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2013/09/09

シリーズ記事目次 【美味しい食べ物を探した旅行 2013/8】 目次へ
シャロレー牛肉: その3


シャロレーと呼ぶ品種の肉牛はブルゴーニュが原産地なので、ブルゴーニュにいると最も親しい牛です。牧場でもよく見ますし、食べるときもこの品種が多いのです。

ブルゴーニュ南部にシャロレーという地域があるので、そこが原産地なのだとは知っていました。でも、これだけ親しみがある牛でありながら、知らないことがあったのを最近になって発見しました。


最高のシャロレー牛はブリヨネ地域で育った雄牛

シャロレー(Charolais)という地域は、シャロル町(Charolles)の周辺地域を指します。シャロル町がシャロレー牛の中心地なので、シャロルの町には、シャロレー種牛の飼育に関係している人たちが建てた施設Maison du Charolais(シャロレー館)があり、シャロレー牛の博物館、研究所、レストランが入っています。

ブルゴーニュ南部のソーヌ・エ・ロワール県には、昔からの名前で呼ばれる幾つかの地域があり、その中にシャロレー地域があるのですが、その隣りにブリヨネ地域(Brionnais)があります。

シャロレーの産地と言えばシャロレー地域と連想するのですが、実は、ブリヨネ地域の牧場の方が肉牛の飼育に適しているのだそう。

それを初めて教えてもらったのは、昨年のことでした:
牛を飼っていた農家のご主人は、モミの木とシダが嫌いだった 2011/06/04

シャロレー地域でシャロレー牛を飼育していた農家では、牛に子どもを産ませてブリヨネ地域に売り、ブリヨネ地域の牧場で育てて肉牛となる、と言っていました。自分のところの牛は「プチ・シャロレー牛」と呼んでいました。

シャブリも、一番下のランクはプチ・シャブリと呼ばれるので、それと同じような名前なのでしょうけれど、シャロレー牛に「プチ」なんてつけるのは初めて聞きました。関係者だけが使っている言葉なのでしょう。

牛の赤ちゃんを売るのでは大した儲けがでないのかもしれないな、と思う家でした。それに比べて、今回の旅行で見学したブリヨネ地域の牛飼育農家は大儲けして立派な民家だったのでした。

それを書いた日記:
これは「雄牛御殿」と呼べる城?  2013/09/07

これで、上質のシャロレー牛の産地はブリヨネ地域なんだと再認識したわけです。


サン・クリストフ・アン・ブリヨネ村の牛市

思い出せば、ブリヨネ地域がシャロレー牛の売買で巨額の富を得ていた、という話しは以前にも聞いたことがあったのでした。Saint-Christophe-en-Brionnais(サン・クリストフ・アン・ブリヨネ村)で週に1回行われる牛の市を見学したときのこと。

市がないときに行くと、広い市場だけが目立つ閑散とした農村なのですが、市が開かれる日は大変な賑わい。

Marché aux boeufs (Saint-Christophe-en-Brionnais, France)

Mur d'argent de Saint-Christophe-en-Brionnais1488年から開かれているという、歴史がある牛の市です。

いまでも黒いうわっぱりを着て、木の棒を持った人たちがやっているので、見応えのある市です。ガイドの案内付きでも見学できます(有料)。

売り手と買い手が金のやり取りをするMur d'argent (貨幣の壁)と呼ぶ石壁があって、昔はそれをテーブル代わりに使って、そこに紙幣をのせて巨額の取引きが飛び交ったのだそう。

朝早くから取引が始まって、朝食を食べることの時間になると、みんなが市の近くに何軒かあるカフェ・レストランで食事をします。

もちろん、大きな牛肉のステーキを食べるのが伝統。素朴な料理なのですが、肉の美味しいこと。牛肉にはこだわりがある人たちが集まるのだから、へた肉は出せないのでしょうね。

一度などは、隣りのテーブルにいた常連さんが「ここはポトフがおいしいんですよ」と言うものだから、一緒に行った仲間のうちの元気な2人は、ステーキを食べ終わったら、またまたボリュームのあるポトフを食べていました。

