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2015/05/26
本格的な春になったころから、夏の暑さがやって来るまでの間、野生の蘭(らん)の花が野原や森に咲きます。フランスで初めて出会って、こんなに美しい植物が自然に生えてしまうのかと驚きました。以来、機会がある度に探しています。

保護植物なので、採って花瓶に活けるわけにはいかないのですが。

自然保護の活動を行っている施設(行政から補助金が出るから運営していけるというNPO組織が運営)が、一般の人たちが参加できる野生のランの花を見に行くビジットを企画していると聞いて、参加することにしました。

お知らせには、ウオーキングシューズとカメラを用意してくださいとありました。

私は登山靴で参加。フランスで見学の企画があると、参加するのは高齢者が多いので、そんなに厳しい道を歩くはずはない。それで、登山靴ではオーバーだったかなと思ったのですが、それで良かったです。かなり急な勾配も歩きましたので。

集合場所から個々の車で見学が始まるところまで移動し、そこで車を降りてガイドさんに従って歩きました。保護する組織が管理しているので、ランがたくさんある地方のよう。歩き出したところから既に、たくさん咲いていました。

皆で歩き出すときには、ガイドの人が道路と草むらの間にもランが生えていることが多いので、踏まないように注意してくださいと言っていました。本当に、注意していないと踏んでしまいそうなところにもランが生えているのでした。


野生の蘭がある土地に咲く花

野生のランが咲くのは石灰質の土壌。そういうところには、こういう花が咲いているので、これを見たら近くに野生のランがある、という目印になるのだそう。


Polygala vulgaris / Polygale commun 【Polygala vulgaris】

この花は見慣れた花でした。道端の勾配になったようなところに群生しているのです。植物の名前をガイドさんは言ってはいなかったのですが、把握している植物だろうと思うので名前を入れました。

地面にへばりついているような小さな草なのですが、太陽の光を浴びているときは鮮やかな青い色をしています。白い部分もあって、花瓶に活けるには小さすぎるのが難点ですが、とても美しい花だと思っていました。

確かに、野生のランがあるところと、この花が咲いているところとは一致すると体験しています。

でも、混乱する情報を発見。

日本語では何という植物なのかを検索したら、こちらの情報が出てきました:
ポリガラ・ブルガリス Polygala vulgaris

どこのサイトかとさかのぼると、大学の植物生態研究室。つまり専門家のサイトなので信頼できるはず。ここに入っている写真を見ると私が見た植物と同じようなのですが、スコットランドのヒースで目撃されたと書いてあるのが不思議でした。

ヒース(Heath)と呼ばれる荒地と、ランが生える石灰質の土壌とは同じなのだろうか?...

私が子ども時代に好きだった小説に、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』がありました。

風が吹きすさぶ荒野。そして、そこには一面に、地面に這いつくばるような花が咲いている。

ツツジ科のエリカですね。

どんな風景なのかと空想しました。

北フランスのブルターニュ地方を旅行したとき、英仏海峡に臨むところに広がっていた荒野にエリカが広がっているのを見て、『嵐が丘』の舞台はこういうところだったのか、と感激しました。

つまり、我がブルゴーニュでは全く見かけない風景。

片仮名で書くと紛らわしいですが、北仏のブルターニュ地方は、ブルゴーニュ地方とは土壌が全く違う。家々には、驚くほど元気にアジサイが咲いていたのです。

ブルゴーニュ地方でアジサイやツツジのような植物を庭に植えようと思ったら、園芸店でterre de bruyèreという高いお値段の土を買って使わなければなりません。この土の名前は「bruyèreの土」という意味で、bruyèreはエリカです。つまり、エリカが育つ土ということなのだろうと思っています。

というわけで、ポリガラ・ブルガリスがヒースと呼ぶ荒地と結びつくというのは、私には不思議でならない...。でも、ブルゴーニュ地方でこの小さな青い草を見たら、そばにランがあるというのだけ覚えることにします。


この日に見た野生のランの写真を入れて整理してみます。写真の下に入れる名前はフランス語の呼び名で、【 】の中は学名です。

Wikipediaのリンクも入れたのですが、本来は日本語ページにリンクされているので便利なのに、フランスで見られる野生のランは日本にはないせいか、日本語へのリンクがありませんでした。


ドライブしていても車窓からも見えるほど目立つランの花たち

この日にあるいた3キロのコースでは、20種類くらいの野生のランの花が観測できるのだそうです。でも、まだ咲いていないものもあったので、当日に私たちが見たのは14種類だったとのこと。

