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2015/06/22
庭の外れで、道路に面した塀に、こんなプレートを付けた友達がいました。



書いてあることは、こんな感じ:
- ここは、お向かいさんよりずっと良い。

道路の向こうにあるお家の人と喧嘩したから、と思われますか? そうではないのです。


隣の芝生は青く見える

日本にも、似たような表現がありましたね。
- 隣の芝生はうちのより青い

でも、これでは上に入れたプレートが言っていることの正反対になってしまう。

「隣の芝生...」というのは、英語から来ていて、こういう文章らしい:
 - The grass is always greener on the other side (of the fence).

この英語の文章がWiktionnaireに入っていて、フランス語訳はこうなっていました:
 - L'herbe est toujours plus verte dans le pré du voisin.
 - L'herbe est toujours plus verte dans le champ du voisin.

英語と仏語の文章はだいたい同じなのですが、太字にしたところが大きく異なっています。

フランス語の方で比べているのは、「voisin(隣人)」の「pré(牧場)」 ないし「champ(野原)」なのです。

英語では「もう一方の側」と言っているだけなのに、なぜフランスでは隣の牧場ないし草原としているの? お隣の家に牧場とか野原があったら不自然ではないですか?!...

私は、日本語で「隣の芝生は自宅のより青く見えるものだ」というのは、お隣の家、つまり他人をねたむ感情のことだと信じ込んでいたのですが、私の間違いだったのかな?...

それで、先ほどのWiktionnaireの仏語ページから英語へのリンクをクリックしてみたら...
この写真が入っていたのでした!

Cattle eating grass through barbed wire fence.jpg

「隣の芝生」って、こういう例えだったの?!


フランスには牧場がたくさんあるので、こういう場面はよく出会います。何を苦労して首を伸ばしているの、馬鹿ね... とユーモラスに思う瞬間。でも、それを見て、「隣の芝生は...」という表現と結びつけたことは一度もありませんでした。だって、日本語では「芝生」なのだから、牧場の家畜は連想しないではないですか?

英語版Googleで「the grass is always greener on the other side」を検索してみると(検索結果)、やはり、家畜が柵の向こう側に首を突っ込んで草を食べている写真が多くて目立ちました。

英語の「grass」は、芝生でも牧場の草でも良いでしょうし、「fence」も家のフェンスでも牧場の柵でも良いと思えます。英語圏の人たちも、人間の浅はかさは棚にあげておいて、動物がやっている馬鹿な振る舞いということで持ち出しているのでしょうか?


「隣の芝生は青く見える」と同じ意味の例えとして、日本には「 隣の花は赤い 」、「隣の糂粏味噌(じんだみそ)」があるそうです。でも、私は使ったことがありません。

そもそも「糂粏味噌」とは何なのか分からないので調べたら、「ぬかみそ」のことなのでした。これってピンと来ないな。自分のものを食べ慣れているのですから、よその家より美味しいと思う方が普通ではないですか?...

私だけボキャブラリーが乏しいわけでもないらしくて、日本では「隣の芝生は青い」という表現が一般化しているようでした。

興味深い説明がありました:
☆ 日本語を味わう辞典: 隣の芝生は青いとは何か

そもそも、隣の家に芝生があるだけで、日本人は羨ましく思うからなのだそう。洋風の家に住みたがるということ? 私はお金持ちだったら、本格的な日本家屋に住みたいですけど...。

「高度経済成長の日本国民の気分を表現する言葉」と表現されていました。なるほど、と思いました。

ともかく、「隣の芝生」という訳はお見事だったと思いました。日本人に牧場にいる家畜の習性などというのはイメージが湧かないでしょうから。


なぜ隣より自分のところの方が良い、とプレートに書いてあったのか?

隣の芝生とは全く関係がなく、納得させられる理由があるフレーズなのです。

クイズにしようかと思ったのですが、やめました。

プレートを張った家の写真では遠景をぼかしてしまっているので、理由は見えないかもしれない。それに、フランス語を入れているので、調べればわかってしまうので、不公平な出題になってしまう。

というわけで、答えを書きます。
始めに入れた写真で、石塀の向うに見えるのは、道路を挟んである教会の墓地なのです!

お墓に入っている人たちと比べたら、こっちの方が良いと言えますよね?

