| Login |
2013/08/19
ブルゴーニュのコート・ドール県にあるMoutiers-Saint-Jean(ムーティエ・サン・ジャン)という村のイベントに参加しました。

この村に残る修道院の見学、ルネッサンス音楽のコンサート、食事会というメニュー。


ムーティエ・サン・ジャン修道院

ベネディクト会の修道院で、Abbaye Saint-Jean-de-RéomeないしAbbaye de Moutiers-Saint-Jeanと呼ばれます。 記述によっては、Palais abbatial de Moutiers Saint Jean、Abbaye Royale de Moutiers Saint Jeanなどともなっていました。



ここはブルゴーニュで最も古くつくられた修道院だと言われます。Saint Jean de Réomeという名の聖人が450年に創設。ただし、その当時のものはほとんど残っておらず、今見える建物は12世紀から18世紀かけて建築されています。 立派になったのは17世紀。

地元ブルゴーニュでも全く有名ではない修道院なのですが、最近になって見学できるようになりました。



かなり大きな建物が残っているのですが、昔は庭園もあって、もっと広大。18世紀に描かれた修道院の姿は、こちらに入っていました


ほとんど何もなくなっている修道院だった

ごたぶんにもれず、この修道院もフランス革命で破壊されました。建築に使っている石も盗まれたりしましたが、国家に没収されて売りにだされました。農場と、複数の家族の住居として使われたそうです。

現在この修道院を所有している人は8人か9人とのこと。人数がはっきりしていない! そのうちの2人が、修道院の価値を高めるため見学できるようにしたのでした。

ある程度は修復しているのでしょうが、もう手がつけられないのではないかと思うほど老朽化していました。

ちょっとドアから除いてみると、暖炉もある立派な部屋がこんな物置小屋になっていたり...。



修道院の入口に立って、私たちを案内してくれるオーナーの1人からお話しを聞きました。

修道院ですから、もちろん教会があったわけなのですが、それが現在では農家の納屋として使われていました。 教会があったと説明されなければ何でもなく見えてしまう建物。



建物の床を掘れば、おそらくクリプトは見つかるでしょうが、そんな工事をする資金がない。

「どなたかボランティアでやってくれる若者はいませんか?」などと言っていました。

この日はイベントの日だったので見学者は多いので、見学グループを分かれて、私たちは50人くらいました。でも、手をあげる人はいない。そもそも「若者」が必要と言われたのですが、ほとんどは老齢年金で生活しているような人たちだったのです。

私が修道院で最も好きなのは美しい回廊(Cloître)なのですが、ここのは1面だけで外部廊下のようになっているところが回廊だったのかな、と思う程度。


立派な修道院だったはず

城でも同じですが、建物に入ったときにある階段のできによって、どのくらい豪勢な建物であるかが分かります。ここも立派な階段でした。


Escalier d'honneur

階段の横の隙間には、暖炉に使う薪などが積み重ねられていて、いかにいい加減に使われているのかが分かります。

鉄の手すりは見事に残っていました。でも、これも破壊されています。丸い輪の部分には、おそらくテラコッタに金を施したものがはめこまれていたはずとのこと。



保存状態の良い部屋も幾つか見学しました。

下は、司教が滞在するために居心地を良くした部屋。



左側のドアから入ると、井戸。井戸の部屋の右にあるドアの向こうは、chaise percéeと呼ばれる椅子型便器。 これがサニタリーの役割を果たす。


20世紀初頭の破壊

むかし、この修道院を城代わりにして住んでいた人がいました。

その時代に住みやすくした部屋も見学しました。でも、修道僧が住んでいた部屋なので小さくて、普通の家の部屋みたい。その雰囲気を出すために安物の家具などを置いているので、どうということがありません。もっとも、これだけ広い建物ですから、小さな部屋の方が暖めやすくて居心地が良かったかもしれないですが。 室内の温度を高めるために、天井も低くしていましたので。

お金に苦労していたのでしょう。建物の中で剥せるものは何でも売ってしまっていました。

2階には修道院独特の広い廊下があり、床は見事なモザイク模様になっています。このモザイクも半分の長さの部分を売ってしまったそうです。



大きな部屋の壁面に張られた彫刻をほどこした木材の壁板を見事にはがされてしまった部屋などは、見るのも哀れ...。建築家が、それをやると修道院を売却するときに非常に安い値段になってしまうから止めた方が良いとアドバイスしたそうですが、それも聞かなかった。

売られた先はアメリカです。戦前のフランスでは文化財が海外に出ることに規制がなかったのか、修道院の建材がアメリカに売られました。中には、完全にバラバラにされて、アメリカで組み立てられた大きな修道院さえあるのだそう。

