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2013/06/01
そう頻繁に行くこともなかったビュッシー・ラブュタン城。1ヵ月前に行ったばかりなのに、朗読会のイベントがあったので、また行ってきました。


Bussy Rabutin.juillet 2010 par vision2000production


ビュッシー・ラビュタン城を有名にした伯爵

ビュッシー・ラブュタン城Château de Bussy-Rabutin)は、ブルゴーニュ地方のコート・ド―ル県ビュッシー・ル・グラン村(Bussy-le-Grand)にあります。

フランスでもそれほど有名ではない観光地でしょうし、ましてや日本人観光客は少ないのではないでしょうか? 城について説明するのを横着しようと思って、詳しく紹介している日本語サイトを探したのですが、見つかりませんでした。

城が建築されたのは12世紀ですが、14世紀に建てなおされ、その後も改築されて今日に至っています。

美しい城なのですが、ビュッシー・ラブュタン城見学のハイライトは、城の中に残る17世紀の絵画です。



Roger de Bussy-Rabutin
ルイ14世時代、宮廷から排斥されて住んだ城主Roger de Bussy-Rabutin(ロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタン: 1618~1693年) 伯爵が描かせた絵画です。

ロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタンは軍人として活躍した貴族なのですが、libertin(リベルタン) と呼ばれる思想の持ち主。

女性たちとの恋愛体験は豊富。彼の肖像画を見ると、女性にもてるタイプなのかな?... と思ってしまうのですが...。

彼は、アカデミー・フランセーズのメンバーにもなっています(1665年)。

ルイ14世からブルゴーニュの外には出てはいけないというお咎めを受けた理由は、次の2つが原因だと言われています。

1659年の聖週間(キリストの受難から復活するまでの厳粛な期間)、秘儀の酒神祭(orgi)に参加したこと。

彼が書いた小説『Histoire amoureuse des Gaules』のコピーが出回り(改ざんされたとの説もある)、それが国王を誹謗するものだと批判されたこと。彼の弁明は聞いてもらえなかった。

バスティーユに入獄されてしまいますが、翌年には病気のために故郷に引退すれば良いということになります。かくしてビュッシー伯爵は、この城で晩年の17年間を過ごすことになりました。

伯爵は執筆活動をしながら、城の内部に、皮肉を込めた言葉を入れた絵、女性たち、一緒に戦った戦争仲間、歴史に残る人々の肖像画などを描かせました。 


日本語でビュッシー・ラブュタン城についての紹介が見つからなかったのと同様に、ロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタンについての記載もインターネットでは見つかりませんでした。ひょっとすると、日本語には翻訳されていないのかもしれない。

日本のアマゾンでRoger de Rabutinの著書を検索

もっとも、フランスでも長いこと忘れられていた作家だそうです。書簡文学で有名なセヴィニエ夫人(Marie de Rabutin-Chantal / Marquise de Sévigné)と非常に親しい関係があった従妹関係にあることから、当然ながらロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタンとの往復書簡も残っており、そこから浮上して研究されるようになったそうです。


Devises et emblèmes

残されている絵画は17世紀の作品。城の絵などは、今日では姿が残っていないものをあるので、歴史的資料としても重視されています。

ただし、宮廷を追われた貴族なので、立派な画家を雇って描かせる予算はなかったのでしょう。地元の無名な画家を使ったようです。

何も意味が分からなかったら、全く価値を認められない絵画ばかりです。

例えば下の絵。何か変なのに気がつかれますか?



日時計が立っているのですが、太陽に背を向けています。なのに、影は後ろ側にできています。あり得ない場面ですよね?