店に入ったら在庫整理のバーゲンをやっていて、このプレートも半額で売っていたので買ったのですって。

検索してみたら、全く同じのや、少し違うものなど、色々なのがネットで売られていました。

フレーズのバリエーションは幾つもあるようです。

Ici, c'est bien mieux qu'en face.
ここは、お向さんよりずっと良い。

Ici, on est bien mieux qu'en face.
ここは、お向かいさんよりずっと居心地が良い。

Ici mieux qu'en face. など...。

内容は同じで、向かい側にいる人たちより自分たちのところの方が良いのだ、と言っています。

これは実際に使われた言葉なのだそう。カフェがこの文句を書いた看板を立てた、と聞いています。そのジョークが受けて、有名になったフレーズ。

古い絵葉書がありましたが、場所も特定されていないので、これが問題のカフェなのか疑わしいです。

LE CAFE-TABAC : ICI ... MIEUX QU'EN FACE "
カメラマークをクリックすると画像が出ます。

カフェの向かい側に何があったかですが、墓地というのと、刑務所という説がありました。パリのサンテ刑務所だと特定して、カフェー・バーの名前は「Mieux ici qu'en face」としている説に信憑性があるように感じましたが、歴史の専門家が書いている情報が見つからなかったので判断できません。

ともかく、入りたくないところが向かい側にあったら、このフレーズが宣伝として使えますね。

でも、墓地や刑務所がお隣にある家はそう多くはないはずなのに、こんなことを書いたプレートが売れているということは、嫌な隣人がいる人が塀に張ったりするのかな?...


そうなると、お向かいさんも反撃する

お隣さんから「俺のところの方が良い」と言われたら不愉快。それで、それに応酬するフレーズもあるのだそうです。こちらは史実とは関係なさそうに思いましたけれど。

お向かいが墓地でないと気がきいたフレーズにはならないと思うけれど。

1つのお話しは、こうなっていました:
墓地に眠る人たちを侮辱していると怒った村の司祭が、カフェにそんな宣伝を出すなと言ったのに、取り下げてくれない。そこで、こう書いたものを張ったというのです。2つのバージョンをご紹介します。

Les gens d'ici viennent d'en face.
ここの人々は向う側からやって来る。

Quoi qu'on dise, quoi qu'on fasse, les gens d'ici viennent d'en face.
人が何と言おうと、何をしようと、ここにいる人々は向う側からやって来る。


このフレーズを家に飾っても面白くはないのでしょうから、商品化されているプレートは検索しても出てきませんでした。

でも、このやり取りを2枚の写真で見せているブログがありました:
☆ Lab'Oratoire: On est mieux ici qu’en face

カフェの向かいにあるのは墓地で、その墓地がある教会の司祭さんが反撃しているというバージョン。面白いので気に入ってしまったのですが、これは合成写真でしょうね。

司祭役は喜劇俳優のフェルナンデルに見えます。彼が『陽気なドン・カミロ』から始まった人気シリーズ映画で演じたDon Camilloと同じ帽子をかぶっている。こんなプラカードを立てた場面は、映画にはなかったのではないかと思うのです...。


それにしても、「お前たちはいずれここに来るのだ」と言うのは見事なしっぺ返し!

フランス人は、ああ言えば、こう言うというのが本当に上手だと思う。もちろん人によって才能の差は大きいですが、機転がきく人に何か言うと、即座にやっつけられてしまいます。

それが上手で有名だったのは、故ミッテラン大統領だったかな...。最も下手だったのは、安倍首相と似ているところを挙げたら20くらいはあるのではないかと思う前大統領のサルコジ氏。サルコジ氏の方は、腹を立てると、ぐれた若者が使うような言葉まで使ってしまうので、余計にマスコミが取り上げて笑いものにしたので面白かったです。

日本の政治家が腹を立てるようなことを言われると、名誉棄損とか、真実に反しているとか言って、相手をやっつけようとするのではないでしょうか? フランスのテレビでは、政治家を茶化した番組がたくさんありますが、そこで怒ってしまったら政治家の負けなのだそう。機転が利いたこと言って笑わせれば喝采を受ける。もしも何も思いつかなかったら、黙っているに限るらしいです。


他にも変なプレートが家についていることもあるので、次にご紹介しようと思います。

続き:
フランスの建物に付いている記念碑プレート

シリーズ記事: 家の記念碑プレート


ブログ内リンク:
★ 目次: フランス人のジョークについて書いた記事

外部リンク:
☆ ABC de la langue française: on est mieux ici qu'en face
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