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2016/03/19
ワインについて書いていたら、偶然に出会ったボルドーのシャトー・ディケムChâteau d'Yquem)。

フランス甘口ワインの最高峰と言われるワインを作っていて、その歴史は400年になるシャトー。

そのワインづくりを200年余りにわたってを担ってきたド・リュル・サリュース家は、20世紀が終わろうとするとき、ブランド帝国を築き上げたLVMHのCEOベルナール・アルノー氏に経営権を奪われました。

古き時代の最後のシャトー管理人となったのは、アレクサンドル・ド・リュル・サリュース伯爵(Alexandre de Lur Saluces、1934年~)。

その彼が、シャトー・ディケムのワインづくりの倫理を語るドキュメンタリー映画を見たことを前回に書きました:
シャトー・ディケム 2000年が、どう作られたかを見せた映像

昔風のやり方をしていた伯爵が立ち去った後、シャトー・ディケムにはどんな変革がもたらされているかを調べたくなりました。


シリーズ記事 【フランスのワイン産地】 目次へ
その29



シャトー・ディケムの新しい経営者は、高級ブランドの帝国を築いた実業家

ベルナール・アルノー氏(Bernard Arnault, 1949年~)が経済界に華々しくデビューしたのは、1984年のクリスチャン・ディオールの買収。そのやり方は巧妙なものでした。その3年後、彼はLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の買収にも成功。次々と有名ブランドを傘下に収めてきました。

アルノー氏がいかにして経済界を築いたか、生い立ちから、その冷血な手口まで検証したルポルタージュがYouTubeに入っています。『Bernard Arnault, l'homme qui valait 30 milliards(ベルナール・アルノー、300億ユーロの男)』と題されたもの。

ここにYouTubeの動画を挿入する気はしないので(お金儲けのテーマは好きではないのです)、最後の「外部リンク」に入れています(のマーク)。1時間半の長さがある動画で、2014年に放映されたテレビ番組だと思います

こういうテレビ番組は日本では作れないでしょうね。コマーシャル代が入らなくなってしまうから、テレビ局としては避けるはずです。しかも、こんな暴きの番組に彼が登場してインタビューを受けているのにも驚き。皆から嫌われれば話題になって、それが宣伝になるし、どうせ何を言われても彼の絶対的な地位は揺るがない、という自信もあったのでしょう。


アルノー氏はフランスで最も金持ちと言われるのですが、雑誌フォーブスの2016年度世界長者番付では、フランスでは第2位、世界では第14位としていました。彼の資産は340億ドルで、ビル・ゲイツの半分より少し欠けるという感じ。

ちなみに、フォーブスがフランス第1位にしているのはリリアンヌ・ベタンクール。彼女は化粧品会社のロレアルの資産を持っていることで大金持ちなので、やはりフランスはブランドの国でしょうか? 私が彼女の名前を覚えたのは、サルコジ前大統領が、高齢で痴呆状態の彼女から選挙資金のためのお金を巻き上げたというスキャンダルがあって、連日のように彼女の姿をテレビで見たときでした。

私が勤めていたフランス企業を乗っ取ったのもアルノー氏でした。もの静かだった社長は去っていきました。アメリカ的なビジネスをするアルノー氏は怖い人だと思い、フランスも時代のページがめくられた、と感じたのを思い出します。シャトー・ディケムの交代劇を見たら、その当時がよみがえってきたから興味を持ったのかもしれません。


 ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る


シャトー・ディケムは、経営者が変わったことで何が変わったの?

シャトー・ディケムの責任者だったド・リュル・サリュース伯爵が立ち去り、2004年にはアルノー氏の全面的信頼を得ているピエール・リュルトン(Pierre Lurton)氏がシャトーの責任者となりました。彼は、ボルドーの高級ワイン「シャトー・シュヴァル・ブラン」の運営責任者の任もアルノー氏から任されています。

シャトー・ディケムでワインの品質を管理するMaître de chaiと呼ばれる酒蔵支配人だった女性は残っているようなのですが、ワインの味は以前と同じなのでしょうか?

最近のフランスでは人気が落ちている甘口ワインを作っているシャトー・ディケム。しかも、こんなに手間がかかるのに比例した採算がとれないワインづくりをしていたドメーヌから、どうやって戦術を展開して利益をあげようとしているのか、気になるではありませんか?...

