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2013/12/19
間違ったフランス語をしゃべると、いちいち直してくれる友達がいます。間違っていると分かるということは、つまりは私が言いたいことの意味はとれている、ということではないですか? 私にとってフランス語は外国語なのだから、見逃してくれたって良いではないか、と思ってしまう...。

言葉を直したりしていると、親の役割を演じている気分になるらい。私の服装がおかしいときとか、フランス式挨拶をするのを忘れたときとか、色々なことを注意してくれます。

言われたことの1つに、「Wikipediaはデタラメばかり書いてあるのだから、読んじゃだめ」というのがありました。書いてあったことが腑に落ちなかったので説明を求めたときに言われました。

確かに、たまたま私が知っていること、特にフランスの特殊なことに関する日本語ページなどは、ほとんど間違いばかりという気がしないでもありません。でも、知らないことを調べるには、Wikipediaは便利なのですよね。写真もたくさん入っているし、辞書には出ていない新語の外国語訳を探すのにも極めて便利。

知らないことを調べたときには、なるほど~ と感心してしまいます。でも、誰でも書き込みができるわけだから、間違っている可能性はあるのは事実。知らないことに関しては、本当かウソかさえ判断できないので、危険ではあります。

前回の日記「シャンパンが作られるシャンパーニュ地方の境界線を何処でひく? (2)」に書いたWikipediaの記述が、間違っていないのか、少し調べてみることにしました。

少し感情的になっていると感じたのですが、言っていることは間違ってはいないと思いました。調べていたら、知らなかったことも学べたので感謝です。


シャンパーニュの語源

少し前から、シャンパーニュ・アルデンヌ地方の南にあるオーブ県が、シャンパンの産地として外されたことから暴動がおきたということの背景を探っています。Wikipediaの記述だと、オーブ県はシャンパーニュ地方らしくないので、シャンパンの産地になっているのはおかしいと言っていたのです。

歴史的にシャンパーニュ地方でなかった地域がオーブ県にあったことは、すでに確認しました。では、地形は?

フランス語では、飲み物のシャンパンと、行政区分であるシャンパーニュ地方に対して、Champagneという単語が使われます。飲み物は男性名詞、地方名は女性名詞という違いがありますけれど。

辞書には、この2つのほかに、もう1つ項目がありました。地理用語としての「シャンパーニュ(女性名詞)」で、「解放耕地、白亜質平野、石灰質平野」と訳されています。

champagneの語源は、後期ラテン語のcampania(田舎、野原)でした。田園や田舎を指すcampagne(カンパーニュ)と同じ仲間だとは知らなかった。

山岳部も田舎としてのカンパーニュだけれど、フランス人にカンパーニュといったら田園風景をイメージすると感じています。大きく2つに分ければ都市部とカンパーニュでしょうが、観光地の分類などでは、都市、海浜部、カンパーニュ、山岳部という分け方をしています。つまり、ここでのカンパーニュは「田園」とか「平野」としか訳しようがないでしょうね。「田舎」とは置き換えられない。

フランス国土は、平野部が3分の2にもなっています。日本は逆で、平野部の面積は3割しかない。それで日本人にとっての田舎といえば、背景に山がある風景になりませんか?

「里山」という言葉のフランス語訳を知りません。たとえ定番の訳語があるとしても、それがどんな意味を持っているかを長々と説明しないと、フランス人には通じないと思います。ちなみにWikipediaで「里山」を出してみると(また、やっちゃった!)、外国語としては英語にだけリンクがあって、開いてみると、タイトルは「Satoyama」となっていました。

ともかく、フランス人は、山と平地をごっちゃにはしない傾向にあるように思います。少しでも小高い山や森があると、平野に与えられる「シャンパーニュ」には相応しくないらしい。


視界が広がった平野部のブドウ畑でないと、良いシャンパンができないの?

