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2014/04/26
トロワ市に行く途中、目的地から10キロのところで道路に出ている観光スポットの看板が目につきました。

Eglise aux trois sanctuaires

3つの内陣がある教会。ミサを行う祭壇がある部分が「sanctuaire(内陣)」なのですが、それが3つあるという意味? どんな教会なのか、気になるではないですか?

フランスは観光国なので、ガイドブックなしにドライブしていても、立ち寄ってみたくなる観光標識があちこちに立てられています。観光スポットが目白押しの地方では選ばれた本当の観光スポットの表示なのですが、そういうものが余りないところでは、わざわざ寄り道したら損というのも多いのです。

ここシャンパーニュ地方は、それほど目立つ歴史的建造物がない地方です。それで、これも大したことがないのにPRしているのだろうと思いました。

でも急いでいたわけではないので、行ってみることにしました。

Isle-Aumont(イル・オーモン村)です。シャンパーニュ=アルデンヌ地域圏のオーブ県の県庁所在地トロワ市(Troyes)からは10キロという距離なのですが、田舎の真っただ中です。


3つの内陣がある教会?

2棟になった教会は珍しい姿でした。


Eglise aux trois sanctuaires dédiée à Saint Pierre, Isle-Aumont

でも、やはり教会には鍵がかかっていて、中には入れません。仕方ないので、教会の周りをぐるっと歩いてみました。

別にどうという風にも見えない。やはり誇大広告ではないかと思いました。看板も手作りのように粗末なものだったし...。でも、1カ所、鉄格子を付けた小さな窓があって、そこから覗き込んでみると、昔の石棺が並んでいて、なんだか見学する価値があるように見える...。

教会の敷地に入る門のところには、見学したい人は役場から2軒目の家のブザーを鳴らして来てくださいというような張り紙が出ていました。でも、お邪魔してはね... と遠慮。

教会の前の道路の向こうには、このあたりの観光地図が出ていました。そこに、この絵がある。



どうやら、この小高い丘(butte)の上にはシャンパーニュ公の城があって、そこにあった修道院の教会らしいのです。としたら、価値ある教会なのでは?...

再び「教会を観光したい方は...」という張り紙を見ると、「どうぞご遠慮なく」と始まっていて、電話番号まで書いてあって、最後は「メルシー(ありがとう)」と結ばれています。教会の鍵を預かっている人は、見学者が来るのを歓待しているように見えます。こういう張り紙がある教会も時々あるのですが、ただ鍵は誰それが預かっています程度しか書いてありませんから。

でも、信者でもないのだから鍵をあずかっている人のお邪魔をするのを遠慮しようと思ったところ、すぐそこに役場の建物が見えました。それなら、そこから2軒のお家に行ってみて、お邪魔そうだったら見学するのはやめようということにしました。

かなり高齢の女性が出てきて、鍵を開けてくださるとおっしゃてくださいました。


教会を案内していただく

教会まで歩いて行く道で、「ご説明しましょうか?」と聞いてきました。もちろん、お願いします♪ そう答えたのだけれど、ここまで見事な説明をしてくださるとは全く予期していませんでした。教会の鍵を預かっているのは、その教会の敬虔な信者のお婆さんというのが普通ですから。

この丘には、すでに9世紀からヴァイキングたちが城塞が築かれていた。カロリング朝の時代、10世紀に、この丘にあった石棺を使って教会が築かれた。11世紀に、シャンパーニュ伯が城を築く。現在残っているのは、城の一部と教会のみ。

その城の残りを使った建物が教会の隣にあって、その家の息子さんが考古学者、。そこで、ここを徹底的に調査・修復して今日の姿がとどめられているとのこと。Jean Scapula(1943~1961年)という人で、教会の見学ガイドもその人がしていて、この日案内してくださったマダムは彼から教会の歴史を学び、ガイドの後継者となったとのこと。