シャトーの経営権を奪った投資家のアルノー氏は、ブランド品というステータスを活かして利益を生む才能は卓越した人物です。ブランドを買収した翌年には、その企業の収益を10倍にするようなこともやり遂げるのですから。

ハンドバックを作るなら、人件費がフランスとは比較にならないほど安い東欧に工場を移して、そこで作らせた部品をフランスで組み立てて「メイド・イン・フランス」として売ることができます。

でも、AOCワインには厳しい規定が課せられていますから、同じことはできません。政府公認の食品品質保証のAOCでは、まず第一に生産地と、そこで行われていた伝統的な生産方法を守ることが義務付けられているのですから。

ボルドーワインには全く興味がない私なのですが、ブルゴーニュのドメーヌも買収することは既にアルノー氏の計画に入っているでしょうから、他人事とは思えない...。

ブルゴーニュに手を出すなら、ロマネ・コンティがアルノー氏に狙われている、というのは誰もが思うことでしょうね。ロマネ・コンティの経営者であるド・ヴィレーヌ氏も、当然ながらインタビューされています。

1870年頃にフィロキセラ禍がやってきてからの百年間、ロマネ・コンティのドメーヌとしては一銭も利益がでなかった。歴史あるブドウ畑を守るという使命感だけのために働かなければならないような事業に投資家が手を出すとは考えられない、とおっしゃっていたのですけど...。

ベルナール・アルノー氏がブランド・ビジネスを成功させるために必要な特質として挙げているのは、① タイムレス、② モダン、③ 急成長、④ 高収益だとしている人がいました。彼はそれにコミュニケーション、人脈も加えている感じが私はしますけれど。


イケムの古城は現代風になった?

ド・リュル・サリュース伯爵は、400年続いていたシャトーの伝統を守ることだけに使命を感じていたようです。30年余りの在任中に土地を10ヘクタール広げましたが、それはドメーヌで働くトラクターが迂回しなくて良いようにという目的だけだったのだそう。

現代的なものがお好きでもありませんでした。シャトー・ディケムの城とブドウ畑を眺める景色には、電信柱が1本も見えないし、コンクリートも全く見えなかったそうです。駐車場も、丘のカーブで隠れる場所に作っている。ソーテルヌの村からシャトーまで、シャトー・ディケムの場所を示す看板も1つもたてないという徹底ぶり。ワイン樽の貯蔵庫のスペースを増やしたときも、地下にセラーを作っていました。

ところが、新しい経営者は現代的なものがお好きです。アルノー氏が手に入れたシャトー・シュヴァル・ブランでは、度肝を抜くようなコンクリートづくりのワイナリーを作って話題になっていることを書いていました:
白馬の城はコンクリートで出来ている 2016/03/01

ボルドーでは、斬新奇抜な醸造所を有名建築家につくらせるのが流行っています:
ボルドーでは、有名建築家がデザインした超近代的ワイナリーが流行 2016/03/03


シャトー・ディケムは16世紀から18世紀に建てられた古城。でも、新しいオーナーは建築家にデザインさせた醸造所を作っているのではないかという気がしました。

探してみたら、こんな画像がニュースに入っていました。


Château d’Yquem ne commercialisera pas le millésime 2012 - La Revue du vin de France

やっぱり派手にしたみたい。
でも、さすがに、突拍子もない現代建築を城の敷地に建ててはいないように見えました。


存在しないミレジムを作る伝統は?

シャトー・ディケムでは、満足できるワインにならなかったときは市販しない。それで存在しないミレジムがあるので、ソムリエ試験ではよく出る問題なのだと聞いたことがあります。

1年間働いたのに、収穫物を売らなかったら膨大な損害になる。実業家の手に渡ってからはミレジムなしの年はなくなるのではないかと思ったのですが、2012年は市販しなかったそうです。とすると、以前と変わらないこだわりのワインを作り続けているということになりますか?

シャトー・ディケムに存在しないミレジムは、次のものだそうです:
1910、1915、1930、19511952、19641972、197419922012

偶然なのでしょうけれど、20世紀後半から、20年おきにミレジムがない年になっている!...