近くの老人ホームに入っているというお爺さん2人と、隣り合わせになったこともありました。市があるときはホームを抜け出してくるのが日課なのだそう。大きなステーキを平らげてから、「医者からいけないと言われているのだけれど」と言いながら、デザートを食べると言います。

何かと思ったら、店の人に言って、食器棚の引き出しから食べかけの板チョコを出してもらっている。毎週来るので、普通ではレストランなんかには置かないチョコエーとを引き出しに入れてもらっているのでした。

嬉しそうに食べている2人。こういうアトラクションがある地域の老人ホームもいいな、と思いました。

久しくサン・クリストフの牛市に行っていなかったので、今回の旅行で市に行きたかったのですが、市が開かれる水曜日には日程があわなくて行けませんでした。


土壌が違う

それでも、ブリヨネ地域に宿泊したので、朝に散歩して牧場を眺めてみました。見慣れた地域とは違うように見える。



何が違うって、土が湿っているのです。牧草がよく育つでしょうね。

泊まった家の庭にも湧水が出るそうで、大きな石のフォンテーヌがありました。アルプスの山の中でよくあるような湧水。ここは山岳地帯でもないのですけれど、地下水がよほど豊富なのでしょうね。

私が住んでいるところや、ブドウ畑が広がる地域は石灰質で、水はけは非常に良いのです。これだけ土地が違うものなのだな... と感心しました。

となると、シャロレーの牛肉を買うときには、ブリヨネ地域で育ったものを買いたいと思うわけですが、簡単にはできません。ブリヨネ地域がどこなのか、地元の人でもない限り、はっきりとは認識していないだろうと思うのです。

しっかりした肉屋で買い物するなら、牛がどこから来ているか聞けます。でも、村の名前で言われてしまう。

例えば、前回の日記「最高のシャロレー牛肉を生産地で買う」で書いたシャロル町の肉屋でお勘定をするときに思いついて聞いてみたら、Ozolles村だと返事されました。シャロル町から10キロくらい南にある村。となると、おそらくシャロレー地域ではないですか。ブリヨネのを買いたいと思ったのに!

でも、地元で評判の肉屋なので、質の良い肉を入れているはず。地域の名前による区分が牧場の質を決めているわけでもないと思う。それに、肉屋では日によって買い付けをしている農家も変わっているはず。

どうしてもブリヨネ地域で育った牛を買いたいとこだわるなら、ブリヨネ地域で牛を生産して直売をしている農家を探すしかないかと思いました。それでインターネットで直売農家を探してみたのですが、住所は確認できるものの、ブリヨネ地域なのかシャロレー地域なのかを特定するには時間がかかりすぎるのでやめました。

情報によると、シャロレー地域とブリヨネ地域は、泥灰岩(粘土と炭酸塩成分からなる)あるいは粘土の地層からできているのだそう。2つの地域の違いを詳しく分析した報告書も見つかったのですが、そんな長い文献を読む気にもならない...。


ややっこしすぎる...

シャロレーの牛は私には馴染みがある牛なのですが、考えてみると、複雑で分らなくなることが色々あります。どなたも興味深いとは思わないでしょうけれど、自分の頭の中を整理するために書いてみます。

牛の品種名

食肉になる白い牛は、日本で通用している呼び名に合わせて「シャロレー牛」と書いているのですが、フランス語での品種名はla charolaise(ラ・シャロレーズ)。女性名詞の冠詞として「ラ」が付きます。

英語の品種名はCharolais cattleで、シャロレーなのですね。日本語で「シャロレー牛」と呼ばれるのは、英語から来ているのかもしれない。

ただし、フランス語でも、シャロレーの雄牛はbœuf charolais(シャロレー雄牛)と呼ばれる。シャロレー牛の食肉なら、 viande Charolaise。でも、フランス語では名詞の性によって冠詞が変わるのだから気にしない。

AOCのシャロレー牛の名称

シャロレーの牛肉の中には、生産地の特定や飼育法など、厳しい規格に従って生産される食品にだけ与えられる品質保障AOC(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)を獲得しているものがあります。

