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2015/07/23
農業大国のフランスですが、農業者の所得格差はとても大きいと言われています。

羨ましいほど裕福な農業者たちもいるし、細々と貧しい農業をしちる人たちもいる。戦後に推し進められた農業の大規模経営化と近代化によって、設備投資をしすぎて借金の返済に追われる農業者たちも多い。

追い詰められて自殺する農業者の数の多さも語られます。酪農関係組織が発表した数値だと、2009年に自殺した農業者は800人を下らなかったとか。

スーパーが生産者から破格値で買い付けて、巨大な利益をあげている。かなり前からフランスでは問題にされています。「農業者のデモがすさまじい」を書きながら思い出した人がいました。


テレビに出演すると泣き顔で窮状を訴えていた農業者

南フランスで果実を栽培していたPierre Priolet(ピエール・プリオレ)という男性です。

スーパーがリンゴを仕入れに来ると、必要なだけ持っていって、後でスーパー側が運送費用や利益を差し引いた金額を払ってくれる。つまり、幾らで買ってくれるのか分からないで売っている、支払額は生産原価を切っている、と訴えていたのです。

テレビに出てインタビューされると、すぐに感極まって泣き顔になってしまう。彼が惨状を訴える姿は感動的で、茶の間の人気になっていました。

私のブログでも、ちらりと彼のことを書いていたので、いつのことだったか分かりました:
グルメ・レストランで推薦された山羊のチーズは安かった♪ 2011/05/26

2011年2月に、彼は『Les fruits de ma colère : Plaidoyer pour un monde paysan qu'on assassine(私の怒りの果実 - 暗殺される農民世界の擁護)』と題した本を発行。

その翌年にはペーパーバック版も出ていました。



Pierre Priolet - Les fruits de ma colère


あのプリオレさんは、どうなった?

プリオレさんは、2010年には、1年間で10.3万ユーロの赤字を出していたのだそう。生産にかかる費用を割る値段で売る農業を続けていたら、借金を膨らませるだけ。

借金をこれ以上は増やしてはいられないと、涙ながらに15ヘクタールのリンゴ畑を更地にしてサラダを作ることにしたというニュースがありました。

直売しようとしたのだけれど、うまくいかない模様まではニュースで見ていました。

あれからどうなったのかと探してみたら、ニュースが報道していました。

今年6月。年金生活者となった彼は63歳。農業も続けながら幸せに暮らしているのだそう。


Pierre Priolet - Heureux dans son verger

彼の果樹園は15ヘクタールでした。大規模経営にしようとしたのが間違っていた、と言っています。

加工食品を見るとビオ(オーガニック)の認証マークが付いていますね。これからの農業者は、健康に害がなくて、質の高いものを作り、正当な価格で売るのが求められている、と話しています。その通りだと思う。

ここのところテレビを賑わせている農業者たちのデモを報道するニュースでは、乳牛の集中飼育をする施設を作った農家が憤っているのが出ていました。

ドイツでは、放牧にしないで乳牛を小屋の中で飼育するのが主流なのだそう。そういう施設を100万ユーロを超える投資をして作ったのに、その借金を払うために政府は何とかしてくれというのが主張でした。銀行は、担保としての土地がある農家にはお金を貸し出すのですけれど、まずいけれど安く売れる大量生産のミルクを作ることにしたのは、その農家の責任ではないですか?...

プリオレさんはリンゴ園を少し残したのですが、以前のように農薬をたくさん使わずに質の良いリンゴにしている様子。お客さんが来て、これがあなたの美味しいリンゴの木なのね、と喜んでいるのを見るのは嬉しいと笑顔を見せています。

気持ちを同じくする農業者たちとNPOを創設して、質の良い農産物や農産加工品を作って、正当な価格で販売。週に2回、朝早くから起きて、朝市で野菜と果実を売っています。

近々、パリ首都圏に3カ所の販売所もオープンさせるそう。ご成功ですね♪

借金もなくなったのだそう。彼の小さな農園がもたらす収入は年に6,000ユーロ(約80万円)だけど、それで生きていくには充分、と言っています。ニュースでは退職者と呼んでいるので、農業者の場合は少ないとはいうものの、その他に老齢年金も入ってくるのでしょうね。

テレビに出てきたときは絶望感と泣き顔ばかりだった彼が、笑顔で登場してくれたのを見て嬉しかったです。世の中は弱者が虐げられているばかりじゃないのだ、と思って勇気づけられます。

ブログ内リンク:
北フランスで昔ながらの農業を続けていたポールさんの生き方 2014/09/30
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方

外部リンク:
P. Priolet, agriculteur Si on ne vendait pas à perte, on pourrait être heureux de faire ce métier 28/05/2015
Les fruits de ma colère : un plaidoyer de Pierre Priolet pour le monde paysan 01/08/2015
☆ Le Monde: Le goût retrouvé du petit commerce 21.04.2015


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