2012年のミレジムを世に出さなかったのは、収穫量がとても少なくて、収穫したブドウも満足できるものではなかったから、とイケム側では説明していました。地元では、親しいネゴシアンに流して、イケムの名を付けないワインになった、という噂も流れているそうですが。

※ シャトー・ディケムの当たり年も出てきたので、メモしておきます:
1825 1847 1865 1870 1893 1904 1921 1937 1947 1959 1967 1983 1986 1988 1990 1997 2001



シャトー・ディケムのラベルが変わった

王冠のマークの下に「Château d'Yquem(シャトー・ディケム)」と書いてあるのは、全て同じ。違うのは、その下にある部分です。


Château d’Yquem s’affranchit de l’appellation Sauternes

左側のラベルでは、シャトーの持ち主だった伯爵家の名前から、貴族の称号である「de」を除いて「Lur Saluces」。経営者がこの一族ではなくなったので、2001年にそれを削除したラベルにした。

前回の日記「シャトー・ディケム 2000年が、どう作られたかを見せた映像」に入れたルポルタージュでブドウの収穫を見せていた2000年が、伯爵の名前を入れた最後のミレジムになったわけでした。

でも、リュル・サリュースの文字を無くしてしまうと下に空白ができて間が抜けてしまうので「Sauternes(ソーテルヌ)」の文字を入れたのだそうです。

2011年からは、シャトー・ディケムとミレジムしか見えないデザインにされました。ソーテルヌの文字が全く消えたのです。ボトルの裏側には書いてあるそうですが。

それまでは、メインのラベルの下に別のラベルがあり、そこにはソーテルヌと書かれています。これはド・リュル・サリュース伯爵がさせたものだったそうです。法律が厳しくなってきているので、イケムのボトルの正面にワインの容量が表記されていないのは問題が発生する恐れがある、と考えたからだそうです。

シャトー・ディケムのラベルは19世紀から変わっていなかったのだそう。当時は、こんな感じのラベルだったのだろうと思います。

シャトー・ディケム[1948]白  02P21Jul09

シャトー・ディケム[1948]白  02P21Jul09
価格:298,000円(税込、送料込)


2011年には、やたらにすっきりしたラベルになったわけです。ワイン専門家は、ソーテルヌの文字を見えにくくしたのは戦略だと捉えていました。甘いワインの売れ行きが落ちているのです。それで、店に並べるときには、ソーテルヌとしないでおいた方が客の目に止まるだろうというわけ。

もちろん、ソーテルヌという名前でワインを作っている人たちは、ソーテルヌをステータスの高いものにしていてくれたイケムがソーテルヌの表記を無くしてしまったことは面白くは思っていないようでした。


セカンドワインのYイグレック)」を毎年売ることにした

シャトー・ディケムでは、「Y d'Yquem (イグレック・ディケム)」というワインも作っていました。

収穫されるブドウはシャトー・ディケムと同じ畑で生産されます。でも、これは甘口ワインのAOCソーテルヌではなくて、AOCボルドー白を獲得しているアペラシオンなのだそう。

2012年のミレジムは、シャトー・ディケムとしては世にでなかったのですが、こちら「Y(イグレック)」の方は販売されていました。

イグレック(Y)は1959年に登場し、貴腐ワインの収穫が終わってから収穫していたのですが、条件が合わなければ生産しないので、30のミレジムしか生産しておらず、しかも生産量は非常に少なかったとのこと。

1996年からは、シャトー・ディケムの収穫前、貴腐が付き始めた時期に収穫するようになりました。

LVMHがシャトー・ディケムの経営権を獲得し、リュルトン氏がドメーヌの管理責任者となった2004年からは、Yを毎年作るようになったとのこと。

貴腐ワインのシャトー・ディケムはセミヨン80%、ソーヴィニョン・ブラン20%で作られるとのことですが、Yの方もセパージュは同じ。

甘口と辛口の中間的なお味なのだそう。もう1つの特徴は、シャトー・ディケムよりお安いこと。と言っても、お高いですけどね...。


こちらの方もラベルのデザインを変えていました。

2010年(左)と1985年(右)のミレジムの画像をお借りします。




2014年
ずいぶんデザインをすっきりさせてしまったのですね。

もちろん、このワインでもシャトーの持ち主だった「リュル・サリュース」の文字は消しています。

色も金色からグレーにしているので、高級感が薄れませんか?