教会の入り口で説明してくださいました。先ほど見たときには全く気づかなかった彫刻を示してくれました


Le mauvais escargot

右の赤い矢印を入れたところに、キャベツを貪り食っているエスカルゴ。左の黄色い矢印のところに、エスカルゴの殻があります。エスカルゴはブルゴーニュが本場なので、ブルゴーニュではエスカルゴの彫刻を時々見るのですが、ここもブルゴーニュの影響があったのでした。シャンパーニュとブルゴーニュはお隣同士なので、交流があったのは不思議ではありません。

貪欲なエスカルゴと、死んで殻になってしまったエスカルゴの対立。生と死、死と再生、に見えるとのこと。なるほど...。

こんな見落とすものを示してもらえるのが、ガイドさんがいるときの喜びです。


◆ 驚くほどリアルな聖像

教会の中に入ると、先ほど小さな窓から垣間見た石棺が並んでいます。考古学者は、この丘に千も墓所(うち600はメロヴィング朝の石棺)を発掘したのだそうです。その幾つかが教会の中に置かれていたのでした。



入り口を入ったところにある聖像が素晴らしすぎる...。非常にリアルなのです。


Le Christ de pitié
Isle-Aumont, Église paroissiale, Statue Christ de Pitié

十字架にかけられる前のキリストの姿。写真ではよく見えませんが、あばら骨や静脈が浮き出ているところなど、非常にリアルに彫られています。

このポーズは、友人の父親が住んでいた家の屋根裏部屋にあったのが何の姿なのかで調べたりしたことがありました。

そのときの日記:
屋根裏部屋にあった古めかしい彫刻の解読を試みる 2013/06/12


美しい聖母子像

私の目が釘付けになったのは、その左手にあった聖母子像。こちらも同じく、16世紀の石灰岩の彫刻でした。



高さ150センチの聖像です。
左手に座っているのは、この像を寄進した人なのだそう。

衣服の柄は非常に繊細。そこかしこに意味のある人物なども彫りこまれているので、説明を聞きながらしげしげと眺めました。ブログでは大きな写真は入れないことにしているのですが、これは入れましょうね。


Isle-Aumont, Église paroissiale, Statue  Vierge à l'Enfant

抱かれたキリストの首にかかっている十字架が正しい位置になっていない理由は分からないのだそうです。

この日、ちゃんとしたカメラを持って行かなかったのが残念...。このほかにも、素晴らしい聖像の数々があったのですが、どれも耐える画像にはなっていません。また行かないと...。


◆ なぜ3つの内陣がある教会なのか?

さて、なぜ内陣が3つもあるのかは単純でした。

昔からある教会は、たいてい古いものの上に重ねて増築していくのですが、ここは2棟の身廊があり、内陣が2つ残されていたのでした。さらにカロリング朝の祭壇もあった教会なので、3つの祭壇がある、というわけなのでした。



カロリング朝の祭壇(10世紀)
これはクリプトとして残っていなかったので、考古学者が見つけ出した祭壇の石で再現されたもの
ベネディクト会の内陣(12世紀末)
赤い矢印のところに帆立貝の彫刻があり、ここがサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路にあったことがわかります
16世紀の内陣

案内していただいた方と別れてから疑問がわきました。昔にあった内陣が地下のクリプトとなっている教会もあるではないですか? そこに祭壇が置かれていることもあります。そういう教会なら「内陣が2つある教会」と言わそうなものなのに、聞いたことがないような気がするのです...。イル・オーモン村の教会の場合は、地上に残った内陣が2つ、さらにクリプトも復元したということに特徴を出すために「3つの内陣がある」という呼び方を作ったのかな?...

現在ミサに使われているのは③の新しい内陣部分だそうです。



こちらの内陣は普通のよくある教会に見えるのですが、信徒席の部分には素晴らしい数々の聖像がありました。

教会を見学しようとしたときにドアが閉ざされていると不愉快に思うのですが、ここは宝物だらけなので、盗難にあわないようにしっかり鍵をかけておいて欲しいと思いました。
 
教会に置いてあるもの1つ1つ説明してくださって、教会の外まで案内してくださいました。こういう名も知られていないところで傑作を見出すのは感激です。どんな見学かは、最後に入れる動画のリンクをご覧ください(始めにコマーシャルが長々出てきますが)。

案内してくださった方にどのくらいの人が訪れるか聞いてみたら、1日に数人来ることもあるし、1週間誰も来ないこともあるとの返事。2人で交代してガイドをしているようでしたが、そのくらいの訪問客ならボランティア・ガイドを楽しんでやれるでしょうね。この教会が有名にならないように祈ります!


