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2015/06/28
フランスでは、歴史に残る偉人にゆかりがある家屋であることを示す記念碑プレートを付けている建物があります。それを茶化しているようなプレートが付いている建物もある。

フランス人の冗談好きの現れであって、面白がってプレートを付けているのだろうと思っていました。ところが、そこに住んでいる人たちには断りもなく、なんだか変な記念碑プレートが付けられる、ということもあるのだそう。

記念碑プレートについて書きながら調べていたら、特にパリでは、それをやられて当惑しているマンションのニュースが出てきました。面白いからそのままにしておくか、やはり根拠のない記念碑プレートは取り外すべきか?... と、住んでいる人たちは悩むらしい。

つまりは、犯人がいるということ? どうでも良いことなのではありますが、気になったので背景を調べてみました。


何もなかった年月日の記念碑プレート

前回の日記「フランスの建物に付いている記念碑プレート」では、フランスの建物には記念碑プレートが付けられているのを紹介して、こんなのが付いていた家もありました、と書きました。


ここでは、1583年4月17日に、おそらく何もおこらなかった

何もなかったなどという記念碑プレートを付ける必要はないのですから、おふざけだとすぐに分かりますよね?

これはよく見かけるプレートで、文章には多少のバージョンがあります。「全く何もおこらなかった」と書いてあるのは共通していますが、それがいつだったかは統一されていません。それから、「何もおこらなかった」のが、どの程度のことであるかを示す副詞の部分が異なっていたりもします。

下は、「おそらく」の文字がないシンプル・バージョン。


1967年4月17日に、ここでは、何もおこらなかった

私が一番好きなのは、「おそらく(probablement」何もおこらなかったではなくて、「strictement(厳密に、完全に)」何もおこらなかったという文章。その方が愉快ではないですか?

こういうのです ↓


ここでは、1891年4月17日に、厳密に何もおこらなかった

上のプレートは、文房具店で売っているのを見たことがあります。こちらのネットショップでも売っていますね。29.90ユーロですって。エナメル加工した高級品のプレートですが、4,000円を少し超える金額。そんなにお金を出して遊びたくはないですよ~!


ここまで書いて、ふと、気がつきました。

ここで挙げた3つ例では、それぞれ年号は異なっていますが、4月17日(17 avril)ということでは共通しているのです。何か特別な日なのでしょうか?

プレートに書いてある「rien(英語にすればnothing)」の文字で思い出したのは、フランス革命が勃発した1789年7月14日の日記として、ルイ16世が「Rien」とだけ書いていたという有名なエピソード。襲撃を受けていながら「何もなし」はないだろうと言われましたが、実は、彼の日記は趣味にしていた狩猟について書いていたので、「今日は、獲物は何もなかった」というだけの意味しかない文字だったのでした。

その日記の日付は7月14日。今日では革命記念日として祭日になっているので、フランス人には馴染みが深い日付です。その日付の数字を逆に読むと4月17日になりますね。フランス語で「17 avril(4月17日)」と書いてあるのを見たときには何も思わなかったのですが、日本語にすると年月は数字だけになるので見えました。

わざわざ4月17日としているのは、7月14日のアナグラムなのではないか、という気がしてきます。

とはいえ、何もなかったと書いてあると、実は何かがあったのではないか? と気になってくる。偽の記念碑プレートに書いてあった年月日には何か特別なことが起きていたのかもしれない、と調べまくったフランス人のブログも出てきました。

でも、プレートを作ったのはフランスではない可能性もあるのだし、年号や年月には意味がないと思った方が良いのではないか、と結論しました。そうやって、思わせぶりなことをするのが、こういう偽の記念碑プレートの狙いなのでしょうから。


フランス人はジョークが好き

前々回の日記(「お向かいさんより、うちの方が良い」というプレート)で、こんなプレートを買って塀に付けた友人がいたことを書いています。
Plaque
"Ici c'est bien mieux qu'en face"

フランス人は、何か書いたものを張るのが好きなのかもしれない、と思いました。

カフェの中でも、よく見かけます。
こんなのが壁に貼ってあるのを見た、とブログにも書いていました:

 
カフェで飾りたくなるジョーク? 2014/04/15

フランス人から、フランスとイギリスのジョークはかなり違うのだと言われたことがありました。イギリスのジョークというのは、かなりグサリと差すほど辛辣なのだそう。これを見たとき、なるほどね... と思ったので写真を撮っていました。 

ワイン農家で試飲する場所の壁にも、格言風の文句が掲げられていることがよくあります。例えば、「女性とワインは悲しみを忘れさせる」とか...。

友達の家でトイレをかりたとき、壁にユーモラスなことを書いてあるのが貼ってあるのも良く見かけます。

でも、考えてみれば、何か書いてあるのを飾るというのは、日本人もよくやりますね。

こういうのは日本の観光地のお土産屋さんなどで売っているので、好きな人は多いのではないかと思います。私は教訓を家の中に置いたり、壁に張ったりというのは、なぜか好きではないのですけれど...。

日本とフランスを比較してみると、大きな違いがあると感じます。

日本では、生き方を示唆する言葉とか、元気づけになるような言葉ですよね? フランス人が飾るのはジョークばかりのように思います。それが日本のような格言だった、というのは見たことがないような気がする...。

日本人は、反省して前進しようと努力する。フランス人は、笑ってごまかして、前向きに生きる... という違いがある、と言えるのかな?...


