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2013/02/18
先日の日記「廃屋になっていた日本の古民家を見学できた♪ 」を書きながら、フランスで見た古民家修復を色々と思い出しました。

フランス人の家を初めて訪問すると、たいてい家の中を案内してくれます。古い家を修復したケースが多いので、どんなふうに修復工事をしたかという話しもよく聞きます。

快適で美しい家にするために修復するのはごく自然で、その気持ちは共感できます。でも、そんなに努力して修復する価値があったの? と思うようなケースに出合うと驚きます。

大きなスペースを必要としているわけでもないのに修復している人たち...。どうして、そこまでするの? と思ってしまったときの1例を挙げてみます。


瓦礫になっていた納屋を修復

郷土史研究会でヴィジットをしたとき、最後に訪問した家がありました。近くまで来るのだから、いらっしゃいな、と声をかけられたのだそう。

郷土資産保存振興のために県が主催しているコンクールで優勝した家でした。

その賞状です。個人の部で第3位。



左に写っているのが修復工事を開始した当時の写真で、2003年とあります。
右は、工事が終了したときの撮影で、2006年。

ほとんど何もなくなっていた左側の部分は納屋だったので、それを昔の姿に戻していたのでした。修復というより、ほとんど再建なので、コンクールで1位にはなれなかったようです。

工事期間は3年ですか。フランスの感覚からいうと、ずいぶん早くできたのだな、と感じます。なにしろ、フランスの田舎では民家の工事の仕事はたくさんあるので、大工さんが不足しているのです。

いちおう仕事を受けてしまって、あちこちを並行してやっていくらしい。工事が始まったと思うと消えてしまって、いつまでも工事は終わらないのが普通のパターンなのです。 田舎には仕事がないとぼやくけれど、仕事を与えてもやってくれないじゃないか! と、みんなボヤいています。

大工さんは、当然ながら工事費の高い仕事を優先します。だから、3年で完成させてしまったこのお家では、かなり工事費を高く出したのだろうな、と想像しました。

家のオーナーは、見事に修復できた納屋に大満足の様子でした。だから、古い建物を見学するのを目的としている私たち郷土史研究会のメンバーに見せたかったのでしょう。始めから予定にはしていなかったので、夕方遅くなってからの見学になりました。


こんなになってしまっていても、修復したい?

上に入れた写真でわかるように、左側の納屋の部分は土台が残っていた程度でした。

古民家を修復する人たちは、たいてい工事の進行状況を記念に写真にしておくのですが、ここでも立派なファイルができていました。

修復前の納屋は、こんな状態だったのだそうです。



屋根がなくなって壁が4面あるだけの家を修復した例は、それまでにあちこちで見ていました。でも、これほどになっていたら、いくら建築物保存に熱心なフランス人たちでも、普通は諦めるのではないでしょうか?

幸いにも、石が取り除かれていなかったので、それを積み上げて建物の形に戻すことができたそうです。それでも足りなかったのではないかと想像しますが、どこかで取り壊した建物の石を入手したのでしょう。そういう石は買うことができますから。

修復した部分は、昔は農家が納屋として使っていた部分です。干し草や家畜を入れていたはず。

見事にできあがっていました。母屋より納屋の方が大きいのでは?



屋根瓦も、ブルゴーニュの伝統的な材質のものを使っているので美しい。模様が見えるのは、古民家の廃材を入手した瓦と、購入したものを使っているからだと思います。


どうして納屋を修復したの?...

