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2013/09/07

シリーズ記事目次 【美味しい食べ物を探した旅行 2013/8】 目次へ
シャロレー牛肉: その1


8月だけ見学できる城に行ってみました。



ブルゴーニュ南部にあるChâteau de Chaumontショーモン城) です。

200年近く前から城を継承している家系の城主から説明を聞いた後、建物の一部と庭園を自由に見学しました。

城の見学は好きなのであちこちに行っているのですが、ここは少し変わっていた。こういう建築物が好きかどうかは別にして、とても興味深い見学になりました。


オイエ村(Oyé)とは面白い名前

城の名前になっている「ショーモン(Chaumont)」は地名でも使われていて、フランス語圏には幾つもあります。ラテン語のCalvus Monsからきた単語で、それをフランス語にするとMont Chauve。つまり、ショーモンとは「はげ山」のこと。森がなかったという意味なのでしょうね。

ショーモンという名の城もフランスには幾つかあるのですが、今回見学したショーモン城は、ブルゴーニュ地方のソーヌ・エ・ロワール県、Oyé(オイエ村)にあります。

一度聞いたら覚えてしまう村の名前。

Oyez, oyez, braves gens ! 昔、王様のお触れなどを民衆に告げる係りの人が書いたものを読み上げるときに叫んだのが「オイエ」なのです。ただし、綴りは違います。

Oyez, oyez, braves gens !

「聞く」という意味がある古語の動詞「ouïr (現代フランス語ではentendre、écouter)」の命令形が「オイエ(oyez)」。

つまり、「みなのもの、聞け~!」と発せられた言葉。

村の名前もそれにちなんでいるのかと思ったら、関係ないらしい。ガロ・ロマン時代の地名から来た、という説の方が有力なのだそうです。

「聞け~!」と告げる係りの人はcrieur publicと呼びます。仏和辞典をひいたら「(勅令、布告を告げる)町の触れ役」と書いてありました。

現代のフランスにはもう存在してはいない職業ではないかと思うのですが、イギリスには、現在でも150人ものcrieur publicいるのだそう。

少し前のロイヤルベイビー誕生のときのニュースの画像がありました。王室とは全く関係なしに、好きで衣装を着てやっている男性なのだそうですが、イギリス人なのにフランス語で「オイエ、オイエ~!」とやっているので面白かったです。

☆ 動画: VIDEO. Le crieur public du Royal Baby fier de son imposture

田舎にはGarde champêtreと呼ばれる人がいて、その人が発するのも「オイエ」でした。テーマパークにあった19世紀のコーナーで、そういう人が出てきて実演したので、私は「オイエ、オイエ~」という呼び込みを覚えたように思います。

現代のフランスでは、集まった人々に「オイエ~!」と言いながらお触れを読み上げるGarde champêtreはなくなっていると思っていたのですが、職業としては残っているようです。

日本にも、同じ役の人がいましたよね。時代劇を見ていると出てきます。江戸っ子たちが集まった札の前に立って、お告げを読み上げる係りの人。その札は「高札(こうさつ)」と呼ばれると突き止めたのですが、読み上げる係りの人に名前があったっけ?...

どうでも良い話しに脱線してしまったのですが、現在の人口は300人くらいの小さな村オイエは、歴史を残す村なのでした。


シャロレー牛の発祥の地、オイエ村(Oyé)

質が高い肉牛として知れれる、ブルゴーニュ地方原産のシャロレー種の白い牛。

当然ながら、ブルゴーニュにいると、ほとんどシャロレー牛ばかり食べているし、農村をドライブすれば白い牛がたくさんいるので馴染みがあります。

フランスでは、牛は農耕に使われていたのですが、17世紀に、食べるための牛を飼育されるようになったのだそう。

それが、このオイエ村でした。

フランスで牛肉を食べるようになったのは、たった17世紀なの? と意外に思ったのですけれど...。

ルイ14世が食べた料理などの記録を見る機会があるのですが、食卓にのぼるのはジビエ多かったような気もします。牛肉も食べなかったことはないと思いますが、簡単に食肉を得ることができるように家畜を飼育した、ということなのでしょうね。

