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2016/02/14
つい最近までパリのベルシー地区にあったワイン市場のことについて前回に書きながら、市場がなくなろうとしている時期の映像を見ていたら、「Entrecôte Bercy(アントルコート・ベルシー」という言葉が何度も登場していました。

パリとワインの関係 (3): ベルシー地区にあった酒蔵

アントルコートと聞けば牛肉を連想するので、料理のことだとは想像できます。ベルシーのワイン市場で食べていた料理がパリの郷土料理の1つになっているのだそう。

どんな料理なのか調べてみました。

シリーズ記事 【フランスのワイン産地】 目次へ
その22

ベルシーのワイン市場で生まれた料理

40ヘクタールの広さがあったベルシーのワイン市場では、アルコール飲料をストックしていたのですが、ワインをブレンドして商品化することもしていて、大勢の人たちが働いていました。

修復ができないほど古くなった酒樽があるので、それを燃してバーベキューに使う習慣があり、それが「アントルコート・ベルシー(Entrecôte Bercy)」という名前の料理として広まったのだそうです。

ベルシーのワイン市場があった地域の再開発が始まった1980年の映像を入れます。百年以上の歴史がある市場を文化財として守らなければならないとして、再開発をどのようにすれば良いかの議論が盛んになされた時期でした。

始めのところで、アントルコートをバーベキューしている人が映し出されています。ワインの試飲をした後にステーキを食べる習慣があったのだそう。今でも金曜日にはアントルコートを食べるのだ、と言っていますね。


Reportage Bercy 1980年のニュース


アントルコートは何処にある?

Côtes et entrecôtesこの料理で使うのは「entrecôte(アントルコート)」と呼ぶ、肩ロース肉。

ベルシーにあったワイン市場の名前は「entrepôt de Bercy(アントルポ・ド・ベルシー)」。ベルシーの倉庫という意味です。

肉の方は「entrecôte(アントルコート)」。

「entre(アントル)」が同じだから、洒落てこの肉を食べるというわけでもないでしょうね?

ステーキ肉としては気どりのない部位と言えるかもしれません。カフェ・レストランでオーソドックスな料理として、アントルコートのステーキにフライド・ポテトというのがよくありますから。


肩ロースは、骨付きで切り出すとcôte de bœufと呼ばれる部分。それを肉屋さんでバーベキュー用に1枚切ってもらうと、1.5キロくらいの大きさになります。

entrecôte

Entrecôte charolais
côte de bœuf
côte de bœuf


数人でバーベキューをするなら、私は骨つき肉の方が好きです。でも、焼きあがってから骨を除いて切り分けなければならないので、ワイン市場で働く人たちが仕事の合間に食べるには向かないでしょうね。


本物のアントルコート・ベルシーEntrecôte Bercy)」とは?

ワインツーリズムの専門家が言っていた「本物の」アントルコート・ベルシーの特徴はこうでした。
  1. 馬肉を使う
  2. ソースは、白ワイン、エシャロット、レモンで作る
  3. パセリとクレソンを添える
  4. 修理できなくなった樽でつくる薪で肉を焼く

本来は馬肉のアントルコートだった点に興味をひかれました。今日のフランスでは、食べる食肉に占める馬肉の割合は0.4%程度に過ぎないのですが、ベルシーがワインビジネスで賑わっていたころには、もう少し多く食べていたようなのです。

フランスで馬肉を食べることが許されたのは1866年。最も多く馬肉が食べられた時期は1900年から1960年までだったそうです。しかも、田舎よりパリでの方が食べていた。

馬肉を食べる歴史については長くなるので別の記事にして書きます。


それから、本物というのはバーベキューのやり方にあります。ワイン市場だから使えなくなった古い酒樽があって、それを薪の代わりに燃してバーベキューにしていたわけです。

使い込んだ樽ならワインの香りがしみ込んでいて、その香りがステーキに移るのでしょう。美味しそう...。

剪定のために切り落としたブドウの木でバーベキューをすることもありますが(ボルドーではよくやるらしい)、それほど香りは出ないと思うのですが、ワイン樽だったらいいな...。