オーブ県は、平野ではなかったっけ? アルバムに入っている写真を探して眺めてました。年は違うけれど、9月に撮影した2枚で比較してみます。

まず、シャンパン産地の代表とされるマルヌ県のブドウ畑 (ランス市近郊)のブドウ畑。



平坦で殺風景なブドウ畑だな、と思ったのを思い出しました。 こんなところが高級ランクになっていると驚いて、少し前の日記「シャンパンが、余りにもステータスが高いのがいけなかった?」に入れた、特級ランクのシャンパンになるという標識の写真をとったように思います。

あれから二度とマルヌ県のブドウ畑に立ち寄ってみていないのは、あのとき見たブドウ畑が全然美しくないと思ったからだろうと思います。あのだだっ広さに驚いた記憶がよみがえってきました。あれがシャンパーニュと呼ぶ平野の姿でしたか。

次は、オーブ県のブドウ畑 (バール・シュール・セーヌ町近郊)の写真です。


この時見たブドウ畑はブログにしていました:
収穫を待つシャンパーニュのブドウ畑 2013/09/20

本当だ~、マルヌ県とは全然違う!


オーブ県がブルゴーニュと似ているとしたら...

ソムリエコンクールでワインの名を当てるのがありますが、同じ銘柄だって畑によって全く違うし、同じ畑でも年によって違うのだから、あれは銘柄の特徴がよく出ているワインを選んで使っているのではないかと思っていました。でも、景色を見せて、これはどこの畑でしょうとやったら、正解を出すのは難しくないかもしれない。

でも、地域の可能性を広げたら、何処かを当てるのは難しいだろうな。2枚目のコート・デ・バールの風景なんか、ブルゴーニュのオート・コート・ド・ボーヌとかオート・コート・ド・ニュイのあたりと似ています。そうか~、Wikipediaの書き込みにあったように、ブルゴーニュに似ているか...。


下は、ニュイ・サン・ジョルジュから山の方にあがったところに開けていたオート・コート・ド・ニュイのブドウ畑です。


この写真を使った日記:
夕方になって、やっとブドウ収穫に出会う♪ 2012/10/07

こちらの方は、もっと森が多いですね。それに、ブドウの木を高く育てているので、やはり何処の畑かは見分けられそう。

それにしても、ブルゴーニュに似ていて何が悪い! 良いワインができる土地では、良いシャンパンはできないと言いたいの?!


平野で農業をする方が豊かになれる

Wikipediaの書き込みでは、オーブ県のブドウ栽培農家は小規模生産なので貧しくて、シャンパンの中心的な存在のマルヌ県の方は大規模経営なので雰囲気が違うと指摘していました。

それも、確かにそうだと賛成します。

ブドウ栽培者の暴動がおきた当時に生まれた歌がありました。『Hymne des vignerons champenois de l'Aube(オーブ県のシャンパーニュ・ブドウ栽培者賛歌)』という題名。

フランス革命のときに今のフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』が歌われたように、彼らがデモ行進をするときに歌ったのでしょうね。威勢の良い歌詞です。「マルヌ県の百万長者たちに追い出されたオーブ県のヴィニュロン(ブドウ栽培者)よ、立ち上がれ」、なんて言っています。

彼ら自身も、自分たちが貧しいことを自覚していたのです。今でこそ、オーブ県のシャンパン製造農家は小規模生産でも豊かそうに見えるのですが、ほんの少し前には貧しかったのだろうな、と思うものがブドウ畑に残っています。

例えば、昔の農作業で使っていた畑の中の小屋。オーブ県のシャンパン祭りに行ったときに出会いました。ここで雨宿りをしたり、暖をとったり、農作業が忙しいときには寝泊まりもしていたのだろうと思います。



この写真を入れて小屋について書いた日記:
昔のブドウ畑にあった「カドル」と呼ばれる小屋 2006/08/24

こういう小屋は、車で畑に行けなかった時代には必需品でしょうから、どこにでもあったのだろうと思います。ブルゴーニュ地方の上質ワインを生産する地域でも少しは残っていますが、もっと居心地が良さそうな小屋です。

それから、オーブ県のシャンパン醸造農家で、昔ながらの木組みの装置でブドウを圧縮しているのも見学していました。



この写真を入れた日記:
シャンパンのブドウ圧縮作業見学 2007/09/03

エコロジーが重視されるようになった最近でこそ、ブルゴーニュの高級ワインの生産地では作業馬で畑を耕させていたりしますが、こんな圧縮機を使っているところがまだ残っているのだろうか?...  足でブドウを踏んで圧縮するという農家も、ブルゴーニュの高級ワイン産地でも見ていますが、ああいうのは高い値段で売れるワインだからできることだと思っています。

