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2013/12/11
2ヵ月近く前から、時々思い出しながらフランスの伝統的な食料貯蔵庫について書いていました:
★ シリーズ記事目次: この建物は、鳩小屋? 穀物倉?

穀物や塩を貯蔵していた建物から始まって、伝統的な果物貯蔵方法まで書いてしまいました。続けるのはいい加減にやめようと思ったのに、もう1つ、気になっている貯蔵倉があったのを思い出してしまいました。


セリエって、なに?

食料の貯蔵といったら、ワインを貯蔵する建築物や部屋には特別な呼び名もあったのでした。ブルゴーニュ地方ではcave(カーヴ)というのがありますが、ボルドークではchaiという言葉を使うのだったっけ。 同じフランスなのだけれど、ワイン樽の呼び名も違う。

それは良いのだけれど、気になったのはcellierという単語です。語源はラテン語のcellariumで、つまり英語の「cellar(セラー)」と同じなのだ、と今頃になって気がつきました。でも、英語のwine cellarをフランス語にするとしたら、cave (à vin)だと思うので腑に落ちない...。

時々「セリエ」と呼ばれているところに行くことがあるので、cellierというものに漠然としたイメージを持っているのですが、正確には何を意味するの?

仏和辞典では、こう書いてあります:
(ワイン、食料などの)貯蔵室、倉

ワインセラーということではcaveやchaiと同じなわけですが、この2つは地下倉なのに対して、cellierは一階部分を使っているという説明がありました。ただし、ワインや食料を貯蔵するので、セリエは涼しいことが条件。

ワインの名前でも、「Cellier」と付いたのはよく見かける気がします。 検索してみたら、ブルゴーニュではネゴシアンが「セリエ」使っているケースが見えました。

もともとセリエがあったところというのもあるけれど、ただ名前を頂戴しただけという感じのもある。

確かに、ワインらしさを出すには「ワイン倉」と付けるのは良いアイディア。

cave(カーヴ)という単語を商号にしたドメーヌやネゴシアンはないのではないかと思います。「cave coopérative(ワイン農協)」というのがあって、そこで作っていると誤解されてしまいますから。

フランス人がcellierと聞いて何を連想するのかを知りたいと思って検索してみたら、こんなのが出てきました。


Sticker mural pour garage, Cellier 245 cm x 210 cm

ガレージのドアに貼ると良いとして売っているポスター。奥行がでるから良いのでしょうか?

やはり、セリエといえば、ワインセラーのイメージが強いのだろうと思います。

私がセリエと聞いて浮かべるイメージは、修道院にあった立派なワインセラーかな...。 Cellier des Moinesとか、Cellier aux Moinesという呼び名(僧侶たちのセリエと言う意味)がついたところに行ったのを思い出すからです。

セリエという単語で思い出したのは、シャンパーニュ地方にある「Cellier Aux Moines(僧侶たちのセリエ)」という名のレストランでした。



あそこは地下だったのではないかと思ったのですが、とった写真を見たら窓もある。 やはり、セリエは地下のカーヴではないのだ...。

この美しいアーチに文字が書いてあるのが見えるでしょうか? 20世紀初頭にこの地域のワイン醸造者たちが暴動をおこしたときの名残りなのです。セリエが気になったら、その暴動がどんなものだったのか知りたくなって調べていたのですが、本来の貯蔵庫の話しからそれてしまうので、次回にでも書くことにします。

次のページを作りました:
シャンパンの産地、オーブ県のワイン醸造者暴動(1911年) 2013/12/14

修道院のセリエは立派だから特別扱いするので目立つだけであって、一般の家でもワインや食料を貯蔵する場所として使っていた、とも書かれてありました。

そうですか?...  フランスで友人の家に行ったとき、初めての訪問だとよく家の中を案内して見せてくれるのですが、「ここはセリエよ」と言われたことがあったかな?...

でも、部屋のドアにつけるプレートを売っていたので、セリエという部屋がある家があるのだろうと思いました。

 
PLAQUE METAL DE PORTE CERAMIQUE CELLIER

絵は、ネズミとネズミとり。つまりは、食料を貯蔵する部屋でしょう? ということは、今でも持っている人がいるということ? あらたな疑問がわいてきました。


セリエの復活?

フランス語のWikipediaの説明では、cellierの本来の使い方は19世紀から無くなり始め、冷蔵庫や冷凍庫の登場とともに現代建築では不要なものになってきた、と書いてありました。Wikipediaに書いてあることは鵜呑みにしてはいけないのですが、そうだろうな、という気はします。

ところが、面白いことが書いてあった。

最近のフランスで注目を浴びている環境に優しい配慮をした住宅地であるecoquartier(eco-quartier)に、cellierと呼ぶ部屋を作るのが流行っているらしい。つまり、北向きだったりして、食料を貯蔵するのに適した涼しい部屋をつくって、エネルギー節減をするというもの。

ecoquartierとcellierをキーワードにして検索してみると、本当にたくさん出てきました。ひょっとしたら、セリエがあるのも条件なのかもしれない。

どこにセリエを作るかを見るために設計図を探してみました。住居の間取りによって違うのは当然。南にベランダがあるマンションでは、その反対側にセリエがある。こちらの設計図は大きく見られるのですが、玄関(Entrée)の横にCellierがあって、その奥のドアをあけるとガレージ、というつくり。あれ、あれ、そういう作りなら友人の家で幾つも見ていたな..。

