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2014/10/28
ボージョレーの農家にあったものは何でしょうという先月出したクイズにいただいたコメントには、前回の日記で書いたように、クイズにした材木はブドウを踏みつぶしたタライではないかというのがありました。

ブドウを踏みつぶすと聞いて思い出したことがありました。


ブドウ汁を絞り出すために足で踏む作業

10年余り前のことですが、ブドウの収穫期に行ったブルゴーニュのワイン農家で、ブドウを踏みつぶす作業を見学したのです。こういう方法があるとは聞いていたけれど、今日でもやっていたとは驚き...。

このとき撮ったスライド写真を簡単にスキャンしたのでピンボケですが、入れてみますね。



昔はこれを裸でやっていたのだ、とブルゴーニュの友人が言っていたのですが、さすが現代なので、海水パンツで作業していました。

ブドウが発酵してガスが出てくるので危険な作業なのだそう。少しやったら休憩して、それからまた作業するという話しでした。プールか日本式お風呂と呼びたくなるところに入っていられる限度は、30分間と言っていたかな?...


この作業は何と言ったっけ?

ワインにするためにブドウを足で踏みつけることを示す言葉はあるはずですが、思い浮かびません。でも、ブルゴーニュの友人たちに話しを持ち出すには問題はありません。

「あれのこと」と言えば分るものが、ブルゴーニュの都市ディジョン市にあるのです。

ブドウを踏みつけている男性の姿の彫刻がある噴水で、彼は「Bareuzai(Bareuzeiとも綴る)」と呼ばれます。



左の写真は普通のときに撮影した写真。ワインのイベントが行われたとき(右の写真)には、樽を並べて飾った前でワインの試飲をさせてくれたので、いつもこうしておけば良いのにと思ったのでした。噴水からワインが出ていればもっと良い!

「Bareuzai(バルーゼ)」と言えば、ブドウを踏みる作業だと分かってもらえるわけです。

ところで、Bareuzaiとは「bas rosé」から作られたブルゴーニュの言葉です。

basとは、下のこと(長靴下の意味もある)。
roséとは、ロゼワインでも使われる単語で、ピンク色のこと。

つまり、ブドウを踏みつけていて下半身が赤くなったブドウ栽培者、ということになります。

この彫刻はディジョンの目抜き通りから朝市の会場に行く道にあり、Place François Rudeという名の広場にあります。

でも、ディジョン生まれの彫刻家François Rude(1784~1855年)より、こちらのブドウを踏む少年の像をシンボルにした方が分かりやすいので、Place du bareuzaiと呼ぶ人も多いです。

ちなみに、この彫刻はNoël-Jules Girard(1816~86年)の作品で、20世紀初頭からここにあるのだそう。


foulage au pied

バルゼというのは、ブルゴーニュを知らない人には通じません。こういう風にブドウを踏みつけてつぶすというのは、フランス語で何と言ったっけ?

探してみたら、foulageフラージュ)がでてきました。日本語では「破砕」と訳していますね。

足で踏むことを強調するなら、foulage au pied
ブドウを踏むことを示すなら、foulage du raisin au pied。

行為として動詞にするなら、fouler

ブドウの圧縮機はPressoirで、動詞はpresser(圧縮する、絞り出す、せきたてる)という、日常生活でも使う単語。foulerなんて使う場面があったかな?...

仏和辞典でfoulageをひくと、こう書いてありました:
(穀類などを)圧し(踏み)つぶすこと、(ブドウの)粉砕

でも、印刷関係の言葉としてのfoulageは、「(圧盤、シリンダーによる)プレス」と書いてある。それで気になってきてしました。

実は、続きで書くように、私がワイン農家で見たのは「フラージュ」ではなかったようなのですが、見つけたときは喜んで、フラージュについて調べたのでメモしておきます。


foulerとpresserは、どう違うの?

