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2015/08/05
フランスの友人たちは私の国に興味を持つので、テレビで日本についての番組があると「見たよ」と話題にしてきます。ニュースで言っていたと教えてくれるときは、たいてい地震とか事故とかの悪いニュース。

昨日は、こう言われました。
「日本の天皇のイロイトが...」

「えぇ? 亡くなったの?!」
そう反応してしまってから、ご病気だというニュースは皇后陛下の方だと思い出しました。

相手は、すかさず言ってくる。
「イロイトはもう亡き人であって、今の天皇はアキイトだよ」

フランス人以上に日本のことを知らなくて、すみません! フランス人はHを発音しないので、余計にピンとこない。それに、天皇を私は名前で呼ぶことはないので覚えないのです。今上天皇(きんじょうてんのう)とか、昭和天皇とかいう言い方もあるし...。


玉音放送

友だちが私に話したかったのは、朝に洗面所で顔を洗っているときに聞いたラジオのニュースでした。

天皇陛下が、今の政権が戦争に突っ走ろうとしているのにブレーキをかけるために、あえて昭和天皇がポツダム宣言を受諾することにしたスピーチを公開したのだ、と言っていたのだそう。

いちおう日本のニュースは拾うようにしているので、宮内庁が玉音放送の原盤の音声ファイルを初公開していたのは知っていました。

でも、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」という文句しか私は知らない。

それで、今の時期に公開する意味があったのかを知るために、スピーチの内容を読んでみることにしました。

宮内庁のサイトにも入っていましたが(終戦の玉音放送)、音声と原文を見せていただいてもよく分からない。それで、現代語への翻訳を読みました。


昭和天皇は玉音放送で何を語られていたのか

人々が太平洋戦争で天皇のために命を捨てたことに対する責任は大きすぎると思うので、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」という文句は自分勝手ではないかと反感を持っていたのですが、平和を訴えるスピーチだったのですね。原爆がある時代になったので、戦争を続けれていれば日本が滅びるだけではなくて、世界が滅びるという言葉も重いです。

でも、昭和天皇が本当に日本国民の安泰を願っていたのなら、特攻隊などは非人道的だと反対するとか、もっと前に行動を起こして欲しかった...。でも、明治維新以来、天皇は時代を操る人たちに利用されていると思うので、がんじがらめで何もできないようになっていたのでしょう。今も変わっていないであろう体制の中で、今上天皇が日本は平和を貫くべき国なのだだと主張する抵抗を示してくれているのは評価します。

戦後の日本は戦争ができない国にさせられたわけですが、平和な国である方が日本の本来の姿だったと思う。明治維新前の日本では、豊臣秀吉が野心を抱いたのを除けば外国に攻め入ったりはしていなかったし、蒙古襲来以外では外国から攻め入られることもなかったのですから。

スイッチを押すだけで地球を破壊できるようになっている今の時代。敵をでっちあげたり、イスラム教徒たちの問題に首を突っ込んだりなんかしないで、巧みな外交をして戦争や紛争から逃れていた方が賢いと思う...。

日本では平和を訴えて抗議行動をする若者たちが増えてきているようですね(読んだ記事)。フランスのデモが大きくなって若者たちが参加してくると、非常に警戒します。フランス人には子どもが神聖なものなので、そこで死傷者が1人でも出ると大騒ぎになるために神経質になるのです。


広島の原爆投下に関するフランスの番組

夏になると、フランスのテレビでは日本が受けた原爆に関するドキュメンタリーが必ず組まれています。日本の戦時中のことを報道するのも、この時期かな...。

玉音放送の話しをした友だちが、テレビチャンネルARTE(ドイツとフランスが共同で制作している教養チャンネル)で、広島の原爆に関する良い特集があるらしいから見るようにと言っていました。

この手の番組は、外国で作られた映像の方が興味深いです。日本だと政治的な駆け引きがあって報道できないようなことも出してしまいますので。登場する日本人も、外国の取材だから気持ちをぶち明けてしまうので本音が聞けます。

夜に番組を見終わってからARTEのサイトを見たら、そのドキュメンタリーが入っていたので入れておきます。95分の番組。8月12日までオンラインで視聴可能だそうです。タイトルは「Hiroshima, la véritable histoire(広島、本当のストーリー)」と訳したら良いでしょうか。

☆ ARTE: Hiroshima, la véritable histoire


(Documentaire Arte) Hiroshima, la véritable histoire (70 ans plus tard...) - vidéo dailymotion