ところで、ecoquartierというのは新しい言葉なので、仏和辞典なんかには出ていません。普通の仏仏辞典にだって出ていないようです(報道番組で、アナウンサーがそう言っていたので)。Wikipediaでも、フランス語のÉcoquartierからは英語のEcodistrictにしかリンクされていませんでした。他のヨーロッパ諸国で作られている住宅なのですけれど。

定まった訳語がないなら、フランス語の発音通りカタカナにしてしまうというわけで、このコンセプトを紹介している日本語の文章ではエコ・カルチエ、エコ・カルティエを使っていました(「・」をなしにするケースもある)。でも、カルティエといったら、フランスのブランドのCartierみたいになってしまう。 それで私はエコ・カルチエの方を使います。

「カルチエ」には、地域、街区のような意味があります。なので、住宅地とか団地と言うべきでしょうか。フランスでは都市に作られる、と言い切っても良いのではないかと思います。環境に優しいテクニックが使われているだけではなくて、都会でも田舎に住むように心が安らぐ環境がある、でも都市の便利さもある、というのが売り物。省エネの、持続可能な住居を増やしましょうというわけで、政府も推進しています。


エコ・カルチエとは、こんなところ

一見したら普通の集合住宅に見えるのもありますが、説明を聞かなくてもエコカルチエだと分かる風変りな外観の住居もあります。

私はフランスの伝統的な景観に溶け込んでいない奇抜さがあって美しくはない、と思うのは、例えばこんなところ:
BAYONNE ECO-QUARTIER

味気ないマンションより良いでしょけど...。お値段がついているので例にとりあげました。3部屋、65㎡が最低価格で156,400ユーロ。4部屋、81㎡で202,000ユーロですって。一番安い家でも2,200万円?! 仮設住宅か倉庫みたいな家なのに、高すぎると思うけどな...。

地価が高いところなのかもしれない。どこにあるのか気になりました。スペインに近いバスク地方の大きな町、バイヨンヌだそうなので納得。

田舎に見えるけど、都会でその環境なのだ。市の中心から10分で、近くに学校やショッピングセンターがあるという便利なところなのだそう。10分とだけ書いてあるけど、車ででしょうね。

ここは、集合住宅とmaison BBCからなっているらしい。BBCって何? イギリスの放送局でもないでしょうから。

調べてみたら、Bâtiment de basse consommation(英語にするとLow-energy house)の略語なのでした。エネルギー消費が少なくて、二酸化炭素の排出量が少ない家なのだそう。Wikipediaで日本語ページへのリンクがなかったのですが、やはり日本でも「ローエナジーハウス」とか「エアコンのいらない家」とか呼んで存在していました。

どんな家かという書き出しに、少し地下にもぐったcellierと駐車スペースがあると歌っています。セリエがあることは、そんなにセールスポイントになるの?...


フランスに特定したYouTubeで「ecoquartier」をキーワードにして検索すると、ど~っと出てきます(再生回数が多い順に並べたのは、こちら)。

HLM(公営低家賃住宅)をエコ・カルチエにするのも流行っています。HLMというのは所得が低い人が入れる住宅です。そのために、貧しい家庭が集まるだけに治安が悪かったりすることが多いので、非常に評判が悪い福祉住宅のイメージを持っています。日本人から見ると、高級建売マンションみたいに見えてしまうのもあるのですが。

福祉的な意味と、持続可能な住宅ということで、エコ・カルチエは脚光を浴びているようです。

グルノーブル市営のHLMの動画を入れます。兵舎を改造して作った地区でした。



日本の味気ない公団住宅も、こんな風になると良いですけど...。高級マンションでも、日本の都会には空間が足りないから、こういう環境は少ないのではないかな?...

ともかく、涼しい部屋といったらワインセラーくらいしか思い浮かべなかったのですが、現代のエコロジーからセリエが再度注目されているというのは面白く思いました。結局のところ、昔の人たちの方が賢かったのではないかとも思えてきてしまう...。


 シリーズ記事: この建物は、鳩小屋? 穀物倉? 【目次


ブログ内リンク:
北フランスで目撃した奇妙なヴィレッジ 2012/06/01 エコカルチエ

外部リンク
【エコカルチエ】
Capital Terre : Se loger mieux et plus ecolo 29.04.2012  テレビ番組(90分)
maison BBC.com
フランスの再生可能エネルギーはいま » (7)145もの建築群をモザイクのように配置、景観に配慮するリヨンのエコ市街
フランスの持続可能な地区整備事業エコ・カルティエと団地更新に関する研究
Compact City Policies A Comparative Assessment (Japanese version) 


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