| Login |
2013/06/24

シリーズ記事目次 【ヴェズレー8日間滞在記】 目次へ
その3


ロマネスク建築が好きなので、地元ブルゴーニュ地方にあるヴェズレーのサント・マリーマドレーヌ大聖堂(Basilique Sainte-Marie-Madeleine de Vézelay)には頻繁に訪れます。

でも、大聖堂の前に立つと、世界遺産にも登録されている大聖堂なのに、何とかならないのかならないのかな?... と、いつも思ってしまう。 



正面入口の大きなティンパヌムは、19世紀にヴィオレ・ル・デュクが大聖堂が修復されたときに作られたものなので醜い彫刻なのは仕方がないにしても、壁面をきれいにする予算がどこかから出ないのだろうか?,,,

それでも、知らなかったらどうということがない、この宗教建造物の中に入ったら、ロマネスク建築の傑作の世界が広がっているといのは、かえって感動を与えるかもしれない...。

今回はヴェズレーに滞在して時間があるので、この大聖堂の中にある彫刻を1つ1つ見るぞ~ とはりきりました。数年前に大聖堂の中で買った彫刻を説明する小冊子と小型望遠鏡を持って、朝早く、まだ観光客たちが来ていない時間を選んで行きました。

でも、フランス語でchapiteauと呼ばれる柱頭彫刻は100くらいあります。さらに、大聖堂を入ったところにある ティンパヌムが3つあって、その彫刻の部分についての説明は50項目余りあります。

柱頭彫刻は3面になっているので、1つの彫刻を見るのにも時間がかかります。1日で彫刻を丹念に眺めるのは無理。小冊子片手の彫刻鑑賞は、3回に分けて、つまり3日かけて行いました。根気があったら、もっと時間をかけたのですけれど...。見るたびに新しい発見がある。ヴェズレー村で暮らしていとしても、10年かけても鑑賞しきれないだろうと思いました。



詳細に見ると面白い

彫刻の意味を解読する小冊子の説明は興味深かったです。なんでこんな怪物がいるのかと思う彫刻も、意味を知ると、なるほど、と思う。

キリスト教の予備知識がなくても、そんな画面なのだろうと想像できるものはあります。 例えば、こちら。


Adam et Ève  (祭壇から見て右側 Bas-côté nord

裸の男女がいて、木に蛇らしきものがからまっている。アダムとイヴだと想像できますよね?

ところが、イヴが手にしているのはリンゴではなくて、ブドウの房という説明でした。ここブルゴーニュはワインの産地なので、そうなったのだろうとのこと。

このアダムとイヴは、大聖堂の彫刻の中でも最も古く、カロリング朝のものではないかという説明でした。その頃にはブドウを栽培していたでしょうね。

過去の日記: ★ ローマ帝国のプロブス皇帝とフランスワインの関係 2011/08/06

それにしても、ブドウにしては実が大きすぎませんか?

でも、「ブドウを食べる2人の男」と説明されている彫刻が全く別のところにあって、そちらの実も巨大なのです。


Deux hommes mangeant du raisin (拝廊 Narthex)

右の人は後ろに棒を持っているので何か意味がありそうなのですが、説明はありませんでした。


途中までしか彫刻していない!

柱頭彫刻を眺めるときは、いつも美しいものに目がいくのですが、じっくり見ていたら、変なのもあることに気がつきました。



写真の左側の彫刻です。
向かって右と正面の中央まで彫刻があって、残りの半分と左面は石のまま。上の部分の丸も、何か彫る予定だったのではないかと思えます。つまり、ここで仕事を止めてしまったということ?

石に彫刻をするのは大変なので、この部分を彫刻してから柱にのせるのだろうと思っていたのですが、柱を作ってしまってから彫刻していた、ということなのかな?....


最も有名な彫刻

ヴェズレー大聖堂の柱頭彫刻で代表的なのは「神秘の粉挽き機」の彫刻です。数ある柱頭彫刻の中で、何か1つだけ選ぶとしたら、たいていこれになるはず。


Le moulin mystique (祭壇から見て左側 , Bas-côté  sud)

この写真を入れた過去の日記:
ヴェズレーの聖マリー・マドレーヌ聖堂 (世界遺産) 2013/04/29

意味が分からなくても、美しさに目を奪われる彫刻...。 私もヴェズレーの大聖堂を訪れると、必ず、この彫刻は眺めます。

この彫刻の解釈では、旧約聖書から新約聖書への移りを示す、とされています。左側にいる短い衣を着て靴を履いている人物(モーゼ)が小麦の粒を臼に入れている。その臼には十字架を象徴する車輪が見えて、それがキリストを意味している。右側にいる人(聖パウロ)は、裸足だけれどゆったりとしたトガを着て、臼を通って小麦粉になったものを受け取っている。

大きな画像はWikipediaに入っている画像でご覧ください。望遠鏡を使わないと見えないような細部まで見ることができます。

殻がついた小麦の粒を見ても、中身が分からない。キリストという臼を通って小麦粉になったら分かりやすい教えになった、ということのようです。言われてみれば、なるほど... と思うのですが、どうしてそう解釈できるのだろう?...


