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2013/03/06
前回の日記「パリで開かれている美術展: ゴッホと広重の関係」で書いたパリ絵画館(Pinacothèque de Paris)の展示会に行ってきました。

こういう特別展というのは展示数が少なくてがっかりすることもあるのですが、今回のはとても満足できるものでした。


ピナコテーク2: 「ファン・ゴッホ ― 日本の夢」展

ゴッホ(Vincent van Gogh / 1853~1890年)の後期の作品を中心に分析して、構図、モチーフ、表現方法などから歌川広重(1797~1858年)から受けた影響を探るという、興味深いコンセプト。



ゴッホには浮世絵を模写した作品もありますが、何も浮世絵の影響がなさそうに見える絵画を取り上げているのが面白かったです。

こじつけではないかな... と思ってしまうものもありました。でも、注釈として書かれている弟テオとの書簡の文章を読むと印象が変わってきます。ゴッホがそれだけ日本や浮世絵に思い入れがあったのだと知り、素人には見えないところに影響があっても不思議はないと思えてくる。

  
ゴッホの手紙 テオドル宛 (岩波文庫 青 553-2)

オランダのクレラー・ミュラー美術館 (Kröller Müller Museum) の所蔵品が多く展示されていました。知らなかったゴッホの作品の数々と出会えたのも良かった。


ピナコテーク1: 「広重 ― 旅の芸術」展

ピナコテーク2で展示されていたゴッホ展では、作品の横に、それに影響を与えたと分析された広重の作品を写真で見せていました。

写真だけでは申し訳ないから、同時開催のピナコテーク1で広重の作品の実物を少し見せるだけなのだろうと思っっていました。ところが、広重の浮世絵がたくさん展示されていたので喜んでしまいました。

「東海道五十三次」のほか、「木曽街道六十九次」。さらには前々から見たかった「名所江戸百景」。

改めて展示会の説明を読んでみたら、オランダのライデン国立民族学博物館が所蔵する見事な版画コレクション約200点が出店されていたのだそう。この博物館は、長崎の出島のオランダ商館医を勤めたシーボルト(1796~1866年)のコレクションも入っているところなのだそう。

ところで、この「広重 - 旅の芸術」展のサイトでの紹介は、面白い書き出しになっていました。

フランスでは、誰でもが日本で最も有名な芸術家は葛飾北斎だと思っているが、日本人が聞いたら笑ってしまう間違いだ。日本のレオナルド・ダ・ヴィンチは、波を描く巨匠ではなく、フランスのミュージアムでは大きく取り扱われる栄誉をえることがなかった歌川広重だ。印象派の時代には、サロンの反体制派の若者たちを最も魅了したのは広重である。

葛飾北斎(1760?~1849年)と歌川広重(1797~1858年)。
浮世絵といったら「東海道五十三次」が思い浮かぶので、広重の方が日本では有名と言えるかもしれない。

浮世絵版画の復刻をしているアダチ版画研究所のサイトを眺めてみたら、やはり人気作品は北斎と広重のようです。でも、広重より北斎の方が芸術性が高いとフランス人に言われても、日本人は笑ったりはしないと思うけどな...。


浮世絵関係の用語

フランス語で浮世絵を表すには、estampe japonaiseという言葉が一般的です。

でも、芸術には全く無知なフランス人がこの言葉を聞くと春画を思い浮かべるので、私には不愉快な言葉。日本にいたときは、そんなジャンルがあるなんて全く気にとめたことがなかったのですが、フランスで展示された浮世絵を見て仰天したことがありました。

今回、浮世絵は「ukiyo-e」と書いているのが目にとまりました。それを訳して「images du monde flottant」とも。「monde flottant」は正に「浮いた世の中」。フランス語にしてもすっきりしています。


展示を眺めていて、もう1つ気になった言葉は「nishiki-e錦絵)」。

カラーを使って肉筆で描いた浮世絵を錦絵というのかな、と思ったのですが、そうではないみたい。

「錦絵」を国語辞典でひいてみる:
多色刷りの浮世絵版画。1765年、絵師鈴木晴信を中心に彫り師や刷り師が協力して創始した錦のように精緻で美しい版画。浮世絵の代名詞ともなった。

錦絵と浮世絵はどう違うの?

もう少し詳しい説明が見つかりました。
  • 浮世絵には、浮世絵師が手がけた本の挿絵や肉筆画も含まれる。
  • 錦絵は、鈴木春信が始めた多色摺り版画の浮世絵のことを指す。それ以前の浮世絵版画や、墨摺りの浮世絵版画、肉筆画は、基本的には錦絵とは呼ばない。
  • 浮世絵のカテゴリーの中に錦絵が含まれる。
でも、錦絵と浮世絵は同じとする人もいるようです。はっきりしない...。

錦絵はフランス語では「estampes de brocart」と訳されるようです。では、それは何かとみると、多色刷り版画のテクニックだとある。そう言ってくれた方が分かりやすいのだけどな...。  


もう1つ目にとまったフランス語は「créponクレポン)」

縮緬絵(ちりめんえ)のことでした。完成品した錦絵に手を加えて皺をだし、それが布地のちりめんによく似ているから縮緬絵と呼ばれるのだそう。


浮世絵のことを調べていたら、版画を1枚持っていたことを思い出しました。忘れていたのだけれど、歌川広重の東海道五十三次の1枚のはず。

骨董品店で買ったのではありますが、私でも買える値段だった版画なので本物かどうかは疑わしい。調べてみたら、奇妙...。さらに調べてみたら、1つ発見をしました。それを次回に書きます。

⇒  私が持っている広重の版画はニセモノ?

外部リンク:
☆ プレスリリース: Dossier de presse (Van Gogh, rêves de Japon, Hiroshige, l'art du voyage)
ゴッホのジャポニスム
☆ Wikipedia: ジャポニスム
☆ Wikipedia: 歌川広重
浮世絵って何?
縮緬(ちりめん)絵
☆ Wikipédia: Ukiyo-e
La technique de l’estampe et son évolution - De l’estampe monochrome à l'estampe de brocart

ブログ内リンク:
★ 目次: 画家、彫刻家、建築家の足跡を追って
日本らしいプレゼントとして浮世絵の本を選ぶ  2008/07/22


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