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2013/12/20
先日から、2011年、シャンパーニュ・アルデンヌ地域圏のオーブ県が、シャンパンの産地から外されてしまったことによって、ブドウ栽培者たちが暴動をおこした背景を探っています。目次はこちら

大規模なデモもおこなわれて大事件となりましたが、それに先立って南仏でおきたブドウ栽培者の暴動のように死者を出すほどにはなりませんでした。バール・シュール・オーブ町にいたガストン・シェックと言う人が、冷静かつ理性的に指揮をした功績が大きいと言われています。彼は「政治はあと、まずパンを手に入れよう」と、いきまくデモ隊をなだめたそうです。

その運動の甲斐があって、オーブ県のブドウ畑はシャンパンの4つの産地の1つ、コート・デ・バール区画としてシャンパンの生産地となりました。

オーブ県はブルゴーニュ地方に隣接していて、土壌もシャンパンのメッカのランスやエペルネー近郊とは異なっているという背景はすでに見てきました。でも、フランス革命前はブルゴーニュ地方だった地域がオーブ県に入っていると持ち出したって、今は同じ行政地域に入っているのだから追い出しにくいですよね? オーブ県を排斥したがっていた人たちにとって、最も強力な言い分は、今日書こうとしていることだったのではないかと思えます。

当時のオーブ県は、ランスやエペルネーのあるマルヌ県とは違う品種のブドウを栽培していたのでした。 その経緯は後で書くことにして、まず現在の品種を見てみます。


シャンパンをつくれるブドウは7品種

シャンパンは1936年にAOC(原産地統制呼称)を獲得しています。生産地や製法などが厳格に定められていますが、次の7種類のブドウの品種から作られたワインであることも条件になっています。

まず、シャンパンになるブドウ畑の大半を占めるのは次の3種類。
品種(セパージュ)品種面積地区
pinot noir
ピノ・ノワール
赤ブドウ38%モンターニュ・ド・ランス地区、コート・デ・バール地区では、この品種が圧倒的に多い
meunier
ムニエ
赤ブドウ32%ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の土壌に合っている
chardonnay
シャルドネ
白ブドウ30%コート・デ・ブラン地区で気に入られている

この3種類のブドウの写真はこちらで並べて見ることができます。

なぜ「コート・デ・ブラン(白い丘陵)」と呼ばれるのだろうと思ったら、白ワインになるブドウが多い地域だからなのでしょうね。

暴動がおきたオーブ県のブドウ畑はコート・デ・バール地区で、ここではピノ・ノワール種が多いことをマーク。

この3つのほかに4種類が認められています。これはブドウ畑の0.3%にもならないので、上の畑面積比では無視されていました。
  • pinot blanc (ピノ・ブラン): 白ブドウ品種
  • pinot gris (ピノ・グリ): ピンクがかった灰色から青みがかった灰色まである
  • arbane (アルバンヌ): 白ブドウ品種
  • petit meslier (ピノ・メリエ): 白ブドウ品種
並べてみて気がついたのは、シャンパンになるブドウの畑の7割が赤ワイン用の品種であること。マイナーな品種が白ワインになる品種ということは、シャンパンは赤ワインと同じ品種が良いのですか。

始めの2つ(シャルドネピノ・ノワール)が、シャンパン用ブドウとして高く評価されている品種です。ブルゴーニュの上質ワインでは、白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールが使われているので、私には親しみがある品種です。

3番目のムニエ(ピノ・ムニエとも呼ぶ)という品種(右の写真)には馴染みがないのですが、シャンパーニュで多く栽培されている品種なのだそう。

歴史的には、シャンパーニュ地方で栽培されていた主要品種は次の2つとのこと。
  • gouais: 赤ワイン用の品種。「山のワイン」と呼ばれる地域で圧倒的だった。
  • fromenteau: 白ワイン用の品種。「川のワイン」の地域で圧倒的だった。
この「山のワイン(Vins de la Montagne)」、「川のワイン(Vins de la Rivière)」という聞きなれない分類は、先日の日記「シャンパンの産地、オーブ県のワイン醸造者暴動(1911年)」に書き出したシャンパンの歴史で、9世紀に登場していました。

フランスで栽培されているブドウ品種をリストアップして検索できるサイトが見つかったのですが、そんなにたくさんあるのなら、もう名前を覚えるのは諦めよう、という気になります!

シャンパーニュ地方で使われる品種の説明を日本語で見るなら、こちらの説明が親切:
オブリ兄弟によるシャンパーニュ用ブドウ品種8種の解説

ここでまた、今回探っている問題とは関係がないことへの疑問が浮上してきました。

シャンパンにできるブドウの品種を並べてみて気がついたのですが、7割が赤ワイン用の品種であるのでした。

ということは、シャンパンは赤ワイン用の品種が向いているということですか? 消えゆく運命にあるようなマイナーな品種は、ほとんどが白ワイン用の品種です。

普通に醸造すれば赤ワインになる品種で、透明なシャンパンができるというのは奇妙ではないですか?!


