| Login |
2013/04/26

シリーズ記事目次 【ディジョンからニュイのブドウ畑に行った1日】 目次へ


先日の日記「オート・コート・ド・ニュイのブドウ畑を眺める」で書いたように、この町を境界線にしてブドウ産地の名称が分かれています。

それを書きながら、しばしワインからは脱線して、ニュイ・サン・ジョルジュ町について調べていました。

Ville nuits-saint-georges

言っては悪いけれど、ニュイ・サン・ジョルジュは観光する町としてはあまり魅力がありません。

ブルゴーニュ公国の古都だったディジョン市と、ブルゴーニュワイン産業の中心地であるボーヌ市には観光するものがありすぎるので、その2つの町に挟まれたニュイは陰に隠れてしまうのかもしれません。

町の中を観光するとしたら、とってつけたみたいはミュージアムの他に何があったっけかなと調べてみたら、城がでてきました。

自分の写真アルバムを見たら、その城がニュイ・サン・ジョルジュで分類されていました。どうやらホテルになっている感じ。でも、こういう城は私が泊まるタイプではないので、城を見に行って写真を撮ったもよう。Château de la Berchère です。外国人がたくさん泊まる、と地元の人に紹介されていたのだっけかな?...

もちろん、集落からは離れていました。市といっても、かなり広がっている町なのですね。思い出せば、ブドウ畑が途切れる小高い上にある直売農家も住所はニュイ・サン・ジョルジュ市だった。

それは、どうでも良いのですが、気になることが2つあったのです。


ニュイ・サン・ジョルジュという町の名前

昔から知っている町の名前なのに、なぜか今回気になりました。

ニュイ・サン・ジョルジュ(Nuits-Saint-Georges)ですが、ニュイは夜(複数形)。それに続くサン・ジョルジュは聖人の名前。

描かれるときはドラゴンを退治しているのがシンボルの聖ジョルジュなのですが、日本語では聖ゲオルギオスですか。

Vittore carpaccio, san giorgio e il drago 01

とすると、ニュイ・サン・ジョルジュは「夜の聖ゲオルギオス」?

ブルゴーニュの物知りの友人に聞いてみたら、この町の名前は、もともとは「ニュイ(Nuits)」だったのだと教えてくれました。それが「Nuits-sous-Beaune」という名前になって、その名前を嫌ったニュイの住民たちが長い年月かけて今の名前にしたのだそうです。

サン・ジョルジュと聖人の名前を市町村につけたのには違和感がありません。以前に書いた記事を読み直してみたら、フランスの市町村の12%が聖人の名前を使っていたのでした。

つまり、ニュイにそれを付けただけなのでした。私が思ったのとは全く逆だった!

でも、単に村にまつわる聖人を選んだのではなくて、この地域の中で特に優れたワインができる畑の名前からとったのだそう。

調べてみたら、Les Saints-Georges(レ・サン・ジョルジュ)というプルミエ・クリュ(1級)のアペラシオンがありました。

でも、ニュイ・サン・ジョルジュという銘柄もあるのだから、サン・ジョルジュでは分りにくくなってしまったのではないかな?...

追記:
徒然わいんさんがコメントを下さったのを読んで気がつきました。
他にも、ニュイのようにワイン畑の名前がついた市町村名があるので、紛らわしいという問題ではないのでした。
ブルゴーニュのワインの銘柄は市町村の名前がついていると思っていたのですが、逆に今日ではアペラシオンになっている銘柄が市町村名になっている例が幾つもあるのでした!



この物知りの友人には、何か分らないことがあったらWikipediaで調べてはいけないと言われているのですが(でたらめばかり書いてあるから)、やはり便利なので、町の名前が変わったのかどうかを調べてみました。

ちゃんと書いてある!

1849年、鉄道の駅がニュイ町にできたのだが、同じ路線にNuits-sous-Ravière駅というのがあった(お隣のヨーヌ県)。それで、混乱を避けるために、ニュイ町はNuits-sous-Beauneと改名された。1892年、町はNuits-Saint-Georgesと改名された。

この部分の記述が正しいとすると、町の改名に要した年月は半世紀弱というわけですね。もっと、長くかかったのかと思ったのですけど。


なぜ、Nuits-sous-Beauneという町の名前が気に入らなかったのか?

これは、想像がつきます。

Nuits-sous-Beauneだと、ボーヌ市(Beaune)に近いニュイ町となるわけですが、「sous」というのは「下」の意味がある。

ボーヌの傘下とやられるのも気に入らなかったのでしょうが、ここはワインの町。まるでニュイのワインがボーヌのワインの下にランクされてしまったような感じにもなってしまうからでもあったのではないでしょうか?

地名が下に置かれるみたいな単語が入っていると改名したいというのは今でもあります。

有名なのは、ノルマンディー地方。行政区分ではHaute-NormandieとBasse-Normandieの2つの地域圏に分かれています。Hauteとは「高い」という意味で、Basseは「低い」。低いという文字を付けられた方は、やはり気に入らないようです。ここなどは、1つにして「ノルマンディー」とすれば良いのに...。


ボーヌの下にされたというだけではなくて、ボーヌとニュイが仲が悪かったのかもしれない。

近くにある町同士が、歴史の中で犬猿の仲になっているというのはよくある例なのです。

地元にいると聞けるだけの話しですが、こんなのがあります。

● ボーヌとディジョン。
ディジョンの住民は、ボーヌの住民を「ロバ」と呼んでいた。

ディジョン生まれの詩人・劇作家アレクシス・ピロン(Alexis Piron: 1689~1773年)が「les ânes de Beaune」という言い方を始めた張本人なのか、すでに言われていたのか知りませんが、ボーヌの人たちをロバ呼ばわりする有名な言葉を幾つも残しています。

