| Login |
2013/09/18
この週末、9月の3回目の週末は、文化遺産の日。普段から見学できるところはどうでも良いけれど、特別公開される建造物を見に行こうとはりきっていました。でも、寒いし、天気も悪いので、1カ所だけしか見学に出かけませんでした。

特別に城の中を見せるイベントを、保存会メンバーの人たちのために開いたのに誘われたのでした。

城のオーナーのマダムの案内で1階部分を見せてもらって、庭園は自由に見学。それから、この城と関係ができたワインを試飲してから昼食をする、というスケジュール。

「外で食事するのでセーターをお忘れなく」と言われていたので、真冬のセーターの上に、食事中に着たままでも邪魔にならないコートを羽織って出かけました。

行ってみると、城の建物の近くにテントが張られていました。



今にも雨が降り出しそうな日だったのです。広い庭園でのびのびと昼食を食べるはずだったのに、こんな中に閉じこもって食事をするのは残念...。でも、食事を始めていたら大雨になったので、テントがあったのには救われました。


16世紀のルネサンス様式、という触れ込みの城

中世の要塞から改造を続けてきた城なのですが、18世紀末に大火事で城の建物が崩壊した部分が大きく、20世紀初めに大修復をしています。それで、歴史的に価値がある古城という姿ではありません。 でも、フランスの国宝ともいえるMonument historique(歴史的建造物)に指定されています。

この城には夏の初めにも行っていたので、そのときの写真を入れます。



この写真を選んだのは、お堀が写っているから。10年前にこの城を買ったオーナーは、水脈がなくなっていた堀を大工事をして、昔のように水をはった姿に戻したのです。

ここはアメリカ人の億万長者と結婚したフランス人女性が買った城で、お金にいとめをつけずに修復しているのです。

庭園の広さは4ヘクタールしかないのですが、普通の家として住むには手入れが行き届ける広さ。 珍しい果実などを植えて、庭園とチャペルだけを一般の人が見学できるようにしています。 もちろん、マダム自らが城の見学に携わるわけではなくて、近所に住む英語を話せる人と契約して、彼女にガイドをさせています。

庭園に建てられているチャペルはルネサンス様式なので、見る価値があります。ずっと昔、城が別のオーナーだったときに見学したときには感激したのを覚えています。でも、新しいオーナーになったら、ルネサンス様式のチャペルもきれいに修復されてしまって、購入したアンティークなども入ってしまっていて、昔をほうふつとさせる感動が薄れてしまった...。


驚くほど豪華だった城の内部

城の中では写真はとらないように言われていました。なので、外の写真を再び。



城に入るには、使い捨ての白い靴カバーが用意されていました。病院で使う靴カバーを苦労して入手したのだそう。賢いとは思いました。50人くらいいたと思われる保存会のメンバーに土の上を歩いた靴で入られたら、後で床を掃除するのが大変ですから。

外観は19世紀の城という姿なので、内部も大したことはないのだろうと思っていました。 ところが、どっこい! お金にいとめをつけない人が城を買うと、こんなにことができてしまうのだと驚きました。

写真撮影禁止というのも納得できます。集めた骨董品であふれているのです。でも、かなりセンスは良い人らしく、博物館を見学するくらいの価値がありました。

修復もすごい。欠けていたり、壊れていたりするところは、きれいに修復してしまっています。

例えば、ドアが1つ欠けていたところは、残ったドアをモデルにして、全く同じに見える彫刻を入れたドアを作らせている。サロンの壁などは、塗料を8回だか9回だか重ねて塗る、という昔のやり方をしている。ここの壁は古い鏡で覆うと良いだろうとマダムが思ったところは、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間を修復した技師に頼んで、余っていた古い鏡をはめ込ませたりしていました。

この城は、国から歴史的建造物に指定されています。そうなると、普通より何倍も高い工賃を払う指定業者を使わなければならないという規制に圧迫されます。だから、指定を受けないのだと言った城もありました。

