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2013/11/20
少し前から昔のフランスにあった穀物を貯蔵する建物について書いています。古い建築物を見るのが好きな私なのですが、そういう建築物はほとんど気にしていなかったことに気づいたからです。

どういう建物だったっけ?... と調べてみたら、どんどん知らなかったことが出てくる。それで、はまってしまいました。


まず、言葉に悩んでしまう...

穀物倉」という言い方を使っていましたが、私が出会ったものは「倉」などと呼ぶには抵抗を感じてしまうほど大きな石造建築物なのでした。

穀物を貯蔵するために昔のフランスにあった建造物は、一般的には「grenier(グルニエ)」と呼ばれているのですが、これは「屋根裏部屋」や「穀倉地帯」も意味する単語なので腑に落ちない...。

さらに、穀物をストックしておく場所として、「magasin(マガザン)」を使っているケースもありました。こちらは「店舗」の意味で普通に使われている単語。

小麦を貯蔵する大きな建物を「グルニエ」と呼んで、その中で貯蔵する部分のことを「サイロ」と呼んでいる記述もありました。

となると、疑問が浮上してくる。グルニエをサイロと呼ばないのはなぜなのだろう?

現代的な貯蔵施設をサイロと呼んで、昔のはグルニエとかマガザンと呼ぶのかな...。


現代のサイロは、なんと味気ないこと...

上に入れた写真は15世紀に建てられた穀物を貯蔵する建物でした。参考までに、今のフランスで普通に見かけるサイロの写真も入れておきます。



穀倉地帯には大きなサイロがあちこちにあるのですが、そんなものの写真をとったのは、ここくらいかもしれない。

友人が住む村にあるサイロです。ふざけて、小さな方(左)はロマネスク教会、それでは小麦の生産量には小さすぎるので建てたサイロ(右)はカテドラルと呼んでいたのが面白くて、それで写真を撮ったように思います。


フランスのサイロ

サイロは、フランス語ではsilo。「シロ」と発音しますが、英語と綴りは同じで、日本語のサイロもそこから来ているのだろうと思います。

「silo」という単語が、フランスで初めて文献に現れたのは1823年。スペイン語から入って、「地下の隠し場所」という意味なのだそう。もっとたどれば、ギリシャ語にもラテン語にもある単語なのではありますが。

ともかく、siloという言葉がフランスで使われるようになるまでは、サイロなんて呼ばなかったのでグルニエという言葉が使われたのだろうと分りました。

近代的な施設であるサイロが考案されたのは19世紀でしたが、フランスでサイロが作られるようになったのは、20世紀に入ってからなのでした。

面白いことに、フランスでサイロが作られるようになったのには世界恐慌が関係していました。19世紀半ばから仲買人が穀物相場を牛耳っていたので、不況を利用して価格を引き下げ、穀物生産者を窮地に落ち込めた。それで、政府や農業者たちが農協を作ることを進め、大きなサイロを作って共同で穀物を貯蔵し、自分たちで価格をコントロールできるようにしたのでした。

1932年から1936年にかけて、フランス各地に170のサイロが建てられたのだそう。その後、フランスの農業技術も発達し、穀物生産量も大きく飛躍したのでサイロの数は増加します。サイロを作る技術も発展。


日本のサイロは、フランスでよく見るサイロとは少し違う?

ざっと調べてみたところ、ほとんどの国でサイロはsiloと呼んでいるようでした。

ところが...。

フランスでsiloというと、上に入れたような建物を思い浮かべ、そこには穀物が貯蔵されています。でも、日本のサイロは、ちょっと違うのでは?

サイロというものに米を蓄えているというのは想像がつかないからです。

日本では、北海道でサイロをよく見かけるのですが、あれに穀物が入っているとは思えない。牧場にあるのでは?

☆ Weblio辞書: サイロ

サイロには穀物などを貯蔵する倉庫の意味もあるのですが、日本でサイロといったら、まず酪農関係の言葉で、刈り取った作物を乳酸菌の作用で発酵させたサイレージにするための容器らしい。

とはいえ、日本でも穀物を貯蔵するサイロは存在するらしい。

☆ 日清エンジニアリング: サイロ(silo)とは?

とはいえ、フランスほどには穀物を貯蔵するサイロがたくさんあるわけではないでしょうね。

日本人が「サイロ」と聞いたら、やはり北海道にあるタワーサイロを思い浮かべるのでは? と思ったのですが、最近では使われなくなってきているのだそう。干し草をビニールシートなどで密封してサイレージを作るので、バンカーサイロというのが主流らしい。

フランスでもよく見かけるロール状にしたもので、農家の納屋に大量に積み重ねたりしているのをよく見かけます。それで、北海道にあるようなサイレージのためのタワーサイロを見たことがなかったのかもしれない。


ひと昔前のサイロの取り壊しが進んでいた

フランスのサイロがどんなものなのか調べていたら、検索結果のトップに変なのが見つかりました。マルセイユにある1924年に建てられた穀物サイロがコンサートホールになっていたのです。その名も「Le Silo」! 


