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2016/07/31
先日ドライブしていたら、こんな名前の道路がありました。



ロベスピエール通り。この名前の道路は少ないらしいので記念撮影しておきました。


パリには、「ロベスピエール通り」も「ロベスピエール広場」もない

町や村にある主要道路には、歴史上に名を残した人の名前が付いていることが多いように感じます。ところが、世界中に知れ渡っているロベスピエールの名前が付いた通りや広場は、首都パリに1つもないのだそうです。

それで、パリのどこかに「ロベスピエール通り」を作って、フランス革命をたたどる観光コースをつくろうと働きかけている政治家たちがいるそうです。時々話しがもちあがるらしいのですが、先月、また「ロベスピエール通り」作らないことに決めたというニュースが流れていました。

そのニュースを聞いてからすぐ後に、ブルゴーニュの小さな村にロベスピエール通りがあったので目にとまったのでした。首都パリにはないというだけで、地方には何カ所かあるようです。

パリで地下鉄に乗ったとき「Robespierre」という名前の駅があったのを思い出しました。調べてみたら、ここはパリ市に隣接するMontreuil(モントルイユ)市にある駅なのでした。1936年、共産党の市長だった時期に命名されたのだそう。


マクシミリアン・ロベスピエール(Maximilien de Robespierre 1758~1794年)は、フランス革命期に恐怖政治を行った中心人物です。

テロが多発している最近のフランス。テロリズムの語源と言われるTerreur(恐怖政治)の中心人物を今さら通りの名前にはしない方が無難だと思うのですけどね...。「ロベスピエール通り」を作ろうと働きかけているのは左派の政治家たちのようです。

冷血な顔だちをイメージしていたのですが、画像を探したら、穏やかな笑顔を浮かべているものさえあったのでした(左)。もっとも、さも意地悪そうなお顔のもありました(右)。


Portrait de Maximilien de Robespierre,
peint par Adélaïde Labille-Guiard en 1791

画家に肖像画を描かせるなら、私だって実際より良い風貌にしてくれるように頼みます。

政治家は好感が持てるようなイメージ写真を使うし、逆に、犯罪者の写真をニュースで使うときには、いかにも犯罪者らしい写真を選んで使うのだそう。


フランスのスローガン: Liberté, Égalité, Fraternité

フランス政府のロゴにも書かれているし、役場の正面などにもよく刻まれている文字です。

Le logotype du gouvernement français, adopté en 1999.

このスローガンを初めに使ったのはロベスピエールなのだそうです。となれば、「Rue Robespierre(ロベスピエール通り)」が首都パリに1つくらいあっても不思議はないではない気がしてきます。

「Liberté, Égalité, Fraternité」は、日本語では「自由、平等、友愛」あるいは「自由、平等、博愛」と訳すのが普通のようです。

立派に見えるフランスのスローガンですけれど、フランス革命期の標語なのですから、世界平和や人類愛を求めて作られたとは思えません。先日の日記「田舎の革命記念日」にも、革命期の歌を使っているフランス国歌には人種差別と受け取れるような文句が入っていることを書きましたが、このスローガンも同じ発想だろうと思います。

「fraternité」は日本では「友愛」ないし「博愛」と訳されているのですが、フランス革命でのスローガンの意味を組むなら「同胞愛」ではないでしょうか? つまり、革命派が権利を勝ち取り、邪魔者は消すためのスローガンだったはずなのです。

実際、恐怖政治でのスローガンでは続きがあって、「あるいは... 死」と最後に付いています。

Liberte egalite fraternite ou la Mort
« Liberté, Égalité, Fraternité ou la Mort ». Exemple de devise sous la Terreur.


フランスの住所となっている道路や広場の名前

フランスの住所は、通りや広場の何番地かという形式になっています。道路には通りや広場の名前を書いたプレートが付いているおり、通りのどちら側かによって番地は奇数と偶数によって分かれています。ですので、行きたい場所を探すには便利。

もっとも、広場から道路が放射線状に道路が延びているところでは、道路を間違えたことに気づいて正しい道路に行こうとすると、非常に遠いところまで行ってしまっていた、ということにもなりうるのですが。

歴史上に名を残した道路名が多いと感じていたのですが、どんな名前を付けるかには歴史がありました。

中世のフランスでは、通りや広場の名前は目印になるものを名前に入れていました。「教会広場」、「朝市広場」、「肉屋通り」など。

ようやく1600年になってから、シュリー公爵マクシミリアン・ド・ベチューヌMaximilien de Béthune / duc de Sully)の考えによって、場所とは関係ない名前の住所も登場するようになったのだそう。

フランス革命期には、旧体制を現しているような町の名前を変えたりしましたが、道路や広場も「平等通り」、「国家広場」などという名前にしたりしています。第一帝政期になると、「教会通り」とか、聖人の名前を付けた道路名に戻す。

普仏戦争があった19世紀末には、アルザスとロレーヌ地方がドイツに占領されたことに抵抗する市町村が、アルザス、メス、アルザス=ロレーヌなどという名前を道路に付けた。