シャロレー牛のAOC名は、
Bœuf de Charollesシャロル牛) 。

bœuf とはオス牛を特定するときに使う単語でもあるのですが、雄牛とイコールとできるわけではないのでした。

AOCシャロル牛として認められるのは、次の3種類でした:
 ・28カ月以内の未経産雌牛(génisse)
 ・8年以内の雌牛(vache)
 ・30カ月以内の雄牛(bœuf)

としたら、名称にbœufという単語を使うのは紛らわしいではないですか? 調べてみる前の私は、AOCのラベルを持つ牛肉とは、肉牛用に飼育されたオス牛だと思っていました。

ちなみに、フランスで消費される牛肉の大半はメスの肉なのだそう。フランスで消費される牛肉は年間160万トンで、そのうちメスの肉が79%で、オスの肉は21%となっていました(2012年)。

Charolles(シャロル)というのは町の名前ですが、その町の中で育てられている牛に特定している名称ではありません。シャロレーやシャロレーズというのは、牛の品種名で、世界各地で飼育されている牛なわけです。それをAOCの名称に使うことはできなかったので、「シャロル」にしたのだろうと思います。

でも、この牛肉はシャロレーないしシャロレーズという名称で知られているのですから、AOCの呼称で「シャロルの」としたら別の牛のことかと思ってしまうではないですか?

AOCの名称にシャロルの文字があるので、シャロル町の周辺が生産地だろうと想像するわけですが、限定されている生産地は、ソーヌ・エ・ロワール県のシャロレー・ブリオネ地域とはされていません。

AOCシャロルの雄牛(Bœuf de Charolles)というラベルを付けることができる生産地は、ソーヌ・エ・ロワール県(Saône-et-Loire)の牧場が広がるたくさんの村々を中心にして、そこに隣接する地域に少し広がっている感じです。

書きながら見た段階でのWikipediaの情報では、シャロレー・ブリヨネ地域には隣接しないブルゴーニュ地方のコート・ドール県とヨーヌ県も入れているのですが、政府のサイトやAOCシャロル牛のサイトの情報の方が正しいはずです(認定産地の一覧は最後にいれる情報を参照)。

ブルゴーニュだけではなくて、ローヌ・アルプ地方のロワール県(Loire)と、1村だけですがローヌ県(Rhône)も認定生産地域に入っていました。シャロレー・ブリヨネ地域の西に隣接するオーヴェルニュ地方のアリエ県(Allier)で飼育されるシャロレー牛にも定評があるのですが、AOCシャロル牛には入っていませんでした。

☆ Wikipedia: フランスの県区分地図

ちなみに、シャロレー牛を飼育している人たちがAOC獲得に動き出したのは1993年で、AOCを獲得したのは2001年。まだ10年くらいの歴史しかないのですから、シャロル牛というのはそれほど知られていない名称だと思います。生産者も、味ににこだわる消費者も、それほどAOCシャロル牛かどうかは気にしていない感じがします。美味しければ良いのですから。

シャロレー地域とブリヨネ地域

シャロレー牛の発祥の地として知られているのは、ブルゴーニュ地方南部にあるソーヌ・エ・ロワール県にあるCharolais(シャロレー地域)。Charolles(シャロル)という名の小さな町(人口3,000人弱)の周辺地域です。

ソーヌ・エ・ロワールの南部、ブルゴーニュといえどもブドウ畑などはない地域には、牧草地が広がるシャロレー地域(Charolais)とブリオネ地域(Brionnais)があるのですが、ブリヨネ地域というのは知名度が低いので、まとめてシャロレー地域と呼んでしまうことが多いのです。

ブリヨネ地域(Brionnais)と呼ばれるのはBriant(ブリアン村)から来ているのですが、これは現在の人口は250人にも満たない、ほとんど知られていない村です。

実際には、ブリヨネ地域は家畜の飼育に適した土壌なので、質の高いシャロレー牛はブリヨネ地域で育てられます。シャロレー地域の畜産農家は産ませた子牛を売り、それをブリヨネ地域で育てることが多いようです。それで最高品質のシャロレー牛肉になる。

