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2013/01/30

シリーズ記事目次【2013年1月: 長野旅行記】 目次へ
その6


日本で古民家の修復をしていらっしゃる建築家のブログ「さいふうさいブログ」を読むようになってから、日本の古民家の修復に興味を持つようになりました。

細部にまで気をつかって美しい状態に直していくのを見るのは、とても興味深いです。こんな風になっているのだ... と感心すること、しばしば。

ところが、修復しなければならない状態の古民家というのを、私は日本で見たことがありませんでした。フランスでは、日常茶飯事のように修復現場を見学しているのに...。

でも、ついに、日本でも機会到来!♪


日本の伝統的な家屋は素敵!

先月、長野に行ったとき、古い家を買って引っ越してくるというご夫婦が家を見せてくださいました。

家に入ったとたんに、わぁ~!

フランスで、同じような場面がありました。
古民家に住むことになった友人の家に行ったとき、新築の家に住む友達が 「うわぁ、本当の家だ~!」と、うらやましそうに言ったのです。私も、それと同じ気持ち。

家に入って、まず迎えられたのは、土を叩いてつくった土間でした。



囲炉裏もあって、しかも、吊り下げる道具まで残してくれています。

吊り下げる道具、なんと言いましたっけ? ほら、使ったことがないから、単語を覚えていない。

フランスにも暖炉に下げるのがあって、それはcrémaillèreと言います。Wikipediaに載っているので、そこから日本語をたどろうとしたら、ずばり欲しかった単語が出ていない。

それで辞書をひく。「自在鉤(じざいかぎ)」でしたね。

ついでに、土をたたいて作った土間の方を何というのかも調べる。
「たたき土間」で良いみたいですね。でも、「たたき」は「三和土」と書くのだそう。

土間は、ただ土を叩いて固めれば良いというものではなくて、砂や藁も土に入れて作るようです。豆腐を作るときの苦汁(にがり)を入れるともある。

「三和土」というのは当て字で、3種類の土から作るからだそう。

そういわれれば、あの土のきめ細かさは、ただの地面とは違うとは思っていたのです。

作るのは大変でしょうが、コンクリートなどと違って風情があります。今ではなかなかできない、貴重な床ですね。フランスでいったら、大きな石を敷いた床に相当するかな。

教会によくある石の床なのですが、民家でも昔は使っていたのです。
そういう石の床がある家での工事現場 ↓



右の写真は、16世紀に建てられた廃屋を買ったフランスの友人の家で、右の建物が母屋です。

母屋の1階部分が全て石の床だったのですが、床が歪んでいたので石を全部はずして土台を平らにしたと言っていました。

上に入れた写真の家は四角い石の床が多いので良いのですが、この家の石床は畳の半分くらいの大きさがある長方形の石ばかり。

石の厚みは10センチはあるでしょうから、そんな重い石を外すのなんて大変だったろうと想像します。経費節約のために、大工さんに頼んだのでははく、自分でしたというのですから。

長野でみた美しい土間も大丈夫だろうかと心配になりました。古民家が好きで買った人たちなので、土間も残したいと思うはずだろうけれど、家が歪んでいるので傾きを直すときには、土間をそのまま残すように工事してくれるといいな...。


フランス人は日曜大工が好き

フランスでは、修復しないと住めないような家を買うよりは、新築を購入する方が安上がりだと言われています。

そのまま住めるような古民家もありますが、良い物件は持ち主の関係者の間で取引されてしまうので市場に出にくい。売っていると、やたらに高い場合が多い。

それで、気が遠くなるほどの工事が必要な家を買って修復している人たちがたくさんいます。

業者に修復してもらえば比較的早く住めるようになりますが、それではお金がかかりすぎるので自分でできることはやっている人たちが大勢います。

そういうケースだと、10年くらいかかったら住めるようになるかな... という感じ。住んでいても、古い家だと、ねんじゅう、何かしら工事が必要になる。

フランス人って、意外に辛抱強く、かつ働き者だな、と思わせる側面です。

ヨーロッパ諸国の中では、フランスは最も日曜大工にいそしむ国なのだそうです。

同じように日曜大工が盛んなイギリスでは家の価値を高めるためにやっているのに対して、フランス人は好きだからやってしまっている傾向にあるのだそう。

アンケート調査結果を拾ってみます:
  • フランス人の82%は日常大工をしている。
  • フランス人の49%は、自分の日曜大工の腕前はプロ並みだと思っている。
  • フランス人の61%は、楽しみのために日曜大工をしている(その91%は自分の腕前が確かだと思っている)。
  • フランの家庭では、年に平均7回、日曜大工の店に行っている 。
私の観察でも、そんな感じだろうなと思っています。なにしろ、電気ドリルなんて、持家の家庭なら誰でも持っているように見えますから。


古民家を修復するには、どのくらい費用がかかるのだろう?

