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2013/08/13
フランス人に食べさせるものを作るときには緊張します。特に、ここは食道楽の国、ブルゴーニュ。普段は手間をかけない料理を食べている人たちでさえも、仲間が集まって食事するとなると、全員、食通の顔をしてしまうのですから怖い!

料理が下手にできると、もろに食べてくれない。ごく親しい人たちだと、もろに酷評をする。文句を言われないでも、食べてくれないのだから気に入らなかったと分るのに...。

せっかく苦労して作ったのだし、食べたからって病気になるわけでもないのだから、ある程度は食べろ、と言いたくなるけれど、彼らは食べない!

フランスの食事にはチーズがあるので、お腹がいっぱいになっていなかったらチーズをたらふく食べれば良い、という逃げ道があるからいけないのではないかとも思って、チーズを恨みたくもなる...。

ただし、美味しかったときには褒め言葉をいっぱい並べてくれます。そのコントラストで、張り切って料理をする張合いがでるのだろうと思う。

日本で、友達と食べ物を持ち寄って食事会をするときは、みんな、何でも、「美味しいわね~」」と言って食べています。なかなか見つけられない良い食べ物でも、添加物だらけの美味しくないものでも、みんな「美味しいわね~ (^_^)」となる...。

楽しく食べれば、美味しく感じるというのが日本人かな?... 作った料理を貶されてくじけるときのことを思うと、日本式の方が良いとも思うのだけれど、なんでも美味しいと言われるのは、また張合いがないものです。


私の得意料理

前回の日記で失敗した料理について書いたのですが(前回に限らず、度々書いているはず)、これなら誰にでも喜んでもらえて、失敗する危険もないので安心、という料理のレパートリが、ほんの少し、私にもあります。

その1つが、ジャガイモのチーズグラタン

こんな簡単料理を、どうしてそんなに絶賛してくれるのか分からない。 「こんな料理で良かったら、毎日でも作りますよ」と言いたくなります。

材料は次のものだけ:
 ・ジャガイモ (グラタン用の種類)
 ・コンテチーズ (熟成度が低いもの)
 ・生クリーム
 ・ニンニク 少々
 ・塩、コショウ

いつもストックしてある材料ばかりなので、急に料理を出さなければならないときでも作れます。簡単に食事するなら、ハム・ソーセージの前菜、それにグラタンとサラダでも食事になるくらいボリュームがあります。ただし、調理時間は1時間かかるので、すぐに食べるという場合には無理ですが。

大勢で食事するときには、たいていこのグラタンを作ります。気に入っている理由は以下の通り:
  • ジャガイモを嫌いな人はいない。
  • チーズが嫌いな人でも、コンテチーズだけは食べる。
  • 手間がかからない料理なので、20人分でも作れてしまえる。
  • 食事会では皆のお腹をいっぱいにする必要があるので、こういうお腹にたまる料理があると便利。
  • 下ごしらえを済ませたらオーブンに入れておけば良いので、みんなと一緒に食卓に座っていられる。
  • 材料費が安い。
  • アルミホイルをかぶせてオーブンに入れて、最後に焦げ目をつけるので、絶対に失敗することがない。
ジャガイモはご馳走ではありません。お腹をいっぱいにさせようと思ってポテトサラダなんかを作ったら、誰も喜ばないと思うのですが、チーズがたっぷりあるとイメージが変わるらしい。テーブルに出したときには、焼けたチーズの良い香りがただようので食欲もそそるし。

どうやって作るのか聞かれたことがありました。ところが、彼女が私のレシピで作ったグラタンは、食べられるものではなかった、と報告する友達がいました。

何がいけなかったのだろう?... 私がフランス料理だと思っているもののレシピをフランス人に教える、などというのは気恥ずかしいので、説明が足りなかったのかもしれない。

それに、私は教えるのは下手なのです。 友達と休暇を過ごしたとき、毎日パソコンを教えたのですが、2週間の休暇が終わったとき、彼女は何もマスターしていなかったのでした。「こういうやり方でできる」と言ったあと、「こうやっても同じ結果になるのだけど」というのを幾つも紹介してしまったのがいけないのだと思う。