でも、高い修復費用を払えるなら、かえって好都合なのだと知りました。最高レベルの技術者たちを駆使できるので、下手に修復されてしまう心配が全くない。歴史的建造物のプロたちが修復のアドバイスに来ると、「この壁に貼るのに良い布があるので、何メートル欲しい?」などと、いきなり聞いてきたりもするのだそう。

この城にまつわる昔の城主の肖像画が存在しているというのを、インターネットで見つけたので、その複製を作ろうとしたというお話しも驚くものでした。その原画はヴェルサイユ宮殿の屋根裏部屋に保管されているとインターネットで突き止めたので、それを見せてもらう許可をとったのだそう。

厳重な警護付きで屋根裏部屋に入り、写真をとらせてもらって、紹介された複製画の達人にコピーを作らせた作品を見せてもらいました。16世紀の彫刻がほどこされた見事な枠を額縁にしています。どう見ても、本物に見えてしまうという出来ばえ!

となると、色々と見せてもらった調度品も、16世紀とか18世紀とか言っていたけれど、そう偽って売りつけられたものだって入っているのではないか、と疑いたくなってしまいました。

些細なところも、見事に修復しています。マダムは「フランスには素晴らしい技術を持った職人がいるのです♪」と、嬉しそうに繰り返していました。歴史的建造物を修復するトップレベルの人たちがいるのは、テレビで見ているから知っています。でも、普通の人は、そういう職人さんたちを雇うお金がないのですけどね...。

少し前に見学したシャトリュ城の主が言っていたことを思い出しました。歴史的建造物の関係者が来たとき、傷んでいるけれど見事なタペストリーを見て、「これは完璧に美しく修復できますよ」と言われとのこと。でも、「私は古びたのが好きだからと答えて、修復は依頼しませんと答えました」、などと冗談を言っていたのです。

古い建造物が好きなので、個人が持っている城をあちこち見学するのですが、聞くのは修復には膨大なお金がかかるという苦労話しばかりでした。でも、いくらでもお金をかけて修復している人はいるわけなのでした。

城のオーナーは、少しおごり高ぶったブルジョワ・マダムだと聞いていたのですが、見た目はその通りだったものの、気さくに色々な話しをしてくれました。

こういう世界もあるのだと知ったし、城の中は見事だったので、見学にはすっかり満足しました。 私は何百年も前の姿が残っていない建築物は好きではないにもかかわらず。


ワインの試飲

最近、この城の名前と写真がワインのボトルに使われるようになったのだそう。 ブルゴーニュのネゴシアンが、外国に売るブルゴーニュワインとして、城など、格調があるイメージがある建造物の名前と写真を付けたワインを作ったのだそう。そのうちの1つとして、この城が選ばれたのでした。

城とワインとは全く関係ないのだけれど、シャトーという名がつくと外国では売りやすいのでしょうね。主な輸出先は、中国、日本、アメリカ。

ワインはフランス国内でも売れるそうで、この日は注文も受け付けていました。在庫がある限り、お持ち帰り。なかったら、無料で家まで配達します、とのこと。

そのワインを、昼食前に何種類か試飲しました。



価格表をみると、良く知られた高級ブルゴーニュワインが目立ちました。シャンベルタン、エシェゾー、コルトン・シャルルマーニュなど。そういうのが外国によく売れるのでしょうね。 この日の試飲には、そういうワインは用意されていなかった。

どうせ、ろくな味のワインではないと思ったので、並んでいる中で一番上のランクを試飲してみました。ムルソーのプルミエ・クリュ。悪い年だとして有名な2007年のミレジムなので、やっぱりね、と思う。

ところが、飲んでみたら、なかなか口当たりが良いのです。ネゴシアンは畑が違って風味も異なるワインをブレンドしてしまうので、飲みやすいワインにできるのでしょう。でも、お値段は1本33ユーロとのこと(日本でも、ムルソー・プルミエクリュは同じくらいの価格で買える)。そのくらい出すなら、ネゴシアンがブレンドして作ったのではないワインを買いたいので、買うかどうかなんて問題外。

試飲のボトル数には限りがあったので、結局、普通の試飲とは違って、ランクの高いものから下のものへ飲んでいくことになりました。

コート・ド・ボーヌの赤ワイン(2010年)は酷かった。若いワインなのに飲み頃を過ぎて、マデリゼが始まっている。悪いけど、隅で捨ててしまいました。こんなワインを11ユーロで売るなんて許せない! でも、外国に出すと、「わぁ、ブルゴーニュワインらしいオレンジかかった色だ!」、と喜ばれたりするのかな?...