貧者と富者のテーマ

彫刻は、全く違った場所に続きの画面があることを発見しました。

下は、始まりの部分の彫刻。


Le festin du riche (祭壇から見て右側 Bas-côté nord)

中央では、赤紫色の麻でできた服を着た金持ちが贅沢な食事をしています。
色の説明まであるのは奇妙ですが、今日見るロマネスク彫刻とは違って、当時は彩色が施されていたが普通でした。

左の画面では、貧しいラザロが食事のおこぼれを期待して家の前にいます。ラザロは潰瘍に病んでいて、犬がそれをなめています。

そのお話しの続きは、かなり離れた場所にありました。いつも眺めていた「神秘の粉ひき機」の隣(上に入れた写真にも一部が写っています)。今までに見ていたとしても、何の意味かは分からなかった...。


La mort du pauvre Lazare et celle du riche (祭壇から見て左側 , Bas-côté  sud)

金持ちの家の前でうずくまっていた貧しいラザロは死を迎える。左側の部分がそれで、2人の天使が後光で彼を包む。次の画面が右に続き、金持ちは女性に囲まれてベッドで死を迎えている。

金持ちの死では、蛇が彼の富にむさぼりつき、2人の悪魔が彼の魂をつまみ出している。

話しは右に続き、天国の木々の下でアブラハムがラザロの魂を懐に受け入れている。

聖堂にある彫刻は、ほとんどは聖書から来ていて、それが教えを示すものだったのでしょうね。この彫刻に関しては、最後の審判?

聖書を暗記するほど読んでいる人たちは、彫刻を見ただけで意味が分かるのでしょうね。
ルカによる福音書第16章

ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。ところが、ラザロという貧乏人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。

この 貧乏人がついに死に、御使たちに連れられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。そして黄泉にいて苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。 そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火炎の中で苦しみもだえています』。

アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪いものを受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。



気になっていた花の模様がここにあった!

ヴェズレーの大聖堂に入って彫刻を眺めだしたとたんに、びっくりするものに出合いました。



今までは全く気にもしなかった、4つの花弁がある模様。

先日書いた日記で、友人が遺産相続した家にあった彫刻にあった意味ありげな模様なのです。

そのことを書いた日記:
屋根裏部屋にあった古めかしい彫刻の解読を試みる 2013/06/12



ロマネスク美術ではよく見られる模様だと書いている人もあったのですが、ヴァズレーの大聖堂では、両側の側廊の壁面の上が、全てこの模様だったのです。

どこかで見た模様だとは感じていたのですが、ヴェズレー大聖堂にはこんなにたくさんあったとは!

ロマネスク美術の柄の1つだと書いていたサイトでは、これがスミレの花だと言っていました。スミレなのかな?,,, そう思いながら観察していたら、8つの花弁の中に同じ模様が入っているものもありました。



Tympan sud

こうなると、8枚の花弁があるのは何の花なのか気になってくるのですが、もうきりがないからやめようっと!



大聖堂の博物館

ヴェズレーのサント・マリー・マドレーヌ大聖堂の中には博物館があります。この大聖堂を19世紀にヴィオレ・ル・デュク(Eugène Viollet-le-Duc)が修復したときに保存した12世紀の彫刻などが収められています。

ちなみに、歴史的記念物総監であったメリメがヴェズレーの大聖堂修復のために抜擢したヴィオレ・ル・デュクは、当時26歳の無名の建築家でした。

前々から行きたかったのですが、入館できたのは今回が初めて。なにしろ、観光客が多い週末や夏などにしかオープンしていない。そういう時期は避けて行っているので、行ったときにはいつも閉まっていたのでした。

Musée de l'Oeuvre Viollet-le-Duc」という名なのですが、人に来て欲しいとは思っていないのではないかと疑ってしまう変な博物館。

オープンしていないときが多い他に、場所も隠れているのです。大聖堂の正面に向かって、建物の外側を右手に歩いて行くとあるのですが、「ここにあるはずだ」と確信していないと見えないです!

大聖堂の中で見る彫刻は高いところにあるのでよく見えないのですが、ここは目が届く距離、触ってしまえるほど近くに陳列されていたのです。



望遠鏡を使うと柱頭彫刻もよく見えたのですが、たくさんある彫刻の1つ1つを望遠鏡で見るのは疲れるので、途中で放棄していました。

近くで見ると、こんなに繊細に石を彫り込んでいたのかと驚きます。





大聖堂にある彫刻は、修復時に作った模造も入っています。

下は、本物の方。もっとも、非常に高いところにあるので、肉眼ではほとんど見えないのでコピーでも構わないと思ってしまいます。


Médaillon de l'église

左手に小さな教会、右手に軍機を持って、冠をかぶって、でんと座っていますが女性です。周りに書いてあるラテン語の意味は「今や煙ですすけ、後には美しくなる」。

1120年に大聖堂の火災があり、現在見るロマネスク様式の身廊が建てられたときのものではないかと言われているのだそう。Cantique des Cantiques(ヘブライ聖書の一遍?)の中に、教会を象徴する妻が「私は黒いが美しい」という文章にまつわっているのではないかとのこと。


小さな博物館なのですが、憧れの彫刻をまじかに見れたのは感激。またヴェズレーに行ったとき、ここがオープンしていたら入ってしまうと思います。


DRDA : L'héritage de Viollet-le-Duc


ブログ内リンク:
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路に関する日記
ヴィオレ・ル・デュクが修復したピエールフォン城 2010/05/12
★ 目次: 画家、彫刻家、建築家の足跡を追って

外部リンク:
☆ art-roman.net: Vézelay
☆ L’Art Roman Bourguignon: Basilique de Vézelay
La basilique de Vézelay, les chapiteaux - J'y suis, j'y reste
サント・マドレーヌ・バジリカ聖堂 (ヴェズレー)
☆ サント・マドレーヌ・バジリカ聖堂: (1) 外観/拝廊 編  (2) 身廊/側廊 編
Musée Viollet-le-Duc - Vézelay
MUSÉE DE L’OEUVRE, VIOLLET-LE-DUC
☆ INHA: VIOLLET-LE-DUC, Eugène-Emmanuel


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村


カテゴリー: 建築物 | Comment (0) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する