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2014/09/27
前回の日記「「限界集落」という言葉が気に入らない」 で、日本独特の表現「限界集落」の一般的な定義は次のようになっていると書きました。

65 歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落


高齢者が多い集落は消滅する?

日本では、過疎地域などに6万2271の集落が存在し、10年以内に消滅する可能性のある集落が422(0.7%)、10年以降に消滅する可能性のある集落が2219(3.6%)と予測されているのだそう(総務省調査、2006年)。

フランスでは、仕事のために都会に住んで、働かなくても老齢年金で生活でるようになったら田舎に住むというパターンが多いので、当然ながら農村の人口は高齢化しているように感じています。

でも、高齢者が多い村のフランスのお年寄りに、「あなたの村は近いうちに消滅する危険にさらされている」などという失礼なことを言うなんて想像もできません。もしも言ったら、すごい剣幕で怒られて、二度とそこには行けなくなるのではないでしょうか?

日本ではそれを言ってしまうのだから、すごいと思う!

そもそも、高齢者が多い集落 = 集落の消滅 となるのでしょうか? 私が住んでいる村でも、高齢者が次々に亡くなりますが、その人の家は売りにでて、新しい人たちが住み始めます。

子どもがいるような若い家族が引っ越してくるのも目立ちます。働き盛りの人たちが農村に入ってくると、仕事を見つけられるのかなと心配になります。

フランスは工業国ではないので、農村に工場などがある地域はかなり限られます。どの村にも役場はあるけれど、日本の役場のような機能は果たしていないので、人口が300人くらいの規模の村でも、役場に雇われるのは週に3回くらい出勤してパートで働くセクレタリー1人、オフィスの掃除婦、道路の草刈りなどを担当する人が周辺の村と一緒に雇用される程度です。

どうやって生活の糧をえるのかと思ってしまいますが、田舎では生活費がかからないので、共働きが普通のフランスとはいえ、奥さんの方は仕事がなくても生活していけるようですけれど。


フランスの高齢村ランキング

フランスには、人口50人未満の村が1,000近くあります。「限界集落」と呼べるような農村が多いだろうと思って調べたくなりました。フランスで最も高齢者人口が多い市町村のランキングをグラフで分かりやすく見せているサイトを発見♪

☆ L'Internaute: Les villes les plus vieilles de France

2010年の人口データを拾うことができました。

日本の「限界集落」は65歳以上で区切っているのですが、フランスの高齢村ランキングでは75歳以上にボーダーラインを置いています。

また、日本では「集落」を単位にして取り扱っているのですが、フランスのランキングでは「(village)」単位のデータです。農村の中の中心部から外れて存在する集落(hameau)についてのデータは見つかりませんでした。

フランスは市町村でさえ3万6,000以上あるので、集落単位では調べきれないのではないかと思います。 そもそも、行政や福祉は市町村単位で行っているのですから、村に点在している集落を隔離して取り上げる必要もないはずですし。

Mela村 (人口 31人、60歳以上人口 67%


フランスの市町村・高齢者人口ランキング
第1位 Charmes-en-l'Angle村 (Haute-Marne県) 75歳以上人口: 57.14%
http://www.linternaute.com/ville/charmes-en-l-angle/ville-52109/demographie
シャンパーニュ・アルデンヌ地方にある村。県庁所在地から50Kmなので僻地には見えません。

それにしても、45歳未満は1人も住んでいないとは、凄まじいですね~! でも、7人しか住んでいない村で、人口密度は1Km²あたり1人。世帯数は4。75歳以上が4人、45~59歳が3人。  

村には18世紀に建てられた立派な城があります。この村の面積は約7Km²しかないので、城の敷地が村になっているのかも知れない。この村の住民とは、この城に住んでいる一族と庭師だけなのではないかという気もします。

こんな美しい城が放置されるはずはないので、将来、この村に誰も住まなくなるということはありえないと思えます。


第2位 Bois-Sainte-Marie村 (Saône-et-Loire県)  75歳以上人口: 57.07%
http://www.linternaute.com/ville/bois-sainte-marie/ville-71041/demographie
第2位が我がブルゴーニュ地方ににある村だとはショック! でも、なんだか不自然なのです。

総人口199人のうち、75歳以上が113人もいる。60歳以上は村の人口の7割を占めています。ある程度の住民がいる村なのに、それは奇妙...。調べてみたら、120人収容する高齢者用福祉住宅があるので、そこで生活している人たちがいるために高齢人口が多くなっているのではないかと思いました。

村には美しいロマネスク教会があって、そこが音楽フェスティバルのコンサート会場になっているそうなので、限界集落などと暗いレッテルを張るにはふさわしくないと思います。


第3位 Cunel村 (Meuse県) 75歳以上人口: 50%
http://www.linternaute.com/ville/cunel/ville-55140/demographie
人口構成のグラフを見ると、普通に高齢化している村に見えます。でも、住人は14人しかいないので、第1位の村と同様に特殊な例ではないかな?...