「こうやれば良いのです」、と自信を持って言い切ってしまえるのが先生タイプの人なのでしょうね...。


私のジャガイモ・グラタンのレシピ

どうやって説明すれば良かったのか反省しながら、グラタンを作ったときの写真を見てプロセスを分析しようと思います。いつもは大きなグラタン皿でど~んと作るのですが、1人づつの皿にしてみたときの写真を主に入れます。


(1) グラタン皿に、たっぷりとニンニクを塗る

こういう場合、ニンニクを半分に切って、切った側面をグラタン皿にこすりつける、というのが定番のはず。でも私はニンニクが好きなので、ニンニクをおろし金でおろして、それをグラタン皿に塗りつけます。



いい加減にやっているので、塊のままの部分もありますが、1時間はオーブンで焼くために消えてしまうので問題なし。

ただし、ニンニクは絶対に食べない人がいるときは、ほんの少しにします。多少嫌いとう程度なら、その人のことは無視してしまいます。ニンニクを入れないと美味しくないと思うので。


(2) ジャガイモを薄くスライスする

グラタンに適したジャガイモを使うのがポイント。モナリザという品種が好きだったのですが、その後はモーツアルトという品種が気に入っています。 でも、シーズンによるのか、今は見かけなくなっています。

フランスでは色々なジャガイモが売られていることを書いた日記:
フランスのジャガイモは美味しい♪  2008/08/06

写真をとったこの時、くたびれたジャガイモしかなかったのですが、オーブンで焼いてしまうので問題なし。



大量に作るときは、ドイツ製のスライサーを使うのですが、このときは少量を作るので、写真に写っているピューラーでスライスしてしまいました。 厚みが少し薄すぎたかもしれない。

お気に入りのピューラーについて書いた日記:
今年の白アスパラガスに新兵器登場 2009/05/11

いつも使っているスライサーについて書いた日記:
ワッフル形ズッキーニのグラタン 2007/08/16

ジャガイモをスライスしたとき、絶対に水にはつけません。でんぷん質を残しておかなければならないからです。

スライスしたジャガイモには軽く塩、コショウします。



味を決めるのは、ジャガイモとチーズ。日本の普通のジャガイモは水分が多すぎて、グラタンにすると余り美味しくないと感じています。インカのめざめという種類だと成功するのではないかと思っています。
 
以前に書いた日記を読み直してみたら、9人の食事会でジャガイモ3キロのグラタンを作ったけれど、人気があったので5キロにすれば良かったと書いていました:
パン焼き窯に火を入れて、友人たちと食事会 2010/08/04


(3) グラタン皿にジャガイモを入れ、チーズと生クリームをのせる

スライスしたジャガイモをグラタン皿に均等に入れます。グラタン皿は深くないものを使います。みんなが好きなのは焼けたチーズ がついているジャガイモなので、とりわけたときにジャガイモだけの部分が出ないようにするわけです。

ジャガイモの表面が隠れる量のチーズのスライスをのせ、それから生クリームをのせれば、下ごしらえは終わり。



生クリームは、いつもハードタイプを使っています。 生クリームをスプーンですくって上にのせただけ。どうせオーブンで温められると溶けていくので、それで良いのです。

液体状のクリームでも良いとは思います。柔らかいジャガイモが好きな人は、その方が適しているかもしれない。でも私は、ジャガイモの水分が抜けた方が好きだし、いつもストックしているのはハードタイプの生クリームなので、それを使っています。

生クリームの分量もいい加減。多ければクリーミーになるし、少なければジャガイモがパリパリになる。どちらでも、それなりの良さがあるのです。



この時は生クリームをのせてからチーズをのせたようです。後でアルミホイルをかぶせるので、ホイルにチーズがくっつかないように上に生クリームをのせた方が良いはず。

いつも朝市で買った農家の手作り生クリームを使っているのですが、このときはスーパーで買ったものを使っていました。AOC付きのイズニ―の生クリームですけど、私は小規模生産の生クリームの方がずっと美味しいと思う。

でも、生クリームの質はほとんど出来上がりには影響しないと感じています。味を決めるのは、ジャガイモとチーズ。


(4) コンテチーズが決め手!