本物らしく見える記念碑プレートもある

フランスでは、著名な人物にゆかりがあることなどを示す記念碑プレートが家の外壁などについていることが多いという例を書くために、こんなサイトがあったのでリンクを取っていました:
Liste de plaques commémoratives parisiennes

スルスルとスクロールして入っている写真を眺めて、パリで見かけた記念碑プレートの写真をコレクションしている人なのだろうと思いました。記念碑プレートなんていっぱいあるのだから、そんな写真をコレクションしていたらきりがないではないか、と思いました。

放置してブログを書いていたのですが、リンクを残す価値があるかと思って再び開いて、少し文字も読んでみたら、なんだか変なのでした。

例えば、こんなプレートが入っているのです ↓


公務員のKarima Bentiffaは、このマンションで、1984年から1989年まで生活した

公務員というだけで記念プレートが付けられているのは奇妙。それ以外に何か功績を残した人だったのだろうかと思いませんか?

この名前で検索してみたら、これと全く同じ文章のプレートが、パリ市内でかなり離れた地域の4カ所に付けられていたと出てきました。従って、偽物であるのは確か。

「〇〇年には何もなかった」などというのは、ひと目でジョークだと思わせます。でも、人の名前が書いてあると、私は知らないけれど、何か特別な人がいたのだろうかと思ってしまう。パリの国立古文書図書館まで行って、そのプレートが昔からあったのかと調べていたことを報告している人までいました。

結局、Karima Bentiffaは架空の人物のようです。同じ名前で文章が異なるものもあるのです。

別の名前を使っている偽のプレートもありました。職業などで誰であるかを説明する部分にも色々あって、公務員の他に、セクレタリー、配管工、専業主婦、独身、ルイ15世の情報処理技術者、等など...。

それから、誰それは「ここには住まなかった」、このプレートは何年何月何日に取り付けられた、などというのもありました。


誰が記念碑プレートを付けていたか?

こういうのは、その建物に住んでいる人がおふざけで付けているのだろうと思っていたのですが、そればかりではないのでした。

ある日、マンションの壁に記念碑プレートが取り付けられているのに住人たちが気がついて、書いてある人物は誰なのかなどと不思議に思ったりしている、という話しが出てきました。

もう10年くらい前から、パリではこういう偽の記念碑プレートがたくさん付けられている、とニュースになっていたのです。

自分の家に勝手に何かを付けることを禁止できる法律はないようなのですが、勝手につけられてしまった場合は、住人が取り外して良いのだそう。そんなことがニュースに書いてあるということは、被害(?)を受けた人が多数いるということなのでしょうね。

何なのか気になってきました。しつこく調べていたら、やっと理由が出てきました。

謎めいた偽の記念碑プレートだったのですが、ついに誰がやっているのかも判明したのだそう。あるアーティストが、仲間の手助けも得て、2001年の夏から、ひそかにプレートを付けていた、とマスコミの取材に応じていました。

ちゃんと、悲惨な事件があったような通りは避けているのだそう。目的は、不快感は抱かせずに、通りがかった人が都会では語られることもない無名の人々もいることを考えさせることにあるのだ、と言っていたらしい。

そのアーティストは簡単に持ち運べる折り畳みの梯子も用意していて、プレートを取り付けることで警察に目をつけられることがないようにも注意しているのだそう。

もっとも、本物のプレートに見えるだけで、材料費はそんなにかけていないらしいです。ポリスチレンの板に、浴室用の糊付き壁紙を使っているとか。

そう聞くと、二番煎じかな、と思いました。

パリには、人が気付かないうちに壁に落書きをして有名になった女性アーティスト、Miss. Ticがいるのです。名前を発音すると、英語でもフランス語でも通用する「ミスティック」になる。

そのことを書いた記事:
Miss.Tic(ミスティック): パリで人気の落書きアーティスト 2011/11/07

でも、ミスティックはサインを残していますが、記念碑プレートをとりつけるアーティストはプレートにサインは残していないし、マスコミの取材に応えるときも名前は明かしていません。何のために、そんなことをするのかな?...

ともかく、偽の記念碑プレートも存在するということは、観光しているときに注意しなければいけないかも知れない。ただし、さすがに実在の人物の歴史を歪めるものではなく、読めばジョークだと分かるものばかりにしているようです。そこまでに止めておかないと、犯罪になって逮捕されてしまいますものね。

シリーズ記事: 家の記念碑プレート


ブログ内リンク:
★ 目次: フランス人のジョークについて書いた記事

外部リンク:
☆ Réponse à Tout: Les fausses plaques commémoratives 30/09/2008
☆ Le Monde: Le mystère des fausses plaques commémoratives sur des immeubles parisiens 19.11.2002
☆ Le Parisien: Des fausses plaques commémoratives sur les façades 11/11/2002
Epigraphie immobilière parisienne
Une plaque de rue émaillée bien énigmatique: " Ici le 17 avril 1891 il ne se passa strictement rien !"


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