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2013/11/29
前回の日記で クイズを出しました。


クイズ: これは何でしょう? - 城の部屋 2013/11/21

これが何なのかを考えてくださった皆さま、どうもありがとうございました!

今まで色々なクイズを出してきましたが、どうして分ってしまうのかと思うことも多かったのに、今回のは意外にも難しかったようです。食べ物関係を連想してくださって、近いところまで行っていたのですが...。

ずばり正解のコメントをくださった方はなかったのですが、これが何だったのかを発表します。

なあんだ~ となるかもしれません。そんなものを保存するために、こんな広い部屋を割り当てていたのでした。でも、今のように便利でない昔の生活では良いシステムだったのだろうと思います。


クイズの答えは、フルイティエでした

ここはブルゴーニュ地方にあるビュッシー・ラビュタン城で、丸い塔の中にある部屋です。台所から奥に入っていくとある、という位置。




クイズにしたのは、フランス語で「fruitier」というもの。fruiterieとも呼ばれる果物(fruit)を貯蔵する場所です。特に、果物を並べる棚をfruitierと呼びます。

従って、果物をのせる棚、果物貯蔵室などという答えをお待ちしておりました。

おもにリンゴとナシが貯蔵されたそうです。ビュッシー・ラビュタン城では、19世紀に城主だった伯爵が庭園に色々な種類のリンゴや梨を植えました。その収穫物をストックしていた部屋なわけです。

この部屋の壁にそった棚には、等間隔にあけた穴をあけた棚板があります。

  

この穴の上に果物を並べたのでした。座りが良いし、適度な換気になったのでしょう。

部屋の中央には大きな秤が置いてあります。これは、20世紀初頭にリンゴが豊作だったとき、収穫物の一部を販売するために設置したのだそう。


特徴は棚板

先月、友達がアルバイトで手伝いをしていたお屋敷に行ったとき、彼女が収穫したリンゴを棚に並べて保管しているのを見せてくれました。

ビュッシー・ラビュタン城の果物貯蔵棚には丸い穴があいていますが、友人がリンゴを並べていた棚は細い木をわたしたスノコ状のものでした。

こちらが、それです ↓



城の果実保存棚の説明パネルでは、穴の開いた棚板を「claie」と呼んでいました。

claieを仏和辞書でひくと、すのこ(柳の枝・針金などの)、(土砂用の)ふるい、柵(さく)、簀垣(すがき)などの訳語が並んでいます。等間隔に穴をあけた板を「すのこ」とは呼ばないと思うのですが、目的が同じだから良いのでしょうね。単語って、実物を見せてもらわないと使い方が分からない。


城に残る果物貯蔵室

こういう棚で果物保存する技術ができたのはいつ頃だったのかは分らなかったのですが、18世紀から文学作品では城の立派なフルイティエが描かれていた、という記述がありました。

今日でも、城を見学したときには果物貯蔵棚を見ることがあります。

何か立派なものの画像がないかと検索してみたら、イベントのニュースが出てきました。こちらも城ですが、中央に回転する棚があるのはフランス唯一だと言っています。

http://www.lagazettedelahauteloire.fr/Infos-du-jour/Aurec-sur-Loire-les-18emes-Vignandises-ce-week-end-4829
Aurec-sur-Loire : les 18èmes Vignandises ce week-end - Infos du jour : L'Eveil

果物貯蔵室はあちこちで見たように思うので写真アルバムを覗いてみたら、ブルトイユ城(Château de Breteuil)を見学したときの写真が見つかりました。



この城では、あちこちに人形が飾って昔の城の様子を見せる工夫があり、なかなか見応えのある見学ができました。この果物貯蔵室にも子どもたちの人形がいます。

ロウか何かで作った果物が並べられていますが、陳列には少し間違いがありました。これもクイズにしてしまいたくなりますが、しつこいので止めておきます。
 
ところで、ヴェルサイユ宮殿には「Le potager du roi(王様の野菜畑)」という広い農園があって、ルイ14世時代の姿の見事が農園をガイド付きで見学できるし、生産物を売る店もあります。野菜畑という名がついているのですが、実際には果樹の方が目立つ農園(5,000本の果樹)。

王様ご自慢の農園で、他に先駆けて果物をならす技術もありました。ヴェルサイユ宮殿だったら、果実貯蔵倉はさぞ見事だったろうと思うのですが、建物が保存されていないのか、画像を見つけることができませんでした。なかったはずはないと思うのですけれど...。


今では想像できない昔の苦労...