ずっと気になっていました。日本の場合、廃屋になったような家を修復するには幾らくらいお金がかかるのだろうか?

今回は良い機会なので、古民家を買った人に聞いてみました。「それが結構かかるのですよ」という口ぶりで、500万円くらいを予算に組んでいる、と話してくれました。

そのくらいでできてしまうの? というのが私の感想。

だって、床が傾いているので、それを真っ直ぐにする工事が必要なのだそうですから。でも、屋根の状態は良いので、その費用はかからないはず。

フランスの古民家を修復する費用は膨大なのです。といって、統計を持っているわけではないので、情報を少し探してみました。

修復する家の状態にもよるけれど、10,000から20,000ユーロと言っているサイトがありました。ただし、屋根を直すならその費用は別にかかるとのこと。
Combien coûte la rénovation d'une maison ancienne ?

日本円にすると、幾ら? 為替は変動しますが、1ユーロ=130円が物価の感覚だと思う。それで計算してみると、屋根は別にして、130万~260万円。そんなものでは修復できないはずだ、と断言したくなるけどな...。

窓枠が痛んでいるので修復することを検討した友人の場合を例に出します。

オーク材のにすると、窓1つに対して15万円。小さな家だけれど、取り替えた方が良い窓は10あるので、150万円。そんなにお金はないので、窓はそのままにし、隙間風が入るドア2つだけを修復したと話していました。

でも、フランスでは、非常にお金がかかるのは屋根を葺き替えることだと聞きます。上に写真を入れた16世紀に建てられた友人の家は、買値は250万円だったのですが、この小さな家の屋根を新しくするために400万円出費したと言っていました。

フランスには民宿連盟ジット・ド・フランス(Gîtes de France)というのがあるのですが、そこでは加盟している民宿がかけた修復費用を発表しています。

それを発表しているのは、この民宿連盟が終戦直後に創設したときから掲げている活動目的の1つが、フランス国内の古民家の修復保存に貢献する、というものだからです。

家ごと貸すタイプの民宿では、平均58,400ユーロ (約760万円)。

1軒あたり5部屋までに制限されているB&B民宿では、平均42,000ユーロ (550万円)。

そのくらいはかけないと、フランスの家は修復できないと感じます。業者に頼むのは電気と配管工事くらいで、あとは自分で工事をしてしまう人も多いから、このくらいで済んでいるとも思う。

いずれにしても、古民家の修復というのは、家の状態、どう修復するか、自分が汗まみれになってやるか否かによるので、一概に幾らくらいかかるとは言えないのだろうな。

私が感じている古民家の修復費用は、屋根もふき直す必要がある廃屋を買ったら、小さな家でも1,000万円以下で収まることはありえない、大きな家なら億単位、というところです。


古民家って、どのくらい古い家のこと?

古民家って、いつの時代より古い建物を指すのだろう?

Wikipediaの日本語ページには「古民家」という項目があって、「通常は戦前以前のもの、特に大正以前のものをさす場合が多い」と書いてありました。

フランスでも古民家に相当するような言葉はあるのですが、こちらの方は定義らしきものを見つけ出すことができませんでした。

統計などで使うなら、戦前かな? 不動産屋とか住んでいる人が「古民家です」と価値をつけるために言うとしたら、20世紀になる前の建物でしょうね。つまり、石を積み上げて家を建てていた時代の家屋。

でも、もっと家屋に価値があるということを強調するなら、フランス革命前に建てられたというのが基準ではないかな?...

その名もずばり、「VMF(Vieilles Maisons Françaises)」という古民家保存を目的とするNPOがあるのですが、ここに入っている古民家は、ほとんど国宝級の立派な家ばかりです。


意外に安い日本の古民家

上に書いた16世紀の古民家の売値は250万円。もう10数年前のことで、フランスの不動産価格がつりあがる前のことでした。でも、友人仲間では、修復費用を考えたら高すぎると言っていました。

なにしろ、建物だけある家。内装は全面的にする必要があるし、電気も水道も下水処理施設も、全部自分でしなければならない。今のフランスではセントラルヒーティングにしないのは考えなれないので、その工事も不可欠です。

でも、その家が気に入って買ってしまったらしい。

日本の田舎にある古民家の値段というのは考えてみたこともなかったのですが、この際、興味を持って調べてみたら、意外に安い物件があるので驚きました。

日本の場合、古い家は取り壊すので、そうしない分だけ安いのだろうという気もしました。

ともかく安いのといったら、こんなのがありました。

田舎暮らしと別荘ライフ・物件検索

見せていただいたのが長野市だったので、それを眺めてみました。気になったのは、「築年不詳」という文字ばかりなこと。建てた時期が全く分からないって、変ではないですか?...  江戸時代などというのは、まずありえないから、それでも良いのかもしれないけれど。