第4位は、コルシカ島にある人口7人の村。
第5位は、アルプス地方にある人口2人の村。
 
20位くらいまでを眺めると、コルシカ島と山岳地帯にある村々が目立ちました。

コルシカは、ナポレオンが生まれる少し前まではイタリアだった島。本土とはメンタリティーが違うらしく、住む人がいなくなっても、家を売りに出さないのがコルシカ島の問題なのだと聞いたことがあります。

気候は良いし、観光地ですから別荘やレストランにするために買いたい人はいるけれど、彼らは売らない。手放さなかった時期が長いので、相続人はおびただしい数になっており、誰かが家を売ろうと言い出しても親族で意見が一致するのはほとんど不可能なので、どうしようもなくなっているとのこと。

コルシカ島に滞在して印象的だったことの1つは、海を臨む絶景の一等地に大きな墓ができていることでした。祖先を格別に大切にする風習があるのでしょうね。先祖の家を売却することに抵抗を感じるのは日本に似ているかな?...


典型的な年齢構成の村は?

高齢者率が非常に高い村は特殊すぎるのではないかと思って、ランキングのもう少し下にある市町村を探してみました。こんな山岳地帯だと普通に高齢化した村があるだろうなと思ってピックアップ。

第18位 Rocher村 (Ardèche県) 75歳以上人口: 37.99%
http://www.linternaute.com/ville/rocher/ville-07193/demographie
観光スポットのアルプスから外れた山岳地帯のアルデッ シュにある村です。

先日の日記「ジャン・フェラのシャンソン「ふるさとの山」に見る日仏文化の違い」に書いたシャンソンの舞台になった地方です。歌詞には、山の生活は厳しいけれど、百歳を超える老人なんてウジャウジャいるとあったのです が、空気が良いから長生きするのかもしれません。280人の住民のうち、75歳を超える人は106人を占めていました。

何もない山の中にある村のようで、観光情報は何も出てこない。最寄の大きな町までは60キロですが、山の中だから、車で行くと1 時間 かかるという立地だそうです。

65歳以上の人口でボーダーラインを引く「限界集落」の定義に入ってしまう村ですが、15歳未満人口は11%で、絶滅の危機にある村には見えません。

この村では、人口が、じわじわと増え続けています。
Wikipedia


第90位くらいまでが、75歳以上が30%の市町村となっていました。でも、高齢者人口が多くても、15歳以下の人口が非常に多い村もあって、村の中には年寄りばかりが住んでいるという感じがない村もたくさんあります。

山岳部では、ツーリズムが発達しているところも多くて、そんなに過疎化しているようにも見えないところもあります。村に住んでいるのはお年寄りが多いとしても、そこにあるホテルやレストランのオーナーは、村の外にある便利なところに住んでいるケースも多いはずです。子どもを育てるなら、学校がある市町村の方が便利ですから。


もう少しランキングを下位にして、高齢者の比率が30%の村を見てみました。

第82位 Mela村 (Corse-du-Sud県) 75歳以上人口: 30%
http://www.linternaute.com/ville/mela/ville-2A158/demographie
村の人口は31人。コルシカ島らしい美しい村の写真がでてきましたが、ここは完全に高齢化していますね。子どもも少ない。

戦後の人口減少によって、村の中にあった小学校が閉鎖されてしまったのだそう。でも、イベントをやっているし、文学賞を与えるコンクールもしているので頑張っているようです。


第83位 Souanyas村 (Pyrénées-Orientales県) 75歳以上人口: 30%
http://www.linternaute.com/ville/souanyas/ville-66197/demographie
スペインと国境を接するピレネー山脈がある地方の、人口42人の村。

15~29歳は1人もいないのに、14歳未満は7人いて比率が高いという奇妙な構造...。日本なら限界集落になってしまう構造ですが、若い世代も多いのだから安泰なのではないかと思ってしまいます。

この村でも近年は人口が増加しています。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Souanyas

21世紀になってからのフランスは、むしろ都市から農村への人口流失が加速化しているのが都市問題になっているのですが、その典型でしょうね。


典型的な農村を探してみる

ブルゴーニュ地方にあるコート・ドール県は、県内人口の半分が県庁所在地ディジョンの都市圏に集中していて、北の方に行くと過疎地です。

1970年代末に、文化人類学者がこの村を調査して、『ブルゴーニュの農民: ミノー村の人々』という有名な本の舞台にしたブルゴーニュの村があったのを思い出しました。日本の学者もかなり読んでいるようです。因習や村民たちの間に憎み合いがあって、どうしようも なく遅れている僻地という村の例だったらしい...。