[注] フランス語でロバは、間抜けという意味があります。
過去に書いた記事:
昔のフランス: 劣等生には「ロバの耳」の罰則 2008/05/07


同じブルゴーニュ地方で、マコネ地域(マコン市中心地域)の人々は、ソーヌ川の向こうにあるブレス地域の住民のことを「黄色いお腹」と呼ぶ。

[注]
ブレス地方はトウモロコシがよく育つ地域で、昔はトウモロコシからパンを作ったりして主食としてので、黄色いお腹になってしまう。単純にそれが理由かと思うと、この謂れには色々な説があります。

私がもっともらしく感じたのは次の説:
大量の若者が戦死した第一次世界大戦のとき、ワインを作るマコネ地域にブレスの若者が来てお嫁さんにしてしまった。つまり、ブドウ畑をとられた)という恨みから。



思い出せば、半年ほど滞在したエクス・アン・プロヴァンスも、近くにあるマルセーユと犬猿の仲だと地元で教えられました。これは未だ根強く残っているようで、地元の人にマルセーユが好きだなんて言わないように気をつけたのを覚えています。

[注]
ブルジョワの町エクス・アン・プロヴァンスと、庶民的なマルセイユという対立。このパターンは悪口を言いあうには格好の材料のようで、あちこちに例があります。



変な呼び名...

ともかく、Nuits-Saint-Georges(ニュイ・サン・ジョルジュ)の町の名は、ニュイにサン・ジョルジュが付いたのだと学びました。

ついでに覚えたのは、ニュイ・サン・ジョルジュの住民の呼び名。パリの住民をパリジャンあるいはパリジェンヌと呼ぶように、全ての市町村に呼び名があるわけなのですが、フランスの市町村は36,000以上もあるのです。

全部覚えきることはできませんが、関係するところは覚えておいた方が良い。最近はインターネットで簡単に探すことができますが。

ディジョンとボーヌは知っていたのですが、ニュイ・サン・ジョルジュは知らなかった。

男性はNuiton、女性はNuitonneなのだそうです。ニュイトンなんて、なんだか変なの...。

でも、もっと変なのもあります。
例えば、ブルゴーニュにあるPoilという村。

住民が「J'habite à Poil.」なんて言うことがあるのだろうか? 「私は裸で生活しています」みたいに聞こえてしまうのです。

さらに、この村の住民の呼び名はPoilu(女性はPoilue)なのです。これだと、綴りも発音も「毛むくじゃら」と同じ単語。さすがに、使いたくないからでしょうが、Pixien / Pixienneも存在しています。いつか、この村に住んでいる人にあったら、どうしているのか聞いてみたい。

変な名前と言えば、Ciel(空の意味)という名の村もブルゴーニュにあって、そこであった悲しい話を書いたこともありました:
天国に送った手紙は・・・ 2008/03/09


ニュイ・サン・ジョルジュ町について気になることが2つあると書いたのですが、もう1つの方のことも書きました:
日本とフランスの姉妹都市が誕生するとき

ブログ内リンク:
★ シリーズ記事目次: フランスの市町村について

外部リンク:
Comment s'appellent les habitants de... ?


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村


カテゴリー: 歴史 | Comment (2) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
なるほど
ニュイ サン ジョルジュはもともとニュイという名前の村だったのですね。
ジュヴレー シャンベルタンもヴォーヌ ロマネもピュリニー モンラッシェもそれぞれジュヴレー、ヴォーヌ、ピュリニー村で、その村の一番有名な畑の名前を後に付けたというのは知っていたのですが、ニュイ村までは気がつきませんでした。
ニュイサンジョルジュはGrand cruが無くて、1er cruまでしか無いので、Les Saint-Georgesの名前があまり知られてないせいでしょうね。
2013/05/01 | URL | 徒然わいん  [ 編集 ]
Re: なるほど
v-22 徒然わいんへ

ニュイ以外にもあったと教えてくださって、ありがとうございます。ブルゴーニュワインに詳しい友人に話したら、その他にシャサーニュ・モンラッシェもあるし...、などと例を挙げていました。どの畑の名前を付けるかというので勢力争いになった面白い例もあるのだそう。

その友人と話していて、「アペラシオンの名前を後に付ける」という言い方をしたら、当時はAOCのアペラシオンができていたわけではないので、不適当な言い方だと言われました。徒然わいんさんのコメントを読み直したら、ちゃんと「その村の一番有名な畑の名前」という表現をしていらっしゃる!

Wikipediaでは、ニュイは「最もプレスティ―ジが高いアペラシオンの名を付けた」と書いてあったので、そのまま使って書いてしまっていたのですが、記述は「畑」と訂正しました。やはり、Wikipedia情報には落とし穴があるので注意しなければならないですね...。

他の町村の名前の経緯も知りたかったのですが(フランス革命後に変な名前を付けられていたのを近世になって直した市町村が多いので)、ニュイ以外の村についてはWikipediaでは出てきませんでした。

ブルゴーニュワインが好きな人がブルゴーニュのワイン産地をドライブしたら、道路に掲げられている市町村の名前が憧れのワインの銘柄なので楽しいだろうな... と思っていたのですが、むしろワイン畑の名前が市町村名になっているところもあるわけですね。気付かせてくださって、どうもありがとうございます♪
2013/05/01 | URL | Otium  [ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する