それなら、ブリヨネ地域にある農家で育てられたシャロレーの牛肉を入手したいと思うわけですが、シャロレー地域とブリヨネ地域は隣接しているので、境界線がどこにあるのか分からない。歴史的に存在したこれらの地域は、現在ではシャロレー・ブリヨネの里(Pays Charolais Brionnaisとして一緒に地域開発されているので、境界線をはっきりと示す地図を見つけることができませんでした。

ただし、地名に「en Brionnais」と付いている町村の場合は、ブリヨネ地域にあるのだろうと容易に想像できます。例えば、今でも週に1回、生きたシャロレー牛が取引される大きな市が開かれるSaint-Christophe-en-Brionnais(サン・クリストフ・アン・ブリヨネ村)。見事なロマネスク教会があり、フランスの最も美しい村協会に入っているSemur-en-Brionnais(スミュール・アン・ブリヨネ村)など。

売っている牛の品種名を明記している場合は、シャロレーズないしシャロレーで、いくら品質が良くても「ブリヨネの牛肉」として売ることはまずないと思います。だから、ブリヨネ地域はシャロレーという名に負けてしまっている...。

シャロレー地域原産の家畜の名称

牛の品種名がla charolaise(ラ・シャロレーズ)と女性形なら、他のシャロレー地域を原産とする家畜の名前も叙英形なのかと思うと、男性形もあります。さらに、シャロレー地域のと特定する場合、普通はCharolais(女性形ならCharolaise)と綴るのですが、Charollaisと、L(エル)を2つにした綴りも存在します。

羊の品種名は、エルが2つの男性形で、le charollais(mouton charollaisとも呼ぶ) 。

※ 最近の日記で、シャロレー羊を見たので写真を入れています:
  ★ 穀倉地帯にある町で行われた農業祭り 2013/08/30

ニワトリの品種名もエルが二つですが、女性形で、La charollaise(poule charollaiseとも呼ぶ)。

牛以外は全てエルが2つかと思うと、そうでもない。

昔の品種の馬は、エルが1つの男性系で、le charolais

ちなみに、AOCも獲得している山羊のチーズは、エルが1つの男性系で、Le charolais

シャロレーないしシャロレーズを綴るときにL(エル)が1つか2つかというのは、フランス人にとっても曖昧なように感じます。シャロレー牛を売る大手企業の名前をインターネットで検索してみたら、エルの数が1つだったり、2つだったりしてヒットしてきましたので。



シャロレー牛のAOC「シャロルの雄牛」のコマーシャル・ビデオ:



シャロレー・ブリヨネ地域の地図 (郡の区分図):
Carte PAYS CB 2012



ブログ内リンク:
★ 目次: シャロレー種の牛について書いた記事
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
☆ Wikipédia: Charolaise
La Maison du Charolais
☆ フランス官報:
Décret n° 2010-1033 du 31 août 2010 relatif à l'appellation d'origine contrôlée « Bœuf de Charolles »
CAHIER DES CHARGES DE L'APPELLATION D'ORIGINE BOEUF DE CHAROLLES
☆ Wikipédia:
Bœuf de Charolles
☆ alliances.coop:
Le Bœuf de Charolles (démarche AOC)
☆ 仏農水省 :
Le boeuf de Charolles AOC
☆ ソーヌ・エ・ロワール県の地域区分地図:
Sortir Saône-et-Loire
☆ Wikipédia:
Brionnais
☆ Wikipédia:
Briant (Saône-et-Loire)
☆ Définition géologique du terroir :
Exemple de l'AOC "Bœuf de Charolles" et du Brionnais (Sud de la Saône et Loire)
Marché aux bestiaux à Saint-Christophe-en-Brionnais
☆ Institut de l'élevage:
Chiffres clés 2012 des productions bovines
☆ Le Monde:
La viande de bœuf dans votre assiette ? De la vieille vache...
☆ Wikipédia: Brionnais
Le Brionnais de site en site - Histoire et Généalogie


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