上に入れた1985年のは「ボルドー・シューペリエール」、2010年のミレジムでは「ボルドー・ブラン」と、ミレジムの下に書かれているのですが、2012年のではボルドーワインだということさえ表示されていません。

この3種類を並べて置いたら、だんだんワインのランクが下がってきたみたいに見えてしまう。

「シューペリエール(supérieur)」というのは、英語にしたらupperなので、私はそう思ってしまうわけなのですが、理由がありました。

☆ Yahoo知恵袋: ボルドーACのボルドーとボルドーシュペリウールの違いを教えてください
AOCボルドー・シュペリエールは、アルコール度数が赤は10.5%以上、白は11.5%以上とAOCボルドーより高く設定されており、さらにブドウの収穫量がボルドーより少ないこと(ブドウの実の間引きをする分、糖度を上げる)、熟成期間が長いという規程がな定められています。


1996年からY用のブドウを早く収穫するようになったので、「ボルドー・シューペリエール」として販売することはできなくなっていたのでした。

その後、新しい経営者はAOCボルドーの白という文字も消えたわけですが、まさかその基準さえクリアーしないワインになったということではないでしょうね。

最近は甘口ワインが売れなくなっているので、Yに力を入れるようにしたのでしょうね。それでも、生産量は、貴腐ワインの方は年に最大12万本のボトルを作れるのに対して、Yの方は1万本に制限しているようです。

シャトー・ディケム社長のリュルトン氏は、今のところはYの生産量を増やすつもりは今のところはなく、知名度を上げることに力を入れている、と話していました。それはそうでしょうね。ただ「Y」とだけ書かれていたら、フランスワインなのかどうかだって分からないわけですから。

Yは、シャトー・ディケムと辛口ワインの中間的な存在なのだそう。少し甘いワインって、どんなのだろう?  ヴァンダンジュ・タルディヴというのとも違うのだろうと思うのですけれど。

このワインを扱っているショップが詳しく説明しているのでリンクしておきます:
☆ エノテカ・オンライン:  Y YGREC(Y イグレック)
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隠し子も作った?!

シャトー・ディケムのボトルの画像をネットショップで探していたら、奇妙なワインを見つけました。

ソーテルヌ[2009]

ソーテルヌ[2009]
価格:6,048円(税込、送料別)


この画像だけ見れば、なんのことはないワイン。「ソーテルヌ」と大きく書かれた文字の下を読めば、正真正銘のAOCソーテルヌだと分かります。でも、その下には、生産者の名前がありません。でも、シャトー・ディケムもそうなったのだから、違和感はそれほどない。

でも、扱っているショップの書き方が奇妙なのですよ~!

このショップでは、このワインが何というドメーヌで作られたのかかをぼかしています:  秘密のデ●ケム格落とし「ソーテルヌ」

「デ●ケム」って、ディケムのこと? と思わせるではありませんか? 怪しげ...。

[2009] ソーテルヌ 750ml 1本 Sauternes

[2009] ソーテルヌ 750ml 1本 Sauternes
価格:6,458円(税込、送料別)

幾つかのショップが、この商品を扱っていました。

中にはシャトー・ディケムの名前を出しているショップもあります。

それはそうでしょうね。

普通のソーテルヌより高い値段で売るのですから、シャトーの名前を出さないと買ってもらえないはずです。

右に入れたショップでは、店長ブログがあって、どこのドメーヌであるかを明記しています。
【シャトーディケムのセカンド的な存在? ソーテルヌ 2010入荷】


【シャトーディケムのセカンド的な存在? ソーテルヌ 2010入荷】|Wine Cellar KATSUDA Blog - 店長の部屋Plus+


それにしても奇妙なのです。

ショップのサイトに入っている写真で画像検索をすると、フランスのサイトでは全く出てこないのです。日本でだけ売っているのかな。シャトー・ディケムから出たワインだというのは本当なのだろうか?...

そんなことまで詮索するのは止めようと思ったとき、シャトー・ディケムの社長であるリュルトン氏のインタビュー記事が出てきて、そういうワインを市場に出しているというのが事実なのだと分かりました。2012年のミレジムが世に出ないことになったときのワイン雑誌の取材。

2012年のミレジムは市販されないことにしたけれど、セラーにはボトルで1万本くらいになるワインが樽詰めされていたらしい。もしも、ジェネリックとして問題がない品質なら、ネゴシアン(ワイン仲買人)に樽ごと売るのだそう。仲買人がボトル詰めして販売することになるけれど、シャトーの名前を付けないことを条件しているそうです。

ということは、日本のネットショップが思わせぶりな書き方をして売っていたのは、そういうワインだったのかもしれません。

新しいオーナーになる前でも、シャトー・ディケムが不合格にしたワインを捨ててしまったとは思えません。フランスのワイン通らしき人たちが書き込んでいるサイトでは、そういうワインはどうするのだろうかというのが2010年に話題になっていて、LVMHの写真に12から15ユーロで販売している、と書いている人がいました。

LVMHが経営するようになったら、シャトーの名前は出さないのを条件にネゴシアン売ることにしたのかどうかは分かりませんでした。

でも、シャトーの名前を入れないとはいえ、ジェネリックを市場に出すのは危険が出てきませんか?...


