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2014/05/06

シリーズ記事目次 【屋根裏部屋にあった彫刻の解読】 目次へ
その5


フランス語でfleur de la passionと呼ばれるパッションフラワーは、特異な花の形をしています。



いかにも南国的な花なので、「passion(パッション)」という言葉は「情熱」のことだろうと思っていたのですが、「キリストの受難(passion du Christ)」を意味する命名なのだそうです。

そう言われれば、キリストがかぶらされた茨の冠に見えてくる...。

私が美しいと思うバッハの『マタイ受難曲』も、フランス語の題名は『Passion selon saint Matthieu(マタイによる受難曲)』だった...。

日本ではキリスト教文化がないので、この花は時計に似ていることから、トケイソウと呼ぶのが一般的になっているような感じがしました。

先日から書いている彫刻の解読に関する記事に入れてくださったコメントで、キリスト教では「5」という数字がキリストの受難を意味すると教えてもらい、ひょっとして、この花も5に関係しているのだろうかと調べてみました。


パッションフラワーの花の構造

ただ花がキリストがかぶされたイバラの冠に似ている、というだけではないのでした。

雄しべが5本、花弁が5枚で、10人の使徒を表す、と書いてありました。

あらためて花を眺めてみる。 花びらの数は10枚ではないですか?



でも、花弁と萼片が交互になっているからであって、本当の花びらは5枚なのでした。そこまでは納得。

花弁と萼片で合計10枚。あるいは、雄しべが5本と花弁が5枚を合わせても合計10ですね。ともかく、10という数字が出て、それが10人の使徒を現していると説明されています。


10人の使徒?

使徒(Apôtre)というのは、最後の晩餐に描かれる十二使徒だったのでは?...

パッションフラワーの花の説明で、ユダとペトロを除いて10人の使徒と説明しているページがありました。裏切りもののユダを除いたというのは納得できます。もう一人除いたのはペトロと記述されていました。それで10人が残るという計算。

ペトロは、イエスの受難のときに逃走し、イエスを否認した人でした。でも、ペトロは「天の国の鍵」をイエスから受けたとされ、私でさえも知っている重要な使徒なのですから、ここで除外されるのが理解できない...。

でも、キリストが十字架にかけられるときに立ち会った使徒は10人いうことになる。

さらに調べてみました。

別のフランス語情報では、十二使徒から除かれているのはユダとトマスだと書いていました。 聖トマスは、イエスが復活したという他の弟子たちの言葉を信じなかったけれど、実際にイエスを見て感激したという使徒だったとのことなので、抜かされても仕方ないのかな?...

花弁が10だということに意義を持たせる「十使徒」という定番があるのでしょうか? ざっと調べてみたところ出てきません。としたら、パッションフラワーの雄しべ5本と花弁5枚で10人の使徒を現すというのはこじつけではないかと思ってしまう...。

徹底的にパッションフラワーとキリストの受難の関連性を説明している文章では、次のようになっていました。
  • 雄しべ5本: キリストが受けた5つの傷
  • 柱頭3本: 釘
  • 脂肪柱: 十字架
  • 花弁とガク5枚ずつの合計10枚: 10人の使徒
  • 葉: ユダがキリストを売ったときに得た30枚の銀貨。あるいは、槍。
  • 巻きひげ: ムチ


Passiflora caerulea

柱頭の先は確かに釘に見えます。でも、磔にした釘は4本必要だったはずと思ったのですが、足はクロスされていたので3本なのですね。

葉は何に見えるかな?...

http://www.larousse.fr/encyclopedie/images/Passiflore/1003313 
Encyclopédie Larousse en ligne - Passiflore

葉を、ユダが受け取った銀貨に見立てるのは、こじつけ過ぎると思うけど...。槍というのもピンとこない...。

いずれにしても、カトリック教会がパッションフラワーをキリストの受難を象徴する花だと正式に定めているとは思えないので、花をどう見るのが正しいのかは考えないことにしました。


◆ 誰がパッションフラワーと名づけたのか?

16世紀、大航海時代に南米に渡ったスペインのイエズス会士がパッションフラワーを発見したのだそうです。つるになって天に伸びる花は、この地で布教する任務を正当化したのかもしれません。

アッシジのフランチェスコ(François d'Assise 1181/82~1226年)が、キリストが磔になった十字架の上に咲く花』を夢に見たという話しがあり、宣教師たちがパッションフラワーをみて、まさにこの花だと思った、ということにもなっているらしい。

パッションフラワーの花は、500以上の種類があるのだそう。

キリストの受難の象徴といえば赤だと思うのですが、パッションフラワーにも真紅の花が咲く種類があるようです。

Passion flower stamen

この植物の名前が初めて文献に現れたのは、スペインのコンキスタドールPedro Cieza de Leónによるコロンビアのサンティアゴ・デ・カリに関する記述にある「granadilla(小さなザクロ)」。1553年のこと。

それから間もなく、スペインの医師・植物学者Nicolas Monardesが著書の中で「flos de passionis(受難の花)」という名前を使ったのが始めらしい(1569~1574年)。

スペイン人が発見したのはどんな花だったのかと画像を探してみたら、奇妙な絵画が出てきました。

1535年にオランダの画家が描いた聖母子像なのですが、そこにパッションフラワーに似た花が描かれているのです。文献で植物が紹介されたのより20年近く早いことになります。奇妙ではないですか?

続き:  カーネーション? なでしこ?

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
果実の知識【パッションフルーツ】 
☆ Wikipedia: トケイソウ
十二使徒の象徴ー図像解釈と持物


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