20世紀になると、主に男性の有名人の名前、地方や国の名前、動植物など自然にちなんだ名前を付けるのが流行る。

現在のところ、住所名で最も多いのは、Rue de l'Église(教会通り)で、7,965カ所。次にPlace de l'Église(教会広場)、Grande Rue(大通り)、Rue du Moulin(水車/風車通り)、Place de la Mairie(役場広場)と並んでいました。

つまらない名前ばかりですね。

教会や役場を示しているのは、小さな町村などでは中心地にあることが多いので、地名で出して来ているのは便利。でも、どこにでもあるように感じる「Grande Rue(大きな道)」というのは、余りにも工夫がないので見かけると笑いたくなってしまう...。



これはWikipediaに入っていた画像ですが、下に昔の名前らしい「憲法典通り」とあります。フランス革命期に付けられた名前を「大通り」に変えたのでしょうね。


フランスの広場や道路名で、誰の名前が最も使われているのか?

フランス全土にロベスピエール通りが幾つあるのか調べても出てこなかったのですが、住所に人名が付いている場合のランキングがありました(200位までのランキング・グラフはこちら)。

※ 統計の対象としているのは、通り(rue)、広場(place)、大通り(boulevard)、路地(venelle)。

全体として言えるのは、ド・ゴール将軍がだんとつで第1位であること。フランス全土に、彼の名前を付けた通りや広場は3,903カ所。ただし、そのうち1.056は広場の名前なので、道路名としてはパスツールが第1位。

トップ6に入っていた人物名を並べてみます。




シャルル・ド・ゴールCharles de Gaulle
1890~1970年

政治家。第18代大統領
第二次世界大戦でのレジスタンス活動家、フランス解放に寄与した。

※ ちなみに、パリの国際空港の名前にもなっています。
3,903カ所
Portrait de 1942.



ルイ・パスツールLouis Pasteur
1822~95年

生化学者、細菌学者
ワクチンの予防接種を開発した。
3,354カ所
Louis Pasteur



ヴィクトール・ユーゴーVictor Hugo
1802~85年

詩人、小説家、政治家

※ 日本では『レ・ミゼラブル』の著者として知られていますが、ベートーベンは『エリーゼのために』を作曲した音楽家というのと同じかもしれない。フランス人にとっては偉大な人物のようです。
2,555カ所



ジャン・ジョレスJean Jaurès
1859~1914年

政治家、社会主義者
第一次世界大戦に反対するが、狂信的な国家主義者に暗殺された。
2,370カ所
Jean Jaurès



ジャン・ムーランJean Moulin
1899~1943年

政治家
第二次世界大戦中のレジスタンス運動の指導者。
2,215カ所



レオン・ガンベタLéon Gambetta
1838~82年

政治家
共和主義の立場から第二帝政政府を激しく攻撃して異彩を放った。第三共和制では政治的なキーパーソンとなる。
1,501カ所
Léon Gambetta



第4位から6位までの人物は、余りにもあちこちの町で道路の名前として見かけるので、誰なのだ? と思いながら覚えた名前でした。

トップ200の中で、13のカテゴリーに分けていましたが、最も数が多い人物は文学者(70人)、2番目は政治家(38人)、3番目は科学者(22人)、4番目は音楽家(16人)、5番目は軍人・戦争関係(14人)。画家は6番目でした(13人)。

音楽家としては、第1位はシンガーソングライターのジョルジュ・ブラッサンス(Georges Brassens)で、全国に919カ所ある。フランスが世界に誇る作曲家のベルリオーズ、ドビッシー、ラヴェルを凌いでいました。

画家のトップはセザンヌで、676カ所。第2位はルノワール。

セザンヌの名前をかかげているのは、やはりプロヴァンス地方。有名人の故郷では好んで地域からの出身者の名前を付けるので、地方によって命名の傾向が現れています。

日本で人物の名前を付けた住所や道路名は殆どないような気がするのですが、どうなのでしょう? 昔からの藩主の名前ではないという例としては、豊田市くらいしか私には思い浮かびません。

ブログ内リンク:
★ 目次: 戦争、革命、テロ、デモ

外部リンク:
☆ フランス観光開発機構: フランスの住所表記
☆ Wikipedia: マクシミリアン・ロベスピエール
☆ 世界史講義録: フランス革命4: ジャコバン派独裁
Une rue Robespierre à Paris ? Simple prétexte à un débat idéologique au coeur de la gauche  20-06-2016
☆ 語源由来辞典: テロ
☆ Wikipedia: 自由、平等、友愛 » Liberté, Égalité, Fraternité
Ça veut dire quoi Liberté, Egalité, Fraternité ? 
☆ フランス政府: Liberté, Egalité, Fraternité
Ces 20personnalités sont les stars des rues françaises
Quelle personnalité a le plus de rues à son nom dans votre département
☆ Wikipédia: Odonymie en France


