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2015/02/22

シリーズ記事目次 【赤ずきんちゃんのガレットとは?】 目次へ
その4


赤ずきんちゃんは、昔からフランスなど、ヨーロッパに伝わっていたお話しですが、主人公の女の子を「赤ずきんちゃん」と呼んだのは、ペローの童話だと言われています。

昔、ある村に、それまで誰も見たことがないくらい可愛い女の子がおりました。おかあさんはこの子をたいそう可愛がっていましたが、おばあさんはそれに輪をかけて可愛がりました。おばあさんはこの子のために小さな赤い頭巾をこしらえてやりましたが、これがとてもよく似合ったので、どこへ行っても赤ずきんちゃんと呼ばれておりました。

『完訳ペロー童話集』 シャルル・ペロー著、新倉朗子訳

前回の日記「謎が多い『赤ずきんちゃん』のお話し」で、フランスにある赤ずきんちゃんのバージョンを比較してみたのですが、確かにペロー童話以外の3つの口承版では、赤い頭巾は登場していませんでした。

ところが、Wikipediaの赤ずきんちゃんに関する記述(Le Petit Chaperon rouge)には、不思議な彫刻が入っていたのです。


15世紀の赤ずきんちゃん?

フランス中部のブルージュ市にあるジャック・クール宮殿にある浮き彫りの彫刻の中に、赤ずきんちゃんらしき人物が入っているシーンが見えます。

この宮殿が立てられた当時から赤ずきんちゃんはよく知られていたのだろう、という記述。入っている写真はピンボケなので、少しはっきり見えるように画像を加工してみました。



中央にいるスカートをはいているように見えるのが、赤ずきんちゃんと見える人物。

これは15世紀の建築物にある彫刻なので、後世に彫られたのでないとしたら、ペローの童話(1697年)が発表された前のものとなります。

人物の部分を大きくしてみますね。

 ⇒ 全体の写真は、こちら

髪の毛にしては、顔の輪郭から外れすぎています。フードをかぶっているように見えるではありませんか?

この彫刻について詳しく書いているサイトはありませんでした。ただし、ジャック・クール宮殿の入り口から入ったところにあるギャラリーにある、という記載も別にあったので、Wikipediaの記載がいい加減というわけでもないように思いました。

赤ずきんちゃんについて詳しく調べて書いているサイトでは扱われていないのが不自然なので、ないのかもしれない...。

いつか行って彫刻を探してみないと、本当にあるのかどうか分からないですね....。実は、この宮殿には私もずいぶん以前に行っているはずなのですが、こんな彫刻についての記憶は全くありません。


あの帽子は、なんと呼んでいたっけ?

フランス語で「赤ずきんちゃん」は「petit chaperon rouge」です。つまり、頭巾と訳されているのは「chaperonシャプロン)」。シャプロンなんていう単語は、赤ずきんちゃんのことを呼ぶ以外には聞いたことがないような気もします。

思い出したのは、何年か前にフランスのイベントで売っていた中世風のビロードの帽子。あれを作った人は「シャプロン」と呼んでいなかったかな?...

ブログに写真を入れて書いていたので読み直してみたのですが、帽子の呼び名は書いてありませんでした。何か言われたような気がするのですが、家に帰るまでに忘れてしまっていたのかも知れない...。


カーニバルで買った帽子 2010/03/17


シャプロンって、なに?

chaperon(シャプロン)」を仏和辞典で引いたら、こう書いてありました:

(中世の)垂れ頭巾、詰め物をしたかぶり物で肩までの垂れ布がある

私の帽子も、肩までたれる布がついていました。頭の部分には詰め物が入っていて、ピタっとした帽子ではないところが気に入ったのでした。シャプロンだったのではないかな?...

昔の衣装を作っている人のサイトに、詳しいシャプロンの説明がありました:

Une sorte de capuche, pièce de vêtement jouant le rôle d'une coiffure en protégeant la tête et les épaules de celui qui le porte.

現代でも普通に使われる単語「capuche(フード)」の一種で、被っている人の頭と肩を保護するヘアスタイルの役割を果たしている、と書いてあります。う~ん、肩まで布が垂れていることが特徴ですか。

こういうのがシャプロンなのだそうです。


Les mots du chaperon - Reconstitutions

昔の衣装として、シャプロンの名で販売もされていました:
Amazonフランスの衣料品部門で「chaperon」を検索



Chaperon médiéval, bordeaux

Cape médiévale pour homme intégrant un chaperon


右のは「シャプロン付きマント」として売っています。やはりシャプロンは、肩が隠れる程度の長さのようですね。


Le Petit Chaperon Rouge, Fleury François Richard (1777–1852), Louvre.


シャプロンはボンネットとも呼べる?

シャプロンというと現代人にはイメージできないということもあるのでしょうか? 下のは「bonnet(ボネ)」と名前を付けて売っています。


Chaperon Wulfric Bonnet noir


さっきはシャプロンの説明に「capuche(フード)」が出てきたのですが、こんどは「bonnet」と呼ぶ帽子が出てきました。

bonnet」って、なに? と、またまた混乱してくる...。

私が「ボネ」という単語を使うのは、こういう帽子なのですけど...。

Chapeau Bobble avec câble tricot, bonnet tricoté avec pompon fourrure

「bonnet」を仏和辞典でひくと、こう書いてありました:
縁なし帽、頭巾、キャップ、ボンネット

☆ Wikipedia: ボンネット (帽子)

ともかく、子ども向けの赤ずきんちゃんのお話しの解説でも「bonnet」という言葉を使っているところもあったので、そう言い換えても良いようです。

疑問を持つときりがない...。
英語で何というかも、これまた不思議なのでした。


英語にもシャプロンは存在するのだけれど...

