なら、どこでも歴史的建造物がある地区を保存していると感じます。文化省の選択に入っていなくても、小さな区画でも、宝石のように美しいところがあります。

そこを散策していれば、昔にタイムスリップできる区域。ヨーロッパを旅行するときは、この言葉を現地語にすれば良いだけ。日本では、京都でさえ保存されていないのは残念なことです...。


ヴェルサイユ宮殿は例えに使われる

プチ・パリという表現が小京都のような意味では使われないのですが、同じような発想もあるのですから、余計に不思議になります。

まず、ヴェルサイユ宮殿(Château de Versailles)。

宮殿が時代によって拡張した様子を見せる3Dビデオ:


フランス各地に、「○○地方のヴェルサイユ」というあだ名を付けた城があります。

ヴェルサイユ宮殿みたいに立派な城だ、という意味。日本語でヴェルサイユは宮殿ですが、フランス語ではシャトーなので、みな同格にできるのです。

ヴェルサイユと比べれば豪華さはずっと落ちるので、中には「これがヴェルサイユ?!」と笑ってしまいたくなる城もあります。でも、この地方では最も豪華な城だ! と、観光客を呼びこむには効果的な表現なのです。
 
つまり、「ヴェルサイユみたい」と言えば魅力的になるのに、「パリみたい」ではだめなのだ...。


ニースは、パリより良いイメージがあるらしい

もうひとつ目につくのは、プチ・ニース(Petit Nice)という表現です。

ニースを小さくしたような町という意味ではなくて、ニースを思わせるような場所、という感じで使っているように感じます。

ホテルなど、宿泊施設の名前になるのは、プチ・パリと同じ。

道の名前にプチ・ニースというのがあるのを見かけます。

どこかに「プチ・パリ通り」というのもあるのではないかと思って調べてみたら、メス市(Metz)にありました。

期せずして、先日の日記で書いた町。ドイツに占領されていた町なので、何か謂われがあるのかな?…

Googleストリートで見ても、どうということのない通り。通りの歴史を説明しているブログが見つかりました。 Petit Parisという名のホテルがあった、ということから通りの名前になったのだそう。やはり、「プチ」を付けるのは宿泊施設が好む名前なのかな?…

フランス人に聞いてみたら、「プチ・ニース」と聞くと、南の明るい太陽と地中海、ヴァカンス気分など、良いイメージが浮かぶ、と答えられました。

他にも南仏には町があるのだけれど、ニースの当たりはミストラルがないからマイナスイメージはないのかもしれない。そういう意味からいったら、老後生活をするには最高というイタリアに近いマントンの町を引き合いに出しても良いと思うけれど、ニースほどには有名ではないのでしょうね。

「プチ・パリ」と言われたら、ただ気取っているだけなのかな?…


こう思うのだけれど…

京都に似ているなら、美しい町なのだろうと想像します。小京都、と呼ばれれば光栄。

でも、フランスではパリに似ている町というのは、褒め言葉にはならないのではないらしい。

なぜ「プチ・パリ」という表現がフランスには存在しないのか?


勝手に私が出した結論です:

● フランスの国土には複数の国が存在していた歴史があるので、パリがフランス文化を代表しているわけではない、と地方の人は考える。

● 地方の人たちは郷土に対して強い誇りを持っているので、パリを小さくしたみたいな町などと呼ばれたくない。

● フランス人には「パリは住みにくい大都会」というイメージが強いので、パリに似ていると言っても良いイメージにはならない。



追記 (2013年9月)】

ベルエポックの時代にはパリのイメージは良かったので、本当に「プチ・パリ」と呼ばれるところがフランスには存在しないのか気になっていました。

すると、ボルドー市(Bordeaux)が「プチ・パリ」と呼ばれていたことを発見しました。でも、ボルドーはフランスで9番目に人口の多い巨大都市なので、プチパリと呼ぶなら、せいぜいディジョン市のようなパリをコンパクトにしたような美しい町と思っていたのですけれど。

Wikipediaのフランス語ページには、都市に対して使う比喩的表現のリストがありました。比喩的表現というのは、例えば、ディジョン市は「ブルゴーニュ公たちの都」とか「100の鐘楼の町(昔は教会が100くらいあったから)」というような表現です。

☆ Wikipédia: Liste de périphrases désignant des villes ⇒ Villes de France

このリストには、ボルドーがプチ・パリと呼ばれるというのは入っていないのですが、ボルドーの観光に関することを書いたフランス語のページでは出てきます。BordeauxとPetit Parisをキーワードにして検索すると、幾つもでてきます。

こういうことに詳しいフランス人に聞いたら、ボルドーをプチパリという言い方は聞いたことがないと言われました。地元の人ではないので知らないだけかもしれないのですが、ここでまた気になって調べてみました。

ルイ15世の時代、Marquis de Tourny(トゥルニー侯爵)が地方長官として派遣されたボルドーに到着したのが1743年。王は都市開発の施策として、アキテーヌ地方の都ボルドーをプチ・パリとして開発することをトゥルニー侯爵に一任した、という記述が見つかりました。侯爵はこの任務に情熱を傾け、18世紀の都市計画の中では最大級のレベルになった大工事をしたのだそう。このあたりで「プチ・パリ」という表現があるのではないでしょうか?

ボルドー市は、現在の歴史的保存地区の広さではパリに次いで広い都市となっています。第3位は、上に書いたブルゴーニュのディジョン市。

ボルドーに住む人たちが「プチパリ」と呼ばれて喜んでいるのかどうかは調べられませんでした。

なお、Wikipediaで都市を別の言葉で表現するリストを見つけたので眺めてみたら、外国の国々ではパリをあだ名にするのが多いのが分かりました(6都市あります)。どこどこのパリとか、プチパリとか。

でも、圧倒的に多いのは(いただくイメージとして人気があることだと思いますが)、ヴェネチアでした。 特に、フランスでの人気はすごい。ここには大都市しかリストアップされていないので、小さな町も含めたら、もっと多いはずです。

内部リンク
★ 目次: なぜパリっ子は嫌われるのか? / 2010年
★ 目次: フランスは住みやすい国か? パリは花の都か? / 2005年
総目次: テーマおよび連続記事ピックアップ » 都市と農村
★ 旅行記目次: コート・ダジュール 2012年冬 

情報リンク:
小京都
小京都.com - 日本各地の小京都の観光情報・お土産・お取り寄せの紹介
小京都と京都ゆかりのまち
重要伝統的建造物群保存地区
☆ Wikipedia : 重要伝統的建造物群保存地区
重要伝統的建造物群保存地区マップ
文化庁 : 伝統的建造物群保存地区
日本全国の人気の伝統的町並み・家並みランキング
ホテルといっても種類はいろいろ
☆ オフィシャルサイト: Villes et Pays d'art et d'histoire
☆ Wikipédia: Petit-Paris
Rue du Petit Paris
Versailles 3d
☆ Wikipédia: Liste des communes de France les plus peuplées
Lettre d'information de France Monthly


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村


カテゴリー: 日仏の比較 | Comment (0) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する