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コメント
この記事へのコメント
日本ではその地形からくる 地名 住所が
多いようにおもいます、、
たとえば 富士山がみえるから
富士見   富士が丘  富士見台、、
小高いから
なんとか 台 (わたしの ところも 郷和台)
低いところが
なんとか沼 なんとか谷
松がはえていて
二本松  松ヶ丘 
坂だから
桜坂 、、 そうそ 乃木坂というのが
乃木将軍の名前がついている?
あと 東郷通り(東郷神社のある 通り?)、、というのもあったような、、
いまは 山が切り崩され 坂がなくなり
平地であっても そういう名前がついていると
昔の姿を しのばれて 好きです〜

富士見坂など いまはビルの影で到底望めない富士山が ここから見えたんだ〜とかね、、、
2016/08/01 | URL | katananke 05  [ 編集 ]
日本に道路名はありません
日本は世界で唯一、住居表示に街区方式をとっている変な国です。住所が道路方式ではないため、道路に名前を付ける必要がないのです。(高速道路とか幹線道路にはナンバーがついていますが)
2016/08/01 | URL | 豊栄のぼる  [ 編集 ]
興味ある話題です。通りの名にド・ゴールは超多いのにナポレオン(この際、3世も含めましょう)を冠したものは皆無、ルーヴルに「Cour Pyramide Napoleon」があるのみ。ボナパルト通りはありますが。リヴォリ通り、ヴァンドーム広場をナポレオンに付け替えても問題ないと思えます。オスマン通りはあっても命令した3世はどこにも名前がありません。レカミエ椅子広場だったところが最近「Square Roger-Stéphane」に変わっていてびっくりしました。名称変更は人物がその場所に関係がなくても平気でやってるようですね。
2016/08/01 | URL | ETRETAT  [ 編集 ]
Re:
v-22 katananke 05さんへ

>乃木坂

「坂」と付いているのも、かなりありましたね。乃木坂は住所表記には使われていないのだそう。

「東郷通り」を検索してみたら、トルコにあるとかでてきました!

>富士見坂など いまはビルの影で到底望めない富士山が ここから見えたんだ〜とかね、、、

テレビの番組で、東京で「富士見」と付いている地名の特集を見たことがありました。こんなところから富士山が見えるはずがないと思うようなところでも、昔は見えたという地形なので面白かったです♪

ふと思ったのですが、フランスに、例えばモンブランが見える通りとかいう名前の道路があるのかな?... フランスの道路名は、その道がどこにつながっているかによる命名が多いような感じがするのです。その道の始まりから歩いていけば、教会なり、町なりに行きつく。日本では、そこに立ったときのことで地名になる? 日本とフランスの発想の違いでしょうかね?...
2016/08/01 | URL | Otium  [ 編集 ]
v-22 豊栄のぼるさんへ

>日本は世界で唯一、住居表示に街区方式をとっている変な国です。

区画で住所区分をするのは日本だけでしたか。せめて、広い通りがあったら、それで囲まれている地域を街区にしてもらいたい。恨みがあるのです。

土砂降りの中、東京の麹町1丁目にあるオフィスを探して苦労したことがありました。当時は、GPSはおろか、携帯電話もない時代。公衆電話から先方に電話して、「近くにいるはずなのだけれど、オフィスは何処でしょう」と何回もやり取りしても見つからない!

しまいにタクシーに乗ろうかと思ったのですが、麹町1丁目にいることは確かなので、できない。その番地にいるのだからと区画を歩き回ったのですが、広い道路の向こう側に渡るべきだったのでした!

結局、びしょ濡れになって1時間歩きまわりました。それ以降、スマホでGPSを見れるようになるまでは、東京では地図を持って歩くようにしました。麹町1丁目は、新宿通りを挟んで2分されている地域なのです。

Googleマップ「麹町1丁目」:
https://goo.gl/maps/j1CwZNSQyjE2
2016/08/01 | URL | Otium  [ 編集 ]
Re:
v-22 ETRETATさんへ

>通りの名にド・ゴールは超多いのにナポレオン(この際、3世も含めましょう)を冠したものは皆無

パリにはナポレオン通りがないのですね。こちらの方がロベスピエール通りがないのより遥かに不思議ですね~! パリには、あれほど仰々しいナポレオンの霊廟まであるのですから。

パリ1区から2区にのびるRue de la Paixが、以前はRue Napoléonだったのだそう。ナポレオンが失脚した後の1814年のパリ条約(traité de paix)にちなんだ命名なのだそう。でも、その後に登場したナポレオン3世はパリの大改造をしたので、シャンゼリゼにだってナポレオンの名前を付けられたでしょうに、不思議...。

コルシカ島のバスティアにはナポレオン通りがありました。コルシカの人は、故郷に何の貢献もしなかったナポレオンを好いているわけでもないと聞いたのですけど...。地図で確認してみたら、コルシカ島の英雄パスカル・パオリの大通りの裏道みたいな道路がナポレオン通りでした(笑)。

https://goo.gl/maps/uzSeAGJv9vT2
2016/08/01 | URL | Otium  [ 編集 ]
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