ボルドーワインには、先物取引の伝統がある

存在しないはずの「シャトー・ディケム 2012」を販売しているネットショップがあるとして、2013年にフランスのサイトで話題になっていました。


⇒ 大きな画像はこちら

ラベルにはミレジムが入っていなくて、価格は近日中に発表、2015年6月発送と書いてあります。使われているラベルの画像は、シャトー・ディケムの運営がLVMHになる前のデザインで、ラベルには「Lur Saluces」の文字が入っています。

このワイン販売サイト「1855.com」は経営難から買った人にワインを渡さないという詐欺行為で裁判にかけられ、2015年の始めにサイトは閉鎖されていました。有名なワイナリーの名を使った詐欺は時々ありますね...。

「Primeurs」と書いてあるのが気になりました。どうやら、このサイトは売りに出る前のワインを予約販売している会社のようです。

ここでまた、ボルドーのワインはブルゴーニュとは違うのだ、というのを発見。

ボルドー独特のワインビジネスとして、「vente en primeur」というのがあるのだそうです。primeur(プリムール)という単語はボージョレー・ヌーヴォーで使われているので、新酒の状態で出すのかと思ってしまうではないですか。

このピリムール販売というのは、つまりはワインの先物取引なのでした。収穫した翌年の春ごろに、新酒の状態でワインの仲買人たちに試食させ、予約販売をする。実際に市場に出たとき、それより高い値段がつくようだったら仲買人は儲かるし、その逆だったら損をする、というシステムのようです。

ボルドーワインは、ワインの質がどうのこうろというより、お金儲けになるビジネスという要素が強いのですね。アルノーさんは、やはりブルゴーニュを狙うより、ボルドーでワイナリーを増やした方が良いと思うけどな...。

プリムールに関しては、ボルドーのワインビジネスを扱ったドキュメンタリー映画の中にも出てくるのだそうです。


映画『世界一美しいボルドーの秘密』予告編

話しがそれてしまいますが、この『世界一美しいボルドーの秘密』という映画は、その題名から想像する内容ではないのだそうです。
原題は『Red Obsession』。

この映画のDVDを扱っているアマゾン(世界一美しいボルドーの秘密 [DVD])で内容が紹介されているのですが、ボルドーワインがなぜ美味しいのか知りたい人が見たらがっかりしてしまうはずだ、というようなコメントが入っています。

実際には、中国人がボルドーのワイナリーを買い占めているというのが大きく扱われているらしい。それは昔から聞いていたのですが、最近はもっとエスカレートしているようです。

この映画がリリースされた2013年に、フランスサイトでそれを扱った記事があり、中国人が所有したボルドーのワイナリーをGoogle地図に入れています。シャトーに付いている色分けは、赤が2011年とそれ以前、青が2012年、紫が2013年に中国人によって購入されたことを示しています。


イケムのソーテルヌは、若いうちに飲んでも美味しいですよ~♪

フランス情報を拾って斜め読みにしたのですが、シャトー・ディケムで収益をあげるためのキーポイントは、甘口ワインの人気が下がっていることを打破しようとしているように見えました。

実際、ソーテルヌのワインの価格は15年前の値段まで下がっているという人もいたし、ソーテルヌのブドウ畑の土地の価格も下落していることは少し前にブログで書いていました:
フランスのブドウ畑の市場価値(1991年と2014年の比較) 2016/01/24


シャトー・ディケムでも流行の波には逆らえないらしく、ワインファンや業界の人たちが情報交換しているワイン・フォーラムのサイトでは、ネゴシアンからかなりの割引価格をオファーされたと報告している人もいました。

シャトーとしては、中国市場での売り上げを増やそうとしている様子ですね。

それから、古酒になると素晴らしいという定評があるけれど、若いうちに飲むとフルーティーでとても美味しいのだ、とリュルトン氏は強調しています。邪道ではあるけれど、若いヴィンテージを9度に冷やして飲むと美味しいのだと示したら、テースティングの評判はとても良かったのだ、と話していました。

甘口ワインを長いこと寝かしておいたら、甘味が増えるのかな...。もしそうだとしたら、若いうちに飲むというのを流行させれば、甘口ワインが余り好まれていないというネックを打破することができるでしょうね。

貴腐が付き始めた段階でブドウを収穫するYのワインを毎年販売するようになったのも、辛口ワインをビジネスの大事なラインとして並行させるという経営方針ではないでしょうか?