野生のランは好きでよく探しているので、知っている種類も多かったです。

よく見かけるのは、こちらの2種類。

世が高いので、田舎をドライブしているときにあると、ゆっくり走らなくても目立って見えるのは、こちら ↓


Orchis pourpre 【Orchis purpurea】

背の高さは30~40センチあり、花もたくさんついているので、草の中でも目だって見えます。

名前は「pourpre(赤紫色)」と味気ない。でも、大きくてみごとなので、見つけると皆さん喜んでいました。


もう1つ、遠くからでも目立つのは、こちら ↓


Orchis pyramidal 【Anacamptis pyramidalis】

命名ではピラミッドの形に例えています。

たいてい20センチくらいなのですが、色が鮮やかなので目立ちます。

群生していることが多いので珍しくないラン。普通のランと違って、これは種で増えるタイプなのだそう。なるほど...。


臭いランの花

背が「赤紫色」くらいに高いし、髭のようなものが出ているので目立つランの花があります。白っぽいので、車を走らせているときなどには見えにくいですが。


Orchis bouc 【Himantoglossum hircinum】

名前は「bouc(雄ヤギ)」。

雄ヤギの髭に例えているというよりは、同じように嫌な臭いがするからです。

山羊のチーズの産地に行って山羊の姿はよく見るのですが、雄のヤギはめったに見かけません。ミルクを出す雌たちとは隔離しているからではないでしょうか?

一度、雄ヤギに出会ったときには、その臭さにびっくりしました:
クイズ: ヤギが首にかけているのは何でしょう? 2006/05/10

ランの花も強い臭いがしますが、本物の雄ヤギほどではありません。臭いを嗅いでみる人も何人かいましたが、仲には「そんなに嫌な匂いではない」と言っている人たちもいました。

いずれにしても、野生のランは、みんな嬉しくなるような匂いはしません。というか、みんな臭い。天は二物を与えず?


混合種もある

野生のランは自分でも見つけられるのですが、専門家に説明してもらう価値はあるなと思ったのは、図鑑を調べても出てこない品種があると教えてもらったことでした。

園芸関係者が品種改良をしなくたって、自生植物だって交雑していくのですよね。

森に咲いていた植物と、園芸店で買った同じファミリーのを庭に植えていたら、色々な花が咲いたのでブログに書いていました:
西洋オダマキは尻軽花だった  2011/05/19

毎年、色々な形や色の花が咲くようになっています。今がシーズンなので、その後どうなったかを書こうと思ったのですが、1本1本全部違うので、花を摘んで写真をとるのが面倒なので放置しています。

さて、野生のランも、こうなるというのを教えてもらいました。

まず、お父さん(?)は、こちら ↓


Homme-pendu 【Orchis anthropophora】

よく見かけるランです。かなり特殊な形の花になるので、すぐに見分けがつくようになったランです。それに、変な名前が付いているのです。

AnthropophorumHomme-penduという名前なのです。
「首つり人間」という飛んでもない名前!

まだ花は開いていませんでした。蕾を見ても、この変な命名の意味は分からないでしょう?

花が開くと、人間がぶらさがっているように見えるのです。

右の写真が開いた状態 ⇒
よく見えなかったら、画像をクリックして、拡大写真をご覧ください。

この日、たくさん生えているのを見ました。誰かが、森にはたくさん自殺者がいる、などと冗談を言っていました。


これに、もう一つ、私もよく見かけるランの花がかけ合わさったのができていたのでした。

お母さんと呼ぶことにして、もう一方の親は、こちら ↓


Orchis militaire 【Orchis militaris

花の形は手足がある人間のように見えます。こちらは、頭の部分がヘルメットのように大きい。それで、属名は「軍人」となっています。

兵隊さんが鈴なり、というわけ。


この両親が生えている場所の中間に、交雑種のランが生えているのをガイドさんが示してくれました。

こちら ↓


Orchidée hybride 【O. Pourpre XO Homme pendu】

下の方の花は枯れかかっていますけれど、上の方に見える花は、首つり人間がピンク色になった感じです。お母さんと見間違うのはピンク色な姿で、胴体が長いのはお父さん似。

こういう交雑種は、図鑑を見ても出ていないので、「ハイブリッド」と呼ぶしかないのだそうです。そのうちに増えてきたら名前が付くのだろう、とのこと。

そうか... と納得しました。以前に、見かけるランの名前を調べたことがあったのですが、どうしても見つからないものがたくさんあったのです。


ところで、上に入れた「軍人(Orchis militaire) 」と呼ばれるランにそっくりで、少し色が違うだけのもありました。ピンクと白の部分が逆転しています。これも「軍人」と呼んでいたっけかな?...