赤ワインになるはずのブドウから透明のシャンパンができる不思議

私がシャンパンに期待するのは、喉ごしが良くてスイスイ飲めるタイプなので、シャルドネーで作ったシャンパンが気に入っています。私好みのタイプは「Blanc de blancs(白の白、という意味)」と呼ばれるものなのだ、とマークしています。

でも、そう簡単には出会えないのでしたが、シャンパーニュ地方で栽培されるブドウの品種は赤ワイン種が過半数を占めると知ったら納得できました。

赤から白ができるという不思議については、今まで考えてみたことがなかったように思います。とはいえ、シャンパンのワイナリーに行ったときに、「これはピノ・ノワール100%のシャンパンです」と言われると、頭の隅にハテナマークができていたようには思いますが...。

果皮が赤というか、黒というか、の色をしたブドウが、赤ワインになるのは、全く不思議はありませんよね。でも、果皮の色素(アントシアニン)は、常温では果汁に溶けださず、醗酵過程で出てくるエチルアルコールによって溶けだしてくるのだそうです。それで、赤ワインを作るときは、ブドウが醗酵してから皮と種を取り除きます。

醗酵途中、まだアルコール濃度が低い段階でブドウをとりだすと、ロゼワインになります。これは知っていました。

思えば、赤ワイン用のブドウといっても、皮が濃い色をしているだけで、中まで赤いわけではありません。皮から中身まで赤いブドウもありますが、ピノ・ノワールの果肉は、白とはいえないとしても、薄い緑色というところでしょうか。

そうなると、赤ワイン用のブドウから透明なシャンパンを作ることもできるかな、とは思えてきます。

そう単純ではなかった。赤ワイン用のブドウからシャンパンを作るには工夫があるのでした。果皮から出てくる色素や渋みを出さないように絞るのだそうです。それで、シャンパーニュ地方で使われるpressoir(圧搾機)は普通のとは違う、と書いてありました。

確かに...、そう言われれば、そうだった!


ブドウの圧縮機が違う

ブドウの収穫期に行ったシャンパンを作っている農家で、ブドウの圧縮作業を見学したことがあります。


シャンパンのブドウ圧縮作業見学 2007/09/03

タライみたいに横広の圧縮機が珍しいと驚きました。ずいぶん前から使っているという木を組み合わせた桶の圧搾機でしたが、圧力をかけるのは電動。それを作動してから止めるタイミングを、責任者が真剣にコントロールしていたのを思い出します。

自分でブログに書いたことを忘れているので、このときの訪問について何を書いていたのか読み直してみました。

実が全部はつぶれていない状態で圧縮をやめて、また再開した、と書いてありました。あれは、一番搾り、二番絞りなんていう別々のものを作っていたのだろうか? でも、特に書いていないので、そんな風に徐々に圧搾していくやり方だったのではないかという気もします。でも、分らない。あぁ、すぐに忘れるのだから、ブログでしっかり記録しておけば良いのに...。

ともかく、こういう浅い桶の形がシャンパーニュ地方独特の形だったのですね。

ブルゴーニュにいると、ブドウの圧搾機はワイン産地のシンボルとして、道路脇にもよく置いてあってあります。余りにも見慣れています。そういうのをブログにしたことがありませんでしたが、たまたま写真を入れていたときの日記から写真を取り拾っておきます。

人間が5人、人形が3体
ブルゴーニュのワイン祭り:
サンヴァンサン・トゥルナント (3)

2009/01/29

クイズ: これは何でしょう?
(ホテルレストランの木)

2013/03/27

こういうのが、ブルゴーニュのどこにでも転がっているブドウ圧搾機。でも、もっと古い時代のものだと、シャンパーニュ地方のように浅い形をしている物が多いようにも思えました。

例えば、ブルゴーニュの観光写真によく登場し、ワイン博物館にもなっているクロー・ド・ヴジョー城に展示してある12世紀のブドウ圧搾機は、こんな形をしています。

Clos Vougeot
Pressoir du Château du Clos de Vougeot (XIIe siècle)

ブルゴーニュの古い圧搾機の写真がWikipediaに並んでいました(こちら)。 私に馴染みのある樽の深さがある圧搾機は、機能性を重視してきた19世紀以降の形ではないかとも思えてくる。ひょっとして、シャンパーニュ地方では、そういう浅型がシャンパンを作るのに適しているとして保存したのかな?...


また話しが脱線してしまった! オーブ県が20世紀初頭にシャンパンの産地から外されそうになった理由を探っているのです。

オーブ県を仲間外れにしようとした主張の中には、昔はシャンパーニュ地方ではなかったから、というのもありました。でも、当時のオーブ県で栽培されていたブドウの品種がシャンパンには相応しくないというのが最大の切り札になっただろう、と私はみています。それで、ブドウの品種について書き始めたのでした。

当時のオーブ県で栽培されていたブドウの品種は、現在のAOCシャンパンで許可されている品種の中には入っていませんでした。それについて次に書きます。

 シリーズ記事: 百年前、なぜシャンパンの産地で暴動がおきたの? 【目次


外部リンク
Champagne (les cépages oubliés) arbane, petit meslier, pinot blanc, pinot gris
【フランスのブドウ品種オンライン辞書】
Guide des cépages - Le Figaro Vin
Catalogue des cépages inscrits en France

内部リンク:
シャンパン祭りで醸造所を見学 2006/08/01 ピノ・ブランについて


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