ソースのベースは、当然ながらワインですね。赤身の肉なのに白ワインを使うのが面白いと思いました。

昔のフランスで水替わりにワインを飲んでいた時代には、圧倒的に赤ワインを飲んでいたのだそう。とすると、売れ残った白ワインがあったから、それを使ったのではないか、などと思ってしまうのですが、私の当てずっぽうです。


ニュースに登場してアントルコート・ベルシーを懐かしそうに話していた人は、エシャロットの香りがあったのを強調していました。


ワインにエシャロットを入れて肉料理のソースにするものには、ソース・マルシャン・ド・ヴァン(sauce marchand de vin)があります。

こちらは赤ワインで作ります。

このソースの名前になっているマルシャン・ド・ヴァンというのは、普通に訳せばワイン商人なのです。

これもワイン市場と関係があるのではないかと思ってしまうところですが、この名前の由来については調べられませんでした。ボルドーのソースがこれになったということくらいしか出てきませんでした。

ソース・マルシャン・ド・ヴァンの作り方についてはブログですでに書いていました。

sauce marchand de vin
エシャロットを使うソース・マルシャン・ド・ヴァン 2009/03/30


白ワインで作るベルシー・ソースのレシピ

アントルコート・ベルシーと呼ぶ料理はソースにも特徴があるわけで、それはsauce Bercy(ベルシー・ソース)とも呼ばれていました。

日本のサイトにも登場するので、フランス料理のソースの1つとして知られている感じがします。

フランスのサイトではレシピがたくさん出てきたのですが、多少異なっていました。
基本的パターンは2つに分けられるように見えます。
  • フォンドヴォーを入れる
  • 生クリームかモワル(牛の骨髄)を入れてこってりとさせる
とろみがある方が良いのかもしれません。ちょっと邪道ではないかと思いましたが、コーンスターチでとろみをつけているレシピもありました。

http://www.cuisinealafrancaise.com/fr/recettes/viandes-et-volailles/boeuf/entrecote-bercy
Entrecôte Bercy - Recettes - Cuisine française


3種類のレシピをメモしておきます。全てバーベキューではなくて、フライパンで肉を焼いてしまうレシピだったので、肉の焼き方は省略します。


レシピ 1(2人前)
レシピ 2 (4人前)
  • アントルコート2枚
  • 白ワイン 15 cl
  • 濃厚な生クリーム 大さじ3
  • エシャロット 4個
  • レモン 1/2個
  • パセリ 1束
  • クレッソン 1束
  • バター 30 g
  • 塩、コショウ
  • アントルコート2枚(各480 g)
  • 白ワイン 20 cl
  • フォンドヴォー 1O cl
  • バター 40 g
  • エシャロット(大きなサイズ) 5個
  • 刻みパセリ 大さじ1
  • オリーブオイル 大さじ1
  • 塩、コショウ

ソースの作り方:

鍋に白ワインとエシャロットのみじん切りを入れて中火で煮て、3/4にまで煮詰める。

生クリームを加え、塩コショウし、半分にまで煮詰める。

バターをレモンの絞り汁を加える。

軽く泡立て器でかき混ぜ、刻んだパセリを混ぜる。

焼いた肉にクレソンを添え、ソースは別にして好みの量を肉にかける。

ソースの作り方:

20グラムのバターを鍋にいれ、刻んだエシャロットを炒め、白ワインを入れ、半分にまで煮詰めてから塩コショウする。

フォンドヴォーを加えて、さらに10分間煮詰める。

15グラムのバターを加えてゆっくりとかき混ぜ、パセリを加える。

レシピ 3
(6人前)
  • アントルコート2枚(各500 g) 
  • エシャロット 3個
  • 白ワイン 1 dl
  • モワル(牛の骨髄)1個
  • みじん切りのパセリ
  • レモン汁
  • 塩、コショウ
  • バター 100 g



ソースの作り方:

塩を入れた水を沸騰させ、モワルを入れて20分煮る。

白ワインを強火で火にかけ、塩コショウし、エシャロットを煮る。5分たったら、レモン汁、刻んだパセリ、バターを少しずつ入れて強くかき混ぜる。

モワルを引き上げて中の髄を取り出し、ソースに混ぜる。



レシピとして見つかった動画はフォンドヴォーを入れるレシピでした。ニンニク(最後に取り出す)とタイムで香りづけしています。


sauce bercy


牛肉の髄骨でとろみを出すレシピは美味しそう。でも、l'os à moelle(ロス・ア・モワル)というのは店頭には余り並んでいないので入手しにくいと思います。ポトフを作るときには欲しいので、肉屋さんに言うと奥から出してきてくれるので、いつもあるものなのかもしれませんけれど。


牛の髄骨(os à moelle)の料理 2012/02/13


アントルコート専門レストランの秘密のソース

ベルシーのソースを探していたら、パリで話題になっているらしいアントルコートのステーキ専門のビストロについての記事が幾つか出てきました。創業1959年。その門外不出のソースに人気があって、いつもレストランの前には行列ができているのだそう。

1つの新聞記事に入っていたのは、このステーキ。

http://www.lefigaro.fr/sortir-paris/2010/11/02/03013-20101102ARTFIG00776-10-plats-addictifs-l-entrecote-frites-durelais-de-l-entrecote.php

10 plats addictifs : L'entrecôte-frites duRelais de l'Entrecôte

その長いこと厳格に守られていた幻のアントルコートの特性ソースをどうやって作るのか分かった!、という新聞記事がありました。

行く価値があるかなと思ったのですが、レストランのコメントを読むと酷評している人もいる。むしろ、貶している人の方が多く見える。パリだから繁盛しているレストランの典型に見えてきたので、行く気はなくなりました。ミシュランのサイトにも入っていましたが、お勧めマークは付いていないし...。

幻のソースの作り方が分かったという記事は10年近く前のものでした。その後、レストランの質が落ちたのかな?...

でも、そのソースの作り方をメモしておきます。私には意外なものを使っているので。

材料
  • 鶏のレバー
  • フレッシュなタイム、タイムの花
  • 液体状の生クリーム
  • ディジョンのマスタード(シンプルなタイプ)
  • バター
  • 塩、コショウ
  1. 鶏のレバーとタイムを弱火にかけて軽く色をつけるうける。
  2. 生クリームとマスタードを鍋に入れて弱火で煮詰め、タイムの花で香りをつける。固くなりすぎてしまった場合は、バターと水を加えてのばすこと。
  3. レバーをミキサーにかけ、シノワに移し、生クリーム加えてこす。
  4. 塩コショウで味を調える。

私でも作れそうなレシピですが、レバーをシノワでこすには力がいりそう...。

今でもビストロの前には行列ができているのでしょうか?

おしゃべりなオーナーの奥様に付き合ってあげなかったらお怒りをかって、もう二度と来るなと追い出されてしまったと長々と報告している人のコメントを読んだら、パリがつまったバターというのを思い出してしまった...。

パリが詰まったバターとは? 2013/05/28


ベルシーのワイン市場がなくなる時期の報道で、ベルシーのソースを語る人たちは懐かしさでいっぱいの表情をしていました。やはり、ベルシーのソースの方が美味しそうに思えてくる...。

これを書きながらフランスの馬肉食についての情報が出てきていたので、それをメモしました:
フランスにおける馬肉食の歴史 2016/02/16


シリーズ記事 【フランスのワイン産地】 その22  目次へ

ブログ内リンク:
★ 目次: フランスで食べる郷土料理、地方特産食品、外国料理
★ 目次: レシピ、調理法、テーブルウエアについて書いた記事
タルタルステーキ: (1) 馬肉 2013/07/21
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
☆ 歴史とレシピ: Entrecote Bercy
☆ レシピ: Entrecôte Bercy
Recette : Entrecôte Bercy de viande chevaline
☆ レシピ: Entrecotes sauce bercy
Recette : Entrecôte sauce Bercy
Recette entrecôte sauce bercy - Cuisine et Vins de France
☆ レシピ: Entrecôte sautée Bercy classique
若潮牛・ロースのポワレ ソース・ベルシー
Bercy, son entrecôte, ses marchands de vin, le « Paris de la Soif » à jamais englouti…. Est-ce là le goût, la couleur qu’il vous faut, ô ! Cher Client !
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Le secret de l'Entrecôte enfin dévoilé


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