ビュッシー・ラビュタン城の果実所像室にあった説明パネルでは、城にはこの部屋があったために、9月から、ほとんど6月まで収穫物を食べることができた、と書いてありました。農作物ができなくなる冬の間、果物は大切な栄養源だったのだろうと想像できます。

こんな立派な果物貯蔵室があるのは、召使がいるような城や屋敷だけだったろうという気がします。シーズン外れに美味しい果物を食べるというのは贅沢なことだったでしょう。

庶民の方は、地面に穴を掘って果物を埋めたりしていたようです。 虫に食べられてしまうのを避けるために、穴の底にキメの細かい網を置き、その上にワラや乾燥させた草を敷き(シダが最も良かった)、朝露が消えた果物をのせ、その上にシダをのせ、また果物をのせてからシダをのせ、というのを繰り返していく、というものだったようです。

20世紀初頭にフランスからイギリスに輸出されたリンゴは、木箱にtourbe(泥炭)をつめるというシステムだったのだそう。泥炭の酸性が保存を助けたらしい。

冷蔵装置で農作物を輸送できるようになるまでは、色々なテクニックが考えられたのでしょうね。

アメリカ映画の中では一番好きな『エデンの東(1955年)』 の一場面を思い出しました。

氷でレタスを冷やして輸送するという画期的な方法を見つけたのに、列車が立ち往生してしまったので。溶けた氷は滝のように列車から流れだし、大量のレタスは台無しになってしまう、という痛々しい場面。

主人公のキャルは豆の取引で大金を得て、それをキャベツで大損をして経済的に窮地に陥っていた父親に渡すけれど、拒絶されてしまう...。

ジェームズ・ディーンはハンサムなだけではなくて、良い演技をしていたな...。

映画のあらすじをみてみたら、お話しの始まりは1917年とありました。フランス産のリンゴが、泥炭詰めでイギリスに輸送されていたのと同じ時期でしたか。


果実貯蔵棚の木の板に穴があいていたり、スノコになっていたりするのは、熟していくときに出るガスを逃がすためだろうと分かります。でも、その他にも色々なコツがありました。ただ並べているだけでは、何カ月も果物を保存することはできないとのこと。


消えてはいないフランスの伝統

リンゴは、うまく保存すれば、採れたてと同じような新鮮な状態で保管できるだけではなく、香りも増すし、味も良くなるのだそう。現代でも、昔風に棚に果物を並べて保存する人はフランスでは珍しくはありません。

リンゴの木は一本でもたくさん実がなるので、私もそんなリンゴを食べてみたいと思って、園芸サイトに書かれているコツを読んでみることにしました。

でも、やたらに注意書きがあります! めんどくさそうなので、やってみる気にはならなかったのですが、ざっとメモしてみますね。

場所の選び方、環境
  • 果物保存室の場所としては、ワインセラーは湿気が多すぎるし、屋根裏部屋は乾燥しすぎているのでダメ。ガレージや、暖房されていない部屋が良い。
  • 北向きが望ましい。
  • 貯蔵室の壁には、湿気よけとしてchauxの液体(石灰乳液?)を塗る。
  • 温度変化がない部屋が良く、理想は8度から12度(別の情報では2度から6度)。ただし、果物の種類、品種によって適温はことなる。氷点下になる部屋はダメ。クイズにしたビュッシー・ラビュタン城では、氷点下になるときにはランプなどで部屋を温めたと説明していました。
  • 換気が良いのが条件。果物は熟するときに熱を発する。人体に毒ではないが、これが熟成を進めすぎてしまう。
  • 湿度は65%以上ならOK。ただし、85%を過ぎると腐る危険が増加する。といって、乾燥しすぎているとダメ。氷点下にならない夜には窓を開ける、床に水をまくなどの工夫をする。
  • 光線が入ってしまう部屋はダメ。
  • ネズミなどが入り込まないように、果物保存室はしっかりと隔離されていなければならない。
  • 毎年、貯蔵庫の床、壁、棚は消毒剤でしっかりと掃除すること。八百屋からもらった木の果物ケースを使うなら、毎年新しいものを使うこと。
  • 夏の間は、貯蔵室に光線と風を入れて環境を整えておく。
保管の仕方
  • 果物は、種類や品種によって、保存できるかどうか、保存が可能な期間が異なるので注意。
  • 果実は良い状態のものを収穫して保存する。未熟の状態ではダメ(リンゴは切ってみて、種が黒くなっている状態でなければいけない。ビュッシー・ラビュタン城の説明では、完熟する前に収穫して果物保存室に入れたと説明されていましたが。
  • 梨は花柄(かへい)を残して収穫し、その茎の先にロウかパラフィンを塗る。リンゴはそれをする必要はない(保存している間に花柄が落ちることが多いため)。
  • 果物は、隣りと触らないように、間隔をおいて並べる。
  • 果物を棚に並べるときには、梨はヘタを上にして座らせるが、リンゴは逆さまにヘタを下にして並べる。つまり、大きい方を下にする。人形がいるブルトイユ城では、これが間違っていました。
  • リンゴやナシと一緒にキウイを保存してはならない。カボチャやジャガイモとは同居させて良い。
  • 果物を時々食べてみてチェックすると良いのだが、傷つけないように指先でなくて手のひらで触ること。傷んだ果物があったらすぐに取り除く。

城にある果実貯蔵棚は、棚の間隔がかなりあいています。後ろの方まで手が届くので便利ですが、そんなに空間をとってしまうのは贅沢すぎませんか? 果物が熟すときには熱が出るそうなので、温まらないようにこのくらい間隔をあける必要があったのかな?...