ムーティエ・サン・ジャン修道院が、日本の国宝に相当する歴史的建造物に指定されたのは1925年。まさか、指定された後にはやれなかったと思いますが。

修道院の入口にあった彫刻は、ニューヨークにあるクロイスターズ美術館The Cloisters)にあります。これが売却されたのは1920年でした。

Portale dall'abbazia di moutier-saint-jean vicino digione, 1250 circa 

アメリカに渡ったフランスの修道院の話しは聞いていたのですが、ここらへんにありましたか。 この美術館にはコレクションが多いので、Wikipediaの記述にはムーティエ・サン・ジャン修道院のものがここにあるなどというのは書かれていませんでした。

フランス革命時代の破壊で頭はすべて削りとられているようですが、修道院に残っていれば良かったのに...。 こういうのがないと、ロマネスク建築時代の名残りが見えません。

ただし、ここにあった柱頭彫刻の一部はルーヴル美術館で見られるそうです。

フランス革命が城や宗教建築物を破壊しただけでも残念なのに、アメリカに売られてしまったというのはショック...。

アメリカ人がよほど高く買ってくれるからフランス人たちは売ったのかと思っていたのですが、二束三文で売られたと言われました。運送費が膨大にかかるので、高い値段だったらアメリカ人が買うはずがないから、とのこと。調べたら、当時のことが分かるでしょうけれど探究はしません。

バブル景気の頃、歴史的建造物に指定されているフランスの城を買った日本人が、売れるものはみんな売ってしまったということで大きなスキャンダルになったのですが、昔はフランス人だって同じことをしていたじゃないか、とも思ってしまう。時代が変わっていたので、日本人の方は逮捕されて刑務所に入れられました。日本でもスキャンダルをおこしていた大金持ちの家系なので優秀な弁護士も雇えたでしょうから、まもなく釈放されていますが。

日本人がおこしたスキャンダルについて書いた日記:
売りに出されたブルゴーニュの観光名所: ラ・ロシュポ城  2012/08/24


天井や壁に直接彫刻を施してあるために取り外せなかった部分は残っていました。豪華な修道院だったのを偲ぶことができます。

18世紀のスタッコ(化粧しっくい)です。


Décors de stucs du XVIIIe

この彫刻も、掃除する前は埃にまみれて模様はよく見えない状態だったそうです。

ここを住いとして近代化するときには、かなりいい加減に工事していたようです。

見学者たちが「あぁ~」と驚きの声をあげた部分 ↓



左側に大きなパイプが通っているのです。ガイドしていた人が、苦笑いをして言いました。
「醜いのは分かるのですが、これを取り外すと、僕たちはお風呂に入れなくなってしまうので...」

給油と排水の管のようです。

全体として、建物はしっかりたっているし、床も天井もしっかりしている。つまりは、内部を修復すれば良いのでしょうが、広すぎる!

共同所有者がいるという建物は、マンションでも色々とトラブルがあって大変なのに、こんな大きな修道院などだったら、さぞかし大変だろうな、と想像します。修復するには膨大なお金がかかりますから、そんな費用を出したくないという人も多いだろうし。

修道院を見学できるようにした2人のオーナーのお名前を見ると、貴族だと分かる姓。 こんな問題ばかりかかえそうな建物は、私なら所有したくないですけど...。

ガイドしてくれた人が現在のオーナーの数を正確に言えなかったのは、オーナーの責任を果たさない人もいるからなのではないかな?...


修道院の横には公営老人ホームがありました。修道院時代の病院だったところ。薬の壺のコレクションがありました。


Apothicairerie des anciens hospices


イベントの日に行ってしまったので、見学者が多すぎました。少人数で見学したら、もっと昔の修道院にひたることができたかもしれない。

でも、ほとんど何も残っていないという感じだったので、また行ってみる気にはなりません。

見学の後はルネサンス音楽のコンサートがありました。

続きへ:
ルネサンス音楽の野外コンサート

ブログ内リンク:
ラテン語の知識はフランスで役に立つ 2009/08/26
★ 目次: フランス人の古民家を修復する情熱
★ 目次: 宗教建築物に関する記事

外部リンク:
☆ Wikipédia: Abbaye Saint-Jean-de-Réome (Abbaye de Moutiers-Saint-Jean)
☆ オフィシャルサイト: Palais Abbatial de Moutiers
☆ Demeure Historique: Palais abbatial de Moutiers Saint Jean


にほんブログ村 旅行ブログ フランス旅行へ
にほんブログ村


カテゴリー: 建築物 | Comment (0) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する