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2013/10/13

旅行記 目次 【ブドウ収穫シーズン、シャロレー牛産地】 目次へ
その3


少し前に、シャロレー牛の産地について興味を持ってブログに書きながら、この白い牛の取引がなされる大きな市について思い出しました。

シャロレー牛の産地にあるシャロレー地域とブリヨネ地域 2013/09/09

先日、その家畜市が開かれる村の近くまで行く機会があったので、市に行くことにしました。


中世から開かれている大規模な家畜市

ブルゴーニュ地方のブリヨネ地域にあるサン・クリストフ・アン・ブリヨネSaint-Christophe-en-Brionnais)という名の村で、毎週水曜日に行われる家畜市です。 扱うのは、この地域が本場の肉牛として高い評価があるシャロレー牛。

この村には立ち寄ることがあったものの、市がたつ日に行ったのは10年以上前でした。

その頃にもガイドさんが市を案内してくれていたのですが、今でも続いていました。市場の片隅にガイドツアーの受付けができています。



見学料は、たった2ユーロとのこと♪ 300円くらい。何も見るものがないような小さなミュージアムでも5ユーロはとるし、見どころがあるところだと、すごく高いのです。このくらいで色々なところが見学できたらな... などと思ってしまいました。

以前にも見学ツアーに参加したことはあるのですが、何を話してもらったか全く覚えていない。それで、迷うことなく参加することにしました。

20分か30分おきにツアーが始まるとのこと。この500年余りの歴史をシャロレー牛の市の伝統を伝えたい地元の人たちが、ほとんどボランティアでガイドしているのだろうと思います。 


牛市の見学ツアー

ちょうど始まったばかりのツアーにジョイントしました。



パネルの前で、この牛市の歴史について説明を聞きました。

市ができたのは1488年。19世紀には、ここで買われた牛をパリに運ぶには、歩いて行ったのだそう。30日かかったと言われて、ここからそのくらい歩いたらパリに行けてしまうの?... と不思議な気がしました。

すかさず、「その旅の間、牛たちの食べ物はどうしていたのですか?」 という質問が出ました。

なるほど...。ホテルに泊まるわけにもいかないでしょうからね...。

道端の草を食べながら旅をしたので問題ありません、との答え。まだ、のどかな時代だったのでしょうね。今でも、パリに近づかなければ可能だろうとも思うけど。

市場の敷地面積は大きくなり続けました。放牧のシーズンに月1回行われていた家畜市は、20世紀後半には週1回、木曜日の朝に開かれるようになりました。

最近は流通システムが変化して、大手バイヤーは市を通さずに直接買い付けをするようになったので、21世紀になると取引が減少し、この伝統的な牛市は消滅の危機を迎えます。

そこで、伝統的な取引がなされる野外会場のほかに、屋外の近代的な設備を整えた屋内競売場を建設して牛市の活気を取り戻したのだそう。

ところで、ガイドさんの説明で疑問が1つ消えました。ここで市がたつ日は木曜日だったのに、いつの間にか水曜日となっていたのには理由があったのでした。

労働時間が週35時間に短縮されたのが原因でした。ここで木曜日に牛が売られると、食肉に加工するときには週末になってしまう。それで、2005年から市を1日早めたのでした。なるほど...。毎日の労働時間を少し長くして、金曜日は午後からお休みにしている人も多いし。

伝統的な野外の競売場の取引は、水曜日の午後なのだそう。見学が始まったときにはそれが始まっていなかったので、最近できた屋内取引場を見学することになりました。 2009年に完成したので、以前に来たときにはなかった施設。それを見学したいと思っていました。

屋内取引会場に誘導される牛たち、買ってもらえなかったために戻って来た牛たちがいるスペースを上から眺めます。



いつも牧場でノホホンと草をはんでいるシャロレー牛を見慣れている私には、ちょっとショッキングな光景...。 こんなところに押し込められて可愛そう。

でも、屋内取引場に出されるためにここに集まっている牛たちは、買われて他の牧場で暮らすだけなのだから、屠畜場に直行することになる野外取引場の牛たちよりは恵まれている...。

取引場に誘導するのは若者たちでした。市がたつ日に働きに来るアルバイトなのだそう。といっても、誰でも牛を扱えるわけではないので、たいていは牛飼育農家の人たちのようです。

白いはずの牛が、ほとんど茶色なのが気になりました。 牧場にいる牛たちは、もっときれいです。まさか、質の悪い牛たちを集めたわけではないでしょうに。どうしたの?...