棚を支える支柱の間隔が広いので重いものはのせられないだろうと判断なさっているコメントがあったのですが、棚にぎっしり果実を積み上げたわけではないので、それほど重くはならなかったのだろうと思います。


現代の果実貯蔵棚は?

大きな果物貯蔵室がある家は少ないはず。 ましてや、城のように大きなスペースを使うことはできないのが普通ですから、コンパクトな貯蔵棚が市販されていました。

http://fr.jardins-animes.com/meuble-legumier-fruitier-tiroirs-p-1556.html
Meuble Légumier Fruitier 6 tiroirs - Pour La Cuisine - Jardin Bio

蝿帳付きなので、ガレージや物置、昔の家にはあった洗濯室などにおけそう。 でも何だか味気ないストッカー。もっと素敵なのはないのかと探してみたら、こんなのが出てきました。

http://www.aujardin.info/fiches/recolte-conservation-pommes-poires.php 
Récolte et conservation des pommes et poires

この木のケースは、この夏に友人が園芸のイベントで買ってきたと言って見せてくれたのと同じものでした。家庭菜園の収穫物を入れるカゴで、とても珍しいのだと言われたので1つ買ったのだそう。

木の感じが良いとは思いましたが、私には実用的には見えませんでした。木のカゴだから重いし、収穫物は大して入らないので、畑に持っていって収穫物を入れるに便利そうでもない。

かなりのお値段で買ったと言うので、こんなものは必要ないのに... と思ってしまったのでした。

でも、今回のクイズの答えを書くために調べていて、やっと分りました。これは果物を保存するためにも使えるカゴだったのですね。持ち手が低いのは、重ねて置けるための工夫なのでしょう。

でも、これを1個だけ持っているのでは意味がないような...。 それに、スノコ状の棚を作るなら、何もカゴを重ねた形にするのは贅沢すぎませんか? なんて、人さまの買い物にケチをつけてはいけないけど...。

こういうストッカーは幾らで売っているのか調べてみましたが、確かに珍しい伝統的な形なのか、見つかりませんでした。
フランスで売られていた商品日本で売られていた商品

Claies pour fruits (ドイツ製)

左に入れたフランスで売っている商品は「果物のため」の明記されたストッカー。日本のは、野菜を入れるのが主で、果物も入れられます、として売っているように見えました。

野菜ストッカーを楽天市場で探す


ところで、人形がいたブルトイユ城の果実貯蔵室では、とても珍しいものを見ました。リンゴやナシの保存棚はよくあるのですが、もっと手間がかかるテクニックがあったのです。

昔の果実貯蔵方法を調べているうちに、偶然、その保存法の歴史がみつかったのでご紹介します。こちらの方が果物保存としては画期的で面白いです。

続きへ:
フルーツとして食べるブドウも長期保存できる方法があった

 シリーズ記事: フランスの伝統的な果物貯蔵方法 【目次




外部リンク
☆ Rustica: Stocker les fruits tout l'hiver
☆ Rustica(動画): Comment conserver les pommes
☆ オフィシャルサイト: Le potager du roi
ジョン・スタインベックとアメリカ農業(1) 「エデンの東」とカリフォルニアのレタス王

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コメント
この記事へのコメント
参りました!果物の棚だったのですね。棚の穴はリンゴが転がらないように、ガスがこもらないようにする工夫ですか。穴の形状に引っ張られて混迷の森に迷い込みました。そういえば6月、ベルンに行ったときに知り合いの住宅の半地下室で似たようなたな薄い引き出し式の棚を見せられ、果物を保存する棚だと教えられてのを、今頃になって思い出す情けない「をやぢ」でした。楽しいクイズとその詳しい解説を有り難うございました。
2013/11/30 | URL | をやぢ  [ 編集 ]
Re:
v-22 をやぢさんへ

ベルンで見ていらっしゃったのに残念! でも、城のような棚ではなかったので連想されなかったのでしょうね。

>棚の穴はリンゴが転がらないように、ガスがこもらないようにする工夫ですか。
⇒ 通風とか換気とか覚えばかりなので喜んで使ってしまいましたが、「ガスがこもらないように」という表現がぴったりですね。気がつけば、部屋は閉めっきりなのですから、通風なんかない! 文章を直そうと思います。
2013/11/30 | URL | Otium  [ 編集 ]
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