書かれている文字は「Si me mira me miran」。スペイン語でしょうか? フランス語に訳すと「S'il me regarde, on me regarde」となるそうです。

日時計の後ろに輝く太陽は、太陽王と呼ばれたルイ14世を象徴。太陽に目をかけてもらえない伯爵は、宮廷人たちからも 背を向けられてしまっている、ということのようです。


かなり下手、と言いたくなる作品も数々あります。

下はカタツムリがいる絵。


…In me me involgo  (Je me renferme en moi-même)

変に首をのばしているのには意味があるのかな?...
カタツムリは伯爵。宮廷を追われた彼は、自分の殻の中に入る。


裏切られたMme de Montglas(モングラ夫人)に対する風刺画も非常に辛辣で面白いです。風刺画が並んでいる部屋に夫人を皮肉った絵が飾ってあるのですが、それは19世紀にリフォームされたときに移されただけのことなのだそう。ラビュタン伯爵の時代には、プライベートルームの壁に飾ってあったとのこと。

大恋愛だったのに、バスティーユに入れられたときに捨てた女性ということで恨みは深いのでしょうが、ラビュタン伯爵はかなり執念深い人だったのだろうな、と思ってしまう...。

宮廷から排斥された屈辱は理解できますが、威圧されるほど大きくはなくて、むしろ自然に恵まれた環境のアットホームな城で、明日の食べ物の心配もしないで引退生活ができた。知的な感性を満たすためには、従姉のセヴィニエ夫人がいた(本気で愛し続けたのは彼女だと言われます)。私から見れば羨ましい人生なのですけど...。


日本ではほとんど作品が読まれないロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタンですが、名言としては伝わっているようです。

有名なのは、『Histoire amoureuse des Gaules』の中にある次の言葉:
L'absence est à l'amour, ce qu'est au feu le vent ; il éteint le petit, il allume le grand.

恋愛にとっての不在は、火にとっての風。小さいものは消し去り、大きなものは燃え上がらせる。 


朗読会

風刺画は、何度見てもあきません。

この日のイベントは、ロジェ・ド・ビュッシー=ラビュタンの作品をMarcel Bozonnet という俳優さんが朗読するのを聞きながら城を見学する、という趣向でした。



フランス人がみな、俳優さんのようにきれいにフランス語を話してくれたら嬉しいのにな...。

ガイドさんから書いてある言葉の意味だけではなくて、彼が書き残した書簡などに書かれてあることも聞くと、ラビュタン伯爵に対する親しみがさらにわいてきました。

ブログ内リンク:
ロウソクで城を照らし出すイベント 2011/09/03
★ 目次: 城について書いた記事ピックアップ
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★ 目次: 画家、彫刻家、建築家の足跡を追って

外部リンク (ビュッシー・ラビュタン城について):
☆ Centre des monuments nationaux: Château de Bussy-Rabutin

Château de Bussy-Rabutin
 ⇒ Un décor d’une beauté singulière
 ⇒ Les collections de Bussy:
Oeuvres et citations de Roger de RABUTIN, Comte de Bussy, dit BUSSY-RABUTIN
Bussy-le-Grand : lectures de Bussy-Rabutin


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コメント
この記事へのコメント
はじめまして。
ビュッシー・ラビュタン城の詳細情報を記載されていましたので、私のブログ記事(URLに登録してあります)からリンクを張らせていただきました。
私の趣味の範疇では無かったので、本文では城に対して否定的な書き方をしていますが、ご容赦ください。
2015/10/01 | URL | R  [ 編集 ]
Re:
v-22 Rさんへ

ご連絡くださり、どうもありがとうございます。

ビュッシー・ラビュタン城は、絵画の皮肉や女性関係の逸話が面白いという城で、美しい調度品などはないので見学する城としてはご満足されなかったのは理解できます。私はガイドツアーには参加せず、誰もいない部屋で昔に浸るのと、広い庭園を歩くのが好きです。バゾッシュ城も、ヴォーバンのファンでもない限りは、見て喜ぶものがない城なので、そちらよりマシだったのではないかと思いますが、トントンでしたでしょうか?

お城を気に入られなかったのは私にはどうでも良いのですが、食道楽のブルゴーニュにいらっしゃりながら、美味しい食事に一度も出会えなかったようなので残念に思いました。お手軽価格でも、一生忘れないほど美味しい料理にたくさん出会える地方なのですけど...。40€のメニューの内容は、安い食材ばかりなので酷過ぎるとと腹がたちました。あそこはコンサートホールのすぐ近くにあるので便利なのですが、何となく、美味しくはないのに高いだけだろうと思って入ったことがなかったのですが、予感が当たっていましたね。
2015/10/01 | URL | Otium  [ 編集 ]
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