ARTEの番組を見る前に、過去に報道された番組もインターネットで見ました。題して「La Face cachée de Hiroshima(広島の隠れた側面)」。Kenichi Watanabeという名前から日本人と思われる人が制作していました。


La Face Cachee De Hiroshima Film Documentaire Français Complet 2014


アメリカは大きな投資をして原爆を作ったのだから、なんとしても実験しなければならない。それで、高い費用がかかるウラン型の爆弾を広島に落とし、安くできるプルトニウム型の原爆を長崎に落としてみた。

ドキュメンタリーでは、食糧にも尽きて追い込まれていた日本が終戦するのは時間の問題だったのだから、原爆を落とす必要はなかったと語っていました。

広島の原爆投下の後は研究センター(ABCC: Atomic Bomb Casualty Commission 原爆傷害調査委員会)を作り、被爆者の治療は全くせずに、日本人研究者も協力して原爆が人間にどういう影響を与えるかを分析して膨大な資料を作っていた、という話しは聞いていたのですが、こんなにすごい施設を作ってモルモットを分析していたのですね...。

アメリカ側は、原爆は平和のための兵器というようなことを言っている。放射能による人体への影響は重々知っていたのに、やはり当初は隠そうとしていた。今と全く変わっていないんだな...。

アメリカでは新兵器の威力に大喜びしていて、子どもたちが原爆作りキットで遊んでいたりしたという映像はショッキングでした...。

ドイツはナチスがやったことでしつこいほど断罪されていますが、アメリカは戦争に勝ったから犯罪だとは追及されない。もしも原爆がドイツに落とされていたら、どうなったのだろう? 生き延びた被爆者も苦しむようなことをしたアメリカは、ナチより残酷なことをしたと主張したかもしれない。

もっとも、その想定は成り立たないのですよね。ナチスは原発を開発していて(ヒットラーは原発開発には力を入れていなかったそうですが)、ドイツが降参したためにプルトニュウムをアメリカが押収して、ユダヤ系ドイツ人研究者がアメリカに亡命したから原爆を作れたわけですから。ただし、もしもアメリカが戦争に負けていたら、原爆開発と投下に関係していたひとたちは全員が裁判で死刑にされたのは確実だと思います。

日本に原爆を落とすにあたって、日本人を「ローストしてやる」などと言っている場面は、ローストチキンを連想させるので余りにもショッキングでしたが、戦争というのはそういうものだと思う...。

広島に原爆を投下した米爆撃機B29「エノラ・ゲイ」の搭乗員12人のうち、最後の生存者だったセオドア・バンカーク氏も亡くなったのだそう。生前の発言には重みがありました。そして、任務だとして戦場に赴かされて人々を殺害した後の心の痛みはさぞ大きいだろうと想像します。戦場から帰って精神障害になり、自殺者がたくさんでているのは問題になっています。戦争に行けと指令する上層部は、そんな苦しみは体験しない...。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90168730V00C15A8000000/
エノラ・ゲイ元航空士が遺した、原爆の「過ち」と誓い  :日本経済新聞


京都に原爆が落とされるのを防いだのはフランス人?

日本が原爆実験に利用されたとするドキュメンタリーで見て、気になっていたことを思い出したので調べてみました。

アメリカがどこに原爆を落としてみるかで、京都が有力候補にあがっていたのを、フランス側が反対したのだ、とフランス人たちは言うのです。そんなことを知っているのはインテリ階層ですが、かなり定番の話しらしい。友達の中にいる世界的に有名な学者もそう言っていたので、単なるでっちあげでもなさそうなのです。

京都に原爆を落とすのに反対したのは、Serge Elisseeffというロシア系のフランス人。その他にも、新婚旅行で京都に行ったアメリカ人も京都に原爆を落とすのに反対した、とフランスの友人は付け足していました。 

フランス人は文化遺産が好きだし、京都の美しさには特別の思い入れがある。アメリカ人はそんなのは気にしないでしょうから、ありうる話しだと思いました。でも、京都に原爆を落とされなかったのはフランスのお蔭だという話しを、私は日本の報道で聞いたことがありません。

でも、調べてみたら出てきました:
初のロシア人東大生エリセーエフ

ARTEのドキュメンタリーに登場していた広島の生き証人たちは、私などは想像もしていなかった戦後の悲惨な状況を話していたので、京都の文化財が助かって良かったなどとは思えないですけど...。