フランスのワイン情報サイトの説明を読んでみました。
同じ作業ではないけれど、2つを混同しているフランス人は多いのだそうです。

動詞名詞説明
fouler
破砕
foulage
ブドウの実の皮を破裂させ、それによって果汁を飛出させるもので、これによって発酵が始まることができる。
踏みつぶした漿果(注①)は、果汁とブドウの皮(moûtと呼ばれる 注②)の甘い果肉となる。
presser
圧搾
pressurage、
pressage
全ての皮、その他のmoûtの残存物を取り出すものである。圧縮して絞り出した果汁は、オレンジを絞って皮を捨てるのに似ている。
moût を発酵のために圧縮する必要はない。
注①
漿果(しょうか)  
液果(えきか)の旧称。ブドウやミカンのように水分の多い果肉が種子を包んでいる果実。

注②
moût(ムー)
ムスト。発酵前のブドウ液で、果物の皮、種、果梗が含まれている。


フラージュが何であるかを日本語で説明しているサイト「メゾン・デュ・ヴァン」が見つかりました。

赤ワインの作り方の項


ブドウを収穫した後、foulage(破砕)をするか、pressage(圧縮)するかの違いなのかと思ったのですが、両方することもあるようです。最近では、破砕と圧縮を同時にやってしまう機械も広く使われているようでした。


ブルゴーニュのブドウのブランデーMarcマール)」と「Fineフィーヌ)」の違いは?

フランス語情報では「moût(ムー)」という単語が出てきました。これと同様にブドウを絞ったときにできる「marcマール)」と「ムー」がどう違うのかというのが気になっていたのですが、やっと理解できました。

気になったのは、先月にブルゴーニュのワイン産地でブドウの絞りかすが蓄積されていたのを見たときのことでした;


ポマール村で見たもの 2014/09/20

これを回収する醸造所の立札があったので、これから「Marc de Bourgogne」というeau-de-vie(オー・ド・ヴィ = 蒸留酒)が作られるはず。

このとき一緒にいたワインに詳しいフランス人が、「これをmoût(ムー)と呼ぶ人もいるけれど、本当はmarc(マール)と呼ぶべきなのだ」と言っていたのです。

なるほど、moût(ムー)は液体なのですが、ここにあったのはmarc(マール)で、液体を搾り取ったあとに残るブドウの果皮・種・茎だけですから全く違いますね。


ところで、ブルゴーニュのワインから作る蒸留酒には2種類あります。マールとフィーヌ。最近、AOC(原産地統合呼称)も獲得しましたね。

Marc de Bourgogneは(マール・ド・ブルゴーニュ)とFine de Bourgogne(フィーヌ・ド・ブルゴーニュ)は、どう違うのだろうか?...

マール・ド・ブルゴーニュフィーヌ・ド・ブルゴーニュ

Marc(マール)の方は、ブドウを圧縮した後の絞りかす(マール)から作った蒸留酒。

Fine(フィーヌ)の方は、絞りかすでなく、ブドウから作っているのだと聞いていました。私は調べたことはなくて、コニャックなどのようにワインにする原料でフィーヌを作るのかなと思っていたのですが、そうではなかった。

フィーヌは、ワインを醸造したときに沈殿するlie(リー)とフランス語では呼ばれる澱(おり)から作るそうです。つまり、茎や種がないから、きつくはない酒に仕上がるのですね。しかも、ワインから作るわけではないから、コニャックなどよりは癖があるブランデーになる。

「リー」は濃縮したワインのようなもので、ブルゴーニュでは珍重されていています。自分で醸造しなければ手に入りませんが。ブルゴーニュの郷土料理のコッコ・ヴァンなども、赤ワインではなくてリーを使うのが昔ながらの本物なのだそう。

Lie de vin(ワインの澱」は色の名前にもなっています。

マールとフィーヌの風味は似ていますが、フィーヌの方が上品で飲みやすいと私は思います。私が買っているメーカーのものでは、マールよりフィーヌの方が価格が少し高くなっています。

日本語の説明に、フィーヌはワインにするには質が劣るものから作る、と書いてあるのを見たことがあるのですが、ロマネ・コンティがフィーヌを作っているくらいですから、そうは言えないと思うのですけどね...。