ガイドさんに質問してみる。ここまでトラックで運ばれてくるときに、狭いところに押し込められてしまうので、糞などで汚くなってしまっているのだ、と説明されました。

フランスにいると、家畜の品評会を見る機会が多いのですが、人前に出される家畜は美しいです。あれは、ブラッシをかけてもらったり、毛並を整えたりして美しくなっているのだ、と改めてわかりました。

家畜市に来るプロのバイヤーは、汚れなんかには左右されないで品定めができるので、そのままの姿なのでしょうね。

このスペースで、ガイドさんが長々と競売のシステムについて説明してくれるので堪らなかった。牛たちが鳴いているのですが、牧場にいるときに聞く鳴き声とは全く違うのです! 体が汚れているのも、彼らの居心地を悪くしているのでは?...  コンテストに出る美しい牛たちは、牧場にいるのと同じようにリラックスしていますから。


雄牛と呼んだって、オスではない

疑問に思っていたこと1つを学びました。

本物の牛肉はオスの肉という観念があるのですが、実際には、オスの牛はほとんど市場に出ない。

つまり、「bœuf(雄牛)」と呼ばれていても、オスの牛ではないことが多いのだそう。メスの方(vache)は、子どもを産んで、さらに育てをするために必要なので生き残れるけれど、オスの方は子牛(veau)で食材にされてしまう、ということ?...

肉屋に出される去勢された若い雄牛はchâtronと呼ぶのだと学びました。シャロレー牛の産地で育ったと言う人が、子どものころに聞いていた言葉だと懐かしがっていたので、業界の人たちが使う単語なのだろうと思います。あるいは、この地域で使う言葉なのかもしれない。

競売に出されている牛の呼び名の一覧:




近代的な屋内競売場

これを作ったためにサン・クリストフの牛市が再び活気づいた、というご自慢の屋内競売場に入ることになりました。牛の鳴き声を聞き、窓から競売場を覗いたりしながら長々と説明を聞いていたので、競売場の中には入れてもらえないのかと思っていたので喜びました。

中に入ると、一般の人たちが立って見学できるスペースもできていました。



Marché au cadranと呼ぶのだそう。 フランスには十数カ所しかなく、その中でもここは大きな規模を誇っているとのこと。cadranという単語は、日時計をcadran solaireと呼ぶので知っていました。こういうものにも使う単語なのですね。

電光掲示板(そう呼んで良いのかな?)で売られる牛の情報が映し出されるシステム。表示されているデータの見方は、ここに入る前に説明してもらっていました。



この351キロ平均の牛のロットの場合、1キロあたり2.56ユーロということになります。その下にあるのは、以前の通貨単位だったフランによる表示。

ここではユーロで取引されるのですが、伝統的な方式の野外競売場では、いまだにフランで取引されていて、買い手が支払いをするときにユーロに換算するのだそうです。フランからユーロに切り替わってから10年もたっているのだから、若い人には不便なのではないかな?...


写真を並べても雰囲気が見えないので、このサン・クリストフの競売場を見せる動画を入れます。




バイヤーの人たちは、牛が登場する土俵(?)を眺めているわけなのですが、こんなことろから見ただけでプロは判断できるのですね。しかも、事前に牛たちを見て品定めするのは許されていないシステムなのに、落札は一瞬のうちに終わってしまいます。

さっさと商売を成り立たせるという趣向? 昔は、バイヤーの人たちは牛を飼っている人たちと話しをしたり、牧場まで見に行ったりしただろうと思うのだけれど。

バイヤーの人たちは声をあげてはいません。テーブルの下にボタンが隠されていて(黄色の矢印を入れた)、それを押して落札しているのでした。



セリをアナウンスする人にはフランスでも独特のしゃべり方があって、お経を読んでいるように聞こえてしまう。それに、さっきまで聞いていた牛たちの鳴き声が混ざってくる。なんだか身につまされる。でも、食肉を扱う人たちは、そんなセンチメンタルな気持ちを持っていたらやっていられないのだろうな...。


そんなに詳しく説明してくれなくても...

この新システムの良さは、牛を売った人がその場で支払いを受け取れることにあるそうです。伝統的なやり方だと、支払いをしてもらうまでに長く待たされることがあったとのこと。その間にバイヤーが倒産すれば、売り手は泣き寝入り。

最後に入ったのは、牛を売った人たちがお金を受け取るカウンターがある広い部屋でした。そこには、見学者のためでしょうが、シャロレー牛についての詳しい情報を示す張り紙がたくさん貼られていました。

例えば、牛1頭から、どのくらいの牛肉ができるかを見せるパネル「家畜からステーキまで」。



740キロの牛から、食肉として売れる部分は269キロ。その54%(145キロ)は、さっと焼くステーキなどで食べられる上質の部分。46%(124キロ)は、煮込み料理などに使われるランクの低い肉。