「赤ずきんちゃん」のお話しは、フランス語では『Le Petit Chaperon rouge』。でも、英語では『Little Red Riding Hood』なのでした。

頭巾に相当するのは「hood」という単語ですね。

英語にはかなりフランス語が入っています。調べてみたら、「chaperon」という単語も英語に入っていました。

Jan van Eyck - Portrait of Giovanni Arnolfini - WGA7608.jpg ⇒ Wikipedia: Chaperon (headgear) 

英語のchaperonは帽子以外の意味も持っていますが、原語のフランス語でも同様。社交界などで若い女性に付き添う介添え婦人の意味です。

英語にも同じ単語が存在するのに、なぜ赤ずきんちゃんには「chaperon」を使わなかったのだろう?...


フード? フッド?

ロビン・フッドも「hood」と綴るのではなかったでしたっけ? 『ロビン・フッド』は、子どもの頃の私にはお気に入りのお話しでした。赤ずきんちゃんなどより遥かに親しみがあります。

やはり、Robin Hoodですね。片仮名でどう表記するかの違いでしょうけれど、あのお話しを「ロビン・フード」としたら、しまりがない名前だっただろうな...。フランス語では「Robin des Bois(森のロバン)」なのですけれど、この呼び名も耳障りが間が抜けていると感じて気に入りませんでした。

それはともかく、私にとってのロビン・フッドは、こんなイメージですね。帽子だったか、服の方だったか、緑色というのが記憶に残っています。

"Robin shoots with Sir Guy" by Louis Rhead
Douglas Fairbanks Robin Hood 1922 film poster.jpg
映画ポスター

「hood」は、ロビン・フッドのお話しでは「フッド」。
でも、普通に着る私たちの洋服のときは「フード」となる。



「hood」を英和辞典でひくと、こう書いてありました:
頭巾、(オーバーなどの)フード。

別の辞書の方がピンとくるかな...:
(顔以外の頭と首をおおう)フード,ずきん 《通例外套(がいとう)につけて,不必要の時には後ろへと落としておく》.


ロビン・フッドのフッドは何かと気になったのですが、幸いにも求めていた答えを書いてくれている英語教育のブログがありました。
Hの発音を練習しよう!

つまり、日本語で「フード」と発音すると「フードぉ」となるから間が抜けるのですね。

ところで、さきほどフランス語のシャプロンという帽子は「bonnet」とも呼ばれていると書いたのですが、「bonnet」も英語にあります。

自動車のボンネットのことを、アメリカとカナダでは「hood」と呼び、イギリスをはじめとする英語圏では「bonnet」と呼ぶのだそう。ちなみに、フランス語では「capot」ですね。


どうして「乗馬用」フードなの?

赤ずきんのお話しの英語の題名は『Little Red Riding Hood』。頭巾は「シャプロン」とは呼ばれない。それは良いとしても、どうして、乗馬用のフードと特定しているの?

インターネットで英語圏の赤ずきん情報を探していたら、むかし通っていた学校のサイトがあって、子ども向けのホームページができていました。イギリス英語の発音が懐かしいので眺めました。


Little Red Riding Hood - Kids Stories - LearnEnglish Kids British Council

グリム童話のバージョンですね。
こういうのが乗馬用フードですか...。

英語圏では赤ずきんちゃんをどう描いているのかな?...


Little Red Riding Hood, David Allen & Sons (Belfast), 1895

気のせいかもしれませんが、英語圏での赤ずきんちゃんは、長いコート姿で描かれていることが多いように感じました。

Little Red Riding Hood - J. W. Smith
Little Red Riding Hood by Jessie Willcox Smith, 1911

絵を眺めていても、どうして英語では「riding(乗馬)」の文字がついたのか分かりません。でも、こういうのが乗馬用の服装なんだろうな... と思うべきか?...

もっとも、英語圏での「赤ずきん」のお話しは「Little Red Cap」とも呼ばれるようでした。


ドイツ語圏では、どう描かれている?...
Arpad Schmidhammer - Rotkäppchen-Verlag Josef Scholz, Mainz ca 1910DBP 1960 340 Wohlfahrt Rotkäppchen

ほら、赤ずきんちゃんはケープを着ていないですよ~。

でも、たまたま選び出した画像で判断したら、いい加減な結論しか出てこないのですから止めるべきでしょうね。

赤ずきんちゃんのお話し、考えれば考えるほど分からないことが出てくるので、この辺で終わりにします。私のとりとめもない話しに付き合って読んでくださった方々、どうもありがとうございます!

 シリーズ記事: 赤ずきんちゃんのガレットとは? 【目次




外部リンク:
Les mots du chaperon » l-histoire-du-chaperon.pdf
☆ Jeanne d'Arc, son costume, son armure: Le chaperon
☆ Larousse:: Définitions chaperon
Medieval Headwear
☆ University of Pittsburgh: Little Red Riding Hood
童話「赤ずきんちゃん」に関するリンク集 (シリーズ日記目次内に記載)

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