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2014/05/03

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その2


友人が遺産相続した父親の家があり、とりあえずガラクタを捨てて掃除をしていたら、屋根裏部屋の壁に古めかしそうな彫刻が埋められていました。



この彫刻が何を意味するかを私が勝手に想像して日記にしていました。それから一年近くたった今、キリスト教文化にお詳しいaostaさんがコメントを入れてくださり、色々と知らなかったことを学んだのでメモしておくことにしました。

その記事はこちらです:
屋根裏部屋にあった古めかしい彫刻の解読を試みる 2013/06/12


4つの花弁のモチーフの意味は?

この彫刻が何であるかを解読してみようとしたとき、4つの花弁を持つ花のように見えるものが気になっていました。 手を前に組んだ人の下にある模様です。

これは、世界遺産に登録されているヴェズレー村にあるサント・マドレーヌ大聖堂の壁面にあったデザインと同じように見えます。


ヴェズレー大聖堂: 素晴らしいロマネスクの柱頭彫刻 2013/06/24

ヴェズレーの大聖堂は12世紀に建築されたロマネスク様式。この時代に使われていたということは、何か意味を持っていたはずではないですか?

さらに、良く似た構図の絵が見つかりました。15世紀のフレスコ画で、天使に支えられたキリストです。

Andrea del castagno, Christ in the Sepulchre with Two Angels by Andrea del Castagno 01
Andrea del Castagno - Christ au sépulcre avec deux anges, 1447 - Fresque Florence

屋根裏部屋で見つかった彫刻には両側から支える天使はいないものと酷似しています。フレスコ画では、下にある四角いものが墓として描かれています。しかも、花びらマークが3つあるのも同じ。

フレスコ画の方は、花弁の中央にある部分(柱頭?)が人の顔に見えるし、左右の花弁は丸くないので不思議です...。

これについて、コメントをくださったaostaさんが謎を解読してくださいました!
仏語でも把握しておかないとフランスで観光するときには役に立たないので、それも入れて理解したことをまとめてみます。

キリスト教では、天使には9つの階級がある

archange: 大天使、9階層の天使のうち第8階級の天使。
カトリックの3大天使: 「受胎告知」の画面に現れるガブリエル(Gabriel)、ミカエル(Michel)、ラファエル(Raphaël)

9階級のうち、最上級の天使は、セラフィム(でSéraphin)。熾天使(してんし)とも呼ばれる。
セラフィムは3対6枚の翼を持ち、2枚の翼で頭を、2枚で体を隠す姿で描かれるのだそうです。このような姿ではないでしょうか?

Seraphim - Petites Heures de Jean de Berry
Seraphim - Petites Heures de Jean de Berry

aostaさんの解説によれば、セラフィムは絵画作品では顔から直接羽が生えているような造形で描かれることが多いので、場合によっては羽が花びらのように見えることもあるかもしれないとのこと。

上に入れたフレスコ画で、キリストの墓に描かれた4枚の花弁にしては奇妙なデザインは、セラフィムと説明されれば納得できます。

さらに、セラフィムが持つ6枚の翼は、上と下を閉じればを4枚の花弁で描くことができると見えてきました。 

Giotto - Legend of St Francis - -19- - Stigmatization of St Francis.jpg
『聖痕を受ける聖フランチェスコ』 (フレスコ画; ジョット・ディ・ボンドーネ作)

StFrGiottoLouvre.jpg
François d'Assise recevant les stigmates par Giotto


4つの花弁がある花のモチーフが3つ並んでいる意味は?

aostaさんは、キリスト教における「3」という数字の意味を指摘されました。

「3」という数字は、三位一体に通じる数であり、天を象徴するもの、そしてキリスト教で最高の徳とされている「信仰・希望・愛」を示す数でもあることから神聖な数字とされている。

屋根裏部屋の彫刻でも、フレスコ画の墓でも、3つのモチーフが描かれているのは、そのためではないかという分析です。こちらも納得!

さらに、「天」を象徴する3に、地を象徴する「4」を加えた「7」も完全数といわれるのだそう。


スミレでたとえる意味は?