豚肉は捨てる部分がないと言われて、フランスでは部分によって色々に使われるのですが、牛はロスが大きいのですね。となると、豚肉より高くても仕方ないかな...。

お勉強になりますが、生きた牛を見た後でこういう話しをされると...。

フランスの哲学者メルロ・ポンティは、人間は3歳くらいから自己と他者の区別ができるようになると言っていたのですが、私はこの年になっても区別ができないのです! 怪我したと言って傷口を見せられると、私の体中には猛烈な痛みが走ってしまう。想像上の痛さにすぎないわけなので、一瞬に痛みは消えるわけなのですが、頭に刻み込まれた傷口を思い出すと、また痛みを感じる...。

日本では、「いただきます」というのは「命いただきます」というのが意味だ、と教育するのが流行っています。私は好きではないのですけど...。 命をいただいて申し訳ないというなら、野菜だって食べられませんよ~! 「いのち、いただきます」と感謝したって、許されることではないと思う。

日本は、誤れば許される文化だと感じます。不祥事をしたとき、深く頭を下げたり、さらに土下座するジェスチャーをすれば、許される。謝らないと許されない。こうしたことには理由があると弁明したら、かえって顰蹙をかう。でも、何にも反省していないとしても、土下座することはできますよ...。

これは、フランス文化に触れる前から、日本で疑問に思っていたことでした。表面上、形式上だけでも、誤ることに意味があるの?...  日本のテレビで「申し訳ありませんでした」と頭を下げている企業家などを見ると、かえって偽善家に見えてしまうことが私は多いのですけど。


昔とは雰囲気が違う?

デジカメの撮影時間で計算したら、見学ツアーは1時間というところでした。

屋根だけある伝統的な取引場では、午後から始まる競売のために、そろそろ牛たちが集まってきています。こちらは、すぐに食肉として加工されてしまう牛たちの競売...。



牛を連れてきた人たちが牛を叩いているのがショックで、その先を見る気にはならなくなっていました。

この牛市に来る人たちの典型的な服装は、丈の長い黒いうわっぱり、長靴、木の棒です。ベレー帽もシンボルですが、最近は少なくなった。

その棒で、やたらに牛を叩いているのが気になって仕方ない。 ガイドさんに聞くと、牛は大きな体なので、棒で叩かれたくらいではどうということはないのだと返事されました。

でも、力いっぱいひっぱたいている人もいましたよ~。ずいぶん前に来たときには、そんなに叩いているとは感じていなかったのです。 昔は牛をうまく誘導するテクニックがあったのに、最近の牛飼いの人たちは力任せに叩くことしかできなくなったのではないか、と思ってしまいました。

ヒツジを追う専門の犬がいるのですが、彼らは本当に賢くて、群れの周りを走り回って、行くべき方向に向かわせるのです。テクニックがあれば、叩かなくたって牛を誘導できるはずなのですよ...。

この牛市の1990年代の姿を見せる映像があったので眺めてみました。私が昔に行ったときは、こんな感じだったという雰囲気があります。



やはり、棒でお尻をつっついたりして、うまく誘導しています。力任せにバシバシなんて叩いていない。伝統は必死に守らないと消えていく?...


やっぱり、ここはブルゴーニュ

私がガイドしてしゃべりまくったわけではないのに、喉が渇いた! 幸い、野外市場の外れにワインの立ち飲みコーナーがありました。

ここはブルゴーニュ地方とはいえ、ワインは生産されていない地域。でも、ワイン産地からは遠くはないので、美味しいマコネの白ワインがありました。しかも、やたらに安い。隣にあった自家製ソーセージが美味しそうなので買うことにして、味見をさせてもらっていたら、また喉が渇く。それで、グラスワインを2杯飲みました。

お昼の時間が近づいていたのでレストランに行き、その後には市場に戻っては来ないことにしました。

シャロレー牛のメッカに行くのだから、お昼は絶対に牛肉を食べようと思っていました。ところが、売りに出されている牛たちが牧場にいるときとは全く違うのを眺めたら、なんだか食欲がでてこない...。

それなのに、この日の昼食ではやっぱり牛肉を食べてしまった私...。

行ったレストランでは、希少価値があるという雄牛を食べさせてくれたのです。雄牛は本当に美味しいのか? それを次回に書きます:
雄牛だけを飼育する農家が経営するレストランで昼食




ブログ内リンク:
★ 目次: シャロレー種の牛について書いた記事

外部リンク:
Marché aux bestiaux(Saint-Christophe-en-Brionnais)
L'histoire de la race charolaise
La production des chatrons charolais au pâturage
☆ Généalogie et Histoire - Familles Bourbonnaises:
le Châtron


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