食肉のために牛を飼うことが大成功。それで財を築いて、貴族の称号までとった人が、今回見学した城を建築したのでした。


城に残る昔の文献のコピーを見せていただきました。 年間に何頭の牛を売って、いくらの収入があったかを書いた18世紀の記録です。



左に1850と書いてあるのは、その年(1756年)に売った牛の頭数。
右に書いてある数字の318,238.が、それで得た収入。

通貨単位を聞いたのに忘れた(リーヴルという単位だったと思う)。当時の労働者の年間収入は、この単位で19くらいだったそう。この城を築いた人が、牛を売って、とてつもなく大きな収入を得ていたことが分かります。

現代では、肉牛までに育てた牛(半年ほどかかるとのこと)を、年に1,850頭もの牛を売れるほど土地を持っている農家はないだろうと思います。シャロレー牛を飼っている農家で話しを聞くと、牛1頭に対して1ヘクタールの土地を持っているという感じで、1農家あたり、せいぜい年に100頭くらいしか売っていないのではないかな。

オイエ村は、シャロレー牛のメッカとも思われているCharolles(シャロル町)から、今でも週に1度シャロレー牛の競売が行われているSaint-Christophe-en-Brionnais(サン・クリストフ・エン・ブリヨネ村)に向かって近いところに位置していました。

このオイエ村があるのはブリヨネ(Brionnais)と呼ぶ地域で、牧草地の質が非常に良いのだそう。ソーヌ・エ・ロワール県の中で隣り合わせになっているシャロレー地域とブリヨネ地域を一緒にしてはいけない、と城主の方に言われました。

ブリヨネ地域を旅行していると、やたらに立派な民家や城が目についていたのですが、この地域は肉牛飼育で経済的に豊かだったからだ、と理解できました。現代では、家畜の飼育はそんなに収益をあげないと思うのですが。


変な風に豪華な城...

18世紀半ばに城が建築されていますが、もっとさかのぼれば、この土地はクリュニー修道院の地所だったのだそう。現在のオーナーの家系に渡ったのは1819年。



あちこちから集められたらしいものが外壁に散りばめてあります。

玄関のある方向から裏側、つまりは城の正面に回った面です ↓



壁に埋め込まれている彫刻をほどこした円形のものは、 フランス語ではmédaillon(メダイヨン)と呼ばれます。幾つあるのか分からないほどたくさんありました。

外壁に彫刻が施されている城というのはよくありますが、こんな風に集めたアンティーク(?)を装飾に使っているというのは珍しい。なんだか、お金があるたびにコレクションしたみたいに見えてしまう...。



日本では、ミカンで財をなした農家の立派な家屋をミカン御殿というのだと教えてもらったことがありました。最近入れていただいたコメントで、日本の高原野菜の産地には、レタス御殿、セロリ御殿と呼ばれる大邸宅があちこちにあるのだと教えてもらったところ。

そうなると、ここは食肉にする雄牛を飼育して設けた人の屋敷なので、雄牛御殿と呼ぶのが相応しい?

日本で牛肉を食べるときにはオスかメスか、ひょっとしたら乳がでなくなった牛の肉なのか分りませんが、フランスで美味しい牛肉といったら、肉牛にするために育てられたオスの肉なのです。だから、雄牛御殿! 



ありし日の城の敷地はもっと広くて、フランス式庭園も見事だったのでしょうけれど、現在の庭園は約5ヘクタール。でも、このくらいの広さがあれば民家としては十分です。

見学は庭園が主で、16世紀に建てられた納屋を城の内部のようにリフォームした立派なホールとチャペルの中しか入ることができませんでした。


チャペルにデモの旗がたっていた

チャペルで、ぎょっとするものを発見!
それが何だったかは前置きをしないといけないでしょうね。

新大統領になったオランド氏は、同性婚を認めるということを選挙の公約にしていました。その約束を守ろうと実行に移ったら、猛反対がありました。

同性婚を法律で認めるというのに使われた「Mariage pour tous(皆のための結婚)」をもじって、それに反対する人たちは「Manif pour tous(皆のためのデモ)」という名で反対行動をおこしました。それが話題になったのは、今年の冬から春にかけて。

ニュースでしか見ていなかった「Manif pour tous」と書いたデモのピンク色の旗が、この城のチャペルの祭壇の横に立ててあったのです。

フランスは世界で14番目に同性婚を認める国になったのですが、この城の城主はまだ諦めきれない? 観光客が見学するチャペルに不満を表す旗を掲げているのは異常に見えました。

ニュースで騒がれたときには、フランスの友人たちとの話題にもなったのですが、同性のカップルに結婚を認めるのはけしからんと言う人はいませんでした。こちらに危害を与えるわけじゃないから、どうだって良いじゃないか、という反応。