兵隊さんと呼べば、そう見える。でも、頭でっかちのお人形とか、赤ちゃんにも見えますけどね...。


変だと思っていたラン

フランスで野生のランを探すようになってから、変なので気になっていた種類がありました。

これです ↓


Néottie nid d'oiseau 【Neottia nidus-avis】

全体が薄茶色。キノコなら自然な色ですけど...。始めのうちは、去年に咲いたランの花が冬を越して枯れているのかと思いました。

れっきとしたランなのでした。

思い出してみれば、ツクシもこんな感じですけれど...。

名前は「nid d'oiseau(鳥の巣)」。

鳥の巣と言われれば、そうも見えるかな、という程度ですよね...。

これはたくさん生えていたのを見たし、覚えやすい名前なので、見分けがつくようになったと思います。


小さなランの花

この日の私が教えてもらって喜んだのは、小さなランの花でした。

よほど目をこらしていないと、草むらに隠れてしまっている。ガイドの人に教えてもらったので、たくさん見つけ出すことができました。



自然保護地区なので、観察している人たちが棒きれを立てたりして、散策をする人たちに注意を促しているところもありました。


これは見たことがあったとしても、何回も見てはいなかっただろうな、と思ったランの花です ↓


Ophrys mouche 【Ophrys insectifera】

「mouche(蝿)」という名前でした。ハエに似ていますかね?...

ハエは、この世に存在しなければ良いのに... と恨みに思う昆虫です。牧場の牛が呼んでしまうのか、フランスの田舎にはたくさんいます。庭で食事していると、ハエを手で追い払いながら食べるということも多々さるのです。

ハエなどという名前を付けられたこの花は、とても可愛いのに...。


名前をよく把握できなかった白いランの花たち

フランスに自生しているランにはどのくらいの数の種類があるのか分かりません。似ているものも多いので、名前を教えてもらっても覚えられない。

この日に見た白い色のランは紛らわしかったです。

下は、見たことがないと思ったラン ↓


? Céphalanthère à grandes fleurs 【Cephalanthera damasonium

品種名を書いておきましたが、写真を整理しているときには名前を忘れていたので、ここに書いたのが正しい呼び名かどうかは全く自信がありません。

ランの1種であるCéphalanthèreのファミリーで、「à grandes fleurs (大きな花)」とあるので、これだろうと思いました。でも、そんなに大きな花ではなくて、せいぜい野生のスズラン程度でした。


Céphalanthèreという種類には、もう1つありました。

こちらは「à longues feuilles(長い葉)」と名前に付いてあるので、これではないかと思う ↓


? Céphalanthère à longues feuilles 【Cephalanthera longifolia


もう1つの白い花。これは特徴があるので、時々見ている記憶があります。


? Platanthère à deux feuilles 【Platanthera bifolia】

この3つは区別が定かではないので、いつか図鑑で確認します。


ハイライトは、サボ・ド・ヴェニュス

この日に参加した人たちが最大の期待を寄せていたのは、このランだろうと思います。

急な崖を降りていったところに、200mくらいのサボ・ド・ヴェニュス観察道がありました。

ガイドさんは、始めのとろこではまだ咲いていないけれど、もう少し行くとたくさん咲いているところがありますからパニックにはならないように、などと説明。たっぷり時間をとりますから、皆で順番に観察したり、写真を撮ったりしてください、とも付け加える。


Sabot de Vénus 【Cypripedium calceolus】

名前は「Sabot de Vénus(サボ・ド・ヴェニュス)」。「ビーナスの木靴」という意味です。

フランスに自生する野生のランの代表に使われることも多い、超保護植物です。アルプス地方のような高原にあるのが普通なのですが、我がブルゴーニュ地方でも少しあるのです。

英語では「lady's-slipper orchid」と呼ばれ、聖母マリアの室内履きに例えているようです。

膨らんでいるところ、まさに「木靴」と呼ぶのにふさわしいのですけれど...。

野生のランの中では、これが最も大きな花を咲かせる品種なのだそう。

野生のランの王者とも呼びたくなるくらい、本当に見事な花です!