私のグラタンでは、AOCコンテチーズを使います。味のほとんどは、これで決まると思う。

普通、フランスでチーズグラタンを作るときは、グリュイエールチーズのような、安いハードタイプのとろけるチーズを使います。でも、コンテチーズから出る風味とは比べ物にならない味気ないチーズグラタンになります。

日本で買うと、フランスから輸入したチーズはメチャメチャに高いのですけど...。
チーズのコンテを探す

でも、グラタンに使うコンテチーズは安物に限ります。熟成が進んだものが高いのですが、それだとオーブンで焼いたときに脂分がたくさんでて、確実に失敗します。


チーズグラタン用にいつも安いコンテチーズをストックしています。残り物をチーズグラタンにしてしまうと、見た目が異なって、残り物を食べている気はしなくなるのが良いからです。

ストック買っているのは、ディスカウントスーパーで売っている非常に安いコンテチーズ。それでも、いちおうAOCの保証付きコンテです。



チーズは、上に書いたスライサーで、切り口の部分を細長くそぎ切りにします。 チーズの厚さによって大きさが異なるわけですが、どうせ溶けてしまうから問題なし。

普通のフランス人がグラタンに使うチーズは、荒いおろし金のような道具で細く小さな形にします。

チーズを入れてグルグル回せば、チーズが小さくなって出てくるという道具も、たいていの家庭にあると思います。

横着する人のために、その状態のチーズもスーパーなどでは売っています(こんな感じの商品)。でも、日本でピザ用などに売っているとろけるチーズよりも小さな形です。

私は、ある程度の大きさのスライスの方が、焼いたときに美味しいと思う。


(5) グラタン皿にアルミホイルをかぶせて焼く

これも大きなポイント。それをしないと、ジャガイモに火が通る前に表面だけがこげてしまいます。

オーブンで焼くのは1時間を予定します。急いでいるときは強火、時間に余裕があるときは少し温度を下げて調整。

アルミホイルを外して、ジャガイモに火が通ったと思えるときにオーブンのスイッチを切ります。 心配だったら、ジャガイモに竹串を差してチェック。



この料理が気に入っているのは、途中で調理をストップしておけることです。

フランス人たちが食事するときには、どのくらい食事に時間がかかるか、全く想像できないのですから。熱々のグラタンを出したいと思うわけですが、これをメインの添え物として出すタイミングが、食事がスタートしてから2時間後になるか、4時間後になるのか、全く予想できないのです。

ジャガイモに火が通ったところでストップしておいて、さあ出すぞという15分前くらいにアルミホイルをのぞいて、オーブンのスイッチを再び入れ、表面をこがします。

余りに食べる時間が遅くなるときには、オーブンを弱い温度で温めて、グラタンが冷たくならないようにしておきます。このときも、アルミホイルはつけたまま。



この時は少し焦げすぎてしまった。でも、グラタン皿に焦げついてしまった部分は食べなければ良いだけなので問題なし。チーズがこげた部分はおいしいので、スプーンでガリガリとはぎ取って食べる人もいますが。


結局、レシピと呼んでも、材料が決まっているだけで、分量はいい加減。このグラタンは数えきれないほど作っているので、適当な量が分かっているからでもあります。でも、塩を間違ってたくさん入れてしまうということでもない限り、失敗することはないレシピだと思っています。

友達が失敗したという原因は分からない。食事が長引いてしまったので、グラタンをオーブンで焼きすぎたのではないかな?... あるいは、生クリームの量が少なすぎたか...。


グラタン・ドーフィノワという料理ではなかった

私のジャガイモ・グラタンは、日本で覚えたフランス料理のレシピでした。日本では手に入りにくい生クリームではなくて、ミルクを使ったレシピ。 それ風のものを、フランスでいつでもストックがあるものを使うということで、勝手にアレンジした料理になっていました。

日本で覚えたレシピの名前は、グラタン・ドーフィノワ。それで、ずっと、私のジャガイモ・グラタンを出すときにはGratin dauphinoisグラタン・ドーフィノワ)だとフランス人たちに言っていました。

ところが、つい最近、グラタン・ドーフィノワというのは、私のグラタンとは全く別物だと知りました!