さらに、シャトーのワインも余り糖度が強くないワインを作るという路線も考えられるのでは?...

そうすると、今までのように百年たっても美味しいワインではなくなるでしょうけれど、たくさん売れれば会社の収益は上がるのだから、何十年も先のことまで心配する必要はない。若いうちに飲みましょうと勧めているのだしから、そのアドバイスに従ってもらえれば良いわけです。

若いうちに飲めるようなワインを作るのは、ブルゴーニュワインでもトレンドになっていると感じています。長期間セラーに寝かせておかなければならないようなワインは、ストックしていると税金がかかるのでレストランが嫌うからだと言う人もいます。昔ながらの伝統を守っているドメーヌだと分かっていないかぎり、ワインは早いうちに飲んでしまうようになりました。昔は安いブルゴーニュワインでも、10年もたったときに飲んで驚くほど美味しかった、というサプライズも楽しめたのですけど。



他にもLVMHになってから何か変わった点があるのではないかと探したわけではないのですが、貴腐ワインというのに興味を持って調べていたら、不思議に思うシャトー・ディケムの収穫風景が出てきました。

それを次回に書いてから、ボルドーワインの話しは終わりにして別の話題に移ろうと思います。
続き: 甘口ワインのソーテルヌは、どのくらいの貴腐状態のブドウで作るの?

シリーズ記事 【フランスのワイン産地】 目次へ
その29


 

ブログ内リンク:
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★ 目次: ワインなどアルコール飲料に関するテーマ
★ 目次: 文学者・哲学者、映画・テレビ番組

外部リンク:
☆ Wikipédia: Liste des milliardaires du monde
Bordeaux, les plus grandes fortunes du vin en 2015
☆ Vitisphere: Le classement 2015 des premiers investisseurs de la filière
 YouTube: [Reportage] Complément d'enquête - Bernard Arnault, L'Homme Qui Valait 30 Milliards [HD]
☆ YouTube: Bernard Arnault, son parcours
Nouvelobs: L'adieu au manager
ベルナール・アルノー、語る
LVMH、不動産会社がなぜブランド帝国に?
ベルギー人になりたかった“金持ちのバカ”

Château d’Yquem s’affranchit de l’appellation Sauternes
Oenographilie: A PROPOS DE L’ETIQUETTE DU CHATEAU D’YQUEM
さらばソーテルヌ。シャトー・ディケムのエチケット変遷

Y s'affranchit de son grand frère Yquem
☆ Wineandco: Y d'Yquem
Dico du vin:  Yquem (château d'Yquem)
Une nouvelle génération d'Y

La Revue du vin de France: Yquem : le vin non commercialisé pourrait être vendu au négoce
Qu'a-t-il à y gagner, puisque c'est une cuvée qui n'est pas commercialisée ?
Vin : succès des ventes sur internet du Château d'Yquem 2012... qui n'existe pas 06/06/2013
Yquem 2012 existe, je l’ai rencontré
Enquête sur une grosse arnaque dans la vente de vin en ligne 02/07/2015

Yquem (château d’Yquem) Premier Cru supérieur (AOC Sauternes, Bordeaux)
Pierre Lurton : " Un Yquem jeune, c'est un plaisir immédiat "
Yquem cultive sa singularité
Yquem ou le retour à la pureté originelle
Le comte de Lur-Saluces s'insurge 07/09/2014

☆ Dico du Vin: Primeur (vente en primeur) Bordeaux
ボルドープリムールとは?
映画『世界一美しいボルドーの秘密』あらすじとネタバレ感想
Quand le rouge devient plus précieux que l’or : Red Obsession, un documentaire avec la voix de Russell Crowe sur la frénésie chinoise pour le vin
Vins de Bordeaux : de plus en plus de châteaux tombent dans l'escarcelle chinoise 04/06/2013


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