こういうワインに名前を貸していると、どういうシステムになっているのかな? この日のマダムがワインを買うように勧めていたので、売れるとコミッションが入る仕組みかな、と思いました。あるいは、ワインで城の宣伝ができるので、逆に、売れないとペナルティーを払うことになるのか?...

ネゴシアンの名前を書くのは遠慮しますが、インターネットで検索してみました。オフィシャルサイトを見ると、トップページしかないので、どんな会社なのか全くわからないのですが、そういい加減な会社でもなさそう。このシステムのワインは日本で売られていました。このネゴシアンの他のワインは、日本の航空会社で機内食のワインリストにも入っている。

でも、変...。名前を貸したここのシャトーの他にも選ばれているところがあったのですが、まわりにはブドウ畑なんか全然ない地域の建造物も入っているのです。ちょっといい加減ではないですか?

さらに日本情報を検索してみたら、宣伝していました。名前を貸したところの人たちが委員会のようなものをつくって、厳重にセレクションした権威あるワインです、などと書いてある。名前を貸した人たちでワイン騎士団のようなものを作っていて、お礼するために時々は食事会を開いている可能性はあると思う。でも、私が行った城のマダムは、ワインのことなんか全く分らない人だし、ご本人も名前を貸しただけだと言っていたのですけど...。

うまく宣伝してしまえば、ワインは売れるのでしょうね。 日本でワインを買おうとすると、聞いたこともない色々なコンクールで優勝した、という紙が付いていたりしますから。


こんなに粗食の食事会は初めて

並べてあったオツマミは前菜も兼ねていると言われていたので、ある程度は食べました。でも、テーブルについてから、もっと食べておけば良かったと後悔!

こんなにボリュームのない料理が出た食事会って、今までに経験したことがないと思いました。少なくとも、食べ物にこだわるブルゴーニュでは1回もなかったとはず。記念写真をとっておけば良かった。

そもそも、カナペが前菜だという設定は、ブルゴーニュでは絶対にありえません。この日はそうだと聞いて、メイン料理のボリュームがかなりあるのだろうと想像していました。でも、小食の私でも物足りない量なのでした。

うす~い、イタリアで出される生ハムみたいに、どうやったらこういう風に切れるのだろうと感心するほど薄い、ローストビーフが2切れ。それから、5ミリくらいの厚さの豚のローストが1切れ。後は、つまらない野菜が少し。どう見ても、前菜という皿でした。

これがメイン料理かと驚いてしまっていたのですが、その次に出てきた料理が奇妙。城の庭で収穫した桃のプーレに、生クリームを薄めたみたいなものがのっていると説明されて、いきなりデザートなのだと理解しました。つまり、チーズがない。食事会でチーズが1切れも出ないというのは、ブルゴーニュではありえないです!

フランス人並みの量は食べられない私だって、これじゃ食事にならないよ... と思っていたら、冷めたコーヒーがでてきました。それで、おしまい!

料理は、城でレセプションをするときに雇っている近所の人とマダムが作ったようでした。田舎には職場がないので、近所でそういうスタッフを簡単に調達できるのです。

見学させてもらった台所は立派で、見学者の誰もがうらやましがりました。プロの調理場のような設備が整っていて、広い台所を使いやすさを追求した工夫があって、アンティークもあって、豪華そのものだったのですが、普段、こういう料理しか作っていないの?...