ところで、ここにあった彫像はトロア派の作品で、実に繊細な彫刻をするのが特徴なのだそう。もっと知りたくなりました。思い出せば、素晴らしい彫像がたくさんあるので驚いたシャウルス町の教会は、ここからさほど遠くないところにあったのでした。

そのときのことを書いた日記:
彫像の宝庫だったシャウルスの教会 2011/08/21

フランスの教会は、イタリアとは違って、めぼしい芸術作品は博物館に保存されてしまうのですが、シャンパーニュ地方は違うのかな?... 最近はめっきり遠くに行く長期旅行はしなくなっているので、近場としてシャンパーニュ地方の教会めぐりをしようかと思いました。


教会の用語はややっこしい

3つのSanctuaireがある教会と書いてあるのを見たときには、このSanctuaireという言葉の意味がピンとはきませんでした。教会関係では余り使わないように思うのですが、どうなのだろう?...

Sanctuaireと聞くと、私はすぐにサンクチュアリを思い、続いて神社に使うSanctuaireを連想して奇妙な気がしました。でも、ミサを行う祭壇があるために聖なる場所、という意味なのでした。日本語にすると「内陣」で良いのだと思うのですが、それを言うのならChœurの方が聞きなれています。

おさらい。
仏語英語日本語
Sanctuaire shintoShinto shrine神社
SanctuaireShrine【カトリック】内陣:聖堂内で中央祭壇が置いてある聖なる部分
ChœurChancel
presbytery
【キリスト教】(聖堂)の内陣、聖歌隊席:典礼で聖職者、聖歌隊が占有する部分で、一般的に主祭壇の前方に左右向い合せの形で設けられている座席。
※Wikipédia仏語では、祭壇があるSanctuaireを含む部分となっていることもあると説明。Chœurから日本語ページへのリンクは
クワイヤになっているが、それは仏語のStallesではないかと思う。
Stalles du chœurChoir stalls(教会内陣の)聖職者席、共唱祈祷席
Wikipediaでは日本語ページへのリンクはない。
MiséricordeMisericord【家具】(聖堂内聖職者席の)起立姿勢維持の支え
※Stallesの椅子にある美しい彫刻にはこの用語を使う。
ChœurChoir聖歌隊
AutelAltar祭壇
CrypteCrypt地下聖堂

フランス語には良い辞書がないので、英語で何というのかも確認しておかなければなりません。でも、英語はビジネスでしか使ったことがないし、イギリスに行ったときも教会を熱心に見学しなかったように思うので、教会関係の用語の知識はほぼ皆無。並べた中で知っているのはShrineだけでした。

ひっかかったのは、Chœurの訳語に「聖歌隊席」という訳語でした。聖歌隊というと、私は讃美歌を歌うコーラスを思い浮かべてしまうので。聖歌隊席というのはStalleのことを指しているのかという気もするのですが、それなら僧侶たちの「共唱祈祷席」と呼んでもらいたいけど...。でも、聖歌隊も祭壇のそばに立つから良いのかな?...

ブログ内リンク:
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路に関する日記
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
Association Jean Scapula, Isle-Aumont
L’Eglise aux trois sanctuaires dédiée à Saint Pierre
☆ 動画: L'église d'Isle-Aumont - 14 Février 2013
Isle-Aumont, Église paroissiale, Sommaire objets mobiliers
Fouilles de la Butte d'Isle-Aumont (Aube)
☆ Wikipédia: Isle-Aumont
Basilique Saint-Urbain à Troyes - L'école troyenne de sculpture
Wikipédia: Plan type d'église (Eglise classique en forme de croix latine)
Wikipédia: Architecture chrétienne du Moyen Âge > Plan d'une église


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