なかなか良さそうという古民家が、320万円というお手軽価格で長野市内の外れにありました。本当の古民家のようですよ。
眺望の良い土地に建つ古民家

フランス人の感覚で「古民家」と言って自慢できる家のレベルを探してみると、そちらもありました。
高遠町の古民家

明治24年建築とあります。惚れ惚れする日本家屋ですが、5,300万円。やっぱりね...。

家を買う計画も、安い家を買うお金もないので、検索はこのくらいにします。


【追記】
この日記を書きながら思い出したことを書きました:
フランス人の、異常なまでの古民家修復熱 2013/02/18


ブログ内リンク:
★ 目次: フランス人の古民家を修復する情熱

外部リンク:
さいふうさいブログ
日本民家再生協会

【たたき土間について】
たたき土間
三和土
☆ 語源由来辞典: 三和土(たたき)


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コメント
この記事へのコメント
こんにちは♪
Otiumさん、こんにちは♪

最近、Otiumさんのブログから私のブログへのアクセスが多いなーと思ったら、ご紹介下さっていてびっくりしました。でも嬉しいです。ありがとうございます♪

今回もとても興味深い記事で、コメントしたいこと山程あります!(けども、まとまらない~)

まず、冒頭にOtiumさんがご指摘するように

>ところが、修復しなければならない状態の古民家というのを、私は日本で見たことがありませんでした。フランスでは、日常茶飯事のように修復現場を見学しているのに...。
 
とある通り、


日本で古民家と呼ばれるような建物は、もうあまり残っていないのが現実です。
失われてしまっているのです。
  
だから建築史系の方々が保存を訴えてきましたし、更に、民家の再生という道筋を建築家達が開いてきました。

どのくらいから「古民家」と呼ばれるかといいますと、
伝統構法で建てられていた時代の住居を私は古民家(或いは民家)と呼んでいます。 
ではいつまでが伝統構法なのかというと、昭和25年「建築基準法」が出来たのですが、この法律を境目にして、徐々に伝統構法で家は建てられなくなりました。


それから古民家の改修費!気になるところだと思いますが、結果から申し上げますと、Otiumさんの仰る通り、

>そのくらいでできてしまうの? 
 
です。


裏を返せば、その位の費用(数百万)で、満足いく改修が出来るのなら
古民家に住んでいた人は手離さずに住み続けるでしょうし、
今のようなハウスメーカーだらけの景色にはならなかったはずです。

古民家を改修し住み続けているお宅は、数百万のレベルではない費用を「代ごと」に投じていて(屋敷なので付属屋の改修費も含む)、それでも家にストレスを感じているというのが現状です。
そこを解消してあげたいというところで私は設計をやっているのですけども・・・。

一方、古民家を新たに取得して古民家生活をされている方も居ますが、周りからは「趣味人」と冷やかに見られます。

(私も海野宿に越してきた時、ご近所さんの中には 私達のことを金満家などと仰る方もおりました。ということは改修費が掛かること、ご近所の皆さん、ずっと古民家に住んでいるので分かっているのです。)

でも、古民家だから安くつくわけでも、高くつくわけでもなく、
住まいに何を求めるかで決まるような気がしています。
あー 難しい!(やっぱり、まとまらない 泣)

長くなってゴメンナサイ!とりあえず、今日はここまでにします。

Otiumさん、いつも本当に面白くていい記事を書かれますね~。私も見習いたいです!


2013/02/15 | URL | kaori  [ 編集 ]
Re: こんにちは♪
Kaoriさんのブログに勝手にリンクを入れて、またまたお聞きしたかったことを書いてしまいました。コメントを入れてくださって、どうもありがとうございます♪!

日本でやっと修復前の古民家を見学できたと喜んだことを書こうとしたら、書きたいことが余りにもたくさんあって、ブログがまとまらないでいました。長野旅行の話しなので先月の日付を入れたのですが、とりとめもなくなって放置していたブランクは2週間。書きたかったことは、また後にすることにしてまとめました。

>昭和25年「建築基準法」が出来たのですが、この法律を境目にして、徐々に伝統構法で家は建てられなくなりました。
⇒ 日本には昭和25年というボーダーラインがあると教えてくださって感謝です。フランスで伝統的な建物ができなくなった時点を正確に突き止められないでいるのですが、そういうのがフランスにもあるのかも知れない。