京都に思い出があったアメリカ人はスチムソン陸軍長官(ヘンリー・スティムソン)という人だったようです。日本では、この人が京都の文化財を救ったというのが定説のように感じました。ドキュメンタリーにも出てきた「原爆投下によって戦争を早く終わらせ、100万人のアメリカ兵の生命が救われた」という原爆使用正当化のスピーチをしたのはこの人でしたか。

当時のフランスはアメリカ側で戦っていたわけですが、フランスの友人たちからは、軍事基地の攻撃ならともかく、一般市民を殺戮した原爆使用は戦争犯罪だという意見しか聞いたことがありません。


広島の思い出

広島は、私にとっては懐かしい町です。子どものときに、父親の転勤で2年間暮らしたことがあるのです。

瀬戸内海の美しさといったら、例えようもありませんでした。宮島には簡単に行けて、美しい厳島神社を眺めながら潮干狩りをしたり...。フグも安く売っているし、海産物が美味しい。中国山地で育てられている美味しい肉も食卓にのりました。瀬戸内海の風景を楽しみ、冬にはスキーも楽しめる。小高い山に登れば、瀬戸内海と日本海が同時に眺められる。

広島は、東京育ちの私には桃源郷に見えました。

でも、ケロイド症状の顔をした人たちがたくさん町を歩いているのは異常な光景でした。結婚はできないのだ、と言う若者の話しには身につまされました。原爆を投下されたことに怒るわけではなく、そういう運命だと彼らが受け止めているのが余計に痛ましい...。

学校の授業で広島に原爆が落とされたというのは教えられていました。でも、戦後20年以上たっているのに、そんなに痛ましい爪痕が残っているとは全く想像もしていませんでした。

今考えれば、市内の中心地にあった私の家は奇妙でした。庭にある夾竹桃が素晴らしい花を咲かせるし、イチジクは食べきれないほどの実をならしていました。でも、庭には雑草が生えないので、草むしりする必要は全くなかったのです。海沿いの地域なので、砂の土地だから、雑草が生えないのだろうと思っていたのですけれど。

広島で食べる食材が東京では味わえなかったほど美味しいのを堪能していたのですが、まだ放射能は残っていたのかもしれない。でも、そんなのは、私の両親は全く(!)心配していませんでした。

ちょっとした怪我をしただけなのに出血が全く止まらなくて困ったので、病院に行ったことがありました。出血止めの処置をしてくれるのを期待していただけなのに、かなりの精密検査をされたので驚きました。白血病ではないかを検査していたのだそう...。


追記:

イギリスのBBC放送でも、原爆投下の正当化について疑問を投げかけていたそうです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150806-00000015-jij-eurp
原爆投下、正当化に疑問=英BBCの広島70年報道 (時事通信) - Yahoo!ニュース

きれいな戦争なんていうのは存在しない。平和のための戦争なんていうのは口実に過ぎない。恐ろしいと思うのは、日本は原爆の被害を受けた国でありながら、原子力の危険性を否定していることです...。

外部リンク:
☆ コトバンク: 玉音(ギョクイン)とは 
☆ Wikipedia: 玉音放送
終戦の詔勅(玉音放送)口語訳
5分弱の“玉音放送”を現代語訳してみた (1-2)
吉田裕著『昭和天皇の終戦史』を読む - 近衛文麿と昭和天皇の暗闘
NHKスペシャル「戦後70年 ニッポンの肖像 - 日本人と象徴天皇」
戦後70年談話で迷走、安倍首相が怯える「天皇のお言葉」…天皇から憲法軽視と歴史修正主義への批判が?

セルゲイ・エリセーエフ - 日本学の始祖の知られざる人生
☆ Wikipedia: Serge Elisseeff ⇒  セルゲイ・エリセーエフ
Professsor Reichauer and Prime Minister's visit to Bosotn
Ces hommes qui sauvèrent Kyoto de la bombe atomique

Les raisons du bombardement de 1945
HIROSHIMA, première utilisation d'une bombe atomique le 6 août 1945
☆ Wikipedia: 日本への原子爆弾投下
☆ Wikipedia: 広島市への原子爆弾投下
☆ 平和記念資料館(原爆資料館): なぜ広島に原爆が投下されたのか
原爆投下が正しかったと考えるアメリカ人が減少 抵抗権は民主主義の重要なツールです

☆ Télérama: Hiroshima, la véritable histoire (2015)
La Face cachée de Hiroshima
“Dire qu’il n’y a pas de morts à Fukushima est un mensonge”, Kenichi Watanabe, documentariste