Minot村 (Côte-d'Or県) 75歳以上人口: 9.5%
http://www.linternaute.com/ville/minot/ville-21415/demographie
この村が限界集落と呼ばれるようなタイプかと想像したのですが、全く当てはまらないですね。
現在の人口は207人(世帯数98)。人口密度6人/km²。 75歳以上は21人、60~74歳が48人。

それではと、同じコート・ドール県にある僻地を探してみる。人口が最も少ない村は規模が小さすぎて特殊すぎるように思えたので、人口が少ない村ランキング第2位の人口構成を拾います。

主要道路からかなり 入ったところにあるので、通りかかったこともない村だと思います。もちろん、観光客なんか間違っても行かないような僻地。ですので、高齢者ばかりだろうと思ったのだけれど、全く逆なのでありました!

Chaugey村 (Côte-d'Or県) 75歳以上人口: 1%
http://www.linternaute.com/ville/chaugey/ville-21157/demographie
村の人口 23人、世帯数8。人口密度3人/km²。

村には60歳以上が2人いるだけで、 子どもが3人いる世帯が4軒あるので、やたらに若い世代が多い村になっていました。

若い世代がやたらに多くて奇妙すぎる! この村を知っている人に聞いてみたら、村に住んでいるのは1族だけなので、 子どもたちが多くても全く不思議はないとのこと。

なるほど、住人の数が少ないから高齢者ばかり住んでいるとは言えないわけなのですね。

どういう人が住んでいるのか分からないと特殊事情があって把握できないだろうと思って、あちこちの知っている村の情報を見たのですが、過疎地でも、こんな風にケーキを等分に切ったみたいな人口の構成が普通の形になっているように見えました。

フランス人は子育てには田舎に住むのが一番と考える人が多いのだそうですので、小さな村でも若者をひきつけるのだろうと思いました。


地方都市では、どうなっている?

大都市では若者が多いはず。ブルゴーニュ最大都市のディジョン市は、大学もあるせいもあって、若者が多くなっています。それで、普通の都市として、ソーヌ・絵・ロワール県の県庁所在地の町の人口構成を見てみました。

Mâcon市 (Saône-et-Loire県 県庁所在地) 75歳以上人口: 10%
http://www.linternaute.com/ville/macon/ville-71270/demographie
総人口33,730人。 働き盛りの年齢層が多いのは、大きな町には仕事があるので、若い世代は集まるからでしょうね。

でも、上に入れたMinot村と余り分配の形が変わりませんね。行ったことがある僻地の村々でも、こんな風に丸いケーキを等分に切ったような形が目立ちました。私が住んでいる小さな村でも、高齢者が多いと思っていたのに同じような構成だったのでした。

フランスの小さな村でも高齢者は多いと思っていたのですが、高齢者が大半を占めているというわけでもないみたいですね。 結局、老齢年金生活者は働かないで村にいるから目立つのだろうと思いました。ダンスパーティーがつきものの村の食事会も、高齢者たちがたくさん来ています。若者たちは、もっとモダンなディスコなどに行くのでしょうから。

いずれにしても、人口が極端に少ない村だと、誰が住んでいるかによってしまっている。高齢者が多くても、子どもたちが多い村もあるので、全体像を捉えることができません。

誰かフランスの研究者が分析していないかと探してみたのですが、見つかりませんでした。そもそも、限界集落は消滅するなんて概念がフランスにはないのだから、当然かもしれません。

個々の村のデータを眺めていても意味がないと思い、追求はやめることにしました。

シリーズ記事: 限界集落

   目次:
    1. 
「限界集落」という言葉が気に入らない
    2. フランスの小さな村は高齢化しているわけでもない?



限界集落の定義に、65歳になったら「社会的共同生活の維持が困難」と言い切ってしまうことに抵抗を感じたので、75歳になるまで昔ながらの重労働の農業を続けていたフランスの男性を紹介したドキュメンタリーを紹介しました:
北フランスで昔ながらの農業を続けていたポールさん 2014/09/30

フランスは社会福祉国家なので、腰が曲がってしまったら老齢年金生活に入ろうと決心するのが普通だと思うのですが、日本だったら、もっと先まで頑張るだろうと思います。

ブログ内リンク:
フランスの市町村クイズ(3): 超過疎村 2008/11/23
   « シリーズ記事目次: フランスの市町村について  2008/11/19
総目次: テーマおよび連続記事ピックアップ » 都市と農村

外部リンク:
☆ コトバンク: 限界集落 とは
Les 100 premières villes de France avec le plus de retraités (%)
Les différents classements sur les villes, villages et communes de France
☆ Insee:
La population légale des communes (2006年)
Ces villages de moins de dix habitants
Top 10 des communes les moins peuplées de France


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