大勢で食事する集まりでは、材料費をかけない料理が出ないことは多いです。でも、最低限、どんな大食漢でも胃袋がいっぱいになるボリュームを出すのです。こんなの、初めて! この日の費用として、1人21ユーロというのは、取りすぎだったと思う。

このイベントに参加したのは、この城の友の会のメンバーになっている友人からの誘いでした。フランスにある城ではよくやっていることですが、城の保存会というか、友の会というか、というのがあるのです。そういうボランティアの会を作って私有財産を他の人と分かち合うと、補助金がもらいやすいはず。 もちろん、城の一部だけでも一般公開していれば、税制上の優遇も受けられます。

歴史的建造物の友の会のメンバーは、年会費を払うし、歴史を調べたりして色々と協力します。なので、このイベントは友の会のメンバーに感謝する日だったと思うのですが、ちゃんと損しないように計算して料理を出したらしい。ワインの試飲というのは宣伝活動なので、普通は無料なのですけど、出すワインの料金も入れたのではないかな。

つまりは、城のオーナーは億万長者なのだけれど、経済的観念は発達した人なのだろうと思いました。だからこそ、お金持ちであり続けられるのでしょうね。

貧しい人は、無理をしても招待客にご馳走をだしますよ...。 お金持ちの方がケチだ、というのはフランスで時々経験しています。その傾向は、日本の方が少ないように感じます。


夜はお腹いっぱいになる食事会

この日の夜は、友人の家に呼ばれていました。夕方には何かお腹に入れたくなったのですが、間食はしないで行きました。この家は、いつもすごいボリュームを出すのです。

メイン料理はウズラでした。私がウズラが好きだと言っていたのを思い出したからなのだそう。ありがとう♪



青く見えるのは、アルマニャックでフランベした炎です。1人あたりウズラを3羽、として計算したのだと分かりました。そんなに食べられないというほど出すのが、普通のフランスのもてなしなのです。

食事会が解散したのは午前2時。それまで、見学した城のことで話しが盛り上がりました。食事が想像を絶するほどお粗末だったこと。すごいお金をかけて修復した城だったこと、など。

この家のご主人は、今はほぼ失業中なのですが、文化財の修復に関係する仕事をしたことがあるので、裏の事情を聞かせてもらうのが興味深かったです。

補助金を獲得するためには、自己資金も投入する必要がある。それで、こういうお金持ちが持つ建物では、かなりの補助金を獲得できる。例えば、プロジェクトが認められれば、補助金から7,000万円が出て、本人が残りの工事費として2,000万円とか3,000万円負担する、という具合。お金がない人はそんな自己負担はできないので、国からの補助金はもらいそこなう。

補助金を獲得して修復した文化財の持ち主は、つまり個人資産の価値を膨らますわけで、我々の税金が金持ちの懐に流れるのはおかしい、とフランス人たちは息まいていました。彼らは、本当に税金の使われ方にシビア。集まると、いかに税金が無駄に使われているかという話しをします。数字に弱い私は、次々に大きな金額を言われて頭がこんがらがってしまう。

フランスが文化遺産を大切にするのは良いけれど、私も分配がおかしいと思う。億万長者は自分で修復費を負担できるですから、資金がない人を助けるべきではないですか?

貴族のオーナーが、「私は城主で、城の唯一の庭師で、さらに城の観光ガイドです」と自己紹介していた古城を思い出しました。そこも歴史的建造物に指定されているので補助金申請をしようとしたら、業者は城主が自己負担金なんか払えるはずはないとたかをくくったらしく、2年待っても申請に必要な工事見積もり書を作ってくれないのだ、と嘆いていたのです。

財産家はさらに金持ちになる。貧しい人は、どんどん貧しくなる...。 資本主義の国でも、共産主義の国でも。


同じように女性が持っている城で、対照的な話しがあるので次回に書きます:
お金がない人が城を相続した場合

ブログ内リンク:
★ 目次: 城について書いた記事ピックアップ
★ 目次: フランス人の古民家を修復する情熱
★ 目次: ワインなどアルコール飲料に関するテーマ
フランス人って、どうしてこんなに食べられるのだろう?... 【2】 2006/05/28
フランスは粗食の国だと思ったと言う人に出会って・・・ 2005/04/06


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
にほんブログ村


カテゴリー: 建築物 | Comment (0) | Top
この記事のURL | Rédiger
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する