☆ BBC News: The 'sanitised narrative' of Hiroshima's atomic bombing
「原爆投下は必要なことだった」という一面的な《語り》を乗り越えようとするBBCの記事

De Hiroshima à Fukushima - Marc Petitjean
HiroshimaからFukushima 肥田舜太郎医師95歳の肖像 内部被曝の告発者
医師が見た被爆者の生と死~原爆被害、隠蔽と放置の12年間~ 肥田舜太郎

ある被曝体験記 - 紹介 - 読者の方からお寄せいただいた予備役兵の手記
エノラ・ゲイ元航空士が遺した、原爆の「過ち」と誓い
広島・長崎原爆で奇形児が少なかった理由のカラクリ
福島第一放出セシウム137 広島原爆168個分
「原爆」と「原発の事故」の違い」小出裕章氏(内容書き出し)8/9
Kenzaburô Oé Il y a eu Hiroshima, il y a Fukushima, une troisième tragédie est envisageable
原子力の「平和利用]という表現に対応するフランス語は?
☆ Le Momde: 「Hiroshima」をキーワードにした検索結果
ドイツが許されて日本が許されない本当の理由
安倍談話の「謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」について

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コメント
この記事へのコメント
bbcとは真逆にwsjは「原爆投下を神に感謝」ですからね。
言論の自由、報道も自由で当然相手の視点や感情もあるでしょうが、、日本人としては複雑ですね。
2015/08/07 | URL | leane  [ 編集 ]
Re:
v-22 leaneさんへ

コメント、どうもありがとうございます。

これのことですね?:
http://on.wsj.com/1hmxBkH

驚くべき主張ですが、各国から原爆投下が戦争犯罪だったと言われるようになってきた昨今、アメリカ側が原爆投下を正当化しようとするのは普通のことだと思います。日本も、戦時中にしたことは東南アジア諸国を欧米の侵略から救うためだった、ということにしようとしていますので。仕事の関係で接する東南アジアの人たちから、日本が戦時中にしたことに感謝しているなどという声を聞いたことは全くありません。こういうのは、経済力がある方が言ったら勝なのだろうと思っています。

それでも、原爆投下を「神に感謝」とまで言うのはどうかと思ってしまいます。私はクリスチャンではないですが、本当の信仰を持っている人だったら、このような生き地獄の世界を人為的に作ってしまったことに対して神に感謝するという感情を持つはずはありません。

当時の日本人は死ぬ覚悟で戦っていたので、恐ろしい存在だったのは理解できます。自爆テロは、フランスでは「カミカゼ」と言われるのが定着してしまいました。

原爆投下は日本に戦争を止めさせるための手段だったという主張を認めたとしても、戦後のアメリカが被爆者たちをモルモットにしてデータを集めていたのは非人道的な行為以外の何物でもなかったと思います。ドキュメンタリーに登場していた生存している被爆者たちが語っていましたが、少女が大勢の前で裸にされて検査されたとか、親が死んで悲しみの通夜をしているときに死体解剖に提供せよとしつこく電話がかかってきたなどという話しは、正気の沙汰とは思えませんでした…。
2015/08/07 | URL | Otium  [ 編集 ]
国家が自国の利益を優先する、正当性を主張する。これは事の善悪を越えた普遍の真理だと思っております。

ある事象において、事実がどうあれ世界がそれを認める事が各国の利益に繋がるのならば、黒でも白となり、黒を白とすることが自国の利益に繋がるのなら、白と認めるよう働きかける。
国家は損得勘定で動いており、世界は弱肉強食ですから、協力も妨害も自由だと思っております。

長々と小賢しいことを書かせて頂きましたが、理解はできるが許容できないことって多いんですよねえ。
2015/09/03 | URL | nashi  [ 編集 ]
Re:
v-22 nashiさんへ

>国家が自国の利益を優先する、正当性を主張する。これは事の善悪を越えた普遍の真理だと思っております。

⇒ 私もこれは全く同感です。それをいかに巧妙にやるかが政治家に課せられている使命だと思います。敗者だった場合には難しい。でも、ドイツはうまく立ち回ったけれど、日本は下手だったと思います。

国際間のことに限らず、1国の歴史でも塗り替えをしてしまいますよね。明治維新でもそうだったし、フランス革命でもそうだった...。
2015/09/03 | URL | Otium  [ 編集 ]
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