チーズをのせて焼かないのが本物なのだそうです。 さらに、あらかじめミルクと生クリームでジャガイモを煮詰めてからグラタン皿に入れ、オーブンで焼いて表面に焦げ目をつくる。それが本物のグラタン・ドーフィノワのようです。

それを知って納得。レストランのメニューを見てグラタン・ドーフィノワがあると、勉強のために食べていたのですが、私のグラタンほどには美味しくないのでした。酷いのになると、ジャガイモのクリーム煮を煮詰めた感じで、べとっとしている。いかにも庶民料理という感じ。

シェフの調理レベルが高いレストランで出てきたグラタン・ドーフィノワです。



タルタルステーキに添えて出されたグラタン・ドーフィノワでした。
このときのタルタルステーキの写真を入れた日記 (3番目の写真):
タルタルステーキ: (2) 牛肉 2013/07/22

確かに、メイン料理に組合せるグラタンとして、チーズがない方が良いときもありますね。 一緒に食べる肉料理などの味を損なうほどの個性はないという利点のために、グラタン・ドーフィノワはフランスでポピュラーな料理なのでしょうね。

グラタン・ドーフィノワの作り方を見せる動画を入れてみます。



フランス語のgratin (グラタン)と単語には、上流階級、エリート階層の意味もあります。つまり、社会の上澄みのようなイメージ。グラタンを食べて美味しいのは、上の焦げた部分ですから。

グラタン仏和大辞典を引くと、gratinの意味はこう書かれていました:
パン粉、チーズなどをかけて焼き色をつける料理(法)

私はグラタンといえば、焦げたチーズが上にあるイメージだったのですが、別にチーズを上にのせていなくても、表面が焦げていればグラタンなのですね。 それだと、社会の上流階級の人をグラタンと呼ぶ表現と結びつかないのですけど。だって、ジャガイモがこげているだけでは、一番うまみがある部分というイメージにはならないではないですか?

ところで、ドーフィノワ(dauphinois)とは「ドーフィネ(Dauphiné)地方の」という意味。つまり、グルノーブルがある辺りの地域で、山岳地帯なので酪農が盛んな地方です。

私のグラタンは、フランシュ・コンテ地方で生産されるコンテチーズを使うのだから、名前を変えなければいけない。コンテが生産される地域の名前をとって、グラタン・コントワーズと呼ぶことにしようと思いました。

ところが、この名前ですでに料理が存在しているのでした。グラタン・コントワーズとは、フランシュ・コンテ地方のジャガイモのグラタン料理なのですが、この地方特産のコンテチーズとソーセージを使うというものなのでした。Gratin comtoisとかGratin franc-comtoisと呼ばれていました。

私の料理はソーセージは使わないので、そう呼ぶと問題がある...。 というわけで、私のグラタンを出すときには、何といえば良いか分らなくなりました。

グラタン・ドーフィノワだと言って出すと、あの庶民的な料理を想像するのに、たっぷり美味しいチーズがのったグラタンなので、フランス人から驚かれるのかもしれない。

どうせ、グラタン・ドーフィノワのレシピにもバリエーションがあって、チーズをのせて焼く人も多いようなので、この呼び名で通してしまった方が良いかな?...

ブログ内リンク:
★ 目次: ジャガイモ、ジャガイモを添える料理
★ 目次: 乳製品(チーズ、バター、生クリーム)に関して書いた日記
ライスサラダをパーティーで出すのはケチの象徴? 2012/11/08
★ 目次: レシピ、調理法、テーブルウエアについて書いた記事
★ 目次: フランスで食べる郷土料理、地方特産食品、外国料理
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ


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