フィーヌはワインを醸造した樽の底にたまった澱でつくるといっても、その澱の状態は良いものでないと良いフィーヌができないそうです。フランス語でワインの澱は「lie(リー)」なのですが、フィーヌに使うものの名前を「clair de lie」と呼んでいる記述が多かったです。リーといってもclair(明るい、淡い)という意味? とすると、ドロドロした澱ではないのかもしれない。


話しが脱線しましたが、足でブドウを踏みつぶすことについて書いていたのでした。

プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方のオート・アルプ県にあるDomaine de la Clochèreというドメーヌのサイトに、昔ながらの方法で行っているfoulageの作業を見せる動画が入っていたのでリンクを入れておきます。イベントではなくて、販売するワインのために本当にやっているようです。

☆ CAVE » Le foulage

私が見学したところと同じで、液体がプールのように樽にたまるようになっていて、普通の圧縮機、つまり隙間があいた柵のような樽ではfoulageをやっていませんでした。

なので、クイズにしたボージョレーのワイン農家にあった圧縮機は、上から力をかけて圧縮するタイプのものだったと結論することにしました。

クイズ: これは何でしょう?(ボージョレーで見たもの) 2014/09/12
解体したのはブドウの圧縮機だった 2014/10/25


ここまで下書きで書いて、私が見たブドウをつぶす作業は「foulage(破砕)」だと結論したのですが、さらにしつこく調べていると、どうも違うのではないかと思えてきました...。

足でブドウを踏む作業には、もう1つ単語が出てきて、私が見学したのはそちらの方ではないかと思えるのです。でも、少し上にリンクしたオート・アルプ県のワイナリーのサイトに入っていた動画は私が見たのと同じ作業のように見えて、そこでは「foulage」として説明していたのですけど。

地方によって呼び方が違うかな?...

ともかく、もう1つの方の単語について調べて、次回の日記でメモすることにします。私はワインを作ろうというわけではないし、ソムリエの資格試験を受けようと思っているわけでもないのだから、どっちなのだろうかと気にすることはありません。

でも、気になると、止まらない私...。

続きへ: ワインを作るために足でブドウを踏む作業 (2) ピジャージュ

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★ 目次: 蒸留酒をつくるアランビック見学
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★ 目次: ブルゴーニュの古都ディジョンの観光スポットや特産品など

外部リンク:
Foulage (vinification)
☆ Wikipédia: Foulage
Avant la fermentation ⇒ Fouler et presser
☆ Bourgogne Vins: Des vendanges d’un autre temps
Le foulage du raisin dans la vinification traditionnelle
Le foulage du raisin au cours du temps
Marc et fine des produits alambiqués
lie de vin という色
ジャンマルク ルーロ: フィーヌ ド ブルゴーニュ
AOC Marc et Fine de Bourgogne


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フランスのお酒 (ワインなど)



コメント
この記事へのコメント
フィーヌってそういう意味だったのですか!
同じく勘違いしていました。

2014/11/05 | URL | albifrons  [ 編集 ]
Re:
v-22 albifronsさんへ

albifronsさんに「勘違いしていた」と言われてしまうと不安になって、もう一度フィーヌについて調べなおして、少し加筆しました。

なぜか日本ではフィーヌはワインから作ると言われるのが普通だと見えるのですが(コニャックと同じ?)、「澱」という言葉を出して製造法を説明しているネットショップがありました:

http://www.yoshinoliq.com/products/detail.php?product_id=1472

でも、「瓶詰前に加水」とあるのにひっかかりました。オー・ド・ヴィに水は加えないと思っていたのですけど...。

アルコール飲料は複雑で、ちょっと考えると、私などは頭が混乱してきてしまいます。コニャックにも「フィーヌ」というのがあって、あれはグランド・シャンパーニュの畑のブドウを半分以上使っているときに使う名称だった...。
2014/11/05 | URL | Otium  [ 編集 ]
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