そもそも、フランスでカップルを形成するには、同性婚が認められる前から3種類ありました。法的な結婚をしないで一緒に生活しているカップルに対する偏見は消えさったし、法的に冷遇されることもないので、どの形式にするかは本人たちの自由。
  1. 法的な結婚。
  1. 自由結婚とよぶ内縁関係。その間にできた子どもに対しては、法的な差別はありません。それどころか、法的な結婚ではなくて2人の独身者として分離されるので優遇が受けられたのですが、それでは不公平だということで法的な結婚とほぼ同じになりました。
  1. 民事連帯契約(PACS) 。この形ができたときには同性カップルが選ぶ形だと思ったのですが、男女のカップルもかなりいます。自由結婚よりは法的結婚に近いので、ひょっとしたところで恩恵があるのです。
政府が同性婚を法律で認めようとしたときには大きな反対運動があったのですが、大統領選挙で負けた右派政権が利用できる巻き返し作戦だったはず。経験なクリスチャンには、そんなことに目くじらをたてる人はいないのではないかと思っていました。なので、チャペルに、しかも祭壇の横に、デモの旗が立っていたので驚いたのでした。

今のクリスチャンは、昔のように異教徒を抹殺しようなんてしないだろうと思っていたので、少し怖くもなる。でも、城主は同性婚が神の教えに逆らうことに反発したのではなくて、やはり政治的な考えからではないかな?...


大きく育てた生垣の小道

この城が誇っているのは庭園で、そこに18世紀につくられた、木をぎっしり植えた並木道がありました。



並木道の長さは350メートル。この道の向こうにある城から招待を受けたときには、トンネルのような木陰を通っていけるので、日焼けしないで便利だったとのこと。少しくらいの雨なら、傘もいらなかったかもしれない。

道の幅は7メートル。木の高さも7メートル(現在は少し超していた)という構造。長い道なので、剪定するのも大変なようです。

トンネルの外側に回ってみると、剪定をするための梯子が取りつけられていました。



梯子が移動できるように車輪がついています。普通の梯子で移動しながら剪定していくのは手間がかかりすぎるので、工夫して作った道具なのだそうです。

植えられている木はCharmilleと呼ばれる木。日本ではクマシデと呼ぶ樹木の仲間らしい。



葉がぎっしり出るので、生垣にするのに適している木らしく、フランスではよく見かけます。 ここのように大木にまで育つとは知らなかった。花が咲くわけでもないし、冬には葉が落ちるので、私は美しい木とは思わないのですけれど...。

ヨーロッパでも、この木で、この規模の小道を庭園に作っているのは、ここだけなのだ、と言われました。

本当かなと思って調べてみたら、ベルギーにあるCharmille du Haut-Maraisが出てきた。ここの真っ直ぐな木蔭道の長さは573メートル。こちらの方が長いではないですか。でも、樹木の大半は1885年に植えられたそうなので、それほど大木にはなっていないようだし、木をアーチで支えていて、私が歩いてみた城の道のように木を剪定して自然にできてはいないように見えました。


城の見学のあとは、オイエ村の歴史を見せる小さなミュージアム(廃校を利用)があるので行くようにと勧められたのですが、時間がなくていけませんでした。次の機会に...。

この城の財源になったシャロレー牛の話しを聞いて、少し知識を増やしました。シャロレー種の牛の故郷、同じブルゴーニュ南部にあるシャロレーと呼ぶ地域と、この城があるブリヨネという地域の違いが気になりました。

次にその話しを書きます:
最高のシャロレー牛肉を生産地で買う

ブログ内リンク:
★ 目次: 城について書いた記事ピックアップ
★ 目次: シャロレー種の牛について書いた記事
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
☆ Wikipédia: Château de Chaumont (Oyé)
☆ Parcs et Jardins de France: JARDIN DU CHÂTEAU DE CHAUMONT
☆ 写真アルバム: Château de Chaumont à Oyé 71
Musée La Mémoire d'Oyé

☆ Wikipédia: Crieur public
☆ Wikipédia: Garde champêtre en France
☆ 愛知県の博物館: 高札

☆ La Maison du Charolais: Histoire et origine

【同性婚について】
☆ AFPBB News: 同性婚はなぜフランスを二分したのか
パリの窓から: 同性婚を認める法律可決と反対
Frigide Barjotという名の裏の意味
フランスニュースダイジェスト: 同性愛者の結婚、賛成? 反対?


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