この家は、近くの大都市に住んでいた女性が買ったものでした。

中央にある塔(階段のはず)から右側が居住スペース。少なくとも200年はたっていそうな家ですから、家の中を美しくする工事はいくらでもあったはず。でも、まず、瓦礫になっていた納屋の修復から着手したというのが驚き...。

瓦礫の中には、昔の農家の納屋らしい部分も残っていたので、それをはめ込んで、出来る限り昔の納屋の内部を再現したそうです。



納屋の内部です。この小さな窓枠の石が幸いにも瓦礫の中に入っていたのだ、と喜んでいました。

この家に住んでいるのは、彼女と、もしかして伴侶の方もいらっしゃれば2人のはず。つまり、納屋の部分は、ガレージと物置部屋のスペースがあれば十分なはずですから、この4分の1でも足りたはずです。

こんなに大きな納屋、何に使うのだろう?
ご本人に聞いてしまいました。

すると、使用用途は何も考えていない、と笑って返事されました。家を買ったときには、崩れた納屋があったので元の姿を取り戻したい、という思いだけだったようです。

何かに使うことを考えたとしても、使い道が見つかるとも思えません。窓がないから、誰か来たときに滞在させるスペースにはならない。レストランにするわけにもいかない。

使い道のない大きな建物を修復する人の気持ちは理解に苦しみます。石を1つ1つ積み上げて建物にするのには、相当な費用もかかったはずですから...。しかも、納屋ですから、再現しても、惚れ惚れするような美しい建物にはならない...。

でも、フランスには「古い石のファン」というような呼び名があります。彼女も、そういう人なのでしょうね。崩れた石の建物を見ると、胸が痛んでしまう...。


どうして、こちらの建物の修復を優先しなかったの?

ところで、県のコンクールでは、通りかかりの人が見える建物、というのがエントリーの条件になっているのだそうです。ここも、あたりの景色を美しくするのに貢献している家屋でした。



修復した納屋の左側に、もう1つ建物があります。こちらも、そのうち修復したいと思っているのだそう。

私が彼女の立場だったら、この離れの方から先に修復しますけれど...。中世の建物だと一目で分かる、立派な建築物だったのです。



2階部分の窓ですが、壁の厚みを利用して窓の両側に石のベンチができています。この窓際の席が、私は大好き。薄暗い部屋でも、ここに座れば本も読めるというイスです。修復したら、美しい部屋になりますよ...。

文献を調べたところ、昔は領土の境界線を見守る目的を持っていた建物らしいとのこと。2階の窓からは、街道が交差するのが見えたはずでした。ここで通行税でもとっていたようです。

この建物は、本当に修復する価値があると思います。歴史的にも調べたらおもしろいだろうし...。

それに、窓も、今では貴重なゴシック様式です!



こういう家だと、貸別荘型の民宿にすれば、県から補助金が出るのだけどな...。

援助してもらったら、10年間は民宿としてツーリストに提供する義務はありますが、修復費の30%が補助金として支払われるので良いではないですか? 支給額の上限はあるので、修復費がかかりすぎたら大した助けにはならないだろうけれど、古民家保存という貢献をするのだから何かしらもらっても当然だと思う。

でも、彼女が修復したのは納屋の方...。

何かしら補助金を得たのではないかと思って聞いてみたら、石垣の部分だけでした。県の福祉事業にある社会復帰支援プログラムで、社会奉仕をする人たちが来てくれたのだそうです。でも、その人たちに石垣を作らせていたわけではなくて、彼女も手伝ったのだ、と強調していました。


フランスの修復熱って、理解できない面がある...。何の使い道もない建物を修復した彼女の例は、例外的とは言えないのです。

壁だけ残っているような大きな城や修道院のような建物の持ち主が、財産を投げうって修復しているのも見てきました。財力のない人の場合は、いつまでたっても工事は進まない...。

歴史的に特別に価値がある建物を修復するなら理解できるのです。でも、いくら価値があるといっても、壁だけになってしまったようなのを修復しても、本当の昔の姿にはならないのだし... と思って眺めてしまう...。

フランス人は、なんで、あんなに古い建物を修復維持したがるのだろう?...

このブログでは度々書いているテーマなので、ひょっとして、いつも同じことを書いているのではないかと思って、以前に書いた記事をリストアップしてみました。

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★ 目次: フランス人の古民家を修復する情熱


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