まだ固い蕾のもあったし、満開のもあったしで、とても良い時期に行けました。

もう少したつと、野生植物の保護機関が株を数えて、チェックしたところには小麦粉を撒いてしまうので、今が見学に最適なときなのだ、とガイドさんが説明していました。

私はここではないサボ・ド・ヴェニュスがある場所を材木会社の社長さんに教えてもらったので、できる限り花が咲く時期に行くことにしていて、このブログでも幾つかの記事を書いていました。

私が知っている場所は、近くに小川が流れているので、ここよりもずっと大きな株になっています。でも、ここは一面、あちこちにサボ・ド・ヴェニスが生えているのは圧巻でした♪


最後のオマケのような見学は、蜂に例えられるラン

サボ・ド・ヴェニュスを見た後は、勾配のある森の中を抜けて、平地に向かいました。森の中でもランの花が咲いていましたが、日当たりが良い場所よりは少ないですね。

見学に出発した場所の近くに戻ってくると、ここまででは見れなかった小さなランの花がある場所を教えてもらいました。村の公有林で材木の伐採権を買って暖炉用の木材を切った人たちが、材木をストックできるように村が提供している場所の裏にある草むらに珍しいランが咲いていました。

私の経験からすると、かなり土壌を選ぶランなのか、繁殖はしないせいなのか、見る機会が少ないランです。

2種類のランが咲いている場所で、その見分け方を教えてもらったのですが、どっちがどっちだか覚えられませんでした...。

下に写真を入れるランは、次のいづれかです:

何枚も写真を撮ったのですが、みんな同じに見えてしまう...。

名前の違いは、abeille(ミツバチ)か「bourdon(マルハナバチ)」。

ガイドさんの説明だと、花の上の部分が後ろに反り返っているか、前に曲がっているかの違いだと言われたのですが、どっちが、どっちだったか?...

それに、ミツバチとマルハナバチの違いも私にはよく分からないので、Wikipediaの写真を並べてみます。

ミツバチ
セイヨウオオマルハナバチ
Bumblebee

花に例えるなら、どちらでも良いと思ってしまうのですけどね...。

Wikipediaの写真で比べてみます。

Ophrys abeille(ミツバチ)
Ophrys apifera Blaye
Ophrys bourdon(マルハナバチ)

画像にはWikimedia Commonsに入っている写真アルバムにリンクしました。花弁の色が濃いピンク色か、薄いピンク色かでは判断できないようです。花の下の部分にあるビロードのようなところの模様が違うように見えるのですけれど、それでも見分けられない...。

名前を憶えても何かの役に立つわけでもないので、上に入れたランがどちらだったのかを探求するのはやめます。


楽しい1日でした。私がフランスで見ている野生のランの全てが見れたわけではありませんが、たった2時間歩いて回れる範囲で、これだけ色々な種類のを見ることができたのですから大満足♪

ちなみに、この日に咲いているのを見た野生のランは14種類だったそうです。

5月になってから雨が多かったり、気温が低かったりと、森や野原に自生しているランにとっては恵まれた年ではなかったそうですが、けなげに花を咲かせていました。

参加費は一人7ユーロ。見学コースの説明パンフレットを4ユーロで販売していました。図鑑には、見学コースの地図(GPSコード入り)があって、どの地点でどの花があるかの説明。それから、その地点で見られる21種類の野生のランの説明がありました。簡素な小冊子ですが、後で写真を整理しながら、見たランはこのうちのどれかのはずだと分かるので便利でした。

この日に参加したのは25人くらい。コースを教えてもらったので、友人仲間でゆっくりと歩いてみたいと思いました。デジカメやが普及する前は、カメラを持っていない人の方が多かったのに、今では誰もが写真を撮りまくるので、こんなに大勢だと邪魔(とは言ってはいけない!)だったのです。

ガイドさんの最後の挨拶は、友達に教えるのをはばからないでくださいね、という言葉でした。サボ・ド・ヴェニュスがある地域などは内緒にしてくださいと言うのかと思っていたので意外。でも、貴重な植物だから、みんなで守らなければいけないという意識を持たせるという意図なのでしょうね。



ブログ内リンク:
★ 目次: フランスの田園に咲く野生のラン
★ 目次: 森に咲く春を告げる花々

外部リンク:
Orchisauvage
Orchidées en France
Macrophotographie concernant les orchidées sauvages de France
ORCHIDEES sauvages - sud-ouest


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