>古民家を新たに取得して古民家生活をされている方も居ますが、周りからは「趣味人」と冷やかに見られます。
⇒ 日本の古民家は今のうちに保存しなかったら取り返しがつかないのに… と思ってきたのですが、最近の日本では古民家の再生が話題になってきたので嬉しくなっていました。でも、趣味人と言われますか…。まだ古民家保存の機運が高まっていない証拠なのでしょうね。

「そのくらいでできてしまうの?」で収まるのですか…。

>その位の費用(数百万)で、満足いく改修が出来るのなら 古民家に住んでいた人は手離さずに住み続けるでしょうし、今のようなハウスメーカーだらけの景色にはならなかったはずです。
⇒ そうかな…。フランス人たちの異常なまでの古民家保存熱を見ながら、日本人は新しい家が好きなのだろうと思っていました。周囲とそぐわない突拍子もない家も建ててしまうし…。でも、古い家に愛着を持つ人たちも大勢いるはずで、そういう人たちの家を存続させてあげるところに、Kaoriさんのお仕事の意義があるのでしょうね。

>古民家だから安くつくわけでも、高くつくわけでもなく、住まいに何を求めるかで決まるような気がしています。
⇒ それに尽きるでしょうね。住まいに対する感覚が、日本とフランスではだいぶ異なるように感じています。歴史をへた家にいると気持ちが落ち着くものだ、というのをフランスで知りました。ヨーロッパの古い建築物を保存しようとする熱意も、日本にいたときには想像もしていなかったことで、古い建築物に強い興味を覚えて見学するようになりました。

Kaoriさんが、小さなところまで古いものをを残そうと工夫していらっしゃるところを見て、一つ一つに感激しています。フランスでは、国宝級の家でないと、そんなことにまで気を遣ってもらえないだろうな…。そんな建築家さんに修復してもらえる人たちって、本当に幸せだな… と、羨ましく拝見しています。
2013/02/15 | URL | Otium  [ 編集 ]
ありがとうございます!
Otiumさん、

>Kaoriさんが、小さなところまで古いものをを残そうと工夫していらっしゃるところを見て、一つ一つに感激しています。フランスでは、国宝級の家でないと、そんなことにまで気を遣ってもらえないだろうな…。

とても嬉しいコメントです!ありがとうございます!

実は、Otiumさんが指摘して下さる「そこ」なんです。
そこって、どこってことですが、
国宝級、文化財級、そういう誰でも凄いと思わせる由緒ある建物なら、誰かがなんとかしてくれます。保存活動をされる方や、制度面からでも。 そういうのはそういう方々へ任せて、

では、そうではない古民家をどうするか、というところで、私のような個人でも出来ることがあるかな、という想いで頑張ってます。(隙間産業みたいですが)

それと、もう一つ!

>日本人は新しい家が好きなのだろうと思っていました。

それも大いにあります!新しいもの好きだったり。

あと、伊勢神宮などが20年ごとに建て替える式年遷宮という考え方も、深いところで何かあるかもしれません。

日本の歴史的建物はそもそも恒久的な発想で建てられていないですしね。
(別の意味で、現代建築は短命で見るに堪えませんが・・・)

なんだかまとまらないコメントで本当にゴメンナサイ!

私も一度は海外へ行けば、もっと日本のことが見えるのかもしれないな、と思いながら、Otiumさんの鋭い観察を大いに参考にさせてもらってます!



2013/02/18 | URL | kaori  [ 編集 ]
Re: ありがとうございます!
v-22 kaoriさんへ

>誰でも凄いと思わせる由緒ある建物なら、誰かがなんとかしてくれます。
⇒ そうですね...。思えば、私が見て喜ぶのは、フランス人たちが「小さな宝石」と呼ぶような、有名なわけではないけれど美しい建物や風景のような気がします。その方が魅了があるように感じて...。

>伊勢神宮などが20年ごとに建て替える式年遷宮という考え方
⇒ ここのところ、古い建物の保存ということを考えながら、これを思い出していました。日本人の感覚には何かあるのでしょうね。キリスト教的な考え方には人間は自然を制するというのがあるし、日本には天災が多いので無に帰することが頻繁にあるし...。

>日本の歴史的建物はそもそも恒久的な発想で建てられていないですしね。
⇒ 建物だけではなくて、家具も、フランスでは代々使えるような頑丈なものを持つ、というのもフランスで感じることです。日本も、今よりはもっと長持ちするものを作っていたと感じて、それが戦後は薄れたという気もします。

>外へ行けば、もっと日本のことが見えるのかもしれないな
⇒ 外国旅行するときも、日本を違う目で見れるようになることが醍醐味だと思っています。そして、私は日本のことを何にも知らない... と反省している私です。最近は、日本の地方に行って日本を再発見することの方が、外国旅行したときより感激するようになりました。
2013/02/22 | URL | Otium  [ 編集 ]
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