色々思い出してみると、オーブ県のブドウ畑では、昔と呼べる時代が、それほど昔ではない時代まで続いていたように感じました。普通なら、もうとっくの昔になくなってしまったようなものが残っているのです。

たとえば、こんな雹対策装置。もう使ってはいないだろうと思いますが。



これについて書いた日記:
フランスのブドウ畑で見た奇怪な装置 2007/09/08

オーブ県で撮影した写真を眺めていたら、Wikipediaの書き込みにあったように、やはり森や生垣が迫った地域だなと思いました。

ところで、シャンパーニュには平野という意味があると知って、理解できたことが別の分野にもありました。


コニャックでも、良いブドウは平野で育つとされていた

コニャックに「フィーヌ・シャンパーニュfine Champagne)」というのがあります。

「フィーヌ」というのは「繊細な」という意味なので、高級イメージを与えるのですが、なぜコニャックなのにシャンパーニュという言葉を使うのだろうと不思議ではないですか?

シャンパーニュと聞いたら、日本語ではシャンパンを想像しますから。

コニャックのメーカーで働いていたときに教えてもらったでしょうに、すっかり忘れていました。

実は、これはシャンペンのシャンパーニュ地方とは無関係で、シャンパーニュの語源と同じに平野を意味するのでした。

ちなみに、コニャックは、次の5つのクリュに分れていました:
  1. Grande Champagne
  2. Petite Champagne
  3. Borderies
  4. Fins bois
  5. Bons bois
  6. Bois ordinaires
文字の意味から読んでしまうと、すごい差別をした命名ですね...。

champagne(シャンパーニュ)というのが平野部で、それに偉大なのと小さいのがある。それから、bois(ボワ)というのは森で、繊細なの、良いの、普通なのと3種類ある。

その中間にあるBorderieも地形から来ているのだろうと想像すると、小作地(家屋と家畜が付属していた分益小作地)で、森よりはマシなブドウ畑というところなのでしょうね。

フィーヌ・シャンパーニュというのは、1番目のグランド・シャンパーニュの畑のブドウを半分以上に、2番目のプティット・シャンパーニュのブドウを使った場合に与えられる名称でした。

コニャックで撮影した写真を探してみました。コニャックを買いに行った農家の家の前に広がっていたブドウ畑です。
 


本当に、まったいら! でも、向こうの方に森が見えます。こういうところがBorderieかな?... 覚えているのは、この畑を持っている農家の庭に大きなバナナの木があって、ちゃんと実がなるのだと言われたことくらい。

ともかく、ブドウを栽培するには平野部が良い、なんて想像もしていませんでした。ブルゴーニュでは、朝日を浴びる勾配がある丘のブドウから良いワインができるとされていますから。

それにしても、コニャック地方のブドウ栽培者たちは、そんなあからさまな名前で畑のランク付けをされて怒らなかったのだろうか?... Bois ordinaires(並以下の森)なんてのは、酷いですよ。本当に森の中でブドウを育てているわけではないでしょうし。

オーブ県のブドウ栽培者たちは、県内で作るシャンパンをBasse Champagne(低シャンパン)あるいはChampagne deuxième zone(第2ゾーン・シャンパン)と明記しなければいけないという規定ができてしまったので、その不名誉をとりさげるように戦ったのでした。

でも、コニャックの場合は、ボトルのラベルに「ふつ~うのコニャック」なんて書くような規定はできていないのではないかと思います。

そういえば、ブルゴーニュワインでも、下のランクのアペラシオンにBourgogne Grand Ordinaireなんていうのがあったっけ。

いくら「grand(偉大な)」と付けたって、やっぱり「ordinaire(普通、並以下)」なわけなので、名前を聞いたら飲む気になりませんけど...。

シャブリでは、「プチ・シャブリ(小さな)シャブリ」という呼び方を別の表現にするという運動があったけど、どうなったかな?...