屋根裏部屋にあったキリストの墓と思われるものに入っていたのは、花びらが4枚のモチーフです。

ロマネスク教会の基本的なモチーフを紹介するフランスのサイトに入っていたデザインにそっくりで、そのモチーフをスミレの花(Les violettes)と呼んでいました。

Violetteフランス語でスミレに相当する単語は、violetteとpenséeがあります。その見分け方は、次のことなのだそう。
  • violette(ヴィオレット): 2枚の花弁が立っており、3枚の花弁が下を向いている。
  • pensée(パンセ): 4枚の花弁が立っており、他より大きな5枚目は頭をもたげている。


いずれにしても、スミレというのは花弁が5枚です。花びらが4枚のモチーフをなぜスミレと呼ぶのか?...  もっとも、その呼び方は他には見つからなかったので、このサイトが使っている名称が正しいのかどうかはわかりません。

aostaさんは、薔薇の花は聖母の純潔やキリストの受難を意味する花であることを教えてくださり、次のページをリンクしてくださいました:
「モンテフェルトロ祭壇画」 (1) 卵をめぐるあれこれ

ここで私は、4枚の花弁のモチーフから、キリスト教と薔薇の関係に興味を持ちました。百合の花が重要な意味を持つのは知っていましたが、バラは気にしたことがなかったのです。

キリスト教とバラの関係を調べてみたら、発見をしたり、また新たな疑問がわいてきました。それについては長くなるので、次回で書きます。

ブログ内リンク
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: クイズを出した記事一覧

外部リンク:
☆ Wikipédia: Angélologie
☆ Wikipédia: Archange
Glossaire 8 : Les frises dans l’art roman (3)


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コメント
この記事へのコメント
◆ 4つの花弁のモチーフの意味は?

天使の中でも最上位とされる熾天使は、非人格的で神に近い存在とされているので、その姿形も翼を持っている以外は人間と同じ大天使たちとは違う描き方をされてきたようです。リンクしていただいてた「熾天使」で「聖痕を受ける聖フランチェスコ」においてもセラフィムが特異な姿で描かれています。
人間の形をとらないことで、ほかの天使たちより、神に近い上位の存在であることを表現しているのかもしれません。
熾天使の絵画的表現は、時代が下がるにつれ、中心に天使の顔を描き、その周囲に翼を描くという、より様式化・図案化されたものになっていったようです。
セラフィムもケルビムも、ほかの天使のように聖書で言及される場面が少ないため、絵画や彫刻などにおいて目にする機会は少ないかもしれません。

ブログ本文で「キリスト教文化にお詳しいaotaさん」とご紹介いただきましたが、私はただ絵画作品を観てあれこれ連想することが好きなだけで、学問的な裏付けがあるわけではないのです( ;∀;)
所詮素人ですので、見当違いもあろうかと思いますが、ご容赦ください。

これからOtiumさんがどのような推理を展開されるのか、俄然楽しみになってきました。
2014/05/05 | URL | -  [ 編集 ]
Re:
v-22 aotaさんへ

>天使の中でも最上位とされる熾天使は、非人格的で神に近い存在とされているので、その姿形も翼を持っている以外は人間と同じ大天使たちとは違う描き方をされてきたようです。
⇒ そうなのですね。セラフィムの存在は私にとって大きな発見でした。普通にイメージするぽっちゃりとして可愛い天使とはずいぶん違う。絵画の宝庫イタリアに行ったときにはセラフィムの絵を見ているはずなのですが(改めて画像を追加したアッシジには2度行っているので)、奇妙に思っただけだっただろうと思います。

>所詮素人ですので、見当違いもあろうかと思いますが、ご容赦ください。
⇒ 勝手に形容詞を付けてしまって失礼しました! インターネットにはいい加減なことを書いているページが余りにも多いので、そうではないソースだと付け加えたくなってしまったのです。aostaのブログを読ませていただいていて、たくさん本を読まれていて、文学、絵画、音楽、キリスト教文化にお詳しいと、こんな風に色々見えるのだな... と憧れております。
2014/05/05 | URL | Otium  [ 編集 ]
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