Le Silo, la culture sur mer

文化省から、2004年に20世紀の建造物に指定されたのだそう。それで、何とか形を留めた再利用を考えたようです。地中海に面した場所にあるし、サイロらしい姿も残していて、悪くありません。


そんな風に生まれ変わるサイロもあるのですが、最近ではサイロの取り壊しが進んでいました。サイロの火災で大きな被害が出た事故のあと、建物に課せられる規制を厳しくした法律が1998年にできたのでした。



こちらは、パリから100キロくらいのところにあるSoissons(ソワソン市)にあるサイロの取り壊し工事。

ソワソンと言えば、フランスの歴史に登場する地名です。現代フランスの起源となったメロヴィング朝を築いたクロヴィス(Clovis Ier)が、ローマ軍をソワソンの戦い(486年0)で打ち負かし、ロワール川北部を手に入れたのでした。

この戦いの後の出来事は、フランス人なら誰でも学校で習って知っているらしい逸話があります。それを知らないでソワソンの町に行くと、変な彫刻に頭をひねってしまう。
Clovis Ier et le vase de Soissons
Vase de Soissons

«Tu n’auras que ce que le sort t’accordera.»
«Ainsi as-tu fait au vase à Soissons ! »

これは、占領品として略奪した貴重な壺を返せと言ったら割ってしまった兵士を、クロヴィスは1年後にその彼の兵士の姿を見つけ、斧で彼の頭を割って仕返ししたという「Vase de Soissons(ソワソンの壺)」の逸話。

これはフランク族の歴史を書いた本に登場する話しなので、実話なのかどうかは定かではないのですが、ソワソン市にとっては誇りらしい。それにしても、そんな凄まじい話しを教科書なんかに載せる気が知れないのですけど...。


またまた脱線。サイロの話しに戻します。

上に入れた動画に出ているソワソンの住民は、大きな建物がなくなったので見晴らしが良くなったと喜んでいました。サイロに郷愁を覚える人たちがいるのですが、あって美しい建物ではないです。昔の穀物倉を文化財にするのは理解できるけれど、20世紀のサイロを保存しようというのを私は理解できない。マルセイユのコンサートホールなどは、まあ美しく再生したと思うけれど。

フランスでは、古い規格で作られているサイロに対する厳しい規制ができたわけですが、実際には余り進んでいないらしい。私の家の近くにあるサイロも、規格には合っていないのではないかと思う。穀物収穫時期になると、かなり遠くにあるのに雑音のような不快音が聞こえてきます。

サイロはコンクリートでできていることが多いので、老朽化したサイロを壊すには費用がかさみます。それでも、大都市にある古いサイロは取り壊したり、再利用したりという計画が進んでいるようです。サイロをなくして、今はやりの環境に優しい住宅地にするというプロジェクトもありました。


追記 2013/11/24】

覚えたことを忘れないようにという意味でもブログを書いるのですが、フランス人が「silo」と呼ぶものの中には、普通にイメージするサイロとは違うものがあることを教えてもらっていたのでした。

それを書いた日記:
クイズの答え: ニンジンの保存法 2010/02/22

フランス語のsiloの語源は「地下の隠し場所」という意味があるスペイン語だったと今回学んだのですが、こちらは正にそれなのでした!


フランス各地の郷土資産を検索できるサイトには、農家の古そうなサイトも入っていました:

http://fr.topic-topos.com/silo-maule
Silo, Maule

ジャガイモ、テンサイ、ルタバガなど根菜を貯蔵したサイロ(20世紀)です。


 シリーズ記事: この建物は、鳩小屋? 穀物倉? 【目次


外部リンク
Les silos modernes Pour connaître les silos à grain
☆ Wikipedia:
サイロ
☆ Wikipédia:
Stockage des céréales
Les silos modernes
LA REGLEMENTATION APPLICABLE AUX SILOS AU TITRE DES INSTALLATIONS CLASSEES POUR LA PROTECTION DE L'ENVIRONNEMENT
RECONVERSION DU SILO A BLE DE GAP EN BUREAUX
Le Silo : la culture sur mer
Le silo d’Arenc à Marseilles
La sécurité mise en cause au procès du silo de Blaye.
Les silos de Louvres : vers la patrimonialisation
☆ 畜産ZOO鑑: サイレージの作り方といろいろなサイロ
タワーサイロの中身って・・・
☆ Office de Tourisme de Soissons:
La légénde du Vase
L'HISTOIRE DU VASE DE SOISSONS


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コメント
この記事へのコメント
穀物倉庫とそこから展開したサイロのお話、大変興味深く読みました。中世から近世にかけて食料備蓄は飢餓に備える意味もあったのでしょうが、それ以上に戦略物資としての意味が大きかったように聞いております(木材も戦略物資として位置づけられていたようです)。したがって、地下に堅固な小麦貯蔵庫を造ったのでしょうが、湿気と嫌気性菌の為に実用にはならなかったのかも知れませんね。
サイロについては日本でも新潟などの米作地帯に行くと「○×農協」と書いたコンクリート製の無愛想な米貯蔵用サイロを目にすることが出来ます。
2013/11/23 | URL | をやぢ  [ 編集 ]
Re:
v-22 をやぢさんへ

なぜ大変な労力をかけて地下などに貯蔵庫を作ってしまったのかと不思議だったのですが、ただ蓄えるというだけではなくて、攻撃されても大丈夫だというメリットを考えたとしたら納得できますね。中世には高い塔を建てていたのが地下要塞になっていったという歴史もあるし...。戦争が起きたときには地下に潜って生活をしたという洞窟を見学したのも思い出しました。

日本でも無愛想な米貯蔵用サイロがありましたか。
2013/11/23 | URL | Otium  [ 編集 ]
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