まだ「プチ・シャブリ」として売られているので、改名には成功していないようでした。

ところで、この「プチ・シャブリ」と言うアペラシオンは、シャブリの4つランク付けの中で最下位のワインなのですが、これは平野部のブドウ畑だと与えられる名称のようです。

シャンパーニュ(シャンパン)はシャンパーニュ(平野)なのだから、平野で栽培するのが本当のシャンパンなのだ、という言い分はよく理解できません...。

シャンパンの産地から外されたことによっておきたオーブ県のブドウ栽培者の暴動について書いているのですが、地理的、歴史的に問題があったという以外の理由もありました。

それは何でしょう?クイズにしたら答えが出るでしょうか? 私は全く考えてもみなかったことだったのですが。

これはオーブ県のワインがシャンパンにできないという主張として筋が通っていると思いました。でも、そこでまた謎が生まれてきてしまった...。

まだ、このシリーズ日記を続けなければなりません。


【追記】

 

カシオEX-word 電子辞書
フランス語モデル XD-N7200
もっぱら電子辞書とパソコンに入れた仏仏大辞典しか使わなくなっているのですが、さきほど電子辞書のボタン操作を間違えて、いつもは使わない小さな仏和辞典の画面を出してしまいました。

ペーパー版は持ち運べるくらい小さな辞書なのに、ずばりのことが書いてあるので驚きました。

私がシャンパーニュとコニャックを比較していたのが分かって返事してくれたのかと、一瞬思ってしまいました。第一、そのときchampagneをひいていなかったのですから、履歴から戻って出してきたらしいのです。薄気味悪いな...。

地理用語としてのシャンパーニュのところに、こう書いてあったのです:

シャンパーニュ地方・シャラント地方などに見られる白亜質の土壌の平野

コニャック市はシャラント県にあるのです。だから、お酒でもシャンパーニュという言葉を使うわけですか。

それにしても、地理用語としての「シャンパーニュ」は解放耕地とか平野を意味するから、オーブ県はシャンパーニュ地方らしくない、と言われたのが気になってなりません。

ワインにするブドウを栽培するには、穀物畑ができるような平原は避けると思うし、平地で栽培したらワインの質が悪くなる、というのは常識ではないかと思うのです。

インターネットだけでもあり余るほど情報があるので全部読む気にはならないのですが、シャンパン生産者組織のサイトでこの点を確認していなかったのに気がついたので該当ページを探してみました。

シャンパーニュの土壌の3番目の特徴を書いたページに、丘陵地にブドウが植えられている、とデカデカと書いてある! ブドウ畑にはつきものの単語、coteau(小さな丘)を使っています。

起伏あるので水はけは良いし、傾斜があるから太陽の恵みを平地より受けるし、大半のブドウ畑は南、南東、東に向いているのでなおさらだ、とPR。

ダメ押しでしょうか? 17世紀には、シャンパンは「vin des coteaux(丘陵地のワイン)と呼ばれていました、と書いてある!

シャンパーニュ地方のブドウ畑のこう配は平均12度で、場所によっては59度などというところもあるのだそう。でも、12度というのは、やはり、なだらかかな...。平らでないと言われたオーブ県のブドウ畑(全体の23%を占める)が入って、それだけなのだから。

 シリーズ記事: 百年前、なぜシャンパンの産地で暴動がおきたの? 【目次


ブログ内リンク:
★ 目次: シャンパンとスパークリングワインに関する記事


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コメント
この記事へのコメント
こういう話題は日本語ではほとんど拾えないので、大変勉強になります。

オーブのシャンパーニュは飲んだことがありませんでした。
地理的、歴史的な差で無いとすると、品種か製法に関わる違いでしょうか・・・
今となっては考えにくいですが、当時はオーブ地区ではソーヴィニョンブランかゲヴェルツ、リースリング辺りを栽培していた。とか
2013/12/20 | URL | albifrons  [ 編集 ]
Re:
v-22 albifronsさんへ

コメントをいただくたびに、広い分野に渡って知識がおありなので驚いていたalbifronsさんから「勉強になります」と言っていただいてしまうと、恥ずかしいような、嬉しいような (#´ε`#ゞ...。

さすがalbifronsさん、ずばり目をつけられましたね。品種が違うというのはオーブを追い出す切り札に使えただろうと思いました。シャンパンにするには個性が強すぎる品種なら分るのですが、これをシャンパンにしたって良いじゃないかとも思える品種なのでした。ピノ・ムニエなどというのはワインで飲んだことがないので、本当にシャンパンに向いているのかどうか私には分らないので...。
2